鷲尾飛鳥

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2018.05.02 美少女戦隊エンジェルス特別編の挿絵を入れ替えました






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テーマ : 挿絵・イラスト
ジャンル : 小説・文学

正義のヒロインミルキーピンク&美少女戦隊エンジェルス

2018年 05月01日 16:10 (火)

☆まえがき 

Pixivで小説を書いている“halka”様が、私の作品のキャラクターを使って、コラボ小説を書いてくれました。設定上の時間・季節等は、美少女戦隊エンジェルス本編の第21話~23話の間のあたりを想定しています。
 現在エンジェルスの本編の方で、私の方でhalka様のミルキーピンクのキャラクターを使わせてもらい、第32話~34話の間でミルキーピンクのキャラクターが自分のキャラクターと共演しています。
  
 挿絵はまだありませんが、時間があり次第、入れていこうと思っています。


**********************************


 正義のヒロイン ミルキーピンク&美少女戦隊エンジェルス
( 原作:halka )
 
 オカ研の活動は週に一度、担当者がネタとなる話題を持ってきてそれについてあれこれ話し合う、簡単に言えばそんな所である。

仁美「さあ、今日はどんなネタを持ってきてくれたかな、麻美ちゃん」

 今日の当番は麻美。

 麻美はネタとなるネットのページを印刷したものを配布する。仁美のチェックが入る。緊張の一瞬である。

仁美「なになに~?連続少女失踪事件・・・神隠しの様に・・・マスコミも報道なし・・・か」
紫央「これってオカルトとかいう以前に犯罪じゃないのか?」

 紫央の冷静なつっこみに仁美が吹き出す。

仁美「確かに。どっかの変質者かあるいは高校生の身体を小さくする薬をもってる黒い組織かじゃない?」
麻美「そ、そんなぁ・・・」

 肩を落とす麻美。

麻美「でも何か気になるのよね」
紫央「何かって・・・?」

 麻美の言葉に秘められた不安に紫央も気づいた。麻美は記事に載っていた現場の写真を指差す。現場は公園のようだった。緑が多く、それがかえって夜になると不気味さを増すようだ。写真の奥にピントがぼけて映っているのは、落雷か何かで焼き焦げた大木のようだった。

仁美「この木?」
麻美「そう。よく見るとしめ縄みたいなのが付いてるの。これはご神体だったのかも」

 紫央がゴクリと生唾をのむ。その脇で仁美が目を輝かせている。

麻美「もしこのご神体が霊的な何かの力を抑える役割だったとしたら・・・この失踪事件と関係があるか    も・・・」
仁美「面白いじゃない!!!!」

 仁美が我慢しきれず飛び上がる。

仁美「とにかく現場を見る必要があるわね。さっそく明日、行ってみましょう!」
紫央「・・・行動が早いな」

 だが紫央は否定はしない。麻美がこう言っているということは、妖気を感じているに違いないからだ。この失踪事件はただの事件ではないという証拠である。

仁美「それで、現場はどこなの?」
麻美「現場は・・・鷲尾平という所よ」

 *****************************************


 写真に写っていた公園にたどり着いたのは夕刻だった。辺りには人影もなく、秋の虫たちが夜の闇が近いことを告げていた。

紫央「・・・狙ったような時間帯についたものだ」
仁美「いい雰囲気じゃない。さっそく写真に写っている木を探しましょう?」

 3人が木々の茂った公園の奥へと入っていった。しかし麻美はすでに嫌な予感を感じていた。

麻美(なによ、この妖気・・・この先から感じる。あのご神体はやっぱり何か妖怪の力を抑えていたんだわ。)

 その時だった。林の奥から低い声の会話が聞こえてきたのだ。とっさに身をひそめる麻美たち。

麻美(・・・誰かいる)
紫央(麻美、見て、あれ・・・)

 紫央が指差した先には、写真でみた焼き焦げたご神体の巨木があった。そしてその木の下に、薄緑色の全身タイツを身に着けた奇怪な姿の者たちが数人いたのである。そしてその中央、全身タイツたちを取り仕切るように何やら支持を出しているのは、ピンクの風呂敷を被ったような姿をした一つ目の化け物だった。

仁美(!?な、な、なにぃぃいいいい!?何あれ!?!?)
紫央(しっ。仁美、静かに。)

 紫央が仁美を制止しようとした時だった。
 がさっ。
 反動で枝の擦れる音が立ってしまった。化け物たちの視線が一斉に麻美たちに集まる。

おんぶ「誰だ。そこで何をしている」
麻美「やばい、見つかった。逃げるよ、紫央、仁美!!」

 驚いている仁美の手を強引に引っ張り、逃げ出す麻美と紫央。しかし全身タイツたちが追いかけきて、すぐに取り囲まれてしまった。戦闘態勢をとる麻美と紫央。

おんぶ「小娘どもが。見てはいけないものを見てしまったな。ネオ・ブラックリリーの秘密を知ったものは生きては返さない!」

 化け物の合図とともに全身タイツたちが一斉に麻美たちに襲いかかる。しかし麻美と紫央はその鍛え抜かれた格闘技で全身タイツたちを薙ぎ払った。

麻美「紫央、仁美と一緒に逃げて。ここは私が時間をかせぐ。」
紫央「わかった。麻美、気を付けて。」
麻美「うん、ありがとう」

 目と目で互いに意思を確認しあう二人。まだ訳が分からないといったふうの仁美を連れて、紫央は麻美に背を向け走った。

おんぶ「逃がすな、追え!」

 ばしゅっ!
 二人を追おうとした全身タイツを麻美のキックが吹き飛ばした。

麻美「なによ。レディーを前にして無視するなんて、あんまりじゃない?ネオ・ブラックリリーとか言ったわね。あなたたちはいったい何者なの?」
おんぶ「ばけばけばけ。小娘、貴様が知る必要はない。貴様はここで死ぬのだからな」
麻美「じゃあ、力づくで教えてもらおうかしら。変身クロスチェンジ!!」

 まばゆい光が麻美を包み、化け物の視界を奪う。光の中から現れたのは、赤いタンクトップとミニスカート、白銀のロングブーツとグローブを身に着け、顔を青いゴーグルで隠した正義のヒロインミルキーピンク。

おんぶ「貴様、まさかエンジェルスの小娘どもの仲間か・・・・!?」
麻美「エンジェルス?私は正義のヒロイン ミルキーピンク。か弱い少女を狙う悪党どもは、この私が許しません!覚悟なさい」
おんぶ「ネオ・ブラックリリーに歯向かうものは皆殺しだ。者どもかかれ!!」

 全身タイツたちが麻美に襲いかかる。麻美は冷静に身をかわし、一人、また一人と倒していく。

麻美「さ、あとはあなただけよ、妖怪さん」
おんぶ「妖怪?この俺はネオ・ブラックリリーの科学力で生み出された改造魔人おんぶ魔人だ。ばけばけばけ」
麻美「さっきから言ってるそのネオ・ブラックリリーとかいうのは何なのよ。ショッカーの仲間?」
おんぶ「世界征服を企む悪の秘密結社という点では正しいな。だが我々はやつらより数段うえの悪魔よ」
麻美「女の子を襲って数段上とか言ってる時点で大したことしてないわね。どうせ他の人たちもあんたたちが誘拐したんでしょ?」
おんぶ「ばけばけばけ、察しがいいな。やつらは今回の作戦のためにアジトに監禁してある。じきに全員死ぬことになるから探しても無駄だぞ」

 高らかに笑うおんぶ魔人。麻美は怒りの拳を握りしめた。

麻美「このミルキーピンクがいる限り、そんなことは絶対にさせない。たあ!!」

 麻美の正拳がおんぶ魔人を襲う。
 ばしゅっ!
 パンチが悪を貫いたかに思えた。しかし魔人の風呂敷のようなつかみどころのない身体によって威力が吸い取られた。

麻美「な!?私のパンチが・・・」

 魔人は瞬間移動し、少し離れた所に現れ、その長いべろで麻美を挑発した。

おんぶ「ここまでおいで~」
麻美「馬鹿にしてっ! くらえ、クロス・ショット!」

 魔法の刃が魔人を襲う。・・・しかし、クロスショットまでもが魔人の身体に吸収されてしまったではないか。

麻美「クロスショットまで!?」
おんぶ「ばけばけばけ、お返しだ」

 驚いている麻美に向けて、おんぶ魔人は両手から怪光線を放つ。

麻美「うわああっ!!」

 麻美はよけきれずに、直接ダメージを受けて吹き飛ばされた。地面に倒れる麻美。

麻美「そんな・・・私の魔法が、跳ね返された・・・?」

狼狽する麻美。しかしこんな所で負けるわけにはいかない。麻美は立ち上がり、魔人に向き直った。
しかし・・・

麻美「しまった、どこへ消えた!?」

 この瞬間に姿をくらませてしまったのである。辺りを探す麻美。しかしおんぶ魔人の姿はない。

麻美「いったい、どこへ・・・・」

 その時である。麻美の背中に突然重さが生じた。

麻美「うっ!?な、なに・・・」
おんぶ「ばけばけばけー」

 奇声とともに、麻美の背中に負ぶさったおんぶ魔人が姿を現した。

麻美「し、しまった・・・離れろ、こいつっ、このぉっ!!」

 エルボーを繰り出し、背中に張り付いた敵に攻撃する麻美。しかし先ほどのパンチと同様、肉弾攻撃では敵の身体に効果がない。

麻美「おのれ・・・・」
おんぶ「俺様を背負ったが最後、貴様に勝ち目はないぞ、小娘。俺様の身体は人間の精気を吸い取りミイラにするのだ。」
麻美「なんだと・・・くうぅ・・・あぁぁ・・・」

 麻美の身体からエネルギーが吸い取られていく。焦る麻美。必死に逃れようと、背中のおんぶ魔人の腕を持ち背負い投げようとするが、敵の力のほうが一段上である。投げることもできず、もがき苦しむ麻美。とうとう膝をついてしまった。

麻美「はぁはぁ・・・このままじゃ、力が・・・」
おんぶ「しぶといやつだ。そんな抵抗する顔もまたかわいいなぁ」

 そう言うとおんぶ魔人は長い舌をだし、麻美の首筋をベロリと舐めた。

麻美「はぅぁ!?!?」

 麻美の身体がビクリと反応する。

おんぶ「ばけばけばけ、俺様の舌は精気をさらに早く吸い取るのだ」
麻美「や、やぁ・・・そんなところ、舐めちゃ・・・はぅぅ・・・///」

 身体の力が抜け、地面に崩れ落ちる正義のヒロイン。赤面しながら必死に歯を食いしばるも、よだれが噛みしめた歯の間から滴り落ちる惨めな姿はとうてい気高いヒロインのものとは思えない。どろどろの汚い舌が麻美の綺麗な顔に伸びる。

麻美「はむんんん・・・顔は・・・い、いやぁ・・・・ふむんんんん///(力が入らない・・・!?くそう、こんな変態攻撃に、負けるわけにはいかないのに・・・!!)

 べろべろ、ぴちゃぴちゃ
 人の身体ほどもある大きな舌が、麻美の小顔を舐め回していく。ブルーのゴーグルに唾液が滴る。顔を守る両手のグローブももはや肌にまで届くほどびしょびしょだった。

おんぶ「声がエロくなってきてるぞ? だんだん気持ちよくなってきたんじゃないのか?」
麻美「そ、そんなわけ・・・んんぁぁ♥ (首筋を舐めないでぇぇ・・・本当に気持ちよくなっちゃう・・・)

 じたばたと地面を蹴る純白のブーツが徐々に抵抗を失っていった。決して重いわけではない妖怪の身体に抵抗できない麻美。

おんぶ「ばけばけばけ、いい反応だなあ。もう力も入らなくなってきてるじゃないか。それは精気を吸われているからか?それとも身体が感じてきてるだけじゃないのか?」
麻美「ば、ばかなことを・・・っ!正義のヒロインが、化け物ごときに、そんな・・・ぅぅ」

 うつぶせに押し倒され、背後から舌による醜悪な凌辱を繰り返される麻美。抵抗する力はもはやなく、変態妖怪になされるがままだ。魔法も打撃も利かない強敵に為す術もなく敗北するしかないのか、ミルキーピンク!?

「そこまでよ!」

 麻美が倒されそうになった、その時だった。

おんぶ「何者だ?」
絵里香「闇の世界より出でて世界を征服しようとする悪の手先!」
聖奈子「お前たちの野望は私達が絶対打ち砕く!」
美由紀「私達の手で引導を渡してやるから覚悟なさい!」
3人「私達は正義の戦士!美少女戦隊エンジェルス!!!」

 夕日に照らされポーズを決めるエンジェルスと名乗る少女たち。彼女たちはそれぞれが赤、青、黄色の変身スーツに身を包み、手には剣や盾、バトンを持っている。おんぶ魔人は弱った麻美を押し倒して立ち上がり、彼女らに戦闘態勢をとった。

おんぶ「やはり出てきおったか、小娘ども。皆殺しにしてくれる。」
聖奈子「来い、化け物!」

 聖奈子と美由紀が同時におんぶお化け魔人へ向かい合い、麻美から離れたて戦闘を開始した。その隙に絵里香は麻美を助け起こした。

絵里香「大丈夫ですか?」
麻美「あ、あなたたちは・・・」
絵里香「私達はエンジェルス。正義の味方です。」
麻美「エン、ジェルス・・・」

 近くで見ると歳は麻美と同じくらいだろうか。凛とした目には麻美も知っている正義の戦士の光が宿っていた。

麻美「気を付けて・・・奴に背負われては、いけない」
絵里香「え?どういうことですか・・・」

 絵里香が首をかしげたその時だった。戦闘を繰り広げていた美由紀の悲鳴が聞こえた。

美由紀「イヤだ、背中に何か・・・くっ」
聖奈子「美由紀、大丈夫?奴はどこに・・・」

 すると美由紀の背中からおんぶおばけ魔人の奇声が聞こえた。

おんぶ「ばけばけばけー、まんまと罠にかかったな、小娘」
美由紀「えぇ?・・・私の背中に、負ぶさっているの?イヤー離れてー!!」

 見えない敵に対して腕をがむしゃらに振り回し、必死に抵抗する美由紀。しかし敵の恐怖の特殊能力によって、徐々に精気を吸い取られ弱っていってしまう。

美由紀「あぁ、力が、抜けて・・・」
聖奈子「美由紀、しっかり!ちくしょう、美由紀から離れろ!」

 聖奈子は美由紀の背中のあたりを切りつけた。何も見えない空間に確かな手ごたえがあった。おんぶおばけ魔人が美由紀に背負いかかった姿を現した。

おんぶ「見つかっちゃったか」
聖奈子「こいつ、私のソードが全然利いてない・・・」
おんぶ「ばーけばけばけ、俺の身体には魔法も打撃も効果はないのだ。一人ずつ精気を吸収していってやるから、待っていろ。まずは貴様だ」
美由紀「イヤぁああ!!放して!!ぐぅぅ・・・やぁぁ・・・」

 美由紀の抵抗も空しく、エンジェルパワーがどんどん吸収されていく。このままでは美由紀が危ない。ついに魔人を背負いながら膝をついてしまう美由紀。聖奈子はいてもたってもいられなかった。

聖奈子「ちくしょう、だったら、アクア・トルネー・・・」
絵里香「待って、聖奈子!」

 必殺技を繰り出そうとした聖奈子を絵里香が制止した。

聖奈子「絵里香、どうして・・・」
絵里香「説明は後!美由紀、エンジェルバトンを使って」

 美由紀は半信半疑、エンジェルバトンを構えると、敵の身体に押し当てた。雷のような電流が流れ、おんぶ魔人は悲鳴を上げて痺れ始めた。

おんぶ「ぐわぁあああ、こりゃたまらん」

 光の戦士である美由紀にはバトンの電流は利かない。ついにおんぶ魔人は耐えきれなくなり、美由紀から離れた。

聖奈子「やったー!大丈夫、美由紀?」
美由紀「うん、何とか・・・」
絵里香「やっぱりね。あいつは魔法を吸収して跳ね返してしまうらしいの。だとしたらアクアトルネードは危険だったわ。でも美由紀の放電能力だったら吸収される前に敵にダメージを与えられる。」
聖奈子「さっすが絵里香!あったまいいー」
絵里香「これは麻美さんのアイディアよ。」
 
 絵里香は振り向いて、麻美にVサインを出す。木にもたれかかる様に休ませられていた麻美は、絵里香に答えて親指を立ててサムズアップしてそれに応える。

美由紀「あの人は、いったい・・・」
絵里香「あの化け物を倒したら、お互い自己紹介しなきゃね。さあ、反撃開始よ!」

 おんぶおばけ魔人に武器を構えた。

「くくく、甘いな、エンジェルスの小娘ども」

 どこからともなく響く怪しい女の笑い声。絵里香たちエンジェルスに緊張が走った。

絵里香「この声は・・・」

 すると、夕闇が具現化し軍服姿の女が姿を現した。その腕には・・・

麻美「紫央、仁美!」

 紫央と仁美が囚われているのが麻美の目に入った。紫央は女の手にした鞭によって身体を縛られており、仁美は気を失っていた。軍服姿の女と戦ったのだろう。紫央の身体には所々に服の汚れや傷が見える。

紫央「くっ・・・すまない、麻美・・・」

 紫央の瞳が遠くの麻美と交差し、そう語っていた。

美由紀「お前はドクターマンドラ!」
マンドラ「この人間どもの命が惜しければ攻撃をやめるのだな。」
聖奈子「人質なんて卑怯だぞ」
マンドラ「ふん、何とでも言え。さあ、攻撃をやめるのか、やめないのか」

 目の前で人質をとられては絵里香たちにも策の施しようがない。唇をかむ絵里香たち。そこに傷だらけの麻美がよろよろと合流してきた。

麻美「紫央と仁美を返して!」

マンドラ「ん、貴様は何者だ?・・・その姿、只者ではないな。まあいい。今は貴様たちに構っている暇はないのだ。退いて作戦を遂行せよ、おんぶ魔人。」
おんぶ「わかりました、ドクターマンドラ様」

 ワープしようとするドクターマンドラとおんぶ魔人。エンジェルスが後を追おうとする。

聖奈子「逃げるのか!?待て、こら!」
絵里香「今度は何を企んでいるの?」
マンドラ「それを貴様たちに教える義理はない。だが近いうちに、貴様ら人間どもに絶望を見せつけてやる。わーははは。」

 そういうとドクターマンドラは笑い声を残して消え去ってしまった。紫央と仁美を連れて・・・

麻美「紫央、仁美!!」

麻美の叫びは空しく夕闇に吸い込まれていった。

   *********************************

美紀子「宮代麻美さん、だったわね。私は紅林美紀子、よろしくね。」

 そういうとその女性はコーヒーの入ったコップを麻美へ差し出した。ここはこの女性、紅林美紀子の探偵事務所である。おんぶ魔人との戦闘でエネルギーを消費しすぎた麻美は、絵里香たちに連れられてこの事務所へやってきたのだった。コーヒーを受け取る麻美の顔は暗かった。ネオ-ブラックリリーの魔人に手も足も出なかった。それだけでなく親友を目の前で連れ去られてしまったのだ。

美紀子「気持ちはわかるわ。ここでじっとしているわけにはいかない、って顔してる。」
麻美「・・・」
美紀子「でも今は冷静に作戦を練ることが大切よ。さあ、あなたの知っていることを教えてちょうだい。」

 美紀子の顔をじっと見つめる麻美。この麻美より少し上の年頃の女性の瞳。そこには絵里香たちと同じ、正義の炎が宿っていた。傍らにいた絵里香がそっと麻美の手を握ってきた。

麻美「・・・絵里香さん」
絵里香「大丈夫。お友達は必ず助け出せる、ううん、必ず助け出してみせる!」

 麻美は絵里香の顔を、そして周りにいる聖奈子、美由紀、美紀子の顔を見回した。

聖奈子「あなたも正義のヒロインなんでしょ?じゃあ私達と気持ちは一緒だよ。」
美由紀「よろしくお願いね、麻美ちゃん」
絵里香「力を合わせて一緒に戦いましょう!」
麻美「みなさん・・・・お願いします!」

 そして力強くうなずくと、絵里香の手を握り返した。
 麻美は先ほどの神社近辺で少女が行方不明になっていること、ご神体と思われる大木が焼け焦げていたこと、そのご神体の前でネオ-ブラックリリーに出会ってしまったことを話した。そしてそのご神体からただならぬ妖気があふれていたことも。美紀子は黙ってその話を聞いていたが、麻美が話し終わると一つ息をつきコーヒーをすすった。

美紀子「麻美さん、ありがとう。どうやらネオ-ブラックリリーとその妖気とは何か関係がありそうね。」
絵里香「え?妖気って、妖怪の力のことですか・・・?」

 美紀子の発言に驚く絵里香たち。恐怖の科学技術によって改造魔人を作り出し、殺人兵器を用いて暗躍してきたネオ-ブラックリリーたちと戦ってきた絵里香たちにとって、妖怪という非科学的な存在は信じがたいものだったに違いない。麻美は絵里香の言葉にうなずく。

麻美「私も美紀子さんの意見と同じです。ここへ来る前に私達が調べたところによると、あの神社のご神体は昔、邪悪を封印していたらしいんです。それが何か具体的にはわかりませんでしたが・・・」
美紀子「ネオ-ブラックリリーはおそらくその力を手に入れた・・・」
美由紀「それがさっきの化け物なの?」
麻美「あいつからも弱い妖気を感じましたが、あいつ自体は妖怪じゃありません。」
美紀子「だとすると、みんなが戦った魔人は、その封印の力でパワーアップしたと考えるほうがいいわね」

 麻美はなるほどという風に頷く。絵里香たちから聞いた話だと、エンジェルスの打撃も魔法も通じない敵など、これまでに見たことがない。ネオ-ブラックリリーの科学力をもってしても、宇宙のエネルギーを分け与えたエンジェルスの力で対抗できないはずがないのだ。だとすると新しい力を得たと考えるのが理にかなっている。

