鷲尾飛鳥

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正義のヒロインミルキーピンク&美少女戦隊エンジェルス

2013年 05月17日 18:56 (金)

☆まえがき 

Pixivで小説を書いている“halka”様が、私の作品のキャラクターを使って、コラボ小説を書いてくれました。設定上の時間・季節等は、美少女戦隊エンジェルス本編の第21話~23話の間のあたりを想定しています。
 現在エンジェルスの本編の方で、私の方でhalka様のミルキーピンクのキャラクターを使わせてもらい、第32話~34話の間でミルキーピンクのキャラクターが自分のキャラクターと共演しています。
  
 挿絵はまだありませんが、時間があり次第、入れていこうと思っています。


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 正義のヒロイン ミルキーピンク&美少女戦隊エンジェルス
( 原作:halka )
 
 オカ研の活動は週に一度、担当者がネタとなる話題を持ってきてそれについてあれこれ話し合う、簡単に言えばそんな所である。

仁美「さあ、今日はどんなネタを持ってきてくれたかな、麻美ちゃん」

 今日の当番は麻美。

 麻美はネタとなるネットのページを印刷したものを配布する。仁美のチェックが入る。緊張の一瞬である。

仁美「なになに~?連続少女失踪事件・・・神隠しの様に・・・マスコミも報道なし・・・か」
紫央「これってオカルトとかいう以前に犯罪じゃないのか?」

 紫央の冷静なつっこみに仁美が吹き出す。

仁美「確かに。どっかの変質者かあるいは高校生の身体を小さくする薬をもってる黒い組織かじゃない?」
麻美「そ、そんなぁ・・・」

 肩を落とす麻美。

麻美「でも何か気になるのよね」
紫央「何かって・・・?」

 麻美の言葉に秘められた不安に紫央も気づいた。麻美は記事に載っていた現場の写真を指差す。現場は公園のようだった。緑が多く、それがかえって夜になると不気味さを増すようだ。写真の奥にピントがぼけて映っているのは、落雷か何かで焼き焦げた大木のようだった。

仁美「この木?」
麻美「そう。よく見るとしめ縄みたいなのが付いてるの。これはご神体だったのかも」

 紫央がゴクリと生唾をのむ。その脇で仁美が目を輝かせている。

麻美「もしこのご神体が霊的な何かの力を抑える役割だったとしたら・・・この失踪事件と関係があるか    も・・・」
仁美「面白いじゃない!!!!」

 仁美が我慢しきれず飛び上がる。

仁美「とにかく現場を見る必要があるわね。さっそく明日、行ってみましょう!」
紫央「・・・行動が早いな」

 だが紫央は否定はしない。麻美がこう言っているということは、妖気を感じているに違いないからだ。この失踪事件はただの事件ではないという証拠である。

仁美「それで、現場はどこなの?」
麻美「現場は・・・鷲尾平という所よ」

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 写真に写っていた公園にたどり着いたのは夕刻だった。辺りには人影もなく、秋の虫たちが夜の闇が近いことを告げていた。

紫央「・・・狙ったような時間帯についたものだ」
仁美「いい雰囲気じゃない。さっそく写真に写っている木を探しましょう?」

 3人が木々の茂った公園の奥へと入っていった。しかし麻美はすでに嫌な予感を感じていた。

麻美(なによ、この妖気・・・この先から感じる。あのご神体はやっぱり何か妖怪の力を抑えていたんだわ。)

 その時だった。林の奥から低い声の会話が聞こえてきたのだ。とっさに身をひそめる麻美たち。

麻美(・・・誰かいる)
紫央(麻美、見て、あれ・・・)

 紫央が指差した先には、写真でみた焼き焦げたご神体の巨木があった。そしてその木の下に、薄緑色の全身タイツを身に着けた奇怪な姿の者たちが数人いたのである。そしてその中央、全身タイツたちを取り仕切るように何やら支持を出しているのは、ピンクの風呂敷を被ったような姿をした一つ目の化け物だった。

仁美(!?な、な、なにぃぃいいいい!?何あれ!?!?)
紫央(しっ。仁美、静かに。)

 紫央が仁美を制止しようとした時だった。
 がさっ。
 反動で枝の擦れる音が立ってしまった。化け物たちの視線が一斉に麻美たちに集まる。

おんぶ「誰だ。そこで何をしている」
麻美「やばい、見つかった。逃げるよ、紫央、仁美!!」

 驚いている仁美の手を強引に引っ張り、逃げ出す麻美と紫央。しかし全身タイツたちが追いかけきて、すぐに取り囲まれてしまった。戦闘態勢をとる麻美と紫央。

おんぶ「小娘どもが。見てはいけないものを見てしまったな。ネオ・ブラックリリーの秘密を知ったものは生きては返さない!」

 化け物の合図とともに全身タイツたちが一斉に麻美たちに襲いかかる。しかし麻美と紫央はその鍛え抜かれた格闘技で全身タイツたちを薙ぎ払った。

麻美「紫央、仁美と一緒に逃げて。ここは私が時間をかせぐ。」
紫央「わかった。麻美、気を付けて。」
麻美「うん、ありがとう」

 目と目で互いに意思を確認しあう二人。まだ訳が分からないといったふうの仁美を連れて、紫央は麻美に背を向け走った。

おんぶ「逃がすな、追え!」

 ばしゅっ!
 二人を追おうとした全身タイツを麻美のキックが吹き飛ばした。

麻美「なによ。レディーを前にして無視するなんて、あんまりじゃない?ネオ・ブラックリリーとか言ったわね。あなたたちはいったい何者なの?」
おんぶ「ばけばけばけ。小娘、貴様が知る必要はない。貴様はここで死ぬのだからな」
麻美「じゃあ、力づくで教えてもらおうかしら。変身クロスチェンジ!!」

 まばゆい光が麻美を包み、化け物の視界を奪う。光の中から現れたのは、赤いタンクトップとミニスカート、白銀のロングブーツとグローブを身に着け、顔を青いゴーグルで隠した正義のヒロインミルキーピンク。

おんぶ「貴様、まさかエンジェルスの小娘どもの仲間か・・・・!?」
麻美「エンジェルス?私は正義のヒロイン ミルキーピンク。か弱い少女を狙う悪党どもは、この私が許しません!覚悟なさい」
おんぶ「ネオ・ブラックリリーに歯向かうものは皆殺しだ。者どもかかれ!!」

 全身タイツたちが麻美に襲いかかる。麻美は冷静に身をかわし、一人、また一人と倒していく。

麻美「さ、あとはあなただけよ、妖怪さん」
おんぶ「妖怪?この俺はネオ・ブラックリリーの科学力で生み出された改造魔人おんぶ魔人だ。ばけばけばけ」
麻美「さっきから言ってるそのネオ・ブラックリリーとかいうのは何なのよ。ショッカーの仲間?」
おんぶ「世界征服を企む悪の秘密結社という点では正しいな。だが我々はやつらより数段うえの悪魔よ」
麻美「女の子を襲って数段上とか言ってる時点で大したことしてないわね。どうせ他の人たちもあんたたちが誘拐したんでしょ?」
おんぶ「ばけばけばけ、察しがいいな。やつらは今回の作戦のためにアジトに監禁してある。じきに全員死ぬことになるから探しても無駄だぞ」

