鷲尾飛鳥

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第26話『あ・・ 溶ける・・』

2012年 10月13日 21:33 (土)


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 ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、ゼネラルダイアの指揮の元で新しい生物兵器が完成し、司令室にいるゼネラルダイアのもとに届けられた。その生物兵器とは、ネオ‐ブラックリリーが作り出した新種のバイオカビだった。ネオ‐ブラックリリーは地球上に普通に生息しているカビに目をつけ、特殊な培養液を使って変異させ、強力な糜爛性を備えていて、あらゆる物を腐食させてしまう恐ろしいバイオカビの培養に成功したのである。司令室に大首領の声が響いた。
「ゼネラルダイア、よくやったぞ。培養に成功したカビを、新たに改造した魔人を使って、次の作戦に使用せよ」
「かしこまりました。大首領様」
 ゼネラルダイアは、大首領との会話を終えると、そばにいた戦闘員に向かって命令を下した。
「カビ魔人を呼べ」
 ゼネラルダイアの命令で、カビ魔人が戦闘員を伴って司令室に入ってきた。ネオ‐ブラックリリーは培養したバイオカビを使って、新たにカビ魔人を作り出し、今回の作戦に使おうとしていたのである。
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「カビ魔人にございます。ゼネラルダイア様、どうぞ御命令を」
 ゼネラルダイアは戦闘員に命じて、シャーレに培養したバイオカビを持ってこさせ、カビ魔人に見せた。
「カビ魔人、このカビは我がネオ‐ブラックリリーが特殊な培養液を用いて培養したものだ。このカビは強力な糜爛性を持ち、触れたものは全て腐食して溶けてしまう。そしてお前の体にはこのカビがついていて、触れるものは全てこうなる」
 そう行ってゼネラルダイアは、一番近くにいた戦闘員めがけてシャーレを投げつけた。
「ギャァーッ! イーッ」
 カビをまともに被った戦闘員は、絶叫とともに身体がボロボロになって腐食し、緑色の煙を吹き上げて瞬く間に溶けてしまった。
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「すばらしい。これこそネオ‐ブラックリリーの誇る強力生物兵器です。これであの憎いエンジェルスの小娘どもを消してご覧に入れましょう」
「まあ待て。カビ魔人、そう慌てるな。お前の任務はこれだ」
 ゼネラルダイアは司令室のモニターを指差した。そこには京浜工業地帯の石油コンビナートが映し出されていた。
「お前はこのカビを使い、日本全国のガスタンクや石油コンビナートを破壊するのだ。ガスや石油のタンクはカビによってボロボロに腐食し、中に入っているガスや石油が流れ出して、空はガスで、海は石油で汚染される。そして、ひとたびそれらに火がつけば、たちどころに火炎地獄となり、この日本は壊滅するのだ。まず作戦を成功させるため、カビの威力の実験を兼ねて、この地域を壊滅させろ。そうすれば騒ぎを聞きつけて、スカーレットエンジェルとエンジェルスの小娘どもは必ずやってくる。お前はそこでカビ攻撃によって、小娘どもの動きを封じるのだ」
 ゼネラルダイアは地図をモニターに映し出し、城間市南西部にある工業団地を指差した。
「この西城間工業団地をカビ攻撃で粉砕するのだ。行け! カビ魔人」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 カビ魔人は、数人の戦闘員を伴ってアジトから出ていった。その後ろ姿を見届けながら、ゼネラルダイアは呟いた。
「にっくき小娘ども… 今に見ていろ。今度こそ息の根を止めてやる」

「学園祭まであと二週間… か」
「練習にも熱が入ってるね」
「パレードと公開演技だからね・・ キャプテンの孝子も張り切ってるし・・」
「私たちも頑張らなきゃね」
「学園祭って言えば、佳奈子の学校でも来週文化祭だって言ってたな・・ なんでも佳奈子のいるチアリーディング部は、喫茶店とコスプレショーをやるって言って張り切ってるのよ」
「もしかして、エンジェルスのコスプレ?」
 絵里香が思い出したように言った(第23話のエンジェルイエローの衣装を参照)。
「それもあるけど、今テレビで『ウエスタンプリキュア』っていうアニメを放映してるじゃないの」
 今度はアニメのヒロイン好きの美由紀が閃いたように話しかけてきた。
「あ・・ それ知ってる。弟が毎週見てるわ。私も好きなんだ」
「佳奈子と佐緒里ちゃんは、そのウエスタンプリキュアのコスプレをやるんだって」
「ふーん・・」
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 絵里香たちが廊下でそんな会話をしていると、孝子がやってきた。
「城野、今日は体育館が使えなくなったから、屋上で練習ね。朋美には私が教えて知ってるから、一年生部員のみんなにも伝えて」
「分かった。それじゃみんなで手分けして知らせよう」
 美由紀がそう言うと、絵里香と聖奈子は一年生部員に知らせるため、それぞれその場から散っていった。