美紀子「今度の敵のパワーアップの謎はだいたい解けてきたわね。・・・あとはさらわれた女の子たちを使って奴らが何を企んでいるかが問題ね」

    ***************************************

 麻美たちが美紀子の事務所で作戦を練っているころ、紫央と仁美はネオ-ブラックリリーのアジトへ連れてこられていた。両手に手錠をはめられ、同じくはめられた首輪に手錠が鎖で繋がれている状態で、紫央と仁美は牢獄へ押しこめられた。

仁美「きゃあっ、痛いっ」

 尻餅をついた仁美が小さい悲鳴を上げる。牢獄の中には先に連れ去られてきたと思われる少女たちが、同じように両手を拘束され監禁されていた。それを見た紫央は唇をかむ。

紫央(くそう、一般の人たちもこいつらに誘拐されていたのか。)

 と、その時、実験室のような部屋から女性の叫び声が響いた。しばらくすると、精神が崩壊し廃人のようになった女性がゴミの様に引きずられてそこから連れ出されてきたではないか。牢獄にいる少女たちが一斉に恐怖に震えた。

おんぶ「こいつも違ったようだ。次の女を連れてこい」
戦闘員「ヒャイー!!」

 戦闘員が敬礼すると、紫央たちの牢獄へとやってきた。牢獄の中が騒然とする。

女「いやああ、死にたくない!!」
女「助けて、お願い、助けて」
戦闘員「うるさい、黙れ」

 品定めをするように牢獄の中を見回す戦闘員を紫央は睨み付けた。

紫央「やるんなら私から連れて行け。」
戦闘員「なにを?生意気な小娘だ。いいだろう、次のモルモットは貴様にしてやる。」

 力づくで紫央の髪をつかみ立ち上がらせる。

仁美「いやあ、紫央を連れて行かないで!!」
戦闘員「うるさい、黙れ。ならば貴様も一緒に連れて行ってやる。」
紫央「やめろ、仁美は関係ない!」
戦闘員「ええい、黙れ黙れ!!」

 無抵抗の紫央の頬を殴り、すがりついてくる仁美を蹴り飛ばす戦闘員。小さな悲鳴とともに、地面に倒れ伏した仁美をもう一人の戦闘員が立ち上がらせ、紫央とともに実験室へ連れて行った。

おんぶ「次は貴様たちか。」
紫央「くっ・・・私達をどうするつもりだ?」
おんぶ「貴様たちはクチ妖怪様に身体を提供する媒体となるのだ。心配するな、運良くクチ妖怪様とシンクロできれば貴様の身体に傷はつかん。精神はどのみち崩壊するがな。ばーけばけばけ。」
紫央「・・・下衆どもめ・・・っ!!」

 紫央は怒りにまかせて、拘束されていない自由な足で、周りを囲んでいる戦闘員を蹴り飛ばす。しかしすぐに他の戦闘員によって抑え込まれ、地面に羽交い絞めにされてしまう。

紫央「く、くそう・・・変身できれば、こんな奴ら・・・」
おんぶ「ふん、乱暴な女だ。早く実験室へぶち込め。」
紫央「くぅうう!放せ、こいつ・・・っ」

 抵抗も空しく実験室へ追いやられる紫央と仁美。仁美の叫び声とともに、実験室の重い扉が閉じられた。
そこへドクターマンドラがやってくる。

マンドラ「おんぶ魔人よ。実験材料となる人間の女が足りない。もっと集めてくるのだ。それとエンジェルスの小娘どもに勘付かれた。貴様にはすでに奴らに勝るパワーアップを施してある。奴らの息の根も止めるのだ。」
おんぶ「ははあ、仰せのままに。」

 おんぶ魔人は敬礼すると作戦室から出て行った。一人になったドクターマンドラは実験室の扉を見つめ、薄く微笑んだ。

マンドラ「まさか妖怪が本当にいるとは思わなかった。見ておれ、エンジェルスの小娘ども。この力を使い、世界をわがものにするのだ。あーっはははは」

 ネオ-ブラックリリーの恐怖の作戦が動き始めている。紫央と仁美の運命は・・・。早く助け出すんだ、ミルキーピンク、そしてエンジェルス!!

  *****************************************



 ・・・背後から無数の触手に襲われる。
「ちっ、しまった・・・・ぐぁあぁああ」
 抵抗しようにも、既に四肢の自由は敵の触手によって完全に奪われていた。バトル用のロングブーツを履いた細く美しい足が、拘束から逃れようと必死に抗う。触手はそれを見物するかのように、その脚だけジタバタする余裕を与えていた。
「このままでは、引きずり込まれる・・・はぅっ、くっ・・・し、締め付けが、きつく・・・!?うがぁっ」
 細い首をロープのように触手が食い込む。息ができず、空気を求めて空を仰ぐ。可愛らしいバトルコスチュームが、触手とともに肌に食い込んでくる。
(息が・・・くそう、意識がもたない・・・こんな所で、負けるなんて・・・・)
 悔しさに唇を噛み締める正義のヒロイン。幾多の敵を倒してきたプライドが一瞬にして崩され、今はただ敵の触手に弄ばれることしかできないのだ。悔しさに涙が流れる。その瞳が次の瞬間、見開かれた。
「む、胸に!?こいつら・・・や、めろ、そこは・・・ら、らめえ!!♥」
 もっとも敏感な場所を触手が器用に攻めていく。バトルスーツごしでも乳首が勃起しているのがもう分かる。窒息して飛びそうになっていた意識が強制的に引き戻され、今度は快楽の海に沈められようとしている。
「『 頭の中が真っ白になる・・・・』」
 
黒「ぐへへ、たまんねぇ・・・ジュルリ イくのかい?イっちゃうのかい?」

 女の子とはとても思えない声で独り言を言いながら、パソコンの画面に食いつき創作小説を読む少女。部屋は暗く、パソコンの光だけが少女の怪しげな恍惚とした表情を照らし出している。

黒「もっといじめろ」

 その時である。急に部屋のカーテンが音もなく揺れた。しかし少女はパソコンに夢中で気づかない。

?「見つけたぞ」

黒「ん?なんか聞こえた?」

 かすかに聞こえた声に少女はようやくパソコンから目を放す。すると部屋の鏡に自分ではなく化け物の姿が映っているではないか。少女の悲鳴がこだまする。
 
黒「な、なに!?」

おんぶ「ばけばけばけーお前のよこしまな心、そういう人間を探していたのだ。」

 鏡から抜け出したピンク色の風呂敷化け物につかまる少女。鏡の中へ引きずり込まれる。

黒「やめて、放して!!誰か助けてぇえええ」

 少女の叫びを残し、何事もなかったかのようにパソコンの画面が光り続けていた。


   **********************


クイーン「ドクターマンドラ、作戦の状況はどうなっている?」

マンドラ「はっ、クイーンリリー様。現在、妖怪復活のための憑代となる女をおんぶ魔人がついに発見いたしました。」

クイーン「ほお、ついに見つけたか」

 ドクターマンドラは得意げにおんぶ魔人を呼び出す。そこには黒縁メガネで背も低く、髪もぼさぼさに伸びた、いかにも根暗そうな女子高生が連れてこられた。今は気を失っており騒ぎはしないが、ここへ来るまでに相当の恐怖を感じたのだろう、両頬が扱けて細い顔がさらに不健康そうに見える。

おんぶ「クイーンリリー様、この女にございます。」
 
クイーン「・・・・・・・・・・ドクターマンドラよ」

マンドラ「ははあ。・・・・・・・・」

 ドクターマンドラはクイーンリリーの言わんとしていることが分かった。それはこの女子高生を見たとき、彼女自身もそう思ったからである。どこにでもいそうな普通の、いや普通以下の容姿の人間が、本当に妖怪復活の憑代になりえるのだろうか、と。

クイーン「ふん、まあいい。今回の作戦は、全て貴様の立案によるものだ。その意味がわかるな?」

マンドラ「こ、心得ております。」

クイーン「万が一にも作戦が失敗し、我がネオ-ブラックリリーの名に泥を塗るようなことになれば、それ相応の罰を受けてもらうぞ」

マンドラ「ははあ!」

 そこで通信は途絶えた。
 大幹部ドクターマンドラは冷や汗を拭うと、おんぶ魔人に向き直った。

マンドラ「ここまで言われてしまったのだ、おんぶ魔人。貴様、その女に間違いなかろうな?」

おんぶ「ばけばけばけ、ご安心くださいドクターマンドラ。私に植え付けられた妖怪のエネルギーがこの女にもっとも強い反応を見せました。」

マンドラ「そうか。ならば、早急に妖怪復活の実験に取り掛かるのだ。」

 おんぶ魔人は敬礼すると、連れてきた女―黒野末子を連れて実験室へ入っていった。その実験室の扉が閉まるのを見て、マンドラはあることを思い出し、戦闘員を呼んだ。

マンドラ「例の女どもはどうしている?」

戦闘員「キィー。厳重警備のもと、地下牢に監禁してあります。その後とくに暴れることもないようです。」

マンドラ「そうか・・・」

 ドクターマンドラは気になっていた。実験材料として妖怪の憑代にしようとした時、被験体から謎のエネルギーが放出され、妖怪の力を退けたのだった。あの時の光をドクターマンドラは今でも覚えている。

マンドラ「(一瞬のことだったが、この私さえ戦慄させるほどのパワーだった。野放しにしておくには危険すぎる)先の実験時のデーターが取れ次第、やつらを処刑する。そうだ、エンジェルスの小娘どもを誘き出す人質にして、一網打尽にしてくれよう。それまで監視を怠るな。」

戦闘員「ヒャイー!」

 一方、ここは紫央と仁美が囚われている地下牢。

紫央「・・・仁美、仁美」

 紫央は両手足を鎖で壁につながれ、磔にされていた。その状態で、同じように並んで磔にされている仁美に、外の看守に聞こえないように小声でささやいた。仁美はあれ以来ずっと気を失ったままだ。これまでの妖怪退治で幾度も恐怖は味わってきたが、こんな絶体絶命の状況に陥ったことはないのだから無理もない。一方の紫央は、脱出の機会をうかがっていた。仁美が気づかないのを確認すると、本題に入るというふうに声を低くしてもう一度呟いた。

紫央「ならば聞こえているか・・・ヒルデ?」

 その問いかけに、仁美の目がうっすらと開く。正確には、仁美の身体に宿ったもう一つの人格、戦人ブリュンヒルデことヒルデの鋭い目である。

ヒルデ「やれやれ、妖怪の巻物の件以外で手を貸すつもりはなかったのだがな。」

 ヒルデも紫央同様、看守に気づかれないほど小声で、身動き一つせずに囁く。

紫央「やはりさっきの光はお前か。」

ヒルデ「勘違いするな。宿主に妖怪なんぞが取りついては、私の居場所がなくなる。それだけだ。」

紫央「勘違い?お前こそ、気づいているなら寝たふりなんかしてないで、ここから抜け出す作戦を考えるぞ。」

ヒルデ「・・・口の減らないやつめ」

 麻美がいないと、まさかこれほどまでに仲が悪いとは・・・  喧嘩になりそうになったその時、

看守「うるさい。何を話している!?」

 看守に気づかれてしまった。とっさに口をつぐむがもう遅い。舌打ちをする紫央。何を話していたか尋問されては面倒だ。するとヒルデが驚くほど甲高い声で悲鳴を上げた。

ヒルデ「嫌だ、ここはどこなの!?放して、放してよぉー!!」

看守「気が付いたか。ええい、うるさい!黙らんと殺すぞ」

ヒルデ「きゃああああ」

 ロマン主義の小説にありがちな悲鳴を上げて気を失う・・・ふりをするヒルデ。しかし看守はそれに気づかず、小心者の仁美がまたショックで気絶したのだと思った。

看守「ふん、静かにしていれば命も長らえる。せいぜい余生を大事にすることだな」

 そう言い残すと再び見張りに戻っていった。静かに安堵の息をはく二人。

紫央「・・・やるじゃないか。その・・・助かった・・・・///」

ヒルデ「ふ、ふん・・・/// いずれにしても、この状況では下手な動きはできん。巫女(麻美のこと)に念波を送ってみるが、具体的な場所までは伝えられん。しばらく敵の動きをみるしかないな。」

      **************************************

 ・・・・こよ、起きろ、巫女よ
 声がして、麻美は飛び起きた。ここは紅林美紀子の探偵事務所。次の日に絵里香や美紀子たちと一緒に紫央と仁美の捜索を行うということになり、この探偵事務所に泊めてもらったのだった。

麻美「この声は・・・ヒルデ!?」

 麻美は事務所の一室で、借りたベッド(昔、紅林源太郎が使っていた)の上から、何もない空間に向けて呟いた。すると麻美の脳へ直接答える声があった。

ヒルデ「そうだ。ようやく起きたか。」

麻美「無事だったのね!!紫央は?二人ともいまどこにいるの?」

ヒルデ「守り人(紫央のこと)も無事だ。今は敵のアジトに監禁されていて、ここがどこだか私にもわからぬ」

麻美「・・・そう。よかった~」

 ヒルデの話の後半はほとんど聞いていなかった。無事という言葉に、麻美は深い安堵の息を吐く。二人の無事が確認できただけで、憂鬱だった気分がすっと晴れたようだった。

ヒルデ「私の念波が使えるのは短い。無駄話には使えないぞ。今わかっている情報を伝える。」

麻美「うん、わかった」

 ヒルデはそこで、アジトで見た人質の姿や実験のことを伝えた。クチヨウカイなる妖怪の復活が今回の誘拐事件の目的であることも。

麻美「そういうことだったんだ・・・」

 麻美の頭の中で謎が一つにつながった。と、そこまで話したところで、絵里香が扉を開けた。

絵里香「麻美さん、おはよう!・・・今、誰かとしゃべってた?」

 麻美の意識が絵里香へ移ったことで、念波の通信が乱れた。一方のヒルデのほうでも時間的に限界だったらしい。
ヒルデ「そちらも・・・じょ・報をつかんで・・ようだn・・・」

麻美「あ、ヒルデ、待って。ぜったい助けるから、待ってて!!」

 最後の言葉が通じたかどうか、麻美には分からなかった。しかし麻美の胸には希望が戻っていた。

絵里香「麻美さん、大丈夫?目が泣きそうよ?」

麻美「絵里香さん・・・ごめん。大丈夫。ありがとう。」

 気づかないうちに目にたまっていた涙を拭う。そして心配そうに覗き込んでくる絵里香の手を引いて、美紀子たちの待つリビングへ向かったのだった。

     *************************************

美紀子「・・・これで敵の作戦がわかったわね」

 麻美は今朝のヒルデとの通信を美紀子たちに伝えていた。妖怪の復活というキーワードに、絵里香たちは実感がまだ持てないらしい。

美紀子「まだしっくりこない顔ね。」

聖奈子「そんなことはないですけど・・・」

美由紀「妖怪ってどんなやつなのか・・・」

美紀子「事実は事実として受け止めなさい。まあ私も経験がないぶん、どう対策をうてばいいか悩むところだけど・・・」

 美紀子までこの様子である。昨日戦ったおんぶ魔人を見ても、まったく動揺なく受け入れられた麻美にとって、妖怪という相手が疎外されていることに違和感を覚える。

麻美「あ、あの・・・みなさん、改造魔人なんかとは闘いなれてるのに、妖怪って見たことないんですか・・・・?」

4人「「「「ありません」」」」

 しかし敵の作戦が分かったと言っても、根本的な救出作戦には至っていない。そう、敵のアジトが分からないのだ。その問題で頭を悩ませていると、探偵事務所のチャイムが鳴った。

美紀子「あら、誰かしら?」

絵里香「私、見てきます」

 絵里香が小走りに玄関まで走っていく。手にして戻ってきたのは、ハガキだった。

絵里香「美紀子さん、これ・・・・」

 怪訝な表情の絵里香に美紀子は何事か感じ、そのハガキを受け取る。その差出人の名前は・・・

美紀子「・・・ネオ-ブラックリリー」

聖奈子「なんだって!?」

 中身は今日の正午、市内の遊園地にて誘拐した人質たちを処刑するというものだった。しかも遊園地内のお化け屋敷までの園内マップまで同封してある。

美由紀「わざわざ送ってくるなんて・・・罠に決まっているわ」

聖奈子「手の込んだことしやがって!」

絵里香「美紀子さん、どうしますか?」

 少し考えていた美紀子は、強くうなずいた。

美紀子「アジトの手がかりもないし、ここは奴らの罠にかかってあげましょう。でも、ただかかるわけじゃないわ。みんな、作戦はこうよ・・・」

 絵里香たち3人と麻美は美紀子の作戦に耳を傾けた。


      *********************************


 遊園地の門をくぐる絵里香、聖奈子、美由紀の3人。その日は休日で、遊園地内は混雑している。絵里香たちも違和感ないように私服姿でそれなりにおしゃれをしてきた。目指すはお化け屋敷。園内の外れ、雑木林に少し入った所にそれはある。込み合っていたはずが、ここは驚くほど閑散といている。怪しい雰囲気を演出するための立地だろうが、それが本物の妖怪を呼び寄せてしまうことになろうとは皮肉な話である。

美由紀「これが指定された場所ね・・・」

 美由紀の声から緊張感が伝わる。

聖奈子「美由紀、もしかしてお化け屋敷が怖いとか?」

美由紀「い、いやだ、聖奈子ったら。そんなこと・・・」

絵里香「もう、二人ともまじめにしてよ。さあ、入るわよ」

 古びた長屋を模ったお化け屋敷の入口を開ける。薄暗く真っ赤な照明に照らされた通路へ、足を踏み入れる絵里香たち。入口が3人を閉じ込めるように独りでに閉まる。少し進んだ所で、白い死装束をまとった幽霊が現れた。

美由紀「きゃあ!?」

聖奈子「はは、美由紀、驚きすぎ。」

美由紀「だってぇ・・・」

聖奈子は幽霊のことを人形だと思い、ぎりぎりまで近寄り手を振って見せる。

聖奈子「ほら、作りものだって。」

 がしっ! その時、聖奈子の手を幽霊が握った。

3人「「「!?!?!?」」」

聖奈子「こ、こいつ・・・放せ!」

 強引に腕を引っ張り幽霊から離れる。すると3人を取り囲むように幽霊の群れが集まってくるではないか。

絵里香「いったい、どうなってるの?」

聖奈子「なんだってんだ。こいつ、近寄るな!!」

 聖奈子が襲いかかってきた幽霊を蹴飛ばす。すると幽霊の変身がとけ、ネオ-ブラックリリーの戦闘員の姿が現れた。

美由紀「こいつら、ネオ-ブラックリリー!」

絵里香「聖奈子、美由紀、変身だよ!エンジェルチャージ!!」

 3人は変身すると、格闘戦で幽霊戦闘員を一人、また一人と倒していく。だが狭い通路では思うように武器も使えず、数で勝る戦闘員たちに徐々に押されてくる。

美由紀「倒してもきりがないわ」

絵里香「くっ、ここはいったん退きましょう」

 通路を先へ向かって逃げるエンジェルス。それを追う幽霊戦闘員の群れ。その先に、次のステージへ進む扉が見えた。急いでその扉へ滑り込み、内側からロックをかける。そこは長屋の庭のように少し広い空間になっており、井戸やしだれ柳がいかにもという風にセットされている。

聖奈子「ふぅ、何とか逃げ切れた」

絵里香「安心するのは早いわ。あれを見て」

 絵里香が指差した先には、鬼火がゆらゆらと燃えながら迫ってきていた。もちろん本物の炎を宿しており、触れば大火傷である。

聖奈子「くそう、今度は鬼火か」

 まとまっていては格好の的になるだけだ。3人は散開し、それぞれ鬼火と対峙する。しかし動きの読めない鬼火にてこずってしまう。絵里香は両脇から挟み撃ちにされ、壁際に追い込まれてしまう。

絵里香「あ、熱い・・・このままじゃ、焼き殺される・・・」

 ブレードを出して鬼火に切りかかる。しかしふわふわと身軽に浮かぶ鬼火はその攻撃をかわしてしまう。

絵里香「くぅ・・・熱い・・・ぅぁぁ・・・」

 追い詰めれるエンジェルレッド。そこに聖奈子の声が響いた。

聖奈子「みんな、伏せて!」

 反射的に身を伏せる絵里香。その頭上を特大のアクアトルネードが通過した。一瞬にして鬼火を消し飛ばす。美由紀も鬼火地獄から解放され、安堵の息を吐く。しかしこう罠が多くては安心していられない。敵の罠に飛び込んでしまったが、この先どんなことが待ち受けているか、不安を拭いきれないエンジェルスの3人。そこへ、おんぶ魔人が現れた。

おんぶ「ばーけばけばけ、エンジェルスの小娘ども、ここが貴様らの墓場だ」

絵里香「なんですって!?」

おんぶ「見ろ」

 指差されたしだれ柳の下に牢が現れ、誘拐された女性たちが囚われていた。

聖奈子「てめえ、なんてことを!」

おんぶ「助けてみろ?」

聖奈子「言われなくても、そうするよ!!」

絵里香「待って、聖奈子。冷静になって」

絵里香の忠告も聞かず、頭に血が上ってしまった聖奈子が牢屋に突っ込んでいく。

おんぶ「馬鹿め、かかったな」

聖奈子「なに!?・・・・うわぁああああぁぁ!?!?」

 牢屋に届く手前で聖奈子の姿が地面に消えた。落とし穴に掛かってしまったのだ。古典的な罠にはまんまとはまってしまい、唇をかむ聖奈子。

聖奈子「ちくしょう。こんな穴、すぐに・・・」

 登ろうとするが、そこへ戦闘員が穴の中へ飛び込んでくるではないか。狭い穴の中は聖奈子と2,3人の戦闘員でぎゅうぎゅう詰めになってしまった。

聖奈子「く、苦しい・・・狭いんだよ、こいつ・・・・ぅぅ」

 抵抗しようにも身動き一つ取れない聖奈子。完全に落とし穴に囚われてしまった。

美由紀「聖奈子を助けなきゃ!」

 エンジェルソードとエンジェルバトンをそれぞれ取り出し、聖奈子の救出へ向かう絵里香と美由紀。しかし美由紀が走り出そうとした瞬間、おんぶ魔人の巨大な舌が身体に巻き付き、長屋のほうへ投げ飛ばされてしまう。何とか空中で体制を立て直し縁側に着地するが、その体を戦闘員がドンと押した。

美由紀「え? きゃっ!?」

 長屋の壁が隠し扉になっており、美由紀を巻き込んでくるりと反転する。長屋の中で美由紀が見たものは、鋭い槍が何本も突き出した壁だった。徐々に迫りくる槍の壁。逃げようにも隠し扉は表からロックされ開かなくなっていた。

美由紀「嫌だ、助けて!絵里香ぁあああ」

 恐怖にパニックになる、美由紀。ドンドンと扉を叩くが、自分を閉じ込めた扉は開いてくれない。

絵里香「美由紀!!」

 助けに向かおうとした絵里香の前に立ちはだかるおんぶ魔人。
おんぶ「残るは貴様だけだ、エンジェルレッド。いざ、勝負!」

絵里香「望むところよ!」

 組み合う絵里香とおんぶ魔人。絵里香はキックを浴びせるが、おんぶ魔人の妖力でパワーアップした身体には通用しない。

絵里香「くっ・・・」

おんぶ「そんなキックは利かん。そーれ!」

絵里香「きゃあああ」

 投げ飛ばされ、窓を突き破り外へ転がり出てしまう。ダメージが大きく起き上がれない所へおんぶ魔人が一方的に蹴りを入れてくる。エンジェルス絶体絶命のピンチ! 立つんだ、エンジェルレッド。君が立たなければ、仲間も人質も助からないぞ!