 高らかに笑うおんぶ魔人。麻美は怒りの拳を握りしめた。

麻美「このミルキーピンクがいる限り、そんなことは絶対にさせない。たあ!!」

 麻美の正拳がおんぶ魔人を襲う。
 ばしゅっ!
 パンチが悪を貫いたかに思えた。しかし魔人の風呂敷のようなつかみどころのない身体によって威力が吸い取られた。

麻美「な!?私のパンチが・・・」

 魔人は瞬間移動し、少し離れた所に現れ、その長いべろで麻美を挑発した。

おんぶ「ここまでおいで~」
麻美「馬鹿にしてっ! くらえ、クロス・ショット!」

 魔法の刃が魔人を襲う。・・・しかし、クロスショットまでもが魔人の身体に吸収されてしまったではないか。

麻美「クロスショットまで!?」
おんぶ「ばけばけばけ、お返しだ」

 驚いている麻美に向けて、おんぶ魔人は両手から怪光線を放つ。

麻美「うわああっ!!」

 麻美はよけきれずに、直接ダメージを受けて吹き飛ばされた。地面に倒れる麻美。

麻美「そんな・・・私の魔法が、跳ね返された・・・?」

狼狽する麻美。しかしこんな所で負けるわけにはいかない。麻美は立ち上がり、魔人に向き直った。
しかし・・・

麻美「しまった、どこへ消えた!?」

 この瞬間に姿をくらませてしまったのである。辺りを探す麻美。しかしおんぶ魔人の姿はない。

麻美「いったい、どこへ・・・・」

 その時である。麻美の背中に突然重さが生じた。

麻美「うっ!?な、なに・・・」
おんぶ「ばけばけばけー」

 奇声とともに、麻美の背中に負ぶさったおんぶ魔人が姿を現した。

麻美「し、しまった・・・離れろ、こいつっ、このぉっ!!」

 エルボーを繰り出し、背中に張り付いた敵に攻撃する麻美。しかし先ほどのパンチと同様、肉弾攻撃では敵の身体に効果がない。

麻美「おのれ・・・・」
おんぶ「俺様を背負ったが最後、貴様に勝ち目はないぞ、小娘。俺様の身体は人間の精気を吸い取りミイラにするのだ。」
麻美「なんだと・・・くうぅ・・・あぁぁ・・・」

 麻美の身体からエネルギーが吸い取られていく。焦る麻美。必死に逃れようと、背中のおんぶ魔人の腕を持ち背負い投げようとするが、敵の力のほうが一段上である。投げることもできず、もがき苦しむ麻美。とうとう膝をついてしまった。

麻美「はぁはぁ・・・このままじゃ、力が・・・」
おんぶ「しぶといやつだ。そんな抵抗する顔もまたかわいいなぁ」

 そう言うとおんぶ魔人は長い舌をだし、麻美の首筋をベロリと舐めた。

麻美「はぅぁ!?!?」

 麻美の身体がビクリと反応する。

おんぶ「ばけばけばけ、俺様の舌は精気をさらに早く吸い取るのだ」
麻美「や、やぁ・・・そんなところ、舐めちゃ・・・はぅぅ・・・///」

 身体の力が抜け、地面に崩れ落ちる正義のヒロイン。赤面しながら必死に歯を食いしばるも、よだれが噛みしめた歯の間から滴り落ちる惨めな姿はとうてい気高いヒロインのものとは思えない。どろどろの汚い舌が麻美の綺麗な顔に伸びる。

麻美「はむんんん・・・顔は・・・い、いやぁ・・・・ふむんんんん///(力が入らない・・・!?くそう、こんな変態攻撃に、負けるわけにはいかないのに・・・!!)

 べろべろ、ぴちゃぴちゃ
 人の身体ほどもある大きな舌が、麻美の小顔を舐め回していく。ブルーのゴーグルに唾液が滴る。顔を守る両手のグローブももはや肌にまで届くほどびしょびしょだった。

おんぶ「声がエロくなってきてるぞ? だんだん気持ちよくなってきたんじゃないのか?」
麻美「そ、そんなわけ・・・んんぁぁ♥ (首筋を舐めないでぇぇ・・・本当に気持ちよくなっちゃう・・・)

 じたばたと地面を蹴る純白のブーツが徐々に抵抗を失っていった。決して重いわけではない妖怪の身体に抵抗できない麻美。

おんぶ「ばけばけばけ、いい反応だなあ。もう力も入らなくなってきてるじゃないか。それは精気を吸われているからか?それとも身体が感じてきてるだけじゃないのか?」
麻美「ば、ばかなことを・・・っ!正義のヒロインが、化け物ごときに、そんな・・・ぅぅ」

 うつぶせに押し倒され、背後から舌による醜悪な凌辱を繰り返される麻美。抵抗する力はもはやなく、変態妖怪になされるがままだ。魔法も打撃も利かない強敵に為す術もなく敗北するしかないのか、ミルキーピンク!?

「そこまでよ!」

 麻美が倒されそうになった、その時だった。

おんぶ「何者だ?」
絵里香「闇の世界より出でて世界を征服しようとする悪の手先!」
聖奈子「お前たちの野望は私達が絶対打ち砕く!」
美由紀「私達の手で引導を渡してやるから覚悟なさい!」
3人「私達は正義の戦士!美少女戦隊エンジェルス!!!」

 夕日に照らされポーズを決めるエンジェルスと名乗る少女たち。彼女たちはそれぞれが赤、青、黄色の変身スーツに身を包み、手には剣や盾、バトンを持っている。おんぶ魔人は弱った麻美を押し倒して立ち上がり、彼女らに戦闘態勢をとった。

おんぶ「やはり出てきおったか、小娘ども。皆殺しにしてくれる。」
聖奈子「来い、化け物!」

 聖奈子と美由紀が同時におんぶお化け魔人へ向かい合い、麻美から離れたて戦闘を開始した。その隙に絵里香は麻美を助け起こした。

絵里香「大丈夫ですか?」
麻美「あ、あなたたちは・・・」
絵里香「私達はエンジェルス。正義の味方です。」
麻美「エン、ジェルス・・・」

 近くで見ると歳は麻美と同じくらいだろうか。凛とした目には麻美も知っている正義の戦士の光が宿っていた。

麻美「気を付けて・・・奴に背負われては、いけない」
絵里香「え?どういうことですか・・・」

 絵里香が首をかしげたその時だった。戦闘を繰り広げていた美由紀の悲鳴が聞こえた。

美由紀「イヤだ、背中に何か・・・くっ」
聖奈子「美由紀、大丈夫?奴はどこに・・・」

 すると美由紀の背中からおんぶおばけ魔人の奇声が聞こえた。

おんぶ「ばけばけばけー、まんまと罠にかかったな、小娘」
美由紀「えぇ?・・・私の背中に、負ぶさっているの?イヤー離れてー!!」

 見えない敵に対して腕をがむしゃらに振り回し、必死に抵抗する美由紀。しかし敵の恐怖の特殊能力によって、徐々に精気を吸い取られ弱っていってしまう。

美由紀「あぁ、力が、抜けて・・・」
聖奈子「美由紀、しっかり!ちくしょう、美由紀から離れろ!」

 聖奈子は美由紀の背中のあたりを切りつけた。何も見えない空間に確かな手ごたえがあった。おんぶおばけ魔人が美由紀に背負いかかった姿を現した。

おんぶ「見つかっちゃったか」
聖奈子「こいつ、私のソードが全然利いてない・・・」
おんぶ「ばーけばけばけ、俺の身体には魔法も打撃も効果はないのだ。一人ずつ精気を吸収していってやるから、待っていろ。まずは貴様だ」
美由紀「イヤぁああ!!放して!!ぐぅぅ・・・やぁぁ・・・」

 美由紀の抵抗も空しく、エンジェルパワーがどんどん吸収されていく。このままでは美由紀が危ない。ついに魔人を背負いながら膝をついてしまう美由紀。聖奈子はいてもたってもいられなかった。

聖奈子「ちくしょう、だったら、アクア・トルネー・・・」
絵里香「待って、聖奈子!」

 必殺技を繰り出そうとした聖奈子を絵里香が制止した。

聖奈子「絵里香、どうして・・・」
絵里香「説明は後!美由紀、エンジェルバトンを使って」

 美由紀は半信半疑、エンジェルバトンを構えると、敵の身体に押し当てた。雷のような電流が流れ、おんぶ魔人は悲鳴を上げて痺れ始めた。

おんぶ「ぐわぁあああ、こりゃたまらん」

 光の戦士である美由紀にはバトンの電流は利かない。ついにおんぶ魔人は耐えきれなくなり、美由紀から離れた。

聖奈子「やったー!大丈夫、美由紀?」
美由紀「うん、何とか・・・」
絵里香「やっぱりね。あいつは魔法を吸収して跳ね返してしまうらしいの。だとしたらアクアトルネードは危険だったわ。でも美由紀の放電能力だったら吸収される前に敵にダメージを与えられる。」
聖奈子「さっすが絵里香!あったまいいー」
絵里香「これは麻美さんのアイディアよ。」
 