 絵里香たちが学校の廊下で会話していたちょうどその頃、隣の城間市ではネオ‐ブラックリリーによって恐ろしい作戦が始められようとしていた。城間市南西部にある城山の展望台では、カビ魔人が数人の戦闘員と共に立ち、城山の麓に広がる平野にある工業団地を眺めていた。そしてカビ魔人は戦闘員を集め、工業団地を指差しながら、戦闘員達に向かって大きな声で言った。
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「者ども、作戦開始だ。暴れるだけ暴れまくって、あの工業団地を全滅させるのだ。小娘どもを誘い出し、注意をこちらに引き寄せて、この地域に封じ込めて出られなくしてやる。その間に我がネオ‐ブラックリリーは、日本中のガスタンクと石油コンビナートを破壊するのだ。行くぞ! カビカビビビーッ!」
「イィーッ」
 カビ魔人と戦闘員達は奇声を張り上げながら、数台のオートバイ、乗用車とトラックに分乗して、暴走族のような走り方をしながら、工業団地へとなだれ込んだ。そしてトラックに積んであったドラム缶を、工業団地の敷地内で手当たり次第に放り投げた。放り投げられたドラム缶は、建物などに当たって破裂し、カビが敷地内のあちこちにばらまかれた。工業団地では操業時間中で、敷地内の道路にはほとんど人影が無かったが、建物がカビで腐食して崩れ落ち、中にいた人たちが飛び出してきてカビの餌食になった。魔人や戦闘員に追いまわされて、逃げ惑う人達の身体にカビが付着して、たちどころにその人達は溶けて骨だけになり、崩れ落ちてきた瓦礫の下敷きになったり、道路に発生した地割れに落ちて死ぬ人たちが続出した。走っている車がカビで腐食し、コントロールを失って建物にぶつかったり、他の車と衝突して炎上し、工業団地内は阿鼻叫喚の修羅場と化した。カビ魔人たちの一隊が通り過ぎたあとには、道路上に累々と白骨死体が並び、廃墟同然になった建物や、スクラップになった車だけが残された。さらに道路の舗装が腐食して至る所に地割れが発生し、電線もあちこちで腐食して溶け落ち、電気がショートして至る所で火災が発生した。攻撃が終わった時には、工業団地とその周辺は壊滅状態で、惨憺たるありさまだった。さらに道路が寸断されたために消防車も救急車も通れず、惨劇をさらに大きくした。
「これでよし! 大成功だ」
 そこにゼネラルダイアが姿を現した。
「素晴らしい・・ 思っていた以上に凄い効果だ。カビ魔人、スカーレットエンジェルとエンジェルスの小娘どもは必ずここへ来る。その時こそやつらを地獄へ落とす時なのだ」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様。必ずや憎っくき我が敵、スカーレットエンジェルとエンジェルスを始末してご覧に入れましょう。コイツのように!」
 そう言ってカビ魔人は体のカビをむしり取ると、そばにいた戦闘員の一人に向けて投げつけた。
「ギャアーッ! イィィーッ」
 戦闘員は絶叫して悶絶しながら、水蒸気を上げて骨だけになってその場で倒れた。ゼネラルダイアはそれを見届けながら、マントを翻してその場から消えた。