      **************************

おんぶ「ばーけばけばけ、エンジェルスも一人ではこの程度か。とどめを刺してやる。」

 そういうと、おんぶ魔人はエンジェルレッドの背中に負ぶさった。

絵里香「くっ、しまった!!」

 必死に抵抗する絵里香。しかしおんぶ魔人はエンジェルパワーを吸収し始める。このままでは変身が解けてしまう。その時、絵里香が声を上げた。

絵里香「今よ、麻美さん!!」

 すると絵里香を中心に大地に五芳星が刻まれた。とたんに苦しみ始めるおんぶ魔人。絵里香を放し、聖なる光の結界に苦しみのた打ち回る。ミルキーピンク巫女モードに変身した麻美が上空から降り立つ。

麻美「絵里香さん、ご苦労様」

絵里香「なんとかなったみたいね」

 傷らだけの絵里香を支える麻美。支えられながらも、作戦の成功にウインクする絵里香に、麻美もほっとする。

おんぶ「き、貴様、何をした・・・!?」

麻美「それは妖怪の力を無力化する結界よ。絵里香さんに囮になってもらったおかげで、まんまと引っかかったわね。」

おんぶ「なん、だと・・・くそう、俺の力が・・・」

 おんぶ魔人の身体から妖力が煙の様に消えていく。美紀子の作戦は、まずネオ-ブラックリリーに顔を知られている絵里香たちが潜入し、敵を誘き出す。エンジェルスやミルキーピンクの攻撃が利かない魔人だが、妖力でパワーアップした分を麻美の力で何とかできれば勝算はあると考えたのだ。

絵里香「ちなみに聖奈子も美由紀も、あんたが私を外に飛ばしてくれた後に美紀子さんが助け出してくれてるわ。残念だったわね。」

おんぶ「全部演技だったということかぁあああ!!」

麻美「さあ、覚悟なさい!」

 絵里香と麻美はおんぶ魔人に必殺技を構える。

絵里香「ファイアースマッシュ!!」

麻美「ミルキーアロー!!」

 もはや妖力を全て失った、ただの風呂敷魔人が断末魔の叫びをあげて消滅した。それを見届けて、ハイタッチしあうエンジェルレッドとミルキーピンク。後から美紀子に助けられた聖奈子と美由紀も合流してきた。

美由紀「魔人を倒せたのね」

絵里香「うん。美紀子さんの作戦のおかげよ。」

聖奈子「人質も全員解放したわ。これでネオ-ブラックリリーの作戦も失敗に・・・・」

聖奈子が言いかけたその時だった。突然絵里香たちへ攻撃が襲った。爆発に身をかがめるヒロインたち。

ドクター「わーっはっは、どうやらおんぶ魔人も時間稼ぎ程度にはなったようだな」

 勝ち誇った笑いを浮かべ、ドクターマンドラが現れた。その傍らには、麻美たちと同じくらいの年頃の少女が連れられている。

絵里香「ドクターマンドラ!いったいどういうこと!?」

ドクター「紹介しよう。我らがネオ-ブラックリリーの科学力によってよみがえった、古より封印されし大妖怪、クチ妖怪だ!」

 傍らの少女がすっと前に立つ。どう見ても妖怪に見えないその姿に呆気にとられるヒロインたち。

絵里香「クチ妖怪って・・・その子が?」

麻美「絵里香さん、気を付けて。すごい妖力を感じるわ。恐らく、人間の子に取りついている。」

 麻美の緊張した様子をみて、つばを飲み込む絵里香、聖奈子、美由紀。

聖奈子「どんなやつでも、攻撃してみなきゃ始まらないじゃん。いくよ、アクアスマッシュ!!」

美由紀「ライトニングスマッシュ!!」

絵里香「ファイアースマッシュ!!」

 3人の必殺技がクチ妖怪に襲いかかる。その時、クチ妖怪がうつむいた。すると頭のてっぺんに巨大なもう一つの口が大きく開いているではないか。3人の必殺技がいとも簡単にその口へ吸収されてしまう。

絵里香「そんな!?必殺技が呑み込まれた・・・」

 驚愕する絵里香たち。クチ妖怪の下の口、つまり少女-黒野末子の口がニタリと笑った。

クチ「絶望してるの、ヒロインさんたち?ジュルリ、可愛い~。ゾクゾクしちゃうよ。」

麻美「なに変態発言してんのよ!はあ!!」

麻美の必殺パンチが妖怪めがけて放たれる。しかしクチ妖怪の長い髪が伸び、麻美の身体を縛り上げたのだ。

麻美「うっ!?これは・・・くそう、このぉ・・・」

 髪の毛の拘束から逃れようともがくが、麻美の身体はいともたやすく上空へ持ち上げられてしまう。さらに締め付ける力が増し、麻美の身体をきしませる。

麻美「っ・・・こ、こいつ・・・放せぇええ!!(なんて力なの・・・力をいれても、身体がぜんぜん動かない)」

絵里香「麻美さん!」

麻美「絵里k・・・・ふぐっ!?」

 麻美の口を髪の毛触手が塞ぐ。言葉さえもしゃべれなくなってしまった正義のヒロインは、為されるがまま空中で弄ばれる。

麻美「んんっ~~~~!!! んんんん~~~~!!!」

 必死に抵抗する麻美。しかし四肢を拘束されては逃れようがない。絵里香たちが見ている前で開脚させられ、恥ずかしい下着を公開させられる。

麻美「んんっ!うんんんっ!!(ダメ・・・脚が、閉じれない・・・っ)」

クチ「ぐへへ・・・正義のヒロインさんのパンツ大公開だよ。たまんねぇなぁ~ジュルジュルリ」

 涎をすすりながらクチ妖怪はさらに麻美へ髪の毛触手を通して妖気を流し込む。邪悪なエネルギーに包まれ、巫女モードから普通のミルキーピンクへと変身が解除されてしまった。

麻美(くっ・・・変身が・・・なんて妖力なの?いったい、どうしたら・・・?)

 ミルキーピンク巫女モードでも太刀打ちでいない強敵。封印されていた最強の妖怪の前に、対抗策はあるのか?

      *******************************************


絵里香「ミルキーピンクを助けなきゃ!」

 ブレードを手にクチ妖怪に迫るエンジェルスの3人。それに気づいたクチ妖怪は髪の触手を伸ばし、エンジェルスも捕えようと攻撃してきた。

美由紀「あぶない!」

 何とか攻撃をかわしていく。しかしその攻撃に気を取られていると、クチ妖怪は絵里香たちへソフトボール大の妖怪ボールを投げつけてきたのだ。

絵里香「あぐっ!?」

聖奈子「きゃあっ!!」

美由紀「うっ、痛い・・・」

 絵里香の首元、聖奈子の両腕、美由紀の脚に噛みついた妖怪ボール。それぞれ牙をもったクチが付いており、エンジェルスの3人に喰らいついて放さない。

聖奈子「ちくしょう、なんだこれ・・・」

 両腕に噛みついた妖怪ボールを必死に取ろうとする聖奈子。しかし片手では力に限界があり、簡単には外れない。肌に刺さる牙の痛みにもがき苦しむ。

絵里香「くっ・・・身体に力が、入らなくなって・・・!?」

 それは絵里香だけでなく、聖奈子も美由紀も同じだった。妖怪ボールから逃れられるばかりか、逆に妖気を注入され身体がマヒしてきているのだ。

ドクター「はっはっはっ、手も足も出ないとはこのことだな、エンジェルス」

絵里香「くそう・・・ドクターマンドラ!」

ドクター「いよいよ昔年の恨みを晴らす時が来た。者ども、かかれ!」

 ドクターマンドラの鞭に導かれ、うようよと出てきた戦闘員達がエンジェルスに襲いかかる。

絵里香「くっ、戦闘員なんかに負けるエンジェルスじゃないわ!」

 妖怪ボールに苦しみながらも、戦闘員たちを迎え撃つ絵里香。しかしパンチした瞬間、戦闘員の身体がパっと消えた。

絵里香「消えた!?・・・キャアっ!?!?」

 驚く絵里香の背後から、その戦闘員が組みつき羽交い絞めにする。動けない絵里香に群がる戦闘員達。

聖奈子「絵里香!」

美由紀「いったい、どうなっているの?」

 絵里香を助けるため、アクアトルネードを放つ聖奈子。しかしその攻撃も戦闘員たちの身体に宿った薄い妖気のバリヤーにかき消されてしまう。

聖奈子「そんな!?アクアトルネードまで」

ドクター「わーっはっはっ、どうだ戦闘員に敗れる気分は?そいつらはクチ妖怪の妖力を分け与えた強化戦闘員だ。弱り切った貴様らにはこいつらで十分だ。」

聖奈子「ちっ、こんなボールに咬みつかれなきゃ、負けるはずないのに・・・」

美由紀「聖奈子、どうしよう」

 絶体絶命のピンチに陥ってしまったエンジェルス。クチ妖怪の術によって力を失い、さらに強化された戦闘員に囲まれ、今やその運命は空前のともしび。

ドクター「すばらしい。この妖怪の力を全魔人へ移植し、強化魔人軍団によって一気に世界を征服してやる。ふふふ、妖怪の力、素晴らしいぞ!」

クチ妖怪「私は世界征服なんて興味ないから。可愛いスーパーヒロインを、生でいじめられんなら、いくらでも協力するけど?」

ドクター「もちろんだ。貴様のその歪んだ趣味に、いくらでも協力しようではないか。」

クチ「ジュルリ・・・ならいいけど」

 このままでは、世界はネオ-ブラックリリーとクチ妖怪によって征服されてしまう。ピンチを切り抜けるすべはないのか?
 頑張れ、エンジェルス!そしてミルキーピンク!

      **********************************************

ドクター「ここに、エンジェルスと、我らに反逆するヒロインどもの処刑を執行する。人質を連れてこい!」

戦闘員「キキイー!」

 他の人質とは別に監禁されていた紫央と仁美を連れに行く戦闘員。ドクターマンドラの背後に、二人のための十字架が立てれる。一方のクチ妖怪は捕まえていた麻美に目を戻す。

クチ「・・・お食事、再会♪」

 戦闘員に苦戦するエンジェルスを差し置いて、再び麻美に矛先を向けるクチ妖怪。髪の毛を手繰り寄せ、頭部の巨大な口へと運んでいく。

麻美「んん~~~!!んんんん~~~~!!!(くそう、このままでは引きずり込まれる・・・)」

 抵抗しようにも、既に四肢の自由は敵の触手によって完全に奪われている。バトル用のロングブーツを履いた細く美しい足が、拘束から逃れようと必死に抗う。触手はそれを見物するかのように、その脚だけジタバタする余裕を与えているのだ。

クチ「ジュルリジュルリ・・・もう我慢できない。いただきまぁす♥」

 巨大な口に飲み込まれそうになった、その時だった。

紫央「クロス・カッター!!」

 麻美を捕えていた髪の毛触手が切り裂かれた。ダークパープルのリボンとスカートのセーラー服に身を包み、ハイグローブに黒いローファーを履いたかわいらしい姿。漆黒の髪にダークパープルのゴーグルで顔を隠したヒロイン セイントパープル参上。空中で自由になった麻美を受け止めるセイントパープル。

麻美「紫央!無事だったのね」

紫央「紅林さんという人から助けてもらった。仁美も無事だ」

 お化け屋敷で聖奈子と美由紀、それに人質を助けた美紀子は、別行動をとっていたのだ。それは人質の中に、麻美の言っていた紫央と仁美の二人がいなかったからだ。まだ罠があるに違いない。そう考えた美紀子は隙を見計らっていたのだ。紫央はステッキを構えると、エンジェルスの3人の方へ必殺技を放った。

紫央「セイント・シャドー!!」

 戦闘員を強化していた妖気のオーラが消滅し、エンジェルスを苦しめていた妖怪ボールも光になって消えていった。エンジェルスへ駆け寄る麻美と紫央。

麻美「絵里香さん、大丈夫!?」

絵里香「ええ、なんとか。麻美さん、そっちの人は?」

麻美「私の友達、紫央・・・今はセイント・パープルよ。」

紫央「紅林さんから話は聞いている。私も一緒に戦う」

絵里香「ありがとう。よろしく、セイント・パープル」

 手を取り合う5人。ここに正義のヒロインが集結した。

絵里香「闇の世界より出でて世界を征服しようとする悪の手先!」

聖奈子「お前たちの野望は私達が絶対打ち砕く!」

美由紀「私達の手で引導を渡してやるから覚悟なさい!」

3人「私達は正義の戦士!美少女戦隊エンジェルス!!!」

麻美・紫央「「変態妖怪の力で世界征服を企む悪の組織はこのミルキーピンクとセイントパープルが許しません!覚悟なさい」」

ドクター「おのれ小癪な。クチ妖怪、奴らを皆殺しにしろ!」

クチ妖怪「ジュルジュルジュル・・・もう最高。かっこ可愛い♥いじめたいいじめたいいじめたい!!!!!」

 クチ妖怪の髪が広がり、あたり一面を真っ暗闇にした。その闇へ姿を消すクチ妖怪。警戒するヒロインたち。
麻美「どこへいったの!?」

 そこへ髪の毛触手が襲いかかる。殺気を感じ、かろうじて避ける麻美たち5人。しかし暗闇と同じ真っ黒い髪の攻撃は見えず、戦うに戦えない。

美由紀「これじゃあ避けきれないよ」

絵里香「美由紀、諦めちゃダメ。よく考えるのよ。麻美さん、この闇を少しの間だけ晴らすわ。その隙にクチ妖怪を倒せる?」

麻美「分かった、やってみる。」

聖奈子「絵里香、そんなことできるのか?」

絵里香「美由紀、あなたの必殺技をまた使ってもらうわよ。」

 絵里香から説明され、半信半疑必殺技を構える美由紀。

美由紀「いくよ、絵里香。ライトニングアローアタック!!」

 空に向けて光の矢を放つエンジェルイエロー。地上から一直線に闇が切り裂かれていく。

絵里香「今だ。ファイアートルネード!!」

 天高く上っていくライトニングアローをエンジェルレッドの紅蓮の炎が追いかけ上空で爆発させた。まばゆい光が当たりを照らし、暗黒をかき消す。

絵里香「麻美さん、お願い!!」

麻美「見つけたわ。必殺ミルキーシャワー!!」

 光の音符の洪水が、隠れていたクチ妖怪を飲み込む。妖怪の絶叫とともに、クチ妖怪によって立ち込めていた辺りの暗闇が晴れる。

麻美「やったね、絵里香さん!」

 しかし闘いはまだ終わっていなかった。

紫央「待て、奴はまだ死んでいない」

 土煙の中からむくりと立ち上がるクチ妖怪の影。執り付かれた少女の方は意識を失い、クチ妖怪本体の醜悪な鳴き声が響く。

クチ「ユルサナイ。殺シテヤル殺シテヤル!!!!!」

麻美「ウソ、なにあれ・・・さっきの変態妖怪の方がまだマシだったわ。」

 麻美の冗談っぽい言葉に失笑する絵里香。

絵里香「くすっ、麻美さん、全然怖がってないのね。」

麻美「そんなことないわよ。・・・でも、不思議ね。貴方達となら、何とかできる気がするの」

 一同を見回す麻美。みんなと目があう。正義のヒロインの目に絶望の二文字はまったく無かった。

絵里香「私もよ。みんなで力をあわせましょう!」

麻美「うん。いくよ!」

 必殺技を構える5人のヒロイン。クチ妖怪は髪の毛触手を伸ばしてヒロインたちを飲み込もうと迫る。

麻美「行くわよ、化け物!必殺ミルキーシャワー!!」

紫央「セイントシャドー!!」

絵里香「こっちもいくわよ、聖奈子、美由紀」

聖奈子「もちろん!」

美由紀「わかったわ!」

3人「「「トリプルエンジェルトルネードアタック!!」」」

 5つの光がクチ妖怪の髪の毛を溶かし、妖気の闇をかき消した。断末魔の叫びとともに、消滅した大妖怪クチ妖怪。正義のヒロインの勝利だ!!

      *********************************************


麻美「かなりマニアックな出会いだったけど・・・ありがとう、絵里香。おかげで紫央も仁美も助けられたわ。」

絵里香「こちらこそ。貴方達がいなければ、クチ妖怪は倒せなかったわ。」

 夕焼けに染まる遊園地内の小高い丘の上。手と手を握り合う正義のヒロインたち。進む道は違っても、戦う敵は違っても、目指すものはただ一つ。それは、世界の平和を守ること。

聖奈子「・・・ところで、麻美たちも高校生でしょ?明日平日だけど、帰りは大丈夫?」

麻美「え・・・あっ!!」

美由紀「電車、間に合うといいけど・・・」

紫央「遊園地においてきた仁美も探さなければ・・・まずいぞ、麻美」

 慌てて階段を下りていく麻美と紫央。それを可笑しそうに眺めるエンジェルスの3人。

麻美「また、いつか会いましょう!」

 手を振りながら駆けていく麻美に、手を振りかえす絵里香。
絵里香「ええ!また、いつの日か!!」

 ちなみにヒルデは「妖怪の巻物に関係しないならば、私には関係ない」と意識の所有権を仁美に返してしまい、仁美は遊園地の真ん中でぽつんと残されていた。その後、仁美を保護していた美紀子のはからいで、麻美たちは無事近くの駅まで車で送ってもらった。妖怪に取りつかれていた黒野末子は、気が付いたら自分の部屋にいてゲームをしており、これまでのことは夢だったのかと残念そうにエロゲを続けている。ドクターマンドラは作戦の失敗を闇に付すため、作戦資料を全て抹消した。クイーンリリーからどんな罰がくだされたかはご想像のままに。

 またいつの日か。

 その言葉は絵里香たちの耳にも麻美たちの耳にもずっと残り続けた。そんなこんなで麻美たちは夕日とともに鷲尾平を後にしたのだった。

 Fine.





テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

特別編『ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設の恐怖(?)』

2018年 04月18日 12:07 (水)

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 まえがき 
 Pixivでも掲載しています。今回は『やる夫』をアレンジしたキャラクターを使って、ストーリーを作成しています。


この物語は、美少女戦隊エンジェルス本編の第6話と第7話の中間あたりにおける、絵理香、聖奈子、美由紀のエピソードである。季節は5月のゴールデンウイークが過ぎた頃。ネオ‐ブラックリリーはまだ大幹部の赴任前で、世界征服作戦も本格的に行われておらず、派遣された魔人が幹部を兼任して各部隊に指示を送り、魔人同士の共同戦線や、作戦の引継ぎなどが盛んに行われていたときである。美紀子は大学の研究室での研究と臨時講師をやっていて不在であり、実際に絵里香たちをサポートしていたのは、絵里香と聖奈子の担任で、バトン部顧問の藍原詩織であった(第2話~第6話参照)。そんな中での絵里香たちの活躍や如何に・・・・

    *      * *      *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、次の作戦が練られていて、司令室では大首領の声が流れていた。

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「間もなく諸君の元に大幹部が派遣される。これまでの人間狩り作戦はまずまずの成功を収め、改造用・奴隷用は勿論、科学者たちの誘拐も順調である。いよいよ我がネオ‐ブラックリリーの本格的な世界征服作戦が始まるのだ」
 そこで言葉が終わり、居合わせた戦闘員たちが一斉にスピーカーに向かって敬礼した。


 ネオ‐ブラックリリーの作戦行動の経緯は現在次の通りであった。蜘蛛魔人(本編第1話)からハス魔人(第4話)に至るまでの人間誘拐作戦は、エンジェルスによって魔人が倒されたものの、作戦自体は一応の成功を収めており、改造用の人材や、奴隷用の人間たちが次々とネオ‐ブラックリリーのそれぞれの基地に送られていた。また、作戦に必要な資金の調達も進んでいて、科学者や研究員の誘拐も成功していた。
 また、赴任予定の大幹部に関しては、ナマズ魔人(第6話)のダム破壊作戦の時に、大幹部ドクターマンドラが一度出てきて指揮を執ったものの、別任務で再び前線から引いてしまっていた。ネオ‐ブラックリリーは秘密結社とはいえ、まだ足場が完全に固まっておらず、様々な作戦計画が試行錯誤されながら練られていたのである。そんな中で、秘密結社としては信じられないような、突飛な作戦がこれから実行されようとしていた。

    * * * *

「やめろ! 何するんだ放せ! 警察かと思ったら・・・ お前たち一体何者なんだ」
 アジトに一人の男が連行されてきた。男の名は『丸尾 卓(まるおすぐる)』といい、現在二浪中の予備校生である。身長は175cmとまずまずだが、体重が100kgと太り気味。趣味は隠しカメラ等を駆使して若い女の子のパンチラや、スカートの中を逆さ撮りするという、いわば盗撮魔で、名前から付けられたあだ名が『〇ヲタク』。そして撮った写真をネットの通販で売りさばいたり、ばら撒くといった、悪趣味極まりないやつだった。が、その写真をネタに相手に金品を要求するといった、いわゆる脅迫や恐喝のような事はしなかったので、現行犯にでもならない限り、捕まるリスクが低かった。そして今日も駅の構内で靴とバッグに隠したカメラを使い、性懲りも無く女性のスカートの中を盗撮していて、警戒中の駅の公安に怪しまれて捕まりかけたところを、私服警官に化けた戦闘員によって拉致され、アジトに連れてこられたのである。悪態をついている卓に、戦闘員が言った。
「我々はお前を助けたのだ。少しは感謝でもしてもらいたいものだな。あのままだったらお前は駅の公安に捕まっていたんだぞ」
「助けた・・ 感謝・・・ って、お前らそんな変な恰好して、一体何なんだよ。いきなり俺をこんな所に連れてきやがって」
 そこで大首領の声が流れてきた。
「丸尾卓! お前こそ今度の作戦にふさわしい男だ」
「作戦? 何だそりゃ?」
「邪険にしなくてもいいだろう。そこにいる戦闘員たちが言うように、我々がお前をここに連れてこなかったら、お前は警戒中の公安に捕まっていたのだぞ。我がネオ‐ブラックリリーに協力するならば、お前の身の安全を保障し、それなりの報酬も与えようではないか」
「ネオ‐ブラック・・・ 協力って・・・ 金くれるんなら、やばいことじゃなけりゃ何でもするぜ。一体何すればいいんだよ」
「お前を今度新設した、ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設の責任者に任命し、今度の作戦を任せる。お前の趣味である盗撮を、好き放題にやらせてやろう。ただし、その盗撮の目標についてはこちらから指示する。我がネオ‐ブラックリリーの配下にて実行するならば、お前が国家権力に捕まるリスクは殆ど無いだろう」
「盗撮? 面白そうじゃないか。いいぜ。協力しよう。で、俺はどうすればいいんだ?」
 卓の後ろにいた戦闘員が両脇に並び、さらにもう一人の戦闘員が卓に来るよう促した。
「丸尾卓。その者たちと一緒に行け」
 卓は自分の周りに立っている戦闘員を見た。
「その男を案内してやれ」
「イーッ!」
 戦闘員たちは敬礼すると卓を促し、卓を連れて司令室を出た。

    * * * *

 それから三日後・・・・
「はい! ワンツーワンツー。はいそこでターン! 次は右足でハイキック」
 明峰学園の校舎の屋上では、バトン部が練習していた。もうすぐ鷲尾平市主催の若葉祭が始まり、バトン部は街頭パレードに参加するため、練習に余念が無かった。体育館を使えるのが週三日なので、体育館を使えない時は屋上を使っていたのだ。バトン部の部員である絵理香、聖奈子、美由紀は、3人ともユニホーム姿でみんなと練習していた。その様子を近くのビルの屋上から密かに見られている事には、まだ誰も気付いていなかった。

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 ビルの屋上には数人のネオ‐ブラックリリー戦闘員がたむろしていて、その中にひときわ大柄で太った戦闘員がいた。その戦闘員こそ、卓が改造された姿だった。
 卓はビルの屋上から見える、バトン部の練習風景を見て、逸る気持ちを抑えていた。そこへ戦闘員の一人がやってきて、絵里香たち3人の写真を卓に見せた。
「お前の盗撮目標はこの3人だ」
「この3人?」
「そうだ。この3人だけを集中的に盗撮するのだ」
「ふーん・・・ 何だか訳が分かんねえけど、いったいこいつらはお前たちの何なんだ?」
「今に分かる」
「まあ・・ 3人ともスタイルはまずまずだし、獲物としては悪くねえな・・・ 」
 卓は呟きながら、用意したカメラと望遠レンズを絵里香たちに向け、盗撮を開始した。絵里香たちがターンしたり、ハイキックするところだけを狙い撮りしていたのだ。スコートが捲れて、アンダースコートとはいえ、パンチラやパンモロのシーンが確実に撮れるからだ。

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「ウッヒッヒッヒ・・ すげえ・・ なかなか良いパンチラだ。おっ! こっちは素晴らしいハイキック。スコートが捲れてアンスコの股間の部分がよく見えるぜ。よ-し。究極のパンモロをゲットォ。ヘッヘッヘッヘ・・・ 」
 のめり込みながら写真を撮っていた卓は、薄笑いを浮かべながら興奮のあまり涎をたらし始め、傍で見ていた戦闘員たちが半分呆れたような仕草を見せた。

    * * * *

「はい今日はこれまで。後片付けをして」
 暫くして片づけを終えた部員達が全員集合した。
「若葉祭までもう少しだから、みんなしっかりね。それじゃ今日は終わり」
「ありがとうございました」
 練習が終わって、部員たちが挨拶とともに解散し、絵里香たち三人は屋上の一角にいた。
「絵里香、聖奈子。もうすぐ若葉祭の街頭パレードだね」
「うん。今年も頑張るぞ」

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 美由紀は絵里香の様子が少し違うのに気付いた。
「絵里香。どうかしたの?」
 美由紀に言われて聖奈子も気付いた。
「そういえば・・・ 絵里香いつもと何となく違うような・・・ 」
 絵里香は自分が思っていた事を二人に話した。
「練習中に誰かにずっと覗かれているような気がしたのよ」
「えーっ? まさかぁ」
「ここ屋上だよ。何処から見られるっていうのよ」
 絵里香は200メートルほど離れた場所にあるビルを指差した。ビルの高さは学校の屋上より少し高い程度だ。
「あそこからここを覗くって? 望遠鏡でもなければ覗くなんて無理無理」
 美由紀が望遠鏡と言ったので、聖奈子も気になってビルの方を見据えた。
「望遠鏡・・・ か。でも一体何のために・・・・ 」
「絵里香も聖奈子も考え過ぎだってば。大体何のために望遠鏡でこんな所を覗くのよ・・ って・・ もしかして?」
 暢気な性格の美由紀も、ハッとした。ネオ‐ブラックリリーの事が一瞬頭を過ぎったのだ。が、そんな事は無いと、自分の思いを払拭した。その時屋上の入り口で芳江が絵里香たちを呼んだ。
「ちょっと君たち。引き揚げないと鍵閉められないんだけど」
「あ・・ キャプテン。ごめんなさい」
 絵里香たちはあたふたと駆け出すと、出入り口まで来た。芳江は鍵を閉めて美由紀に渡すと階段を降りていった。
「とにかく着替えて帰ろうよ」
「それじゃ私は職員室へ鍵返しに行くから」
 美由紀は小走りに階段を降りていき、絵理香と聖奈子も教室へ向かった。
「美由紀の着替えは長いからな・・ 少し待たされそうだね」

 それから約30分が経過した・・・  学校から帰宅途中の絵里香たちは、コンビニから出てきたところだった。
「絵里香。取り越し苦労なんじゃないの?」
「うん・・ でも、何だか引っかかるんだよね」
「絵里香まだ言ってる」
「でも絵理香の感は鋭いからね。もしかしてネオ‐ブラックリリーが何か企んでるとか、そんな事でも考えてたんじゃないの?」
「聖奈子。やつらだったら、覗くよりも先に私たちに襲いかかってくるよ。おおかたその辺の覗きマニアじゃないの?」
 そうこうしているうちに、絵里香たちは美紀子の事務所の前まで来ていた。が、事務所は閉まっていた。
「美紀子さん留守みたいね」
「今、大学で研究と臨時講師やってるって言ってたわ」
 絵里香たちはお互いの顔を見合った。
「それじゃあたしは・・・ 」
 聖奈子が言いかけた所で、絵里香たちの後ろから誰かが話しかけてきた。
「みんなここにいたの?」
 絵里香たちが振り向くと、そこには絵理香と聖奈子の担任で、バトン部の顧問の詩織と、養護教諭の園子が立っていた。

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「藍原先生と柏木先生・・・ 」
「美紀子は今、大学で臨時講師やってるのよ。だからここには来ないわ」
「藍原先生。私はこれで。それじゃみんな、また明日ね」
 園子は詩織と絵里香たちに挨拶すると、駅のほうへ向かって歩いていった。詩織はそれを見届けると、絵里香たちの方を向いた。詩織は絵里香たちが何かを気にしているのを察知した。
「みんな。あたしと一緒に来て」

 絵里香たちは詩織と一緒に、駅前にあるハンバーガーショップの中にいた。
「なるほど・・・ 君たち・・ いや、バトン部の練習が覗かれていたかもしれないって事ね」
「絵里香がすごく気にしてるのよ。別にたいした事じゃないって、あたし達が言ってるのに」
「絵里香は神経質すぎるのよ。エンジェルスになってネオ‐ブラックリリーの動きが気になる気持ちは分かるんだけどさ、ネオ‐ブラックリリーなら覗きなんてせこい事はしないわよ」
「確かにそうね・・ 覗いている暇があったら、襲ってくるだろうし・・・ 」
「おおかたそのへんのマニアが覗いていたんじゃないの? もし写真やビデオを撮っていたんなら、ネットの動画サイトか、画像サイトあたりに投稿でもするんじゃないの?」
 聖奈子がそんな事を言ったので、美由紀が素っ頓狂な声を出した。
「えーっ ?!!! そ、そんなのヤダ! ヤダヤダヤダ。お嫁に行けなくなるぅ」
「城野さん。大きな声出さないで」
「美由紀落ち着いて。落ち着けったら」
「そうよ。取り乱さないで」
「美由紀。変な事言ってゴメン。ごめんね」
 絵理香と聖奈子の2人がかりで美由紀を宥めた。

      * * * *

 こちらはネオ‐ブラックリリーのアジト。その中の一角に『ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設』というプレートが付けられた部屋があった。これはネオ‐ブラックリリーが新たな設備を整える目的で作った施設である。その責任者に任命されたのが卓なのだ。そしてその部屋の中では・・・ 
 卓が部屋の中でパソコンと向かい合い、目をおおきく見開いて涎をたらしながらさっき撮ってきた写真のデータに見入っていた。

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「お・・ これはいい。ハイキックした瞬間にしっかりとアンスコの股間の部分が映し出されている。それと、こっちの際どい見え方も捨て難いぜ・・ それからこれは、ターンした時にスコートが舞い上がって、おお・・ これは素晴らしいパンモロだ。ヒッヒッヒッヒ・・ 」
 卓は薄気味悪い笑い声を出しながら、データの加工を始めた。ネオ‐ブラックリリー大首領の指令で、絵里香たちの写真のデータを、本人たちの顔入りで加工するよう命令されていたからだ。
「ウッヒッヒッヒ。我ながら上々の出来だ。この写真のデータを使って、ツイッターや画像チャンネルを通じてばら撒けという指令だが、こんな素晴らしい出来の写真を、そう簡単に他人の目に触れさせるのは惜しいぜ・・ こっちのやつは俺様がコレクションとして頂いておこう。それでこっちの方の顔がしっかり写っているやつと、このパンチラとパンモロ写真を指令通りに・・ 」
 卓はパソコンを操作して、ツイッターと画像チャンネルを開き、加工したデータを次々と流し始めた。そして残ったデータはCDの中に収めて、傍らに置いてある自分のバッグの中に入れた。
「ウッシッシッシ・・  これでよし。しかし、大首領とかいうやつは、一体何の目的で俺にこんな事させるんだ。スピーカーから声を出しているだけのくせに。全く失礼なやつだぜ。まあ・・ それなりの金を貰ってるから、文句を言う筋合いは無いが・・・ 」

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「あの例の〇ヲタク野郎はどうしているんだ」
「部屋の中で黙々と作業をしている。絶対に他の者を部屋に入れるなと言っていた。俺たちも一応は大首領様の指令で福利厚生班に入れられたんだが・・・」
「ありゃ完全にココにきてやがるぜ」
「ああ・・ 触らぬ神に祟り無しってやつだな」
 戦闘員同士で会話をしていたところへ、別の戦闘員がやってきた。
「ここにいたのか。科学班が魔人改造用の人間を運び込んだ。早速改造手術をするそうだ」
「するといよいよ次の作戦の開始か」
「どうやらそうらしい」
「お前たちも手伝え。手が足りないのだ」
「イーッ」
 戦闘員たちが慌しく動き始めた。

 翌日・・・ 学校にて・・・
 バトン部は近づく若葉祭に備えて、部員たちが朝早く登校し、既に数人が集まって体育館で朝練の準備をしていた。そこへ一年の香苗が息を切らしながら飛び込んできて、みんなの所に駆けて来た。
「大変! 大変よ」
「どうしたの柿崎」

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「これ・・・ これを見て」
 香苗は持ってきた紙切れを見せた。それはバトン部員たちの練習風景が写し出された画像をプリントアウトしたものだった。それもハイキックやターンの部分が殆どで、いわゆるマニアックなものだった。
「わ・・ やだぁ・・ これ私たちのじゃないの」
「一体何処のどいつよ。こんなもの撮ったのは」
「でも殆どが赤城先輩たちの写真だわ」
「これも・・ 」
「これもだわ」
そこへキャプテンの芳江と副キャプテンの雅子がやってきた。
「一体何の騒ぎなの?」
「あ。キャプテン。これです」
 香苗が差し出すと、芳江は数枚を香苗から引っ手繰るように取って眺めた。
「柿崎さん。どうしたのこれは」
「昨日パソコンでネットを見たとき、偶然入った画像のページで見つけてびっくりしたんです。それでプリントアウトして持ってきたです」
 画像の9割くらいは絵里香・聖奈子・美由紀を写したものだった。
「確かに私たちバトン部の練習風景ね。でも、殆どが赤城さんと清水さん。それに城野さんを写したものだわ」
 雅子も傍によってきた。
「一体何処から撮ったんだろう・・ それにしても結構鮮明に写っているね」
「あ・・ 赤城先輩たちが来たわ」
 絵理香と聖奈子、美由紀が体育館に入ってきた。
「みんなもう来てるよ」
「早く行こう」
 そのとき絵里香は部員たちの異様な雰囲気をすぐに察した。
「何だか様子が変だわ。何かあったのかな?」
「絵里香。とにかくみんなの所へ行ってみようよ」
 絵里香たちはみんなが集まっている所へ駆けていった。
「キャプテン。何かあったんですか?」
「原因はこれよ」
 そう言いながら芳江は持っていた画像のプリントを絵里香たちに見せた。
「何これ・・・・ 」
 絵里香たちは自分たちが映されている画像を見て固まった。美由紀が大声を出した。
「ヤダ!! こんな写真が出回ったらお嫁に行けなくなる」
 美由紀の声で、体育館で朝錬をやっていた他の部の部員たちがバトン部の方を見た。
「美由紀静かに。落ち着いて」
 そこへ顧問の詩織もやってきた。部員たちが朝錬をやるということで、自分自身も早く学校へ来たのだ。
「みんなおはよう・・・ って・・ あれ? 朝錬やるって言ってたのに、一箇所に集まっててどうしたのよ。時間無くなっちゃうわよ」
「先生・・ 実はこんなものが」
 詩織は芳江から渡された画像を見た。
「ふーん・・・ 」
 詩織は一つため息をついてから、絵里香たち3人を自分の元へ呼び寄せた。
「あなたたち三人は直ぐに着替えて職員室に来て。それから、その画像のプリントは没収よ。全部あたしに頂戴」
 詩織は部員たちが持っていた画像を全て回収した。
「他のみんなは練習して。せっかく体育館を借りられたのに、時間がもったいないわよ」
 詩織に言われて、芳江は部員達を促し、詩織は絵里香たち3人を連れて体育館を出た。

     * * * *

 詩織は職員室に入ると、ノートパソコンを出してスイッチを入れ、ネットを開いた。そこへ制服に着替えた絵里香たちがやってきた。
「来たわね君たち。これを見て」
 詩織はパソコンの画面を絵里香たちの方へ向けた。そこには先ほどプリントアウトされた画像と同じものが出ていた。詩織は絵里香たちが何かを言おうとしたのを遮るように話した。
「この画像が投稿されたのは昨日の夜。実はあたしも昨日見ているのよ。それでID番号を調べてみたんだけど、出所が不明なのよ。まあ・・ 目の部分は隠してあるけど、わざわざあなたたちだけを顔写真入りにしているあたり、何か匂うわね」
「何かって? つまり私たちが狙われてるって事? まさかネオ‐ブラックリリーが?」
「考えすぎだよ絵里香。ネオ‐ブラックリリーのはずがないじゃん」
「美由紀。有り得るわ」
「どういう事よ聖奈子」
「つまりあたしたちの写真をばらまいて、心理的な効果を狙ってるって事よ。こんな写真が出回ったら、あたしたちが動揺して戦意を喪失するかもしれない・・・ もしネオ‐ブラックリリーの仕業だとしたら、そこが狙いなんじゃないかな? 」
「聖奈子の言い分は鋭いところを突いているわ。でも、もう少し踏み込んで考える必要があるわね。たとえばネオ‐ブラックリリーが何かの作戦を実行してくる。そこへあなたたちがエンジェルスになって阻止行動に出る。そこを狙って、写真をネタにあなたたちを脅迫し、戦意を喪失させる・・・ そうなると、あなたたちがエンジェルスになったときも、同じように被写体にされる可能性が大だわ」
「言われてみればそうかもね。確かに昨日といい、さっきといい、美由紀の取り乱しようはすごかったし、心理的効果を狙っているというのは納得がいくわ」
 そのとき周りがざわつき始めた。他の教師達が出勤してきて、職員室に入ってきたのだ。
「みんな。話の続きは後にしよう。ホームルームが始まるから、教室へ行って」
「はい。それじゃ失礼します」
 絵里香たちは詩織に促され、職員室を出てそれぞれの教室へ向かった。

      * * * *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトの手術室では、拉致してきた人間を使って、怪人への改造手術が行われていた。ベッドは二つあり、両方のベッドに拉致した人間が寝かされていて、科学班の戦闘員が白衣姿で改造手術に携わっていた。
「一通り完了です」
「よし! 最後の仕上げだ。電流を流せ」
 スイッチが入れられ、高圧電流が放電されて、ベッドに寝ている人間の身体を電流が貫く。数分後には醜怪な魔人の姿になり、改造手術が終わって魔人が起き上がった。出来上がった改造魔人は、一度エンジェルスに倒された蜘蛛魔人とバンブー魔人だった。

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 数分後、アジトの司令室では蜘蛛魔人とバンブー魔人が戦闘員を伴い、大首領の指令を待っていた。暫くして大首領の声が流れてきた。
「蜘蛛魔人、バンブー魔人。お前たち2人は我がネオ‐ブラックリリーの優秀なる科学陣によって、再生を施されたのだ。エンジェルスの小娘どもは、未だその実力が充分ではない。ネオ‐ブラックリリーの邪魔になる小娘どもを今のうちに消すのだ」
「ゲシシーッ。かしこまりました」
「ケタケタケタ-ッ。お任せください」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人は戦闘員を伴って司令室から出て行った。大首領は再び声を出した。
「福利厚生施設の責任者になった、例の〇ヲタクを此処へ呼べ」
「イーッ」
 暫くして卓が戦闘員に連れられて司令室に入ってきた。
「俺を呼んだのはスピーカー野郎か。一体何の用なんだ」
「丸尾卓。お前を呼んだのは他でもない。お前が盗撮した小娘どもが、間もなく我がネオ‐ブラックリリーの邪魔をしに現れる。そこを狙って小娘どもの動きを、それも出来るだけ派手な動きを狙ってデータを編集するのだ。写真及びビデオの撮影は戦闘員が行う。お前はこのアジトで送られてくるデータを編集すればそれで良い」
「なんだよ一体・・  スピーカーから声出してるだけのくせに。随分えらそうな事ばっかり言ってるじゃねえか。金貰ってるからこれ以上の贅沢や文句は言わねえけどよ。声だけじゃなくて、姿を見せたらどうなんだよ」
「おい! 大首領様に向かってその言い方は何だ!!」
 傍にいた戦闘員が卓に食って掛かったが、大首領は平然と話を続けた。
「まあいいではないか。丸尾卓。お前が作戦を成功させたら、姿を見せると約束しよう。それならばいいだろう」
「ああ・・  いいぜ」

       * * * *

 放課後になって学校を出た絵里香たちは、学校から一番近い聖奈子の家に集まっていた。本来ならば部活なのだが、今朝の事でとても練習にならないだろうと、詩織の計らいで今日の放課後のバトンの練習は休みにしてもらい、キャプテンの芳江もそれを承諾した。