 絵里香は振り向いて、麻美にVサインを出す。木にもたれかかる様に休ませられていた麻美は、絵里香に答えて親指を立ててサムズアップしてそれに応える。

美由紀「あの人は、いったい・・・」
絵里香「あの化け物を倒したら、お互い自己紹介しなきゃね。さあ、反撃開始よ!」

 おんぶおばけ魔人に武器を構えた。

「くくく、甘いな、エンジェルスの小娘ども」

 どこからともなく響く怪しい女の笑い声。絵里香たちエンジェルスに緊張が走った。

絵里香「この声は・・・」

 すると、夕闇が具現化し軍服姿の女が姿を現した。その腕には・・・

麻美「紫央、仁美!」

 紫央と仁美が囚われているのが麻美の目に入った。紫央は女の手にした鞭によって身体を縛られており、仁美は気を失っていた。軍服姿の女と戦ったのだろう。紫央の身体には所々に服の汚れや傷が見える。

紫央「くっ・・・すまない、麻美・・・」

 紫央の瞳が遠くの麻美と交差し、そう語っていた。

美由紀「お前はドクターマンドラ!」
マンドラ「この人間どもの命が惜しければ攻撃をやめるのだな。」
聖奈子「人質なんて卑怯だぞ」
マンドラ「ふん、何とでも言え。さあ、攻撃をやめるのか、やめないのか」

 目の前で人質をとられては絵里香たちにも策の施しようがない。唇をかむ絵里香たち。そこに傷だらけの麻美がよろよろと合流してきた。

麻美「紫央と仁美を返して!」

マンドラ「ん、貴様は何者だ?・・・その姿、只者ではないな。まあいい。今は貴様たちに構っている暇はないのだ。退いて作戦を遂行せよ、おんぶ魔人。」
おんぶ「わかりました、ドクターマンドラ様」

 ワープしようとするドクターマンドラとおんぶ魔人。エンジェルスが後を追おうとする。

聖奈子「逃げるのか!?待て、こら!」
絵里香「今度は何を企んでいるの?」
マンドラ「それを貴様たちに教える義理はない。だが近いうちに、貴様ら人間どもに絶望を見せつけてやる。わーははは。」

 そういうとドクターマンドラは笑い声を残して消え去ってしまった。紫央と仁美を連れて・・・

麻美「紫央、仁美!!」

麻美の叫びは空しく夕闇に吸い込まれていった。

   *********************************

美紀子「宮代麻美さん、だったわね。私は紅林美紀子、よろしくね。」

 そういうとその女性はコーヒーの入ったコップを麻美へ差し出した。ここはこの女性、紅林美紀子の探偵事務所である。おんぶ魔人との戦闘でエネルギーを消費しすぎた麻美は、絵里香たちに連れられてこの事務所へやってきたのだった。コーヒーを受け取る麻美の顔は暗かった。ネオ-ブラックリリーの魔人に手も足も出なかった。それだけでなく親友を目の前で連れ去られてしまったのだ。

美紀子「気持ちはわかるわ。ここでじっとしているわけにはいかない、って顔してる。」
麻美「・・・」
美紀子「でも今は冷静に作戦を練ることが大切よ。さあ、あなたの知っていることを教えてちょうだい。」

 美紀子の顔をじっと見つめる麻美。この麻美より少し上の年頃の女性の瞳。そこには絵里香たちと同じ、正義の炎が宿っていた。傍らにいた絵里香がそっと麻美の手を握ってきた。

麻美「・・・絵里香さん」
絵里香「大丈夫。お友達は必ず助け出せる、ううん、必ず助け出してみせる!」

 麻美は絵里香の顔を、そして周りにいる聖奈子、美由紀、美紀子の顔を見回した。

聖奈子「あなたも正義のヒロインなんでしょ?じゃあ私達と気持ちは一緒だよ。」
美由紀「よろしくお願いね、麻美ちゃん」
絵里香「力を合わせて一緒に戦いましょう!」
麻美「みなさん・・・・お願いします!」

 そして力強くうなずくと、絵里香の手を握り返した。
 麻美は先ほどの神社近辺で少女が行方不明になっていること、ご神体と思われる大木が焼け焦げていたこと、そのご神体の前でネオ-ブラックリリーに出会ってしまったことを話した。そしてそのご神体からただならぬ妖気があふれていたことも。美紀子は黙ってその話を聞いていたが、麻美が話し終わると一つ息をつきコーヒーをすすった。

美紀子「麻美さん、ありがとう。どうやらネオ-ブラックリリーとその妖気とは何か関係がありそうね。」
絵里香「え?妖気って、妖怪の力のことですか・・・?」

 美紀子の発言に驚く絵里香たち。恐怖の科学技術によって改造魔人を作り出し、殺人兵器を用いて暗躍してきたネオ-ブラックリリーたちと戦ってきた絵里香たちにとって、妖怪という非科学的な存在は信じがたいものだったに違いない。麻美は絵里香の言葉にうなずく。

麻美「私も美紀子さんの意見と同じです。ここへ来る前に私達が調べたところによると、あの神社のご神体は昔、邪悪を封印していたらしいんです。それが何か具体的にはわかりませんでしたが・・・」
美紀子「ネオ-ブラックリリーはおそらくその力を手に入れた・・・」
美由紀「それがさっきの化け物なの?」
麻美「あいつからも弱い妖気を感じましたが、あいつ自体は妖怪じゃありません。」
美紀子「だとすると、みんなが戦った魔人は、その封印の力でパワーアップしたと考えるほうがいいわね」

 麻美はなるほどという風に頷く。絵里香たちから聞いた話だと、エンジェルスの打撃も魔法も通じない敵など、これまでに見たことがない。ネオ-ブラックリリーの科学力をもってしても、宇宙のエネルギーを分け与えたエンジェルスの力で対抗できないはずがないのだ。だとすると新しい力を得たと考えるのが理にかなっている。

美紀子「今度の敵のパワーアップの謎はだいたい解けてきたわね。・・・あとはさらわれた女の子たちを使って奴らが何を企んでいるかが問題ね」

    ***************************************

 麻美たちが美紀子の事務所で作戦を練っているころ、紫央と仁美はネオ-ブラックリリーのアジトへ連れてこられていた。両手に手錠をはめられ、同じくはめられた首輪に手錠が鎖で繋がれている状態で、紫央と仁美は牢獄へ押しこめられた。

仁美「きゃあっ、痛いっ」

 尻餅をついた仁美が小さい悲鳴を上げる。牢獄の中には先に連れ去られてきたと思われる少女たちが、同じように両手を拘束され監禁されていた。それを見た紫央は唇をかむ。

紫央(くそう、一般の人たちもこいつらに誘拐されていたのか。)

 と、その時、実験室のような部屋から女性の叫び声が響いた。しばらくすると、精神が崩壊し廃人のようになった女性がゴミの様に引きずられてそこから連れ出されてきたではないか。牢獄にいる少女たちが一斉に恐怖に震えた。

おんぶ「こいつも違ったようだ。次の女を連れてこい」
戦闘員「ヒャイー!!」

 戦闘員が敬礼すると、紫央たちの牢獄へとやってきた。牢獄の中が騒然とする。

女「いやああ、死にたくない!!」
女「助けて、お願い、助けて」
戦闘員「うるさい、黙れ」

 品定めをするように牢獄の中を見回す戦闘員を紫央は睨み付けた。

紫央「やるんなら私から連れて行け。」
戦闘員「なにを?生意気な小娘だ。いいだろう、次のモルモットは貴様にしてやる。」

 力づくで紫央の髪をつかみ立ち上がらせる。

仁美「いやあ、紫央を連れて行かないで!!」
戦闘員「うるさい、黙れ。ならば貴様も一緒に連れて行ってやる。」
紫央「やめろ、仁美は関係ない!」
戦闘員「ええい、黙れ黙れ!!」