      *      *      *      *

 部活が終わって着替えを終え、帰宅しようと教室に戻ってきた絵里香の携帯が震えた。校内では携帯の通話が禁止されていたために、着信音ではなくてバイブ設定にしていた。絵里香は画面を見た。
「美紀子さんからだわ」
 絵里香は発信モードにして美紀子に電話をかけた。聖奈子と美由紀も絵里香のそばに来た。
「もしもし、美紀子さん… ええっ!? はい… ハイ分かりました」
「どうしたの? 絵里香」
「聖奈子、美由紀、大変よ。ネオ‐ブラックリリーが城間市で大攻勢を始めたって」
「ええっ!?」
「すぐANGELに行くわよ。詳しいことは美紀子さんが話すって」
 絵里香たちは学校を出ると、駆け足でANGELに向かった。店の入り口では既に美紀子が車のエンジンをかけ、絵里香たちを待っていた。ANGELに着いた絵里香たちは美紀子に促されて、そのまますぐに車に乗り込み、美紀子は車を発進させた。
「美紀子さん、ネオ‐ブラックリリーが大攻勢をかけてきたって、どういうことですか」
「城間市の工業団地が壊滅状態だそうよ」
「ええっ!? 何ですって?」
「やつら今度は一体何をしたんだろう」
「詳しいことは分からないけど、工業団地への道路は完全に寸断されてるそうよ。それで救助活動も出来なくて、被害に遭った地域は大惨事になっているって、臨時ニュースで言っていたわ」
 美紀子の車は国道を城間に向かって走っていたが、城間駅の付近で警察の非常線が張られていて、道路が渋滞しているというので、美紀子は国道を外れて間道へと入った。道路上には所々に放置した車があり、それらを避けるように進んで、何とか工業団地の近くまでやってきた。
「美紀子さん前!」
 絵里香が叫ぶと同時に、美紀子は急ブレーキをかけた。車が止まった1m先では道路が陥没していたのだ。美紀子と絵里香たちは車から降りて、陥没した道路の前に立った。
「道路が陥没しているわ。いや・・ それだけじゃない… 舗装が腐食している。やつら一体何したんだろう」
 陥没した道路の先に見える工業団地は、まるで空襲か多発テロにでも遭ったような凄惨な状態になっている。
「何これ一体… ひどすぎる」
 美由紀はあまりの惨さに、思わず絶句した。
「絶対許さない! みんな行こう。やつらの野望を粉砕するのよ」
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 絵里香が変身して真っ先に駆け出し、聖奈子と美由紀が後に続いた。美紀子も3人の後を追って、瓦礫だらけの道路を駆けて行った。工業団地のほぼ中央付近まで来たとき、崩れずに残っていたビルの屋上から、甲高い声が聞こえてきて、絵里香達はその方向を見上げた。
「カビビビーッ。よく来たな小娘ども。待っていたぞ」
「ネオ‐ブラックリリー! どこだ、出て来い」
 聖奈子が叫ぶと同時に、ビルの屋上からドラム缶が降ってきた。
「危ない!」
 ドラム缶は3人の中間に落ちてきて、地上に激突すると大きな音と共に破裂し、中に入っていたカビが絵里香たちの周囲にぶちまけられた。カビが降りかかった道路は腐食してたちまち陥没し、建物の壁に大穴があいて、電柱や街灯のポールが腐って倒れてきた。そしてぶちまけられたカビは、絵里香達の周囲で繁殖を始め、蠢きながら舗装や壁を腐食させ続けている。それを見て3人は体全体から血の気が引き、カビから逃げるようにジリジリと後ずさりした。追いついてきて絵里香たちのそばに来た美紀子は、工業団地内の惨状を見て生唾を飲み込んだ。絵里香は路上で蠢く緑色の物体を指差して美紀子に聞いた。
「美紀子さん、これって、何なの… 」
「カビよ。恐らくネオ‐ブラックリリーはカビを特殊な方法で培養して、あらゆる物を腐食させるカビを作り出したのよ」
「その通り。これは我がネオ‐ブラックリリーが開発したカビなのだ。お前たちはもうここからは逃げられん。カビの餌食になって死ね」
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 そう言いながらゼネラルダイアが姿を現した。
「お前はゼネラルダイア。今度は何を企んでいるの!?」
「知れた事だ。我々はこのカビを使って世界を壊滅させて征服する。そのために邪魔になるお前たちをここで消す。カビ魔人出よ」
「カビビビーッ」
 カビ魔人が戦闘員を伴って絵里香たちの前に現れた。
「出たわね化け物」
「者どもかかれ。スカーレットエンジェルと小娘どもを消せ」
 そう言ってゼネラルダイアはマントを翻して姿を消した。