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「ねえ絵里香。ネオ‐ブラックリリーの仕業だとしたら、写真を使った心理作戦だけじゃ終わらないと思うよ。絶対に何か企んでると思うわ」
「私いやだよ。こんな写真が出回ったら、もうお嫁に行けないよ」
 美由紀は涙声だった。
「美由紀大丈夫だってば。藍原先生が今、美紀子さんと連絡を取っていて、画像を削除するための作戦を考えているから」
「とにかくやつらのアジトを捜し出して、元になっているメインコンピューターをぶっ壊すしかないわ」
 絵理香の携帯が鳴り、絵里香は携帯を取り出した。
「先生からだ・・・ はい赤城です」
「・・・ ・・・ 」
「ええっ!? ネオ‐ブラックリリーの化け物が、学校の屋上で練習していたバトン部の部員たちを襲って、部員たちをさらった? それで・・・ はい・・ はい・・ 」
 聖奈子と美由紀は同時に絵里香を見た。
「分かりました。すぐ向かいます」
 絵里香は携帯をポケットに入れると立ち上がり、聖奈子と美由紀も立った。
「やっぱり狙われていたんだわ。これで今までの事が奴等の仕業だってはっきりしたわ」
「私たちだけでなく、何の関係も無いバトン部の部員たちまで・・・ 絶対許せない!」
 絵里香たちは聖奈子の家から飛び出すと、学校へ向かった。

      * * * *

 絵里香たちは学校の前まで駆け足でやってきた。校門の傍では詩織が車を停めて待っていた。
「みんな早く車に乗って」
 詩織は踵を返して車に乗り込み、絵里香たちも詩織の車に乗り込んだ。
「先生。部員たちは?」
「みんな大丈夫なんですか!?」
「まずこれを見て」
 詩織は助手席にいた絵里香に紙切れを渡した。聖奈子と美由紀も絵理香の傍に寄ってきた。
『親愛なるエンジェルスの諸君へ。お前たちの仲間を預かった。返してほしければ緑ヶ丘公園の河川広場まで来い』
「なにこれ・・・ 」
「奴等の化け物が現れたかと思ったら、あっという間に部員が2人捕まってさらわれたのよ。前に見かけた蜘蛛の化け物だったわ。残りの部員たちは、あたしが誘導して校舎内に避難させたから無事よ。とにかく捕まった子たちを助ける事が先決よ」
「はい」
 詩織は車を発進させた。

      * * * *

「嫌あーっ!! 誰かぁ・・ 誰か助けてぇーッ!」
「お願いはなしてぇーッ。おろしてよーっ。やだあーっ」
「やだあーっ! やめて! 写真なんか撮らないで! 恥ずかしいよぉ。やめてぇーっ!」

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 緑ヶ丘公園の広場では、捕まった香苗と元子が、蜘蛛魔人の糸で体を縛られて晒されていた。それもただ縛られているだけではない。香苗は片足をいっぱいに上げた状態、いわゆるハイキックのポーズで縛られ、元子は四肢を引き伸ばされて開脚させられ、狸吊りのような状態で縛られていた。恥ずかしい恰好で縛られている香苗と元子は、逃れようとして必死にもがいたが、蜘蛛糸の拘束は頑丈で身体を揺するのがやっとだった。その様子を付近にいた戦闘員がローアングルからビデオカメラやデジカメで撮影し、アジトにあるメインコンピューターを通して、福利厚生施設にいる卓の所に次々とデーターがリンクされていた。パソコンの画面に見入っていた卓は、いつものように薄笑いを浮かべながら涎をたらし、画面に映る映像を眺めていた。
「おお・・ このポーズはそそられるぜ・・ こっちの方も股間の部分がバッチリ見えていて捨てがたい。おっと・・ こっちの動画も最高だ。羞恥に悶え苦しんでいる仕草に興奮するぜ。ヘッヘッヘ・・・ 早くお目当ての三人が現れないかなぁ・・・ イッヒッヒッヒ」
 しかし・・・  膨大な容量のデータが送信されているため、詩織が美紀子から借りていた逆探知システムにより、アジトの場所が探られている事には、さすがの卓も気付いていなかった。車を運転していた詩織は、助手席にいる絵里香にそのシステムの端末を見させていた。
「先生。段々感度が強くなっています」
「そうか・・ するとアジトの場所も目的地の近くね」
 詩織の車は緑ヶ丘公園の駐車場に入り、車が止まると同時に絵里香たちは車から降りた。
「アジトの場所はあたしが探るから、あなたたちは捕まっている子たちを助けるのよ」
「分かりました」
 絵里香たちはポーズをとって変身すると、河川広場へと駆けていった。

 広場では蜘蛛魔人とバンブー魔人が、絵里香たちの来るのを今か今かと待っていた。蜘蛛魔人は縛られている香苗と元子の前まで来て、二人の様子を舐るようにジロジロと見据えた。
「嫌あーっ! 見ないで。見ちゃ嫌だぁ。恥ずかしいよぉ」
「お願い助けて。はなしてよぉ」
「嫌あーっ!」
「ふん! うるさいガキどもだ。暫く眠っていろ!」
 2人があまりに騒ぐので、蜘蛛魔人は口から麻酔針を発射し、それが2人に突き刺さって、2人とも気絶した。そこへ公園内を見張っていた戦闘員が駆け寄ってきた。
「イーッ。小娘どもを発見しました。公園内にいます」
「ゲシシーッ。やっと来おったか。者ども持ち場につけ」
「ケタケターッ。待ちかねたぞ」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人は戦闘員たちを煽り立てると、近くの繁みに隠れた。しかし絵里香たちも馬鹿ではなかったので、真正面から突入する事は考えていなかった。
「奴等の事だ。罠が仕掛けてあるかもしれないわ」
「そうだね。広場だからまともに行けば私たちの姿が丸見えよ」
 絵里香たちは河川広場の手前の林にある散策コースの前まで来て、そこで止まって話し合っていた。3人の目の前には散策コースの地図が描いてある看板があった。
「ここが現在地。そしてここが河川広場・・・ 」
「こっちから回り込んでいけば、奴等の目をくらます事が可能かも・・ 」
「よし。私が正面から突入して、囮になって奴等を引き付けるから、聖奈子と美由紀とで2人を助けて」
「うん。分かった。絵里香気をつけてね」
 聖奈子と美由紀は迂回するので、先に散策路に入った。
「さてと・・ 私も行くか・・ 」
 絵里香は河川広場へ行く最短のルートに入った。

      * * * *

 聖奈子と美由紀がとったコースは、林の中を大きく迂回するルートだったため、ネオ‐ブラックリリーとしては全く無警戒だったので、誰からも気付かれずに河川広場の末端部にある出口にたどり着いていた。

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「助かった。誰もいない。全く無警戒のようだわ」
「聖奈子、何か見える?」
「見えるけどちょっと遠いわ」
 聖奈子の目には、広場の中にある木に括り付けられるように縛られている、香苗と元子の姿が見えた。その周囲には見張りらしい戦闘員の姿も見えた。美由紀も聖奈子に促されて、広場の様子を眺めた。
「ひどい・・  あんな恰好にして縛るなんて」
「美由紀行くよ。ここから先は何があるか分からないから、ゆっくり近づくよ」
「うん・・ 」
 聖奈子と美由紀は広場と林の境目に沿って、ゆっくりと歩を進めていった。その時急に広場の様子が慌しくなって、聖奈子と美由紀もそれに気付いた。
「美由紀、奴等が急に動き出したわ」
「見つかったのかな・・ ?」
「違うみたいよ。あたし達じゃなくて、絵里香だと思う」

      * * * *

 聖奈子の思っていた通り、自分たちが見つかったのではなく、正面からやってきた絵里香を見た戦闘員たちが、一斉に絵里香に向かっていったのであった。
 絵里香はたちどころに戦闘員に周りを囲まれ、戦闘員がジリジリと絵里香に迫ってきた。一部の戦闘員はカメラやビデオカメラを構えて、レンズを絵里香に向けている。絵理香の動きを撮影しようとしているのだ。蜘蛛魔人とバンブー魔人も姿を現して、絵里香を威嚇してきた。
「お前一人か! ほかの二人はどうした」
「さあね・・・ 」
 絵里香はそう答えながら、冷静に周囲の様子を窺った。
「(広場に出たら、私一人では不利だし、人質を巻き添えにしてしまうかもしれない。奴等を引き付けるなら、林の中で戦った方がいいかも・・・ )」
 絵里香は今来た林の方へ踵を返すと、ジャンプして戦闘員の囲みの外へ着地し、林の中に駆け込んだ。
「逃がすな!」
 2人の魔人が戦闘員たちを煽り立て、戦闘員は絵里香を追って林の中へ入った。林の中で追いつかれた絵里香は、再び周りを囲まれた。しかし、周囲は木があるため、襲ってくる戦闘員の数が限られる。絵里香は周りの木々を利用し、向かってくる戦闘員と格闘して、一人ずつ倒していった。蜘蛛魔人は木に登ると、絵理香の真上から大量の蜘蛛糸を吐き出した。気付いた絵里香は自分に組み付いてきた戦闘員を突き飛ばし、糸はその戦闘員に降りかかって、戦闘員はグルグル巻きにされて窒息死した。続いてバンブー魔人の手裏剣が飛んできたが、絵理香を外れてそばにあった木に突き刺さった。

      * * * *

 一方、聖奈子と美由紀は、がら空きになった広場の中央にたどり着き、気絶していた香苗と元子を拘束していた蜘蛛糸を切って、二人を助け出すと、草むらの中に横たえて隠した。
「こうしておけば大丈夫だわ」
 林の中から戦闘員や魔人の奇声が聞こえてきた。
「絵里香は林の中よ」
「早く助けに行こう」
 聖奈子と美由紀は林の中へ飛び込んでいった。暫く走ると戦闘員相手に戦っている絵里香の姿が見えた。
「あそこよ!」
「美由紀。あれを見て!」
 聖奈子の目には、戦闘員のうちの何人かがカメラやビデオカメラを持ち、絵理香の動きを撮影している姿が見えた。
「絵里香が戦っている姿を映している」
 実は、絵里香たちを撮影していたのは、単なるマニアックな目的で行われていた事ではなかった。表向きでは、ハイキックした時や派手な動きによるパンチラを撮っているように見えるものの、絵里香たちの弱点を探る事が本当の目的だった。そのために通信が卓のパソコンに直通ではなく、ネオ‐ブラックリリーのメインコンピューター経由で送られていたのだ。

「美由紀、絵里香を助けに行くよ」
「待って聖奈子」
 美由紀はある1点を指差した。そこには絵里香の背後から手裏剣を投げようとしているバンブー魔人の姿があった。聖奈子は絵里香に向かって叫んだ。
「絵里香! 危ない。後ろ!」
 同時にバンブー魔人が手裏剣を3本一度に投げつけ、聖奈子の声で絵里香は身をかわした。一撃目は絵里香を外れ、残りの二本の手裏剣はブレードで弾き返した。

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「聖奈子ありがとう」
「絵里香。人質は助け出したわ。まだ気絶したままだけど、安全な場所に移したわよ」
 聖奈子と美由紀は絵理香の元に駆け寄り、絵里香たちは三人固まって身構えた。
「来い! ネオ‐ブラックリリー。お前たちの勝手にはさせないわ!」
「何を小癪な! 者どもかかれ。3人とも片付けろ!」
 戦闘員が奇声とともに向かってきて、絵里香たちは広場の方へと走り、林の中から広場へ出た。そこには詩織が立っていて、詩織は林から出てきた絵里香たちに向かって叫んだ。
「みんな。2人は目を覚ましたから、もう大丈夫よ。あたしが学校へ逃げるように言ったから。それからアジトの場所も探り当てたわ」
 話が聞こえた絵里香は、詩織に向かってサムズアップして応えた。

      * * * *

 その頃、アジトの一室の福利厚生施設では、卓がパソコンの画面を眺めていた。そこには戦闘員の撮影した絵里香たちの動画が映っていたのだが、突然動画が乱れて完全に消え、従来の画面になってしまった。詩織がアジトの場所と電波の波長を探り当て、送信データの通信電波と同波長の妨害電波を流したからだ。
「ど、どうしたのだ。画面が・・  画面が消えた。これではデータが受信出来ない」
 卓はパニック状態になったが、どうする事も出来なかった。


 広場に出てきた絵里香たちに、戦闘員が襲いかかった。絵里香たちの声と、戦闘員の奇声が広場に響き渡る。戦闘員は詩織にも襲いかかってきたが、仮にも詩織はかつて美紀子と一緒に戦った盟友である。戦闘員の攻撃を軽くかわし、次々と倒していった。
「みんな! 雑魚はあたしが引き受けるから、化け物を倒すのよ」
「おのれ小娘ども。ゲシシーッ」
「ケタケタケターッ」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人が絵里香たちに襲いかかってきた。
「絵里香。化け物が来る」
「奴等、一度やられたやつを再生したのね」
 蜘蛛魔人が糸を吐き、絵里香たちに向かって飛んできた。
「ファイヤースマッシュ!」
 絵理香のエネルギー波がボール状になって飛んでいき、蜘蛛魔人を糸を焼き払った。
「今度こそ成仏させてやる。覚悟しろ!」
 聖奈子がソードとシールドを出して、攻撃態勢をとった。
「アクアトルネード!」
 エネルギー波が渦を巻いて蜘蛛魔人に吸い込まれ、蜘蛛魔人を包み込んだ。
「グギャアーッ!! ゲシシシシーッ!」
 蜘蛛魔人は氷漬けになって、そのまま氷が砕けるとともに爆発して吹っ飛んだ。続いてバンブー魔人も・・・
「ライトニングトルネード!」
 光の渦がバンブー魔人に命中し、バンブー魔人は光の中でのた打ち回りながら消滅した。戦闘員も全て倒され、周囲は静寂が戻って、絵里香たちは一箇所に集まり、そこへ詩織も駆け寄ってきた。
「先生。アジトの場所が分かったんですか?」
「ええ。しっかりとね。それからデータの通信が送れないように、妨害電波を出してやったわ。ついでに強力なウイルスも送り込んでやった」

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 それから約30分が経過し、絵里香たちは緑ヶ丘公園の近くにある、一軒の建物の近くに立っていた。詩織の持っている逆探知機の端末が、メーターが振り切れるくらい反応している。
「あの建物が奴等のアジト・・・ 」
「よし! 突入だ!」
 聖奈子が真っ先に駆け出した。絵里香たちの接近に気付いたのか、建物から戦闘員が出てきて襲いかかってきた。
「退け! この野郎。邪魔だ!!」
 聖奈子がいつもの男言葉で戦闘員に飛びつき、あっという間に二人倒して、そのまま建物の中に飛び込んだ。絵理香と美由紀は唖然とした顔をしながら、聖奈子を追って建物に入った。すると地下へ続いている階段が見えた。
「あれが出入り口ね」
 絵里香たちは散発的に襲ってくる戦闘員を跳ね除けながら地下に降りると、回廊を駆けた。絵里香は詩織から受け取った端末をたよりに、電波の発信源を探り、ついに『福利厚生施設』のプレートがつけられた部屋の前にたどり着いた。
「ここが反応が一番強い」
「福利厚生施設・・・  なにこれ・・・ 」
 絵里香がドアのノブに手をかけた。が、鍵がかかっていて開けられない。
「開かない」
「絵里香どいて」
 絵里香が声のした方を向くと、美由紀が攻撃態勢のポーズをとっていて、絵里香はあわててドアの前からよけた。
「ライトニングスマッシュ!」
 一撃でドアが吹っ飛んだ。
「美由紀無茶しないでよ」
 そう言いながら絵里香たちは室内に飛び込んだ。そこには机の上のパソコンの前にいる卓の姿があり、卓は絵里香たちの方を向いた。
「な・・ 君たち失礼じゃないか。部屋に入る時はノックぐらいするもんだ」
「うるせえ! お前だな。あたしたちのエッチな写真を流したのは」
「お、俺はそんな事知らないよ。人違い。人違いだよ」
「とぼけないでよ。それじゃ画面に出ているそれは何!? そ・れ・は!!」
 美由紀がパソコンの画面を指差した。そこには絵里香たちがハイキックしている場面の写真が壁紙として映し出されていた。
「わ、分かった。もうとぼけないから・・・ ね・・ 冷静になろうよ。この通り、この画面は削除するからさ。ね」
 そう言って卓は画面を操作して壁紙を削除した。と同時に卓は持っていたコードレスマウスを絵里香たちに向けて投げつけた。絵里香たちがひるんだ一瞬の隙を突き、卓は机の横にあったバッグをつかむと、その場から駆け出して絵里香を突き飛ばし、部屋から飛び出した。
「待てこの野郎!」
 聖奈子が逃げる卓を追って部屋から飛び出し、絵理香と美由紀も後を追った。卓はバッグを抱えながら回廊を駆け抜け、階段を上ってアジトの外へ出た。
「そう簡単に捕まってたまるか。せっかくのコレクションなんだ」
「そうはいかないわよ。もう逃げられないぞ。観念しろ!」
 アジトの外では詩織が腕組みした恰好で立っていて、卓の行く手を阻んだ。そこへ絵里香たちも追いついてきて、卓の周りを取り巻いた。
「バッグの中にあるものを全部出せ!」
「ダメだ! これは俺のコレクションなんだ。絶対渡すもんか」
「ふざけるなコノヤロー。あたし達のエッチな写真を撒き散らしやがって。あたしたちの戦意を喪失させようったって、そうはいくか!」
「お嫁に行けなくなったらどうすんのよ!」
 そこへ再び戦闘員が出てきた。それを見た卓は戦闘員を呼んだ。
「おい。お前たち。俺を助けてくれ」
「バカメ。この作戦は失敗だ。お前はもう用済みだ。小娘どもにやられてくたばってしまえ」
 そう言って戦闘員は駆け出すとそのまま消えた。卓の目の前には怒りに燃える絵里香たちの姿があった。
 絵里香たちはほぼ同時に卓に組み付き、美由紀がバッグを奪って口を開け、バッグを逆さまにして中身を全て地面にぶちまけた。出てきたのは数枚のCDと沢山のUSB、それに大量にプリントアウトされた絵里香たちのスケベ写真(ハイキックやターンした時のパンチラやパンモロの写真)、それに筆記用具やノートなどだった。それを見た美由紀は怒りで顔を真っ赤にし、ぶちまけられたものに向けて両手を伸ばした。
「ライトニングスマッシュ!」
 エネルギー波が全てを焼き尽くした。
「あーっ・・・ 俺の・・・ 俺のコレクションがぁ」
「何がコレクションだ! お前のようなやつはこうしてやる!」
 絵里香は卓の腕をつかむと、合気道の技をかけた。
「えいっ!!」
「ワアァァァァーッ」
 卓の巨体が宙を舞い、そのまま一回転して地面に叩きつけられた。美由紀がジャンプして空中で一回転し、卓目掛けて急降下した。
「エンジェルキック!」
 キックが炸裂し、再び宙を舞った卓の体が地面に叩きつけられて斜面を転がり落ち、一番下で止まって、卓は蛙の死体のような恰好で大きな口を開けたまま気絶した。暫くすると卓の体が水蒸気のような煙を上げ、戦闘員の姿から元の丸尾卓の姿に戻った。
「誰この人・・・ 」
 絵里香が呟いていると、美由紀が素っ頓狂な声で言った。
「あーっ! この男・・」
「美由紀知ってんの?」
「知ってるも何も・・・ こいつ、私の家の近くのアパートに住んでる浪人生よ。丸尾卓っていって、引きこもりのヲタクで有名なやつよ。〇ヲタクってあだ名があるくらいよ」
「で・・ こいつどうする?」
「このまま放っておけば? もう私たちに悪さする事も出来ないだろうし・・・ 」
 絵里香たちは気絶している卓を眺めながら、口々に言い合っていた。
「とりあえず救急車だけは呼んでおきましょ」
 詩織がそう言って携帯を取り出すと119番して、絵里香たちは変身を解いた。暫くすると救急車がやってきて、気絶している卓を運んでいった。

      * * * *

 翌日の放課後・・・
 絵里香たちの姿は学校の体育館にあった。今日は体育館が借りられる日で、バトン部は体育館で練習していた。練習が終わり、制服に着替えた絵里香たちは、学校を出て街を歩いていた。

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「あれから全然何の音沙汰も無いね」
「何が?」
「例のヲタクよ。新聞にも載ってないし、ニュースにも出てこないわ」
「べつにいいじゃん。警察の御用になろうが、何になろうが、もうあたしたちの知ったこっちゃ無いよ」
「でもよかったじゃん。藍原先生が美紀子さんから方法を聞いて、画像を全て削除できて、シャットアウトも出来たし、もう変な写真に悩まされる事も無いね」
 街を歩く絵里香たちの後ろ姿を夕日が照らし出した。

      * * * *

 さて、ネオ‐ブラックリリーはどうなったのか・・・  というと、福利厚生施設が廃止されたのは言うまでも無い。卓の編集したデータは大半がウイルスと妨害電波によって壊滅状態になったものの、一部のデータはメインコンピューターに残り、今後のネオ‐ブラックリリーの作戦計画の資料として使われる事となった。が、エンジェルスがいつまでも同じ力であるわけが無く、パワーアップしたエンジェルスには、今回のデータは全て通用しなかったのである。

 THE END
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 あとがき

 今回はまいがー様の戦闘員のデフォルメ(やる夫)イラストを元にストーリーを作ってみました。自分で言うのもなんですが、結構コミカルな内容になったと確信しています。

いただきもののイラストです

2018年 03月22日 14:35 (木)

古波時音様から頂いたイラスト
サイト http://ryoudo.hannnari.com/
ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=1284213


美少女戦隊エンジェルスの三人26985603.png


スカーレットエンジェル
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黄人様から頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=3667590

美少女戦隊『エンジェルス』第24話での、聖奈子のピンチのシーンです

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美少女戦隊『エンジェルス』絵里香のピンチのシーンです
※このシ-ンは本編の方にはありません

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エンジェルイエローのピンチのシーンです。
このシーンは第44話に挿絵として登場します。

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ブルーとイエローの大ピンチ!!