 無抵抗の紫央の頬を殴り、すがりついてくる仁美を蹴り飛ばす戦闘員。小さな悲鳴とともに、地面に倒れ伏した仁美をもう一人の戦闘員が立ち上がらせ、紫央とともに実験室へ連れて行った。

おんぶ「次は貴様たちか。」
紫央「くっ・・・私達をどうするつもりだ?」
おんぶ「貴様たちはクチ妖怪様に身体を提供する媒体となるのだ。心配するな、運良くクチ妖怪様とシンクロできれば貴様の身体に傷はつかん。精神はどのみち崩壊するがな。ばーけばけばけ。」
紫央「・・・下衆どもめ・・・っ!!」

 紫央は怒りにまかせて、拘束されていない自由な足で、周りを囲んでいる戦闘員を蹴り飛ばす。しかしすぐに他の戦闘員によって抑え込まれ、地面に羽交い絞めにされてしまう。

紫央「く、くそう・・・変身できれば、こんな奴ら・・・」
おんぶ「ふん、乱暴な女だ。早く実験室へぶち込め。」
紫央「くぅうう!放せ、こいつ・・・っ」

 抵抗も空しく実験室へ追いやられる紫央と仁美。仁美の叫び声とともに、実験室の重い扉が閉じられた。
そこへドクターマンドラがやってくる。

マンドラ「おんぶ魔人よ。実験材料となる人間の女が足りない。もっと集めてくるのだ。それとエンジェルスの小娘どもに勘付かれた。貴様にはすでに奴らに勝るパワーアップを施してある。奴らの息の根も止めるのだ。」
おんぶ「ははあ、仰せのままに。」

 おんぶ魔人は敬礼すると作戦室から出て行った。一人になったドクターマンドラは実験室の扉を見つめ、薄く微笑んだ。

マンドラ「まさか妖怪が本当にいるとは思わなかった。見ておれ、エンジェルスの小娘ども。この力を使い、世界をわがものにするのだ。あーっはははは」

 ネオ-ブラックリリーの恐怖の作戦が動き始めている。紫央と仁美の運命は・・・。早く助け出すんだ、ミルキーピンク、そしてエンジェルス!!

  *****************************************



 ・・・背後から無数の触手に襲われる。
「ちっ、しまった・・・・ぐぁあぁああ」
 抵抗しようにも、既に四肢の自由は敵の触手によって完全に奪われていた。バトル用のロングブーツを履いた細く美しい足が、拘束から逃れようと必死に抗う。触手はそれを見物するかのように、その脚だけジタバタする余裕を与えていた。
「このままでは、引きずり込まれる・・・はぅっ、くっ・・・し、締め付けが、きつく・・・!?うがぁっ」
 細い首をロープのように触手が食い込む。息ができず、空気を求めて空を仰ぐ。可愛らしいバトルコスチュームが、触手とともに肌に食い込んでくる。
(息が・・・くそう、意識がもたない・・・こんな所で、負けるなんて・・・・)
 悔しさに唇を噛み締める正義のヒロイン。幾多の敵を倒してきたプライドが一瞬にして崩され、今はただ敵の触手に弄ばれることしかできないのだ。悔しさに涙が流れる。その瞳が次の瞬間、見開かれた。
「む、胸に!?こいつら・・・や、めろ、そこは・・・ら、らめえ!!♥」
 もっとも敏感な場所を触手が器用に攻めていく。バトルスーツごしでも乳首が勃起しているのがもう分かる。窒息して飛びそうになっていた意識が強制的に引き戻され、今度は快楽の海に沈められようとしている。
「『 頭の中が真っ白になる・・・・』」
 
黒「ぐへへ、たまんねぇ・・・ジュルリ イくのかい?イっちゃうのかい?」

 女の子とはとても思えない声で独り言を言いながら、パソコンの画面に食いつき創作小説を読む少女。部屋は暗く、パソコンの光だけが少女の怪しげな恍惚とした表情を照らし出している。

黒「もっといじめろ」

 その時である。急に部屋のカーテンが音もなく揺れた。しかし少女はパソコンに夢中で気づかない。

?「見つけたぞ」

黒「ん?なんか聞こえた?」

 かすかに聞こえた声に少女はようやくパソコンから目を放す。すると部屋の鏡に自分ではなく化け物の姿が映っているではないか。少女の悲鳴がこだまする。
 
黒「な、なに!?」

おんぶ「ばけばけばけーお前のよこしまな心、そういう人間を探していたのだ。」

 鏡から抜け出したピンク色の風呂敷化け物につかまる少女。鏡の中へ引きずり込まれる。

黒「やめて、放して!!誰か助けてぇえええ」

 少女の叫びを残し、何事もなかったかのようにパソコンの画面が光り続けていた。


   **********************


クイーン「ドクターマンドラ、作戦の状況はどうなっている?」

マンドラ「はっ、クイーンリリー様。現在、妖怪復活のための憑代となる女をおんぶ魔人がついに発見いたしました。」

クイーン「ほお、ついに見つけたか」

 ドクターマンドラは得意げにおんぶ魔人を呼び出す。そこには黒縁メガネで背も低く、髪もぼさぼさに伸びた、いかにも根暗そうな女子高生が連れてこられた。今は気を失っており騒ぎはしないが、ここへ来るまでに相当の恐怖を感じたのだろう、両頬が扱けて細い顔がさらに不健康そうに見える。

おんぶ「クイーンリリー様、この女にございます。」
 
クイーン「・・・・・・・・・・ドクターマンドラよ」

マンドラ「ははあ。・・・・・・・・」

 ドクターマンドラはクイーンリリーの言わんとしていることが分かった。それはこの女子高生を見たとき、彼女自身もそう思ったからである。どこにでもいそうな普通の、いや普通以下の容姿の人間が、本当に妖怪復活の憑代になりえるのだろうか、と。

クイーン「ふん、まあいい。今回の作戦は、全て貴様の立案によるものだ。その意味がわかるな?」

マンドラ「こ、心得ております。」

クイーン「万が一にも作戦が失敗し、我がネオ-ブラックリリーの名に泥を塗るようなことになれば、それ相応の罰を受けてもらうぞ」

マンドラ「ははあ!」

 そこで通信は途絶えた。
 大幹部ドクターマンドラは冷や汗を拭うと、おんぶ魔人に向き直った。

マンドラ「ここまで言われてしまったのだ、おんぶ魔人。貴様、その女に間違いなかろうな?」

おんぶ「ばけばけばけ、ご安心くださいドクターマンドラ。私に植え付けられた妖怪のエネルギーがこの女にもっとも強い反応を見せました。」

マンドラ「そうか。ならば、早急に妖怪復活の実験に取り掛かるのだ。」

 おんぶ魔人は敬礼すると、連れてきた女―黒野末子を連れて実験室へ入っていった。その実験室の扉が閉まるのを見て、マンドラはあることを思い出し、戦闘員を呼んだ。

マンドラ「例の女どもはどうしている?」

戦闘員「キィー。厳重警備のもと、地下牢に監禁してあります。その後とくに暴れることもないようです。」

マンドラ「そうか・・・」

 ドクターマンドラは気になっていた。実験材料として妖怪の憑代にしようとした時、被験体から謎のエネルギーが放出され、妖怪の力を退けたのだった。あの時の光をドクターマンドラは今でも覚えている。

マンドラ「(一瞬のことだったが、この私さえ戦慄させるほどのパワーだった。野放しにしておくには危険すぎる)先の実験時のデーターが取れ次第、やつらを処刑する。そうだ、エンジェルスの小娘どもを誘き出す人質にして、一網打尽にしてくれよう。それまで監視を怠るな。」

戦闘員「ヒャイー!」

 一方、ここは紫央と仁美が囚われている地下牢。

紫央「・・・仁美、仁美」

 紫央は両手足を鎖で壁につながれ、磔にされていた。その状態で、同じように並んで磔にされている仁美に、外の看守に聞こえないように小声でささやいた。仁美はあれ以来ずっと気を失ったままだ。これまでの妖怪退治で幾度も恐怖は味わってきたが、こんな絶体絶命の状況に陥ったことはないのだから無理もない。一方の紫央は、脱出の機会をうかがっていた。仁美が気づかないのを確認すると、本題に入るというふうに声を低くしてもう一度呟いた。