二人揃って怪人に捕まり、締め上げられるシーンです。相手が大きいので、二人一緒に締め上げられてしまいます。

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ことぶき様から頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=687555

美少女戦隊『エンジェルス』のエンジェルレッド・赤城絵里香です
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バレット様より頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=720849

エンジェルスの3人
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エンジェルレッド
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エンジェルブルー
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エンジェルイエロー
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エンジェルレッド
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エンジェルブルー
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エンジェルイエロー
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スカーレットエンジェルJR
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Pinky様より頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=3757518

美少女戦隊エンジェルスの三人です。
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きんふじ様より頂いたイラスト

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美少女戦隊エンジェルスのエンジェルレッドです。
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ショコラ☆様より頂いたイラスト

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コエふとる様より頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=9369423

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SD版エンジェルです
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まいがー様より頂いたイラスト

ピクシブhttp://www.pixiv.net/member.php?id=146759

エンジェルイエローのピンチシーンです。秘密戦隊ゴレンジャーのワンシーンからのアレンジとのことです。

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人食い花に食われるうーっ!!!
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大幹部ゼネラルダイアのアレンジ版てす
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美由紀ちゃんピンチ!!  暖炉魔人に食われる…・
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戦闘員のデフォルメ(?)
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きさらぎゆり様から頂いたイラスト

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美少女戦隊エンジェルスの3人です

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アキラ@水連花のエボルブ様から頂いたイラスト

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エンジェルスのキャラクターの赤嶺佐緒里ちゃんです。冒険少女佐緒里の主人公です。

緊縛絵
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クリスマスプレゼントにされた佐緒里ちゃん
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友達の佳奈子ちゃんとのツーショット
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NANATSU様から頂いたイラスト

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スカーレットエンジェル

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みゆきひろしさんの作品
スカーレットエンジェルのわき役。松島詩織ちゃん
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エンジェルスのチアスタイル
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

特別編『冒険少女 佐緒里4 』

2015年 12月08日 12:34 (火)

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美少女戦隊エンジェルス特別編

冒険少女 佐緒里4

まえがき

この小説は最初はDIDをテーマとしていましたが、ストーリーが進むにつれて、ファンタジーやミステリー及び荒唐無稽のスタイルに変わってきています。第一部から順番に読んでいくと、そんな感じに変わっているのが見えてくるかもしれません。
タイムスリップと、逆タイムスリップ(つまりもとの世界へ戻る)は、バック・トゥ・ザ・フューチャーのスタイルをアレンジして使用しています。
また、自分のシチュエーションは、本作品を含めて、これまでの作品の内容にあるように、昭和の時代の少年少女漫画と、特撮にあった全ての要素をベースとしていますので、今後もそのスタイルを通していくつもりです。


*******************************************

目次

ACT.18 神父と枢機卿
ACT.19 遭難
ACT.20 回復
ACT.21 枢機卿の審問
ACT.22 魔女裁判
ACT.23 生還
ACT.24 エピローグ




それでは第4部スタートです。
魔女裁判の場面で、久しぶりで佐緒里ちゃんのセーラー服姿と拘束シーンが登場します。
今回は、魔女裁判をへて、佐緒里ちゃんが広場の処刑台(?)で、ポールに縛り付けられてしまいます。佐緒里ちゃんの運命や如何に・・・・
佐緒里ちゃんは果たして21世紀の世界へ帰れるのか・・・・
冒険少女佐緒里も、いよいよクライマックスです。











 ACT.18 神父と枢機卿

「それじゃ出かけてくるから、後を頼む」
「わかりやした。いってらっしゃい」
「気をつけて」
 神父は枢機卿に会うため、ドルフ村から約50km離れた場所にある、ヴィーゼンシュタットという街へ出かけていった。神父の先輩であるリヒテル枢機卿がこの街の教会の神父を兼任していたからだ。神父を見送る面々は、みな深刻な表情だった。佐緒里が魔女裁判にかけられるという事が、その表情に拍車をかけていた。

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 神父が出掛けて行ったあとで、佐緒里はハンス、カールと一緒に牢獄の屋上に上がっていた。既に冬の訪れを知らせる冷たい風が吹き抜け、空も青空が見えているものの、どんよりとした雲があちこちに広がっていた。
「うー・・・ 寒い・・・ この空・・・ もうすぐドカッと雪が降ってくるな・・・・ 」
「ハンスさん。この辺は雪が多いんですか?」
「ああ。毎年今頃になればチラチラと降ってくるんだが、今年はまだ降らねえな。でもあの雲を見れば、そろそろ雪のお出ましだぜ」
「それにしてもいい眺めですね。村がよく見えるし、結構遠くまで見えるんですね」
「サオリ。逃げたかったら逃げたって良いんだぞ。お前は本物の魔女なんだし、例の魔法で逃げる事だって簡単だろうが」
「僕だってサオリが魔女裁判で火炙りにされる姿なんか見たくない」
 ハンスとカールは佐緒里を気遣い、ここから早く逃げるように薦めていたが、佐緒里は首を横に振ってから言った。
「神父様が何とかするって言っていたから、私はそれに従います。それに・・・」
 佐緒里は一呼吸置いてから話を続けた。
「もし本当に火炙りにされそうだったら、それこそハンスさんが言うように魔法で逃げます。でも、勝手に逃げたら、私の事を21世紀の世界に帰してくれようとしている神父様に申し訳ないです。それにハンスさんやカールの恩をないがしろにするような事は、私には出来ません」
 ハンスは佐緒里の言葉を聞き、納得したようなそぶりをしてから、佐緒里に言った。
「サオリ。そろそろ降りるぞ。そうだ! お前が言っていたオンセンとやらに行きたいんだが」
「温泉ですか? はい。行きましょう」
「カールもつきあうか?」
「良いですよ。ハンスさん。オンセンに行きましょう」
 三人は冷たい風が吹き抜ける屋上をあとにして、牢獄の階段を降りていった。

***************

 夕方近くになって、アルベルト神父はヴィーゼンシュタットに到着し、リヒテル枢機卿に会って挨拶してから、街に宿をとってそこに入った。アルベルトとリヒテルは、法王庁の先輩後輩の関係で、アルベルトの神父としての赴任先は、殆どがこのリヒテル枢機卿の指令に基づくものだった。部屋で寛いで一通り落ち着いたところでアルベルト神父は、リヒテル枢機卿の招待で彼が神父を兼任している街の教会へ行った。そこでアルベルトは、リヒテルから愚痴とも言えるようなとんでもない話を聞かされた。
「明日の朝、街で捕えた女の魔女裁判を行うんだが、その内容がひどい話でね」
「ひどいって、何の話ですか? 枢機卿殿」
「調書を見たんだが、魔女告発の経緯が、男と女の三角関係のもつれから来ているんだよ。つまり、魔女として告発されたAという女がいて、AはBという男と相思相愛の恋愛関係にあった。そしてCという男もAが好きだったんだが、Cは性格がすごく悪くて街での評判も最悪。それを知っているAがCを頑なに拒んだものだから、Cは逆恨みしてAを魔女として告発したという事なんだ」
「何ですかそれは!? そんな事で魔女をでっち上げてるんですか? 今はもうそんな事で魔女を告発するような時代ではないというのに」
「AとBの関係と、Cの事は、街のみんなが知っていて、街の人たちもAの潔白を証言している。Bがたまたま自分の故郷へ行っていて、その留守を狙ったCの汚いやり口だよ」
「確かにひどい話ですね。それで枢機卿殿はどうなされるおつもりなんですか?」
「私が裁判長を任されているんだが、とても裁く気にはなれないね。むしろ告発した男の方をとっ捕まえて、首を切ってやりたいくらいだよ」
「それで、その女は自分が魔女だと白状したんですか?」
「いや、まだだ。審問も予備拷問も明日の裁判から始まるんだ」
「告発した男の方は?」
「街にいると思うが、原告人だから当然裁判には出席して、告発内容を裁判で証言する。だから明日の裁判に出てきたら、即刻とっ捕まえてやる」
 アルベルトはリヒテル枢機卿の話を聞いて、何かを思いついたように言った。
「枢機卿殿。それではこうしたらどうでしょうか? 魔女裁判は行うが、男が現れたら即刻逮捕して牢へぶち込む。そして女の方は口頭の審問だけにして、恋人が戻ってくるまで教会で匿うんですよ。そして恋人が戻ってきたら、無罪放免にしてこの街から出るように薦めたらどうでしょうか?」
「いい考えだな・・・・ アルベルト君。君の意見を参考にさせてもらうよ」

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 翌朝。教会で女性Aの魔女裁判が開始された。告発した男は教会にのこのこと現れたところを、待っていた兵士に捕えられた。
「な、何で俺が捕まらなきゃならないんだ!?」
 枢機卿は男の前に立つと、罪状の書かれた羊皮紙を両手に持ち、高々と宣告した。
「お前は自分勝手で自己中心的な嫉妬心で、事実と無関係の女性を魔女として告発し、清廉潔白な男女の仲を引き裂こうとした不届き物である。自分の嫉妬と逆恨みで魔女をでっち上げるとは言語道断!! よって、本教会は貴様を不届き者の犯罪人として処罰する。者ども。直ちに引っ立てよ!!」
「ははっ!!」
 兵士たちは男の両腕をガッチリつかみ、引き摺るように引っ立てていった。男は大声でグダグダと騒いでいたが、兵士たちは構わず連れ去っていった。一方、告発された女性の方は、簡単な予備審問のみ行われ、枢機卿の計らいで教会の一室に『軟禁』という状態で匿われる事になった。が、恋人の男性が知らせを聞きつけてすぐに戻ってきたため、その日のうちに開放されて、男と一緒に男の故郷へと向かって旅立っていった。

 予断ではあるが、リヒテル枢機卿もアルベルト神父同様、現代風で言えば転勤族で、それなりの世界観があり、考え方にも柔軟性があった。魔女の話についても、魔女そのものの存在を疑うような人物だったため、枢機卿が担当する魔女裁判では、被告人が異端者でない限り、処刑される者はいなかった。既に時勢は大航海時代に入っており、人々の世界観も広くなっていて、魔女の存在自体がナンセンスだと考える者も出てきていたのである。

「アルベルト君。くだらん事につき合わせて悪かったな。私は他の者と違って、魔女については疑いの目で見る事にしているんだよ。今まで告発された理由や内容を改めて見返してみると、あまりにもお粗末過ぎて、そんな事ではダメだと思っているんだ。おっと・・・ 話はここまでにしておこうか。私の考えに反発している者もおるし・・・ お偉方たちの間では、頭の固い連中も多いからな」
「いえいえ・・ 枢機卿殿も、世界観があるからこそ、そういう考え方を持てるんですよ」
「ところでアルベルト君。君の村で捕えた魔女の事だが・・・」
「その事なんですが、どうも腑に落ちないことがあって」
「何だね? 言ってみたまえ」
「捕えた者は審問した結果、自分が東洋人で、ジパングという国の者だと言っているんです」
「ジパング・・・ か。遠い国だな・・・ 」
「それに、その娘がこの世界の人間ではないように見えるんです。何処か遠い時代からやってきた、計り知れないもののように感じるんです」
「君の言っている事は、私には難しくて分かりかねるが、今日の裁判の内容にあった話に近いもののようだな」
「はい・・ 」
「気の無い返事だな。君らしくも無いぞ。まあいい。雪が降って積もっているから今日はもう無理だ。明日の朝ここを出発してドルフ村へ向かうから、村に着いたらその娘に会って話を聞いてみようじゃないか」
「わかりました」

***************

 ACT.19 遭難

 村に枢機卿が来るということは、村人たちにも伝わっていたが、村ではクリスマスの前に行われる冬季祭の準備があって、そちらの方に話題が集中し、さほどの騒ぎにはなっていなかった。
 牢獄の屋上で村の様子を遠目に見ていた佐緒里は、村の様子があわただしいのを見て、傍にいたハンスに聞いた。
「いつもと様子が違うけど、村で何かあるんですか?」
「ああ。クリスマスが近いからな。それにクリスマスの前に冬季祭という祭りがあるんだ。村ではその準備があるんだよ」
「冬季祭ですか・・・ そうか・・ もうクリスマスが近いんですね」
 冬季祭とは、冬至の日に行われるお祭りの事で、昼がもっとも短い日が過ぎ、昼が夜に勝つという経緯から始まったもので、この村では伝統的な行事になっていた。佐緒里が空を見つめていると、チラチラと雪が降ってきた。
「雪だわ・・・ 」
 雪は少しずつ密度が濃くなってきて、屋上の床が白くなり始めた。
「サオリ。行くぞ。こんな所にいたら、寒くてしょうがないぜ」
「はい」
 佐緒里は自分の部屋に戻ると、ハンスが持ってきてくれた中型の火鉢に薪を入れて燃やした。少しずつ部屋が暖かくなっていく。窓の外では雪が降り続いていて、地面や木々が積雪で真っ白になっていくのが見えた。

***************

 佐緒里がその日の夕食を終え、カールが来て食器を片付けている時、ハンスが血相を変えて佐緒里の部屋に飛び込んできた。
「た、た、大変だ!」
「どうしたんですか?」
「神父様が帰ってこないんだ。早馬の知らせでは、今日の朝にはヴィーゼンシュタットを出ているから、普通ならもうとっくにこっちへ着いている筈なんだ」
 佐緒里とカールは、ほぼ同時にハンスの顔を見て、佐緒里は席を立つと、窓際へ行って窓の衝立をはずした。
「うわ・・・ 外は吹雪だわ。あたり一面真っ白よ」
 カールとハンスも窓の傍に来た。
「これはヤバイ・・・・ もしかすると、途中で・・・ 」
「何だよサオリ。ヤバイってどんな意味なんだよ?」
「危ないとか、まずいって意味なんだけど・・・   カール。ハンスさん。この辺の地図はありますか!?」
「地図? 村の周辺の絵図面なら、神父様の部屋にあるけど、一体どうしたんだよ」
「この天気だと、途中で吹雪に巻き込まれて立ち往生しているか、最悪の場合遭難しているかもしれないわ!」
「ええっ!?」
「な、なんだと!?」
 佐緒里は窓から離れると、部屋から飛び出して神父の部屋へと向かった。
「おい。待てよサオリ」
 カールとハンスも佐緒里の後を追った。
 神父の部屋に入った佐緒里は、部屋の蝋燭に火をつけると、あたり一体を捜した。
「サオリ。絵図面ならここだよ」
 追いついてきたカールが書棚の脇に置いてある、丸まった羊皮紙を持って机の上に広げた。佐緒里は蝋燭を近くに持っていくと、その絵図面を眺めた。
「牢獄の位置がここ・・・  村の集落がここ・・・ 」
 佐緒里は目を瞑って精神を統一すると、パッと目を開いて絵図面の上に右の手のひらを翳した。ハンスが心配そうに言った。
「何してるんだ?」
「シーッ・・・ きっと神父様たちが今、何処にいるのか捜しているんですよ。佐緒里は魔女なんだ。きっと魔法で居場所を捜しているんです」
カールとハンスは、生唾を飲みながら、佐緒里のしている事を眺めていた。やがて佐緒里は絵図面上の一角で手を止めた。
「ここです!」
 佐緒里の言葉に、カールとハンスは佐緒里の手がある場所を見た。そこは村から約2kmほど北へ行った場所で、畑と森の境がある、山の麓のあたりだった。
「付近に二つの大きな物体が見えます。長くて高い・・・・ 木ではないでしょうか? ハンスさんはこのあたりの事をご存知ですか?」
「ああ・・ そこか。その辺には、二本の大きなモミの木があるんだ。村では双子のモミの木と呼んでいる・・・ その辺に神父様たちがいるっていうのか!? でも何故こんな場所に・・・ 街道からはかなり離れているぞ」
「きっと吹雪で方向を見失って道を間違えたんですよ。すぐに助けに行きましょう。遭難していたとしたら・・・ 雪に埋もれてしまっていたら、大変なことになります」
「すぐに橇の用意だ! カール。行くぞ!」
「は、はい」
 佐緒里は蝋燭の火を消し、ハンスはカールを連れて部屋から飛び出した。佐緒里もそのあとから走っていった。ハンスとカールは一階の倉庫に入り、カールは置いてあった橇を出して、ハンスは馬を用意した。器具を取り付けて準備しているところに、佐緒里が入ってきた。
「今のところ吹雪が止んでいます。チャンスは今ですよ」
「そうか!」
「私が先導しますから、その後からついてきてください」
「先導・・ って・・・ そうか。サオリは魔法のほうきがあるんだね」
 ハンスとカールは、建物の外に橇を出して乗り込んだ。佐緒里は右手を上げてスティックを出し、巨大化させてその上に乗って、2メートルくらいの高さまで上昇させてから、ハンスとカールに向かって叫んだ。
「後ろから青い色の光が出ていますから、その光をたよりについてきてください」
「分かった!」

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 佐緒里はゆっくりとスティックを飛ばし、ハンスは馬に鞭を入れて橇を走らせた。積雪はさほどではなかったので、馬が動けなくなるという事は無く、ハンスは佐緒里が出している青い光を目印に橇を進めた。

 一行は村の集落を通り越して、目的地である双子のモミの木を目指した。佐緒里はスティックの先端からサーチライトの光を出し、前方の状態を探った。そこに二本の大きな木が立っているのが遠目に映り、佐緒里はスティックを止めて降下した。そこへハンスたちも追いついてきた。既に雪が止んで空には月が出てきていて、月明かりがモミの木を映し出している。
「あれだ。もう少しだ。サオリ。頼むぞ」
「はい」
 佐緒里は再び上昇して、モミの木目指して飛んだ。そしてモミの木の傍まで達すると、モミの木の周りを一周した。その時佐緒里は木の向こう側で、キラッと光るものを見つけ、その方向へ飛ばした。
「確かこの辺だった・・・ 」
 そこへハンスたちが追いついてきて橇を止めると、上を飛んでいる佐緒里に向かって叫んだ。
「おい! サオリ。そこには降りるなよ! その辺は沢になっていて、雪の吹き溜まりになっているからあぶねえぞ!」
 佐緒里は下を見た。雪の中に何か黒っぽいものが見えたので、スティックを降下させた。そこには神父と枢機卿が乗っていたと思われる橇が、雪の吹き溜まりの中に突っ込んでいた。橇を引いていた馬は見当たらないので、きっと何処かへ走り去ったのであろう。佐緒里は周辺を捜した。すると沢の底の方に半分雪に埋まっている二人を見つけた。おそらく吹き溜まりに突っ込んだ時に、投げ出されて沢の下へ転落したに違いない。佐緒里はスティックを降下させて雪原の上に降りると、二人を自分の方へ呼んだ。
「ハンスさん! カール! こっちです!」
 佐緒里が叫ぶと、ハンスとカールは橇から降りて、佐緒里のところへ歩いてきた。佐緒里は沢の下の方へ向けてスティックのライトを照らした。
「うわっ・・・・ し、下に落ちてるのか」
「すぐに引き上げないと!」
 ハンスとカールは橇に戻ると、ロープと鎖、そして鉄球の足枷を持って戻ってきた。
「私が下へ降りますから、合図をしたらロープを下へ落としてください」
 佐緒里はそういうと、ポーズをとった。
「二人とも少し離れて!」
 佐緒里は変身の言葉を叫んだ。
「スカーレットスパーク・エンジェルチャージ!」

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 佐緒里の身体が眩しい光に包まれ、光が消えるとともにスカーレットエンジェルJrの姿になった。そしてスティックを持って沢の下へ飛び降りた。
 ズボッ!!
「キャッ・・・ !!」
 飛び降りた場所は吹き溜まりで、佐緒里の体が胸の辺りまで雪に埋まった。
「おーい! 大丈夫かぁ!」
「はーい!!」
 佐緒里は大声で答えながら右手を上げて大きく振った。
「ハンスさん! ロープを投げて!」
 ハンスは鉄球の足枷の鎖をロープの先端に縛ると、佐緒里から少し離れた場所を狙って投げた。
 ズボッ! 
 鉄球を付けていたので、ロープはほぼ真っ直ぐに吹き溜まりの中に突っ込んだ。佐緒里はロープを拾うとスティックを振って前に突き出した。すると真っ赤な光が灯って、佐緒里の周辺の雪がたちどころに溶けた。佐緒里は二人が倒れている場所にたどり着くと、神父と枢機卿の体を揺すって反応を見てから、二人の手首をつかんだ。
「大丈夫だ・・・ 二人ともまだ生きている」
 佐緒里は神父の腰にロープを巻きつけて縛ると、ハンスに向かって叫んだ。
「ハンスさん、カール。上げて! 二人とも生きているわ」
「よーし!」
 ハンスとカールとで、ロープを引っ張り、まず神父を上に引っ張り上げた。続いて枢機卿も上に引っ張り上げたのを見届けた佐緒里は、スティックを巨大化させて、それに乗って上に上がってきた。吹き溜まりに突っ込んだ橇も引っ張り出した。
「サオリ。やばいぞ。二人とも怪我しているうえに体が冷え切ってる。村まで運んで行ったんでは間に合わないかもしれねえぜ」
「じゃ僕が村へ行って助けを呼んできます」
「待ってカール。それでも同じ事よ。今ここで火を焚いて二人を暖めた方がいいわ」
「ダメだよサオリ。この辺の木はみんな雪で濡れて使い物にならないよ」
「分かった。それじゃ私がやる!」
「サオリが?」
「二人とも私から離れて!」
 ハンスとカールは佐緒里から離れて距離をとった。
「(私がこの技を使ったら、私自身がヤバくなるかも・・・ でも、この二人を死なせるわけにはいかない・・・ )」
 佐緒里は一呼吸置いてから神父と枢機卿に向けて両手を伸ばした。
「エンジェルミラクルチャージアップ!!」
 佐緒里の体が眩しく光り、続いて真っ赤な炎になった。あまりの眩しさに、ハンスとカールは顔を背けた。佐緒里の周辺と、倒れている神父と枢機卿の周辺の雪が溶け、佐緒里の体から発する熱で、真夏の暑さのようになった。ハンスとカールは佐緒里のやっている事に唖然、もしくは呆然としていたが、熱さのあまり、少しずつ後ろに下がった。
 一方、気を失っていたリヒテル枢機卿とアルベルト神父は、体が温まってきたのと周りの熱さのために目を覚ました。そこで自分の目の前にいる物体(佐緒里)が目に入った。枢機卿の目には、真っ赤な炎の中に人の形をしたものがあるように見えた。
「う・・ 眩しい・・ 体が温まる・・・ な、何だあれは・・・  私は夢を見ているのか・・・・ 確か雪の中に突っ込んで谷底へ落ちて・・・ あれは天使・・・ それとも 」