紫央「ならば聞こえているか・・・ヒルデ?」

 その問いかけに、仁美の目がうっすらと開く。正確には、仁美の身体に宿ったもう一つの人格、戦人ブリュンヒルデことヒルデの鋭い目である。

ヒルデ「やれやれ、妖怪の巻物の件以外で手を貸すつもりはなかったのだがな。」

 ヒルデも紫央同様、看守に気づかれないほど小声で、身動き一つせずに囁く。

紫央「やはりさっきの光はお前か。」

ヒルデ「勘違いするな。宿主に妖怪なんぞが取りついては、私の居場所がなくなる。それだけだ。」

紫央「勘違い?お前こそ、気づいているなら寝たふりなんかしてないで、ここから抜け出す作戦を考えるぞ。」

ヒルデ「・・・口の減らないやつめ」

 麻美がいないと、まさかこれほどまでに仲が悪いとは・・・  喧嘩になりそうになったその時、

看守「うるさい。何を話している!?」

 看守に気づかれてしまった。とっさに口をつぐむがもう遅い。舌打ちをする紫央。何を話していたか尋問されては面倒だ。するとヒルデが驚くほど甲高い声で悲鳴を上げた。

ヒルデ「嫌だ、ここはどこなの!?放して、放してよぉー!!」

看守「気が付いたか。ええい、うるさい!黙らんと殺すぞ」

ヒルデ「きゃああああ」

 ロマン主義の小説にありがちな悲鳴を上げて気を失う・・・ふりをするヒルデ。しかし看守はそれに気づかず、小心者の仁美がまたショックで気絶したのだと思った。

看守「ふん、静かにしていれば命も長らえる。せいぜい余生を大事にすることだな」

 そう言い残すと再び見張りに戻っていった。静かに安堵の息をはく二人。

紫央「・・・やるじゃないか。その・・・助かった・・・・///」

ヒルデ「ふ、ふん・・・/// いずれにしても、この状況では下手な動きはできん。巫女(麻美のこと)に念波を送ってみるが、具体的な場所までは伝えられん。しばらく敵の動きをみるしかないな。」

      **************************************

 ・・・・こよ、起きろ、巫女よ
 声がして、麻美は飛び起きた。ここは紅林美紀子の探偵事務所。次の日に絵里香や美紀子たちと一緒に紫央と仁美の捜索を行うということになり、この探偵事務所に泊めてもらったのだった。

麻美「この声は・・・ヒルデ!?」

 麻美は事務所の一室で、借りたベッド(昔、紅林源太郎が使っていた)の上から、何もない空間に向けて呟いた。すると麻美の脳へ直接答える声があった。

ヒルデ「そうだ。ようやく起きたか。」

麻美「無事だったのね!!紫央は?二人ともいまどこにいるの?」

ヒルデ「守り人(紫央のこと)も無事だ。今は敵のアジトに監禁されていて、ここがどこだか私にもわからぬ」

麻美「・・・そう。よかった~」

 ヒルデの話の後半はほとんど聞いていなかった。無事という言葉に、麻美は深い安堵の息を吐く。二人の無事が確認できただけで、憂鬱だった気分がすっと晴れたようだった。

ヒルデ「私の念波が使えるのは短い。無駄話には使えないぞ。今わかっている情報を伝える。」

麻美「うん、わかった」

 ヒルデはそこで、アジトで見た人質の姿や実験のことを伝えた。クチヨウカイなる妖怪の復活が今回の誘拐事件の目的であることも。

麻美「そういうことだったんだ・・・」

 麻美の頭の中で謎が一つにつながった。と、そこまで話したところで、絵里香が扉を開けた。

絵里香「麻美さん、おはよう!・・・今、誰かとしゃべってた?」

 麻美の意識が絵里香へ移ったことで、念波の通信が乱れた。一方のヒルデのほうでも時間的に限界だったらしい。
ヒルデ「そちらも・・・じょ・報をつかんで・・ようだn・・・」

麻美「あ、ヒルデ、待って。ぜったい助けるから、待ってて!!」

 最後の言葉が通じたかどうか、麻美には分からなかった。しかし麻美の胸には希望が戻っていた。

絵里香「麻美さん、大丈夫?目が泣きそうよ?」

麻美「絵里香さん・・・ごめん。大丈夫。ありがとう。」

 気づかないうちに目にたまっていた涙を拭う。そして心配そうに覗き込んでくる絵里香の手を引いて、美紀子たちの待つリビングへ向かったのだった。

     *************************************

美紀子「・・・これで敵の作戦がわかったわね」

 麻美は今朝のヒルデとの通信を美紀子たちに伝えていた。妖怪の復活というキーワードに、絵里香たちは実感がまだ持てないらしい。

美紀子「まだしっくりこない顔ね。」

聖奈子「そんなことはないですけど・・・」

美由紀「妖怪ってどんなやつなのか・・・」

美紀子「事実は事実として受け止めなさい。まあ私も経験がないぶん、どう対策をうてばいいか悩むところだけど・・・」

 美紀子までこの様子である。昨日戦ったおんぶ魔人を見ても、まったく動揺なく受け入れられた麻美にとって、妖怪という相手が疎外されていることに違和感を覚える。

麻美「あ、あの・・・みなさん、改造魔人なんかとは闘いなれてるのに、妖怪って見たことないんですか・・・・?」

4人「「「「ありません」」」」

 しかし敵の作戦が分かったと言っても、根本的な救出作戦には至っていない。そう、敵のアジトが分からないのだ。その問題で頭を悩ませていると、探偵事務所のチャイムが鳴った。

美紀子「あら、誰かしら?」

絵里香「私、見てきます」

 絵里香が小走りに玄関まで走っていく。手にして戻ってきたのは、ハガキだった。

絵里香「美紀子さん、これ・・・・」

 怪訝な表情の絵里香に美紀子は何事か感じ、そのハガキを受け取る。その差出人の名前は・・・

美紀子「・・・ネオ-ブラックリリー」

聖奈子「なんだって!?」

 中身は今日の正午、市内の遊園地にて誘拐した人質たちを処刑するというものだった。しかも遊園地内のお化け屋敷までの園内マップまで同封してある。

美由紀「わざわざ送ってくるなんて・・・罠に決まっているわ」

聖奈子「手の込んだことしやがって!」

絵里香「美紀子さん、どうしますか?」

 少し考えていた美紀子は、強くうなずいた。

美紀子「アジトの手がかりもないし、ここは奴らの罠にかかってあげましょう。でも、ただかかるわけじゃないわ。みんな、作戦はこうよ・・・」

 絵里香たち3人と麻美は美紀子の作戦に耳を傾けた。


      *********************************


 遊園地の門をくぐる絵里香、聖奈子、美由紀の3人。その日は休日で、遊園地内は混雑している。絵里香たちも違和感ないように私服姿でそれなりにおしゃれをしてきた。目指すはお化け屋敷。園内の外れ、雑木林に少し入った所にそれはある。込み合っていたはずが、ここは驚くほど閑散といている。怪しい雰囲気を演出するための立地だろうが、それが本物の妖怪を呼び寄せてしまうことになろうとは皮肉な話である。

美由紀「これが指定された場所ね・・・」

 美由紀の声から緊張感が伝わる。

聖奈子「美由紀、もしかしてお化け屋敷が怖いとか?」

美由紀「い、いやだ、聖奈子ったら。そんなこと・・・」

絵里香「もう、二人ともまじめにしてよ。さあ、入るわよ」

 古びた長屋を模ったお化け屋敷の入口を開ける。薄暗く真っ赤な照明に照らされた通路へ、足を踏み入れる絵里香たち。入口が3人を閉じ込めるように独りでに閉まる。少し進んだ所で、白い死装束をまとった幽霊が現れた。

美由紀「きゃあ!?」

聖奈子「はは、美由紀、驚きすぎ。」

美由紀「だってぇ・・・」

聖奈子は幽霊のことを人形だと思い、ぎりぎりまで近寄り手を振って見せる。

聖奈子「ほら、作りものだって。」

 がしっ! その時、聖奈子の手を幽霊が握った。

3人「「「!?!?!?」」」

聖奈子「こ、こいつ・・・放せ!」

 強引に腕を引っ張り幽霊から離れる。すると3人を取り囲むように幽霊の群れが集まってくるではないか。

絵里香「いったい、どうなってるの?」

聖奈子「なんだってんだ。こいつ、近寄るな!!」

 聖奈子が襲いかかってきた幽霊を蹴飛ばす。すると幽霊の変身がとけ、ネオ-ブラックリリーの戦闘員の姿が現れた。

美由紀「こいつら、ネオ-ブラックリリー!」

絵里香「聖奈子、美由紀、変身だよ!エンジェルチャージ!!」

 3人は変身すると、格闘戦で幽霊戦闘員を一人、また一人と倒していく。だが狭い通路では思うように武器も使えず、数で勝る戦闘員たちに徐々に押されてくる。

美由紀「倒してもきりがないわ」

絵里香「くっ、ここはいったん退きましょう」

 通路を先へ向かって逃げるエンジェルス。それを追う幽霊戦闘員の群れ。その先に、次のステージへ進む扉が見えた。急いでその扉へ滑り込み、内側からロックをかける。そこは長屋の庭のように少し広い空間になっており、井戸やしだれ柳がいかにもという風にセットされている。

聖奈子「ふぅ、何とか逃げ切れた」

絵里香「安心するのは早いわ。あれを見て」

 絵里香が指差した先には、鬼火がゆらゆらと燃えながら迫ってきていた。もちろん本物の炎を宿しており、触れば大火傷である。

聖奈子「くそう、今度は鬼火か」

 まとまっていては格好の的になるだけだ。3人は散開し、それぞれ鬼火と対峙する。しかし動きの読めない鬼火にてこずってしまう。絵里香は両脇から挟み撃ちにされ、壁際に追い込まれてしまう。

絵里香「あ、熱い・・・このままじゃ、焼き殺される・・・」

 ブレードを出して鬼火に切りかかる。しかしふわふわと身軽に浮かぶ鬼火はその攻撃をかわしてしまう。

絵里香「くぅ・・・熱い・・・ぅぁぁ・・・」

 追い詰めれるエンジェルレッド。そこに聖奈子の声が響いた。

聖奈子「みんな、伏せて!」

 反射的に身を伏せる絵里香。その頭上を特大のアクアトルネードが通過した。一瞬にして鬼火を消し飛ばす。美由紀も鬼火地獄から解放され、安堵の息を吐く。しかしこう罠が多くては安心していられない。敵の罠に飛び込んでしまったが、この先どんなことが待ち受けているか、不安を拭いきれないエンジェルスの3人。そこへ、おんぶ魔人が現れた。

おんぶ「ばーけばけばけ、エンジェルスの小娘ども、ここが貴様らの墓場だ」

絵里香「なんですって!?」

おんぶ「見ろ」

 指差されたしだれ柳の下に牢が現れ、誘拐された女性たちが囚われていた。

聖奈子「てめえ、なんてことを!」

おんぶ「助けてみろ?」

聖奈子「言われなくても、そうするよ!!」

絵里香「待って、聖奈子。冷静になって」

絵里香の忠告も聞かず、頭に血が上ってしまった聖奈子が牢屋に突っ込んでいく。

おんぶ「馬鹿め、かかったな」

聖奈子「なに!?・・・・うわぁああああぁぁ!?!?」

 牢屋に届く手前で聖奈子の姿が地面に消えた。落とし穴に掛かってしまったのだ。古典的な罠にはまんまとはまってしまい、唇をかむ聖奈子。

聖奈子「ちくしょう。こんな穴、すぐに・・・」

 登ろうとするが、そこへ戦闘員が穴の中へ飛び込んでくるではないか。狭い穴の中は聖奈子と2,3人の戦闘員でぎゅうぎゅう詰めになってしまった。

聖奈子「く、苦しい・・・狭いんだよ、こいつ・・・・ぅぅ」

 抵抗しようにも身動き一つ取れない聖奈子。完全に落とし穴に囚われてしまった。

美由紀「聖奈子を助けなきゃ!」

 エンジェルソードとエンジェルバトンをそれぞれ取り出し、聖奈子の救出へ向かう絵里香と美由紀。しかし美由紀が走り出そうとした瞬間、おんぶ魔人の巨大な舌が身体に巻き付き、長屋のほうへ投げ飛ばされてしまう。何とか空中で体制を立て直し縁側に着地するが、その体を戦闘員がドンと押した。

美由紀「え? きゃっ!?」

 長屋の壁が隠し扉になっており、美由紀を巻き込んでくるりと反転する。長屋の中で美由紀が見たものは、鋭い槍が何本も突き出した壁だった。徐々に迫りくる槍の壁。逃げようにも隠し扉は表からロックされ開かなくなっていた。

美由紀「嫌だ、助けて!絵里香ぁあああ」

 恐怖にパニックになる、美由紀。ドンドンと扉を叩くが、自分を閉じ込めた扉は開いてくれない。

絵里香「美由紀!!」

 助けに向かおうとした絵里香の前に立ちはだかるおんぶ魔人。
おんぶ「残るは貴様だけだ、エンジェルレッド。いざ、勝負!」

絵里香「望むところよ!」

 組み合う絵里香とおんぶ魔人。絵里香はキックを浴びせるが、おんぶ魔人の妖力でパワーアップした身体には通用しない。

絵里香「くっ・・・」

おんぶ「そんなキックは利かん。そーれ!」

絵里香「きゃあああ」

 投げ飛ばされ、窓を突き破り外へ転がり出てしまう。ダメージが大きく起き上がれない所へおんぶ魔人が一方的に蹴りを入れてくる。エンジェルス絶体絶命のピンチ! 立つんだ、エンジェルレッド。君が立たなければ、仲間も人質も助からないぞ!

      **************************

おんぶ「ばーけばけばけ、エンジェルスも一人ではこの程度か。とどめを刺してやる。」

 そういうと、おんぶ魔人はエンジェルレッドの背中に負ぶさった。

絵里香「くっ、しまった!!」

 必死に抵抗する絵里香。しかしおんぶ魔人はエンジェルパワーを吸収し始める。このままでは変身が解けてしまう。その時、絵里香が声を上げた。

絵里香「今よ、麻美さん!!」

 すると絵里香を中心に大地に五芳星が刻まれた。とたんに苦しみ始めるおんぶ魔人。絵里香を放し、聖なる光の結界に苦しみのた打ち回る。ミルキーピンク巫女モードに変身した麻美が上空から降り立つ。

麻美「絵里香さん、ご苦労様」

絵里香「なんとかなったみたいね」

 傷らだけの絵里香を支える麻美。支えられながらも、作戦の成功にウインクする絵里香に、麻美もほっとする。

おんぶ「き、貴様、何をした・・・!?」

麻美「それは妖怪の力を無力化する結界よ。絵里香さんに囮になってもらったおかげで、まんまと引っかかったわね。」

おんぶ「なん、だと・・・くそう、俺の力が・・・」

 おんぶ魔人の身体から妖力が煙の様に消えていく。美紀子の作戦は、まずネオ-ブラックリリーに顔を知られている絵里香たちが潜入し、敵を誘き出す。エンジェルスやミルキーピンクの攻撃が利かない魔人だが、妖力でパワーアップした分を麻美の力で何とかできれば勝算はあると考えたのだ。

絵里香「ちなみに聖奈子も美由紀も、あんたが私を外に飛ばしてくれた後に美紀子さんが助け出してくれてるわ。残念だったわね。」

おんぶ「全部演技だったということかぁあああ!!」

麻美「さあ、覚悟なさい!」

 絵里香と麻美はおんぶ魔人に必殺技を構える。

絵里香「ファイアースマッシュ!!」

麻美「ミルキーアロー!!」

 もはや妖力を全て失った、ただの風呂敷魔人が断末魔の叫びをあげて消滅した。それを見届けて、ハイタッチしあうエンジェルレッドとミルキーピンク。後から美紀子に助けられた聖奈子と美由紀も合流してきた。