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 しかし佐緒里のパワーもここまでだった。
「(も・・ もうダメ・・・ もう・・ 力が・・・ 入ら・・・ な・・ い)」
 真っ赤な炎が消え、佐緒里はそのまま地面に倒れ込んで動かなくなった。
「サオリ!!」
 カールが慌てて佐緒里の傍へ駆け寄った。カールは佐緒里の体に触れようとしたが、突然佐緒里の体が眩しく光ったため、後退りした。佐緒里の身体の光が消えた時、そこには変身が解けて生身の姿になった佐緒里が倒れていた。
「サオリ。どうしたの!? しっかりして! サオリ!」
 カールは佐緒里の傍に来ると、佐緒里の体を揺すった。が、佐緒里は全く反応を示さなかった。ハンスも傍に駆け寄ってきた。
「サオリ! しっかりしろ。神父様も枢機卿様も助かったんだぞ! サオリ!」
「サオリ。死んじゃだめだ。自分の世界へ帰るんだろ!?」
 そこへ神父も近寄ってきた。
「サオリじゃないか。サオリが私たちを助けてくれたのか」
 成り行きを見ていたリヒテル枢機卿が呟いた。
「私は・・・ 私は夢を見ているのか・・・ しかし・・・」
 その時向こうの方から、大きな声とともに数人の村人たちがザワザワと喋りながら、徒歩と橇でやってきた。
「おーい!」
「何があったんだ。でっかい火が見えたから、山火事でも起きたのかと思ったぞ」
「おい! お前たちそんなところで何やってんだ」
 村人たちはみんながいる傍までやってきた。
「し、神父様でねえか。何してるだこんな所で」
「枢機卿様も一緒だぞ。おい。二人とも怪我してるぞ」
 ハンスは立ち上がると、村人たちに向かって言った。
「その馬と橇を貸してくれ! 神父様と枢機卿様を運ぶんだ」
「おう! 分かった。早く乗せるんだ」
 村人たちが持ってきた橇に怪我をした枢機卿と神父を乗せ、そしてハンスとカールが乗ってきた橇に、気を失っている佐緒里が乗せられた。
「よし! すぐ村へ戻るんだ」
 橇が村へ向けて滑り出し、ハンスとカールも橇に乗って出発した。
「サオリ。サオリ。しっかりして。絶対に死なないで!」
 戻る途中で、カールは泣きそうな顔で、ずっと佐緒里の事を呼び続けていた。

***************

 ACT.21 回復

「もう5日間も眠ったままだぜ。大丈夫かよ・・・ 」
「このまま起きないんじゃ・・・・ 」
 ハンスが不安そうに、気を失ったままの佐緒里を眺め、カールは泣きそうな顔をしていた。あれから神父と枢機卿は、村の医者のところに運ばれて、怪我の手当てを受け、佐緒里はハンスとカールの乗った橇で牢獄まで戻ってきて、佐緒里の部屋に運ばれてベッドに寝かされた。その時に神父の計らいで、教会の手伝いをしていたエレンという少女を、佐緒里の世話人として遣わしていたので、服を脱がして着替えさせる役目は、そのエレンがやってくれた。そして一通りの仕事を済ませたエレンは、看守のハンスとカールに後を託して、教会の方へと戻っていった。
 佐緒里はスカーレットエンジェルとはいっても、まだ体が幼く、自分が使える技には限度があった。それなのにチャージアップという、自分の能力の限界を超えた大技を使ったため、エネルギーをあっという間に消耗して、気を失ってしまったのだ。しかし、いくら限界を超えたとはいっても、ある程度時間が経てば自然にエネルギーが蓄積されて回復するはずである。が、佐緒里はまだ眠ったままだった。ハンスとカールが不安そうにしているところに、神父が枢機卿と一緒に部屋に入ってきた。
「サオリはまだ目覚めないのか?」
「はい。もう5日も経つんだけど、まだ・・・ 」
「神父様。まさかこのまま死んじゃうんじゃ・・・・ 」
 カールが泣きそうな声で言った。
「バカ言っちゃいかん! 必ず助かる。今までサオリは何度も窮地を脱してきたじゃないか。こんなことで絶対に死ぬものか!」

***************

 佐緒里は暗闇の中を彷徨っていた。周囲は全て真っ暗闇で、足元すら見えない。
「ここ・・ 何処なの?」
 その時佐緒里は自分を呼ぶ声が聞こえた。
「佐緒里」
「え?」
 佐緒里は声がした方を向いた。そこにはかつて事故で亡くなった筈の佐緒里の両親と、妹の香織が立っていた。
「パパ・・ ママ・・ 香織」
 佐緒里はみんながいる方へと歩き出した。しかしいくら進んでも、みんなの元へたどり着けない。
「どうして・・ どうして近づけないの?」
「ダメ! お姉さん。こっちへ来てはダメよ」
「佐緒里。こっちへ来てはいけない。戻るのよ!」
「佐緒里。引き返せ! 戻るんだ。お前はまだ死んではダメなんだ」
 そしてみんなの姿が消えた。
「パパ! ママ! 香織! 何処へいったの? 行かないで! 嫌だ・・ 嫌アーッ」

「嫌あーっ!」
 佐緒里が叫び声とともに、ベッドから飛び起きようとした。
「サオリ!」
 傍で様子を見ていたカールが、半狂乱になって暴れる佐緒里を抱きしめた。
「サオリ! 落ち着いて。怖い夢でも見たのか」
 我に返った佐緒里は、自分を抱きしめているカールに気付いた。
「カール・・・・ 」
「サオリ・・・ 良かった。目が覚めたんだね。もう、このまま死んじゃうのかと思ったんだぞ」
 カールは佐緒里をさらに強く抱きしめた。佐緒里はカールの体が震えているのを感じた。カールは声を押し殺して泣いていた。
「カール。私は大丈夫だから泣かないで」
「そんなわけ無いだろ。お前5日間も眠ったままだったんだぞ」
 カールの目からは涙が溢れていた。
「よかった・・・ 生きててよかった・・・ 」
 カールは再び佐緒里を強く抱きしめた。佐緒里は起き上がろうとしたが、カールがとめた。
「まだ寝てなきゃダメだ」
 そう言ってカールは、佐緒里を無理矢理ベッドに押し倒した。ハンスも傍によってきた。
「サオリ。今日はゆっくり休むんだ。まだ無理しちゃダメだ」
「・・・・・・」

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 カールは神父の方を向いた。
「神父様。今日はサオリをゆっくり休ませますから、何もしないであげてください」
 神父は枢機卿の方を向いた。枢機卿は無言で頷いた。
「いいだろう。サオリ。今日はゆっくり休むがいい。明日は枢機卿殿がお前を審問したいと言っているが、いいな?」
「はい」
「それじゃみんな、部屋を出るぞ。サオリをゆっくり休ませてやれ」
 神父と枢機卿に促されるように、みんなゾロゾロと部屋を出て行った。最後にカールが机の上の蝋燭の火を消した。
「それじゃサオリ。お休み」
「お休みなさい」
 真っ暗になった部屋のベッドの上で、佐緒里は再び深い眠りについた。


 神父の部屋では、神父と枢機卿がカールとハンスを交えて話をしていた。
「アルベルト君。魔女裁判は予定通り行う。ただし、あのサオリという娘が完全に回復してからにする。それまで私はこの村にとどまる事にする」
「でも枢機卿殿。サオリは我々の命の恩人なんですよ。その恩人を魔女裁判で・・・ まさか火炙りにするつもりなんですか?」
 枢機卿は首を横に振った。
「確かに裁判はするが、判決後の事は君に任せる」
「え?」
「あの娘は我々の命の恩人だ。いくら魔女とはいえ、私は命の恩人を蔑ろにするほど卑怯者ではない。そんな恩を仇で返すような事をしたら、それこそ神の裁きを受けてしまうよ」
「それでは何故」
「君はあのサオリを、サオリの世界へ帰そうとしているんだろ? そしてその方法も既に見出しているというではないか。ならば裁判の結果をどうしようと、私が君にサオリの処遇を委任すればいいことだ。要するに、サオリを君の力で帰してしまえば、サオリはこの世界からいなくなるわけだ。つまり極論で言ってしまえば、処刑したと思えば同じ事ではないか。私には君の言っている事がどうにも理解出来ないんだが、とにかく私の役目は裁判で判決を言い渡して、裁判の報告書を書く事だけだ。そのあとのサオリの事については全て君に任せるよ」
「わかりました。お心遣いありがとうございます」
「礼には及ばんよ。私と君とは長い付き合いではないか。ただ、この事は絶対に他所に口外してはならんぞ。こんな事が頭の固い連中に知られれば、厄介な事になりかねん。君たちもだ。ここで話した事は、口が避けてでも絶対喋るな。勿論法王庁へはそれなりの調書を書いて報告するが、何かあった時は私の権限で何とかする」
「分かりました」

 ACT.21 枢機卿の審問

 翌朝、食事を終えて後片付けを済ませ、部屋を出たカールと入れ替わりに、リヒテル枢機卿が部屋に入ってきた。
「サオリといったな。審問を始めるが、いいかね?」
「はい」
「では屋上へ上がろうか。一緒に来たまえ」
 リヒテルは部屋の外へ出て、佐緒里もそのあとをついていった。

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 空は晴れていて、この季節にしては暖かかった。屋上に上がったリヒテル枢機卿と佐緒里は、お互いの目を見て向かい合っていた。リヒテルが黙っていたままなので、痺れを切らした佐緒里が話しかけた。
「あの・・ 枢機卿様。さっきから黙ったままですけど、私に何も聞かないんですか?」
「まあ・・・ まず空でも眺めてみたまえ。もう冬だというのに、今日はこんなにいい天気だ」
 そう言ってリヒテルはそのまま床に仰向けになった。佐緒里が唖然としていると・・・・
「君も仰向けになりたまえ」
「は、はい・・・ 」
 佐緒里は呆気に取られたが、枢機卿の言う通りに仰向けになった。
「どうだ。いい眺めだろう」
「はい・・ 」
「お前の事はアルベルト君から大体のことは聞いたし、調書も読ませてもらった。君はジパングという国から来たそうだな」
「そうです。ご存知なんですか?」
「うむ・・ 私は『東方見聞録』という書物を読んだ事があってね」
「マルコ・ポーロですか?」
「そうだ。そこでお前に聞きたいんだが、あの書物の内容は正しいのかね」
「全部が全部というわけではないです。マルコ・ポーロ自身はジパングへは来ていないんです。だから内容的には想像の部分が殆どなんです」
「そうか・・  想像か・・・  それでジパングは黄金の国だと書かれていたが、それは真実なのかね?」
「いいえ・・・ 確かに金は産出しますけど、皆が思っているほどの量ではありません。むしろ少ないくらいです」
「うむ・・・ ジパングへ行った事がないのなら、実情を知らずに想像で書くのも無理も無い事だ。お前の話には嘘は無いな・・・ 実はジパングへ行った私の友人から来た手紙にも、同じような事が書かれていたのだ」
 枢機卿はさらに話した。
「実はその友人は、キリスト教を伝道するためにジパングへ行ったんだ。ジパングはキリスト教を受け入れるのかね」
「受け入れます。私の国は宗教の受け入れには寛大です。だから今まで外国から入ってきた宗教は、しっかりと根付いています」
「キリスト教以外にも伝道されているのかね」
「仏教が伝えられています。枢機卿様はお釈迦様・・・ ブッダをご存知ですか?」
「知っとるよ。お前は仏陀の信者かね?」
「信者というわけではないですが、仏教に関係した行事には参加する事があります。それと枢機卿様のおっしゃっている、キリスト教の行事もです。例えばクリスマスは、信仰に関係なく殆どの人が関わっていると思います」
「なるほど・・・ それではお前は何の神を信じるのか?」
「特別な信仰はありません。でも、しいて言うならば、私の国の神様です」
 佐緒里は枢機卿の質問に戸惑いながらも、自分の知識にある全てのもので応えていた。
「お前の国の神とは、どんな神なんだね?」
「枢機卿様は、ギリシャやローマの神話はご存知でしょうか?」
「知っておるが、それと何の関係があるんだね?」
「私の国にも古代の神話があって、宗教として人々の心の中に根付いています。私の国の神とは、その古代の神話に関係があるんです。そして神は一人ではなく、大勢いて・・・ つまり多神教なんです。分かり易く言ってしまえば、お釈迦様もキリスト様も、みんな神様なんです」
「なるほどね・・ アルベルト君の調書の通りだな。彼の調書に、お前の宗教観の事が書かれていてね、私はそれに興味を持って、お前に色々と聞いてみたんだよ。まあ・・ 国が違えば文化も違うし、宗教観が違うのも当然なのだろうな・・・ 」
 枢機卿は起き上がった。
「さあ、サオリ。立ちなさい」
「はい」
 枢機卿は立ち上がり、サオリも起き上がって立って、枢機卿と向かい合った。
「お前の魔女裁判は明後日で良いか?」
「はい。良いです」
「よし。分かった。それでは私の審問はこれで終わる。部屋に戻りなさい」
 枢機卿が動こうとしなかったので、佐緒里は歩み出すのを躊躇っていた。
「一人で行きなさい。私はもう少しここで空を眺めている。あ・・ それから、私とアルベルト君を助けてくれたのはお前なんだってな。遅くなったが礼を言う。助けてくれてありがとう」
「御礼には及びません。当然のことですから。良い魔女は人を助けるんです」
「なるほどね・・・ さあ。行きなさい」
「はい。それでは失礼します」
 佐緒里は枢機卿に背を向けると、屋上から階段を降りていった。枢機卿は佐緒里の後ろ姿を眺めながら、右手で胸の前で十字をきった。

 その日の夜、佐緒里の部屋に神父が入ってきた。
「今しがた枢機卿殿を教会へ送ってきた。サオリ、明後日がお前の魔女裁判だが、覚悟は出来ているか?」
「はい」
「ならば明後日の朝、朝食後にここから教会へ移動する。お前の所持品は全てここから持っていくように。それから、お前がここで借りた物や貰った物は、すべてここに置いていくように。いいね?」
「はい・・・ 」
「では私も教会の方へ行くから。お前の裁判までもうこっちへは戻ってこない。明日以降の事は看守のカールかハンスに相談しなさい。お休み」
「お休みなさい」

***************

 ACT.22 魔女裁判

 ついにその日の朝が来た。
 佐緒里はベッドから起き上がると、着ていた体操着を脱ぎ、椅子にかけてあったセーラー服を手に取った。
「(この服・・・ 久々だな・・・ )」
 佐緒里がここに来た時に、暫くの間着ていたセーラー服だった。佐緒里はリュックの中からスリップを取り出して着ると、スカートを履き、続いてセーラー服の上着を着てから、ネクタイを着けて靴下を履き、最後に自分のズック靴を履いた。今から何が自分を待ち受けているのか不安だったが、それを払拭するように窓際へ行って衝立を上げた。明るい朝の日差しとともに、冬の冷たい風が吹き込んできた。佐緒里はリュックの中からノートと筆記用具を取り出し、テーブルの上に置くと、椅子に座ってノートを開き、何かを書き始めた。

『親愛なるカールへ・・・  カールがこの手紙を読んでいるとき、私はもうこの世界にはいません。私はカールが私に対して好意を抱いていた事を薄々と感じていました。だからお別れするのはとっても辛いです。でも、仕方が無いんです。私は私の世界へ帰らなければなりません。カールはもう私に会うことは出来ませんが、カールの子孫の方ならば会う事が出来るでしょう。だから私からのお願いです。この手紙をずっと持っていてください。そしてカールの子孫の方々に代々受け継いでもらい、21世紀に受け継いだ方が201X年の○月○日に私に会いに来て下さい。拙い文章でごめんなさい。 サオリ』

「よし。これでいいな・・・ 」
 佐緒里は手紙を書いたページを切り取ると、もう一枚切り取って折り曲げて封筒の代わりにし、折った手紙をその中に入れた。
 ガチャガチャ
 その時鍵が開けられる音がして、佐緒里は手紙をリュックの中に入れた。扉が開いてカールが食事を持って入ってきた。カールは佐緒里がそわそわして顔が赤くなってるのを見た。

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「ど、どうしたんだサオリ」
「あ・・ カール。な、何でもない・・・ 何でもないからね」
「(何か変だな・・・ 緊張しているようでもないけど・・ ) それじゃ食事置いていくから」
「分かった」
 カールは首をかしげながら部屋を出て、鍵をかけていった。

***************

 食事が終わり、後片付けも終わった。佐緒里は部屋の中で椅子に座り、来るべき時を待ちながら瞑想していた。そこへ鍵が開く音がして扉が開き、カールが入ってきたので、佐緒里は立ち上がって傍にあったリュックを背負った。カールは持っていた木製の手枷を佐緒里に差し出し、佐緒里は無言で両手を差し出した。
「サオリ。あと少しだから我慢して」
「うん・・・ ところでハンスさんは?」
「外で橇を用意して待ってる」
 カールは佐緒里の手に手枷を嵌めて施錠すると、手枷から伸びている鎖を持って、佐緒里を促した。
「(いよいよここともお別れなんだわ・・・ )」
 佐緒里はカールに鎖を引かれて部屋を出た。牢獄の建物を出ると、ハンスが橇と馬を用意して待機していて、佐緒里とカールを見ると乗るように促し、二人は橇に乗った。
「よし。それじゃ行くぞ」
 ハンスは橇を走らせた。村にある教会までは15分くらい。だが、佐緒里には倍近い時間に感じられた。
教会の前でハンスは橇を停止させ、カールは佐緒里と一緒に橇から降りた。ハンスは馬の手綱を傍にあった木に巻きつけて固定してから、二人の傍に来た。その時教会堂の中からアルベルト神父が修道女の恰好をした少女とともに出てきた。

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「神父様。おはようございます」
「おはよう。サオリ、よく眠れたか?」
「はい」
「うむ・・ とりあえず紹介しておこう。この子はエレン・ヴェルナーといって、カールと同じく私の養子なんだ。年はサオリと同じくらいで、この教会で手伝いをしている。裁判の間はこの子がお前のそばについている」

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 エレンは胸の前で十字をきると、佐緒里の傍に歩み寄ってきた。
「サオリさんですね。私はエレンといいます。神父様からあなたのお話は聞いています。よろしく」
「サオリです。こちらこそよろしく」
「カール。手枷の鎖をエレンに渡せ。お前はハンスと一緒に、広場へ行ってサオリを21世紀に帰すための準備をするんだ」
「はい。神父様」
 カールは持っていた鎖をエレンに渡すと、ハンスと一緒に教会の隣にある広場へ向かった。神父は佐緒里の肩をポンと軽く叩いて言った。
「さあ。サオリ、行こうか」
「はい」
 佐緒里はエレンの先導で神父とともに教会堂の中へ入った。

***************

 裁判は礼拝堂を急造の法廷として使用する事になっていて、椅子は全て端に並べられ、祭壇の前に大きな長い机が一つ、椅子が三つ置かれた。佐緒里はその法廷のほぼ中央にある二つの椅子の片方に座らされ、隣の椅子にエレンが座って、神父は枢機卿を呼びに法廷の外へ出て行った。それと入れ替えに、陪審員か傍聴人と思われる村人たちが数人入ってきて、端にある椅子に座った。佐緒里はこれから始まる自分の魔女裁判の時を静かに待った。
 やがてハンドベルの音とともに、リヒテル枢機卿を先頭に、アルベルト神父と村の村長がやってきて、祭壇の前にある椅子に座った。中央に枢機卿。右隣にはアルベルト神父。左隣には村長が座っていた。佐緒里はガラにもなく緊張で体がガタガタと震えた。それを感じたのか、隣にいるエレンが佐緒里の肩を軽く叩き、佐緒里はエレンの方を向いた。
「落ち着いて。もう始まるわよ」
 佐緒里は無言で頷いた。周りでは傍聴人たちがざわざわと雑談していたが、枢機卿たちが立ち上がると、ざわめきがピタリと止んだ。

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「それでは被告人サオリの魔女裁判を始める!! 本日の裁判長はこの私。ヨーゼフ・リヒテルが受け持ち、裁判官はドルフ村の神父アルベルト・ヴェルナー、及びドルフ村村長のヨハン・ハウゼンがそれぞれ受け持つ。被告人サオリ。立ちなさい」
 枢機卿が高々と通る声で喋り、佐緒里はエレンとともに立ち上がって、枢機卿の目を見据えてから、枢機卿に向かって一礼した。
「ン!!」
 枢機卿はそれに応えて佐緒里に向かって軽く頭を下げ、神父・村長とともに再び着席した。枢機卿は傍らに置かれた羊皮紙を取ると、それを読み上げた。
「本日の魔女裁判は、魔女の告発人が存在しないため、証人喚問は省略する。そこで被告人のサオリに問う。被告サオリは○の月の○日に、ドルフ村の東の外れにある村の倉庫において隠れていたところを、村の者に発見され、魔女の嫌疑で投獄された。そして村の神父アルベルト・ヴェルナーの第一回目の審問において、魔女である事を自白し、軟禁状態で本日に至る。サオリ、間違いは無いか?」
「ありません」
「それでは審判を続ける。被告人は村に出没する悪魔に対し、勇敢にも一人で悪魔に立ち向かって悪魔を倒し、そしてその正体を暴いた。さらにドルフ川の上流にいるとされていた怪物の正体をも暴き出し、それらの類は悪魔とか魔女とは無関係のもので、すべて神が作り出したものであると説いたとあるが、それに間違いは無いか?」
「ありません」
「調書によると、お前は東洋人で、ジパングという国から来た者だとある。そして異教徒だとあるが、間違いは無いか?」
「はい。裁判長様の仰るとおりです」
 傍聴人たちの間でざわめきが起こった。が、傍聴人たちはみなドルフ村の村人で、かつ佐緒里が村でした事を全て知っていて、佐緒里に恩義を感じていたので、罵声や暴言は出なかった。
「静粛に!」
 枢機卿の一声で周りが静かになった。
「サオリは違う国から来た者であり、異教徒である。国が違うのであれば、文化も宗教も宗教観も我々と異なるのは当然である。従って、当法廷はサオリを異端とはみなさない。魔女の有無については、被告人が自白済みなので取調べは省略し、すぐに判決に入る」