美由紀「魔人を倒せたのね」

絵里香「うん。美紀子さんの作戦のおかげよ。」

聖奈子「人質も全員解放したわ。これでネオ-ブラックリリーの作戦も失敗に・・・・」

聖奈子が言いかけたその時だった。突然絵里香たちへ攻撃が襲った。爆発に身をかがめるヒロインたち。

ドクター「わーっはっは、どうやらおんぶ魔人も時間稼ぎ程度にはなったようだな」

 勝ち誇った笑いを浮かべ、ドクターマンドラが現れた。その傍らには、麻美たちと同じくらいの年頃の少女が連れられている。

絵里香「ドクターマンドラ!いったいどういうこと!?」

ドクター「紹介しよう。我らがネオ-ブラックリリーの科学力によってよみがえった、古より封印されし大妖怪、クチ妖怪だ!」

 傍らの少女がすっと前に立つ。どう見ても妖怪に見えないその姿に呆気にとられるヒロインたち。

絵里香「クチ妖怪って・・・その子が?」

麻美「絵里香さん、気を付けて。すごい妖力を感じるわ。恐らく、人間の子に取りついている。」

 麻美の緊張した様子をみて、つばを飲み込む絵里香、聖奈子、美由紀。

聖奈子「どんなやつでも、攻撃してみなきゃ始まらないじゃん。いくよ、アクアスマッシュ!!」

美由紀「ライトニングスマッシュ!!」

絵里香「ファイアースマッシュ!!」

 3人の必殺技がクチ妖怪に襲いかかる。その時、クチ妖怪がうつむいた。すると頭のてっぺんに巨大なもう一つの口が大きく開いているではないか。3人の必殺技がいとも簡単にその口へ吸収されてしまう。

絵里香「そんな!?必殺技が呑み込まれた・・・」

 驚愕する絵里香たち。クチ妖怪の下の口、つまり少女-黒野末子の口がニタリと笑った。

クチ「絶望してるの、ヒロインさんたち?ジュルリ、可愛い~。ゾクゾクしちゃうよ。」

麻美「なに変態発言してんのよ!はあ!!」

麻美の必殺パンチが妖怪めがけて放たれる。しかしクチ妖怪の長い髪が伸び、麻美の身体を縛り上げたのだ。

麻美「うっ!?これは・・・くそう、このぉ・・・」

 髪の毛の拘束から逃れようともがくが、麻美の身体はいともたやすく上空へ持ち上げられてしまう。さらに締め付ける力が増し、麻美の身体をきしませる。

麻美「っ・・・こ、こいつ・・・放せぇええ!!(なんて力なの・・・力をいれても、身体がぜんぜん動かない)」

絵里香「麻美さん!」

麻美「絵里k・・・・ふぐっ!?」

 麻美の口を髪の毛触手が塞ぐ。言葉さえもしゃべれなくなってしまった正義のヒロインは、為されるがまま空中で弄ばれる。

麻美「んんっ~~~~!!! んんんん~~~~!!!」

 必死に抵抗する麻美。しかし四肢を拘束されては逃れようがない。絵里香たちが見ている前で開脚させられ、恥ずかしい下着を公開させられる。

麻美「んんっ!うんんんっ!!(ダメ・・・脚が、閉じれない・・・っ)」

クチ「ぐへへ・・・正義のヒロインさんのパンツ大公開だよ。たまんねぇなぁ~ジュルジュルリ」

 涎をすすりながらクチ妖怪はさらに麻美へ髪の毛触手を通して妖気を流し込む。邪悪なエネルギーに包まれ、巫女モードから普通のミルキーピンクへと変身が解除されてしまった。

麻美(くっ・・・変身が・・・なんて妖力なの?いったい、どうしたら・・・?)

 ミルキーピンク巫女モードでも太刀打ちでいない強敵。封印されていた最強の妖怪の前に、対抗策はあるのか?

      *******************************************


絵里香「ミルキーピンクを助けなきゃ!」

 ブレードを手にクチ妖怪に迫るエンジェルスの3人。それに気づいたクチ妖怪は髪の触手を伸ばし、エンジェルスも捕えようと攻撃してきた。

美由紀「あぶない!」

 何とか攻撃をかわしていく。しかしその攻撃に気を取られていると、クチ妖怪は絵里香たちへソフトボール大の妖怪ボールを投げつけてきたのだ。

絵里香「あぐっ!?」

聖奈子「きゃあっ!!」

美由紀「うっ、痛い・・・」

 絵里香の首元、聖奈子の両腕、美由紀の脚に噛みついた妖怪ボール。それぞれ牙をもったクチが付いており、エンジェルスの3人に喰らいついて放さない。

聖奈子「ちくしょう、なんだこれ・・・」

 両腕に噛みついた妖怪ボールを必死に取ろうとする聖奈子。しかし片手では力に限界があり、簡単には外れない。肌に刺さる牙の痛みにもがき苦しむ。

絵里香「くっ・・・身体に力が、入らなくなって・・・!?」

 それは絵里香だけでなく、聖奈子も美由紀も同じだった。妖怪ボールから逃れられるばかりか、逆に妖気を注入され身体がマヒしてきているのだ。

ドクター「はっはっはっ、手も足も出ないとはこのことだな、エンジェルス」

絵里香「くそう・・・ドクターマンドラ!」

ドクター「いよいよ昔年の恨みを晴らす時が来た。者ども、かかれ!」

 ドクターマンドラの鞭に導かれ、うようよと出てきた戦闘員達がエンジェルスに襲いかかる。

絵里香「くっ、戦闘員なんかに負けるエンジェルスじゃないわ!」

 妖怪ボールに苦しみながらも、戦闘員たちを迎え撃つ絵里香。しかしパンチした瞬間、戦闘員の身体がパっと消えた。

絵里香「消えた!?・・・キャアっ!?!?」

 驚く絵里香の背後から、その戦闘員が組みつき羽交い絞めにする。動けない絵里香に群がる戦闘員達。

聖奈子「絵里香!」

美由紀「いったい、どうなっているの?」

 絵里香を助けるため、アクアトルネードを放つ聖奈子。しかしその攻撃も戦闘員たちの身体に宿った薄い妖気のバリヤーにかき消されてしまう。

聖奈子「そんな!?アクアトルネードまで」

ドクター「わーっはっはっ、どうだ戦闘員に敗れる気分は?そいつらはクチ妖怪の妖力を分け与えた強化戦闘員だ。弱り切った貴様らにはこいつらで十分だ。」

聖奈子「ちっ、こんなボールに咬みつかれなきゃ、負けるはずないのに・・・」

美由紀「聖奈子、どうしよう」

 絶体絶命のピンチに陥ってしまったエンジェルス。クチ妖怪の術によって力を失い、さらに強化された戦闘員に囲まれ、今やその運命は空前のともしび。

ドクター「すばらしい。この妖怪の力を全魔人へ移植し、強化魔人軍団によって一気に世界を征服してやる。ふふふ、妖怪の力、素晴らしいぞ!」

クチ妖怪「私は世界征服なんて興味ないから。可愛いスーパーヒロインを、生でいじめられんなら、いくらでも協力するけど?」

ドクター「もちろんだ。貴様のその歪んだ趣味に、いくらでも協力しようではないか。」

クチ「ジュルリ・・・ならいいけど」

 このままでは、世界はネオ-ブラックリリーとクチ妖怪によって征服されてしまう。ピンチを切り抜けるすべはないのか?
 頑張れ、エンジェルス!そしてミルキーピンク!