 枢機卿は立ち上がると、両手で羊皮紙を持って佐緒里を見据えた。
「判決!! 当魔女裁判の法廷は、被告人サオリを魔女と認定して有罪とする。なお、判決の根拠は被告人の自白によるものとし、被告人が行ったとされる魔術使用等の魔女行為については、全てを不問とする。加えて、判決後の被告人の処遇については、ドルフ村神父のアルベルト・ヴェルナーに全てを委任する。以上! 本裁判はこれにて閉廷とする!」
 枢機卿は神父と村長を伴って法廷を出た。続いて周囲にいた傍聴人たちも次々と出て行き、法廷には佐緒里とエレンだけが残った。
「サオリさん。行くよ。神父様が言っている、21世紀の世界とかに帰るんでしょ?」
「うん・・ 」
 佐緒里はエレンに鎖を引かれて、法廷の外へ出ると、さらに教会堂の外へ出た。外ではカールが佐緒里のリュックを持って待っていた。カールは佐緒里の傍に駆け寄ってきて、佐緒里の手首をつかんで少し上に上げさせた。
「今、手枷を外すから」
 カールは鍵で手枷の錠を外し、佐緒里の両手を自由にしてから、手枷を傍にあった橇の中に放り込んだ。そして佐緒里にリュックを背負わせると、佐緒里の手首を持って、広場の方へと小走りに駆け出した。エレンもその後をついて行った。

 
 ACT.23 生還

 広場に到着すると、ハンスが準備をして待っていた。ステージ状の台の上に高さ2m位、太さが20cmくらいの木柱が立っている。通常ならば魔女の火炙りに使用するか、もしくは罪人を拘束して晒すためのものだが、今回は佐緒里を未来へ帰すために用意されていた。村人たちは準備の手伝いで近くに数人いたが、一通りの手伝いを済ませると、その場から皆去って行った。枢機卿の計らいで、佐緒里の事には絶対に関わらないよう、またこの事を外へ洩らさないよう、厳重な命令が出されていたのも理由のひとつだった。
「サオリ。こっちへ来い」
 ハンスが手招きして、佐緒里は木柱の傍まで来た。
「その柱に背中をつけろ」
 佐緒里がリュックを下ろして木柱の前に立つと、ハンスは持ってきた長い鎖で、佐緒里の腰から胸の辺りまでグルグル巻きに縛って、南京錠をかけて固定した。が、両手だけは動かせるように自由にしていた。そして佐緒里のリュックも佐緒里の傍に置かれて、鎖で巻かれた。
「サオリ。きつかったら言えよ。こいつは神父様の指示で、お前が衝撃で吹っ飛ばされねえように、ガッチリ縛れとのことなんだ」
「大丈夫です」
 そこへ神父が十字架の入った箱を持ってやってくると、銀色の十字架を取り出して、佐緒里に持たせた。
「サオリ。方法はこの前の実験でやった通りに行う。この銀の十字架を両手で持って、私が合図をしたら両手で頭の上にかざし、例の呪文を唱えるんだ。私がお前の正面で、こっちの金の十字架をかかげているから、お前の呪文で出る光をこの十字架で受け止めて、お前の持つ銀の十字架に反射した光をあてる。そうすればお前の体全体を光が包み込んで、お前はお前の世界へ帰れる。信じるんだ! お前は必ず帰れる。奇跡は必ず起きる!」
「分かりました。ところで枢機卿様は?」
「枢機卿殿は、教会堂の中で、お前の裁判の報告書を書いておられる。裁判で決まったように、お前の事は全て私が責任を持って任されている。いいか? そろそろ始めるぞ」
「待ってください。カール! 傍に来て」
 カールは佐緒里に呼ばれて、傍に駆け寄ってきた。
「何だいサオリ」
「私のリュックの右ポケットに手紙が入っているの。それを出して」
 カールはリュックの右ポケットを開けて、中から佐緒里が造った封筒を出すと、封筒を佐緒里に見せた。
「これだね?」
「うん。それでカールにお願いがあるの。その手紙をずっと持ってて。私がいなくなってから封を開けて中の手紙を読んでほしいの。約束して」
「分かった。約束するよ」
カールは佐緒里の真正面に来て佐緒里に顔を近づけ、佐緒里を見つめた。見つめられた佐緒里は顔を赤らめ、目から涙が浮かんできた。カールも涙ぐんでいる。

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「サオリ。さよなら!」
 カールはそのまま佐緒里と唇を重ねると、踵を返して佐緒里から離れた。
「みんな、サオリから離れるんだ」
 神父の一声で、カールとハンス。そしてエレンは佐緒里を遠巻きにするように距離を置いた。
「サオリ! 呪文を唱えろ!」
「はい!」
 佐緒里は両手で十字架を上に掲げた。
「スカーレットスパーク・エンジェルチャージ!!」
 その瞬間、佐緒里の身体が眩しい光に包まれ、真正面に立っていた神父は目をつぶった。光が神父の持っている金の十字架にあたって、反射光が佐緒里の持っている銀の十字架にあたり、佐緒里の身体が銀色の光に包まれた。昼過ぎにもかかわらず、あたり一面は太陽の光より強い光が覆い、みんなの姿をも光で見えなくした。
 そして光が消えたとき、そこには佐緒里の姿は無く、煙が燻った木柱と、佐緒里を縛っていた鎖だけが残されていた。
「消えた・・・ 成功だ・・・ サオリは自分の世界へ帰ったんだな・・・ 」
 神父は上に上げていた両手を下ろし、力が抜けたようにその場に座り込んだ。
「サオリーっ!!!!!」
 佐緒里を呼ぶカールの声が、むなしく木霊した・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

***************



「 ・・・ちゃん・・・ 佐緒里ちゃん・・・ 」
「ん・・・・ んん・・ 」
 佐緒里は誰かに呼ばれる声で、目を覚ました。
「佐緒里ちゃん! しっかりして。佐緒里ちゃん」
 佐緒里が目を開けると、すぐ目の前にエモトの顔があった。佐緒里の手には、例の銀の十字架がしっかりと握られていた。
「佐緒里ちゃん大丈夫? 急に倒れたから、何があったのかと思ったわよ」
「熱っ・・・・ 」
 佐緒里は十字架から手を離した。タイムスリップで熱を持っていたのだ。
「私・・ 眩しさでこの十字架をつかんだところまでは覚えてるんだけど・・・ エモトさん。エモトさんだよね」
「ちょ、ちょっと・・・ 倒れた時、頭でも打ったの? 佐緒里ちゃん。医者呼ぼうか?」

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 佐緒里はスカートの裾をパンパンとはたきながら、ゆっくりと立ち上がった。エモトが心配そうに、佐緒里のあちこちを見た。騒ぎに気付いたスタッフの何人かが、傍にやってきて回りを取り巻くように様子を見ている。
「エモトさん。大丈夫です。心配してくれてありがとう」
 佐緒里は傍に会ったリュックを背負うと、エモトの方を向いた。
「それじゃエモトさん。今日はありがとうございました。展示会の日にまた来ますから」
 佐緒里は踵を返すと、会場をあとにした。廊下を歩いている佐緒里は胸の辺りに強烈な違和感を感じて歩みを止めた。
「(何か変だ・・・ 胸の辺りがすごく熱い・・・)」
 佐緒里は熱さの元になっている部分を探った。それは左胸のポケットの中で、何かが入っているようだった。
「(胸ポケットには何も入れてなかったはずだけど・・・)」
 佐緒里は胸ポケットに手を入れた。すると中から赤いリボンが出てきた。カールが佐緒里にキスした時、素早く佐緒里の胸ポケットの中に忍ばせていたのだ。
「これは・・・ 」
 突然佐緒里の脳裏に、今までの事が全て甦ってきた。
「そうか・・  私・・・・ 中世のヨーロッパにタイムスリップして・・・ これはカールが私にくれたリボン・・ 」
 佐緒里の目から大粒の涙が溢れてきた。泣きたいわけではなかったが、それでも涙が止まらない。佐緒里はリボンをつかむと、そのまま建物の外へと一目散に駆け出した。


***************

 ACT.24 エピローグ

 そして展示会の初日・・・・・
 初日とあって、会場にはテレビカメラが入り、ニュースとして報道された。さらに『世界の果てまでGO GO GO』の特番として放送するため、そのスタッフも会場でカメラを回していた。会場の中に佐緒里の姿は無かった。佐緒里がいなかったのは、混乱を避けるために、エモトが前もって初日の事を佐緒里に話していたからである。
 ちなみに佐緒里のタイムスリップの原因となった金と銀の十字架は、佐緒里が握りしめていた銀の十字架だけが展示されていて、金の十字架はそこには無かった。佐緒里が中世にタイムスリップし、アルベルト神父の審問で話をしたことがきっかけとなって、その後の歴史が僅かに変わっていたのだ。十字架は銀の十字架、つまりズイルバー・シャッテンのみが略奪品の対象になり、金の十字架ゴルト・リヒトは略奪を免れたことになっていた。

 そして二日目の昼下がり・・・・
 佐緒里は友達の佳奈子たちを連れて会場にやってきた。会場は大盛況で、客の入りも凄かった。
「わあ・・ すごおい・・・ 」
「これが時価ン十億円の財宝かぁ・・・・ 」
「しかし、佐緒里ちゃんも凄い物見つけ出したね」

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 佳奈子たちが展示されている財宝を見ながら口々に言い合っている。ステージではエモトがテレビカメラの前で講演をしていて、その周りでは客やエモトのファンの人たちがエモトの講演に見入っているのが見えた。講演を終えたエモトは佐緒里に気付くと、周りにいたファンや客を押しのけて佐緒里の傍まで来た。
「おはよう佐緒里ちゃん。友達も来てくれたのね」
「おはようございます」
 佳奈子が色紙をおずおずと出し、エモトの前に差し出した。
「エモトさん。サインしてください」
「あ・・ 君は前に逢った事があるね」
「はい。佐緒里ちゃんの友達で、清水佳奈子といいます。私エモトさんの大ファンなんです」
 エモトはマジックを持つと、佳奈子が差し出した色紙に自分のサインをして、佳奈子に渡した。
「ありがとうございます。大事にします」
 傍で友人達が『よかったね』って口々に佳奈子に言った。そこへ聖奈子と絵里香、そして孝一がやってきた。
「あ、いたいた。佳奈子たちもう来てるわ。佳奈子!」
「お姉ちゃん」
「絵理香さん、孝一さんに聖奈子さん。おはようございます」

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「佐緒里ちゃんが古文書の暗号を解読して見つけ出した財宝だからね。見ずにはいられないわね」
「それにしてもすげえな。こんなのが日本に隠されていたなんて、まだ信じらんねえぜ」
「佐緒里ちゃん。美紀子さんも、もうすぐ来るわよ」

「やっほー! 佐緒里ちゃん。来たわよ」
「これが例の財宝かぁ・・・ ニュースで見たけど、実物を見ると改めて凄いって分かるわ」
美由紀と友里がやってきて、佐緒里に挨拶した。二人とも今までドラマの撮影があって、終了と同時にテレビ局からすっ飛んできたのだ。

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「美由紀さんに友里さん。この前の『二人は迷探偵』見ましたよ。二人ともゲストの出演だったけど、すごく良かったです」
「ありがとう佐緒里ちゃん。私たち次はいよいよ本格的なドラマに挑戦よ。来年の新春ドラマ劇場のスタッフからオファーがあって、もう撮影が始動しているのよ」
「ついさっきまでテレビ局で撮影してたの」
「わぁ凄い! 二人ともがんばってください」

 その時佐緒里の体に誰かがぶつかった。
「キャッ・・・」
「ア・・ ごめんなさい」
佐緒里が振り向くと、そこに学校の制服姿の麻美と紫央がいた。

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「麻美さんに紫央さん」
「久しぶり。佐緒里ちゃん元気?」
「はい。麻美さんも紫央さんも元気そうですね」
「勿論元気よ。今でも相変わらず妖怪相手に戦い続けているわよ」
「そうなんですか・・・ もし私が必要なら、いつでも呼んでください。必ず助けに行きますから」
「ありがとう」

 佐緒里は自分の知り合いたちに周りを囲まれ、その真ん中にいた。美紀子もやって来たが、佐緒里の周りに人が集まっていたので、少し距離を置きながら展示された財宝を見て回っていた。
 佐緒里がみんなと団欒しているところにエモトがやってきた。
「佐緒里ちゃん。あなたにお客さんが来てるわよ」
「私に? 誰だろう・・・ 」
「背の高い、ハーフっぽい男の子だったわ。年は君と同じくらいか、少し上かな・・・  廊下で待っていて、佐緒里ちゃんを呼んでくれって。実はその子昨日も来ていたんだけど、明日来るからまた来なさいって言って帰したのよ」
 佐緒里は一瞬考え込んだが・・・
「ちょっと私、行ってきますね」
 佐緒里はみんなに一礼すると、混雑をすり抜けて会場から廊下に出た。佐緒里は辺りを見回した。廊下は会場を出入りしている客でごった返している。すると、エレベーターの近くのフロアに立っていて、自分の方を見ている背の高い青年が目に入り、その人が手招きしていたので、佐緒里は小走りに駆けて行った。近くまで来て佐緒里はその青年を見上げた。佐緒里の身長は156㎝で、その青年は180㎝近くあり、どこか日本人離れしたハーフのような容姿をしていて、僅かながらカールの面影を持っていたので、佐緒里は思わず胸の高鳴りを感じた。
「赤嶺佐緒里さんですか?」
「そうですけど、あの・・ すみません。私に何かご用ですか?」
「はい。はじめまして。僕は白浜隆志(しろはまたかし)といいます」
 隆志は自分の名を告げると、持っていた紙袋の中から装飾された箱を取り出して開けた。中にあったものを見た佐緒里は、目を丸くした。例の金色の十字架『ゴルト・リヒト』だったのだ。
「あの・・ あなたが何故それを・・・・・ ???」
「やはりこの十字架の事を知っていたんですね。僕の曾々祖父(4代前)がキリスト教の牧師で、明治の時代にキリスト教の伝道のために日本に来て、その時にこの十字架を一緒に持ってきたのだと、僕の父が言っていました。その曾々祖父の名はアロイス・ヴェルナーといって、そのまま日本に帰化して、自分が最初に伝道した「白浜」という土地の名をとり、白浜の姓を名乗るようになったんです。そして、この十字架は『ゴルト・リヒト』といい、もう一つの『ズィルバー・シャッテン』という十字架とペアになっていて、父があなたに会えば、もう一つの十字架のところにたどり着けるとも言っていました。僕には何のことだかよく分からないんですけど・・・・  こういうものも預かっているんです」
 隆志は持っていたバッグから茶褐色に変色した封筒を出して、佐緒里に差し出した。佐緒里はそれがカールに宛てた手紙だとすぐに分かった。
「(私がカールに渡した手紙だ・・・・・ )」
 佐緒里は目頭が熱くなった。隆志は話を続けた。
「この手紙も代々家に伝わっていたものらしくて、先祖から代々引き継がれてきたらしいんですけど、詳しい事はよく分からないんです。僕の父が赤嶺佐緒里という人に会ったら見せてほしいって、昨年僕に渡してくれたんです。手紙に書かれていた日が昨日の日付で、昨日ここに来たんですけど、主催者のエモトさんが明日来るって言っていたから、今日改めて来たんです」

 この青年、白浜隆志はカールの子孫なのだ。年は佐緒里より一つ下の14歳で、現在中学校の2年生である。
 カールはあれからアルベルトの遺志を継いで神父になった。神父は規則で結婚が出来ないので、カールもアルベルト同様、養子を持った。そして年月が流れて、その末裔は17世紀頃にカトリックからプロテスタントに改宗し、代々牧師の職業を継いできた。そして日本の明治の時代にアロイスが日本へ伝道のため渡航してきて、そのまま日本に帰化して日本人の女性と結婚し、今日に至るわけである。
 隆志は封筒から手紙を出して佐緒里に見せた。手紙は茶褐色に変色していたが、佐緒里の書いた文字はくっきりと残っていた。佐緒里は手紙を隆志に返した。そして無意識のうちに目から涙がポロポロと落ちてきて、涙が止まらなくなった。

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「ど、どうしたんですか? 赤嶺さん」
「ごめんなさい・・・ 何でもないんです。何でも・・・ ないから・・・ 何でもない・・・」
 そう言いながら、佐緒里は自分の真正面にいた隆志に抱きついた。その瞬間、隆志は体全体に電気のようなものが走ったのを感じた。一種の『運命の赤い糸』のような現象だった。隆志の心の奥底に眠っていたカールの魂が復活した瞬間だった。
「あの・・ 赤嶺さん」
 佐緒里は隆志に抱きついていたが、吹っ切ったように隆志から離れた。
「ごめんなさい。初めての人にこんなことしてしまって・・・・ でも、何だかあなたが初めて会った人じゃないような気がしたんです。なんて言ったらいいのか・・・・ 変な話だけど、私の前世で出会った恋人のような気がしたんです」
「実は僕もなんです。赤嶺さんに抱きつかれた瞬間に、そんな感じがして、赤嶺さん、いや佐緒里さんが僕の生涯の人のように思えて・・・ こんな事言ったら失礼ですよね」
「いいんです。全然そんな事無いです。あの・・ あなたさえ良かったら、私とお付き合いしてもらえますか?」
「勿論ですよ! 是非僕とお付き合いしてください」
 突然のお互いの告白の会話に、二人ともそのあとはお互い黙ってしまった。暫しの沈黙を破り、隆志が話しかけた。
「僕はS県の城間という所に住んでいて、現在城間中学校の2年生です」
 佐緒里はビックリした顔で隆志を見た。
「(年下だったのか・・・ 高校生だと思った)  城間市だったら、私の隣の市ですよ」
「え? そうなんだ」
「私は鷲尾平です。今、鷲尾平一中の3年生です」
 佐緒里は右手を差し出した。隆志もつられて右手を出し、二人は握手した。そこへ美紀子がやってきた。
「あらあら・・・ こんな所で・・・ みんなあなたが戻ってこないから心配していたわよ」
「叔母様」
「佐緒里がなかなか戻ってこないから、様子を見に来たのよ。さっきから遠目で見ていたけど、二人ともなかなかお似合いのカップルに見えたわよ」
 佐緒里は顔を真っ赤にし、隆志も照れ臭そうな仕草を見せた。
「あ・・ 隆志さん、いや隆志君。この人は私の叔母で、紅林美紀子といいます。私は小学校の時に両親を亡くしているので、今は叔母の元で暮らしているんです」
「そうだったんですか・・・・」
「叔母様。この人は白浜隆志君」
 隆志は美紀子に会釈してから、美紀子に聞いた。
「ところで紅林って・・ もしかして城北大学の教授ですか?」
「あら、私を知っているの?」
「はい。父が城北大の卒業生で、よく話を聞くんです」
「あーっ・・ 君はもしかして私の先輩だった、白浜隆徳さんの・・・ 」
「はい。僕はその息子の隆志といいます。佐緒里さんとお付き合いしたいので、よろしくお願いします」
「佐緒里が選んだ人なら間違い無い。良いわよ」
「ありがとうございます」
「隆志君。色々と話したい事もあると思うけど、まず展示会へ行きましょう。私が案内するわ」
「はい」
 佐緒里は隆志の腕に自分の腕を絡めて腕を組んだ。隆志は少し顔を赤くした。そして佐緒里は隆志と一緒に、展示会の会場へと向かって歩き出した。

 (おわり)



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あとがき

『冒険少女佐緒里』無事完結しました。当初は自作の小説『10年目の回帰』の原作者である、カルシファー様の『囚われた少女』をモデルにした、魔女狩りとDIDをテーマにした作品でしたが、ストーリーの進行とともに、ファンタジー、ミステリー、またまた荒唐無稽といったスタイルに変わって、最後は男女の甘い恋の芽生えチックな形という終わり方をしました。
 タイムスリップのスタイルは、バック・トゥ・ザ・フユーチャーのアレンジを使用し、また魔女狩りがテーマの一つだったので、宗教的表現も入れ、キャラクターに宗教関係者を使うという選択をしました。気象現象や、温泉といったものをストーリーに使ったのは、中世の人々の感覚だと、それらが悪魔のようなものに見えるのではないか、という自分の見解からです。それは違うんじゃないか・・ という人もいるかもしれませんが、今の自分の知識ではこれが精一杯なので、指摘されても本編を書き直すということはしません。また、歴史上の都市名(コンスタンチノープル)や、歴史上の人物(マゼランやマルコ・ポーロ)。さらにジパングという名も使用しています。

 なお、佐緒里ちゃんと隆志君のこれからの事は、小説にはしませんので、皆様のご想像にお任せするという事で、結論に代えたいと思います。

 また、多分いないとは思いますが、イラストや小説で二次創作御希望の方がおりましたら、申し出てくだされば(無断はダメよ)ジャンルやシチュエーションに関係なく(ただしR-18Gはダメ)許可しますので、よろしくお願いします。

 最後まで読んでくださった方、また途中でも読んでくださった方々には、多大な感謝をいたします。読んでくださってどうもありがとうございました。

 鷲尾飛鳥



テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学