      **********************************************

ドクター「ここに、エンジェルスと、我らに反逆するヒロインどもの処刑を執行する。人質を連れてこい!」

戦闘員「キキイー!」

 他の人質とは別に監禁されていた紫央と仁美を連れに行く戦闘員。ドクターマンドラの背後に、二人のための十字架が立てれる。一方のクチ妖怪は捕まえていた麻美に目を戻す。

クチ「・・・お食事、再会♪」

 戦闘員に苦戦するエンジェルスを差し置いて、再び麻美に矛先を向けるクチ妖怪。髪の毛を手繰り寄せ、頭部の巨大な口へと運んでいく。

麻美「んん~~~!!んんんん~~~~!!!(くそう、このままでは引きずり込まれる・・・)」

 抵抗しようにも、既に四肢の自由は敵の触手によって完全に奪われている。バトル用のロングブーツを履いた細く美しい足が、拘束から逃れようと必死に抗う。触手はそれを見物するかのように、その脚だけジタバタする余裕を与えているのだ。

クチ「ジュルリジュルリ・・・もう我慢できない。いただきまぁす♥」

 巨大な口に飲み込まれそうになった、その時だった。

紫央「クロス・カッター!!」

 麻美を捕えていた髪の毛触手が切り裂かれた。ダークパープルのリボンとスカートのセーラー服に身を包み、ハイグローブに黒いローファーを履いたかわいらしい姿。漆黒の髪にダークパープルのゴーグルで顔を隠したヒロイン セイントパープル参上。空中で自由になった麻美を受け止めるセイントパープル。

麻美「紫央!無事だったのね」

紫央「紅林さんという人から助けてもらった。仁美も無事だ」

 お化け屋敷で聖奈子と美由紀、それに人質を助けた美紀子は、別行動をとっていたのだ。それは人質の中に、麻美の言っていた紫央と仁美の二人がいなかったからだ。まだ罠があるに違いない。そう考えた美紀子は隙を見計らっていたのだ。紫央はステッキを構えると、エンジェルスの3人の方へ必殺技を放った。

紫央「セイント・シャドー!!」

 戦闘員を強化していた妖気のオーラが消滅し、エンジェルスを苦しめていた妖怪ボールも光になって消えていった。エンジェルスへ駆け寄る麻美と紫央。

麻美「絵里香さん、大丈夫!?」

絵里香「ええ、なんとか。麻美さん、そっちの人は?」

麻美「私の友達、紫央・・・今はセイント・パープルよ。」

紫央「紅林さんから話は聞いている。私も一緒に戦う」

絵里香「ありがとう。よろしく、セイント・パープル」

 手を取り合う5人。ここに正義のヒロインが集結した。

絵里香「闇の世界より出でて世界を征服しようとする悪の手先!」

聖奈子「お前たちの野望は私達が絶対打ち砕く!」

美由紀「私達の手で引導を渡してやるから覚悟なさい!」

3人「私達は正義の戦士!美少女戦隊エンジェルス!!!」

麻美・紫央「「変態妖怪の力で世界征服を企む悪の組織はこのミルキーピンクとセイントパープルが許しません!覚悟なさい」」

ドクター「おのれ小癪な。クチ妖怪、奴らを皆殺しにしろ!」

クチ妖怪「ジュルジュルジュル・・・もう最高。かっこ可愛い♥いじめたいいじめたいいじめたい!!!!!」

 クチ妖怪の髪が広がり、あたり一面を真っ暗闇にした。その闇へ姿を消すクチ妖怪。警戒するヒロインたち。
麻美「どこへいったの!?」

 そこへ髪の毛触手が襲いかかる。殺気を感じ、かろうじて避ける麻美たち5人。しかし暗闇と同じ真っ黒い髪の攻撃は見えず、戦うに戦えない。

美由紀「これじゃあ避けきれないよ」

絵里香「美由紀、諦めちゃダメ。よく考えるのよ。麻美さん、この闇を少しの間だけ晴らすわ。その隙にクチ妖怪を倒せる?」

麻美「分かった、やってみる。」

聖奈子「絵里香、そんなことできるのか?」

絵里香「美由紀、あなたの必殺技をまた使ってもらうわよ。」

 絵里香から説明され、半信半疑必殺技を構える美由紀。

美由紀「いくよ、絵里香。ライトニングアローアタック!!」

 空に向けて光の矢を放つエンジェルイエロー。地上から一直線に闇が切り裂かれていく。

絵里香「今だ。ファイアートルネード!!」

 天高く上っていくライトニングアローをエンジェルレッドの紅蓮の炎が追いかけ上空で爆発させた。まばゆい光が当たりを照らし、暗黒をかき消す。

絵里香「麻美さん、お願い!!」

麻美「見つけたわ。必殺ミルキーシャワー!!」

 光の音符の洪水が、隠れていたクチ妖怪を飲み込む。妖怪の絶叫とともに、クチ妖怪によって立ち込めていた辺りの暗闇が晴れる。

麻美「やったね、絵里香さん!」

 しかし闘いはまだ終わっていなかった。

紫央「待て、奴はまだ死んでいない」

 土煙の中からむくりと立ち上がるクチ妖怪の影。執り付かれた少女の方は意識を失い、クチ妖怪本体の醜悪な鳴き声が響く。

クチ「ユルサナイ。殺シテヤル殺シテヤル!!!!!」

麻美「ウソ、なにあれ・・・さっきの変態妖怪の方がまだマシだったわ。」

 麻美の冗談っぽい言葉に失笑する絵里香。

絵里香「くすっ、麻美さん、全然怖がってないのね。」

麻美「そんなことないわよ。・・・でも、不思議ね。貴方達となら、何とかできる気がするの」

 一同を見回す麻美。みんなと目があう。正義のヒロインの目に絶望の二文字はまったく無かった。

絵里香「私もよ。みんなで力をあわせましょう!」

麻美「うん。いくよ!」

 必殺技を構える5人のヒロイン。クチ妖怪は髪の毛触手を伸ばしてヒロインたちを飲み込もうと迫る。

麻美「行くわよ、化け物!必殺ミルキーシャワー!!」

紫央「セイントシャドー!!」

絵里香「こっちもいくわよ、聖奈子、美由紀」

聖奈子「もちろん!」

美由紀「わかったわ!」

3人「「「トリプルエンジェルトルネードアタック!!」」」

 5つの光がクチ妖怪の髪の毛を溶かし、妖気の闇をかき消した。断末魔の叫びとともに、消滅した大妖怪クチ妖怪。正義のヒロインの勝利だ!!

      *********************************************


麻美「かなりマニアックな出会いだったけど・・・ありがとう、絵里香。おかげで紫央も仁美も助けられたわ。」

絵里香「こちらこそ。貴方達がいなければ、クチ妖怪は倒せなかったわ。」

 夕焼けに染まる遊園地内の小高い丘の上。手と手を握り合う正義のヒロインたち。進む道は違っても、戦う敵は違っても、目指すものはただ一つ。それは、世界の平和を守ること。

聖奈子「・・・ところで、麻美たちも高校生でしょ?明日平日だけど、帰りは大丈夫?」

麻美「え・・・あっ!!」

美由紀「電車、間に合うといいけど・・・」

紫央「遊園地においてきた仁美も探さなければ・・・まずいぞ、麻美」

 慌てて階段を下りていく麻美と紫央。それを可笑しそうに眺めるエンジェルスの3人。

麻美「また、いつか会いましょう!」

 手を振りながら駆けていく麻美に、手を振りかえす絵里香。
絵里香「ええ!また、いつの日か!!」

 ちなみにヒルデは「妖怪の巻物に関係しないならば、私には関係ない」と意識の所有権を仁美に返してしまい、仁美は遊園地の真ん中でぽつんと残されていた。その後、仁美を保護していた美紀子のはからいで、麻美たちは無事近くの駅まで車で送ってもらった。妖怪に取りつかれていた黒野末子は、気が付いたら自分の部屋にいてゲームをしており、これまでのことは夢だったのかと残念そうにエロゲを続けている。ドクターマンドラは作戦の失敗を闇に付すため、作戦資料を全て抹消した。クイーンリリーからどんな罰がくだされたかはご想像のままに。

 またいつの日か。

 その言葉は絵里香たちの耳にも麻美たちの耳にもずっと残り続けた。そんなこんなで麻美たちは夕日とともに鷲尾平を後にしたのだった。

 Fine.





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