 絵里香たちと、向かってくる戦闘員とで格闘戦が始まった。
「食らえ! 小娘ども」
 カビ魔人は体についているカビをむしり取ると、一番近くにいる絵里香めがけて投げつけた。
「絵里香危ない!」
 聖奈子の声で、絵里香は間一髪で避け、絵里香を外れたカビは後ろにいた戦闘員に命中して、戦闘員は悶えながら溶けて白骨になった。それを見て絵里香は一瞬驚いたが、すぐに身を翻してカビ魔人に向かって身構えると、攻撃態勢をとった。
「ファイヤースマッシュ!」
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 カビ魔人はジャンプしてスマッシュを避けると、空中からカビを投げつけてきた。
「食らえ!」
 カビ魔人の投げたカビが、絵里香にまともに向かってきた。
「危ない!」
 聖奈子が絵里香を突き飛ばし、楯をかざして飛んでくるカビの塊を楯で受けた。が、カビは楯にあたると同時に、楯に取り付いて猛烈に繁殖して広がり、緑色の煙を吐いて楯を溶かし始めた。
「ゲッ!」
 聖奈子は思わず楯を投げ捨てた。そこへカビ魔人がカビを聖奈子めがけて次々と投げてきた。一つ目はかわしたが、二つ目の塊が聖奈子の足元に落ちて飛び散り、飛び散ったカビが聖奈子のスーツにかかって、その部分から緑色の煙が吹き上がって高熱を発し、スカートの一部がボロボロに腐食した。ブーツからも煙を発して溶け出し、色がハゲ落ちた。聖奈子は慌てて地面に伏せると、煙が上がった部分を地面で擦った。
「聖奈子、しっかりして」
 突き飛ばされた絵里香が、聖奈子のそばに駆け寄り、聖奈子を支えたが、そこへカビ魔人が奇声を上げながら向かってきた。絵里香はジャンプすると空中で一回転し、カビ魔人めがけて急降下した。
「エンジェルキック!」
 絵里香のキックが炸裂して、カビ魔人は反動で飛ばされ、一回転して地面に落ちた。だが、キックをお見舞いして着地した絵里香も、足元がふらついていて、やがて立っていられなくなり、そのまま地面に倒れた。
「絵里香、どうしたの?」
 美由紀が絵里香のそばへやってきたが、絵里香の状態を見て愕然とした。絵里香のブーツが緑色の煙を上げていたのだ。エンジェルキックで魔人の体に触れたため、カビがブーツに付着して、カビから出る糜爛性の毒素のため、ブーツが溶かされたのだ。そのため絵里香は脚をやられて動けなくなったのである。エンジェルスーツのおかげで、体まで溶かされるということは無かったが、そのエンジェルスーツのスカートが腐って半分ボロボロになっていた。
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「絵里香、聖奈子、しっかりして」
「危ない美由紀。化け物がやってくる」
「カビカビビビーッ。小娘ども。皆殺しだァ」
 カビ魔人が猛然と向かってきて、カビを手当たり次第に投げつけてきた。美由紀はバトンを出すと、二本のバトンをドッキングさせて、カビ魔人めがけてかざした。
「エンジェルシールド!」
 絵里香たちの前に四角形の透明な膜が広がり、カビが次々と膜に付着して地面に落ちた。絵里香たちの様子を見ていた美紀子は3人に向かって叫んだ。
「みんな、逃げるのよ!」
 美紀子は目の前の光景を見て、すかさずスティックを空にかざした。
「テレポートチャージ!」
 スティックから光のシャワーが降り注いで絵里香たちを包みこみ。カビ魔人と戦闘員達は、眩しさに目が眩んで怯んだ。そして光が消えたとき、そこには三人の姿は無く、そして美紀子の姿も消えていた。
「し、しまった。テレポートしたのか。ふん! まあいい。このカビの前では手も足も出まい。直ちに次の作戦に移る。皆の物、引き揚げだ。カビビビーッ」
「イィーッ」
 カビ魔人と、残った戦闘員たちはその場から姿を消した。

      *      *      *      *

 美紀子のテレポートで何とかANGELに逃げおおせた絵里香たちだったが、カビ魔人のカビ攻撃の前に、絵里香と聖奈子が負傷してしまい、雰囲気は暗かった。美紀子と絵里香たちは車の置いてあるところまでテレポートし、車に乗って急いでその場から引き揚げると、美由紀の家に寄って篤志を乗せ、ANGELに戻ってきたのである。城間市が危険地帯になっている今、篤志を保護する必要があったからだ。
 店内のテーブルを囲んで、美由紀と佐緒里、篤志が座っていた。カウンターでは孝一が不安そうな顔でみんなを見ていた。そこへ治療を終えた絵里香と聖奈子が美紀子に連れられてやってきた。2人とも脚を引きずるようにしながら歩いてきて、脚に巻かれた包帯が痛々しかった。
「絵里香と聖奈子は脚をやられていて、とても戦える状態じゃない・・ それにエンジェルスーツを溶かすほどの威力があるカビ・・ あれを何とかしなければ・・」
 美紀子の言葉に、絵里香と聖奈子が反論するように言った。
「大丈夫よ。私はかすり傷だから」
「あたしだって… 」
「二人ともその体じゃ無理よ! それに、自分の命と引き換えだなんて絶対言っちゃダメよ」
「でも、私たちが戦わなかったら・・」
「私が戦う。それに佐緒里だっているわ」
 佐緒里は美紀子の顔を見て、絵里香たちに向かって無言で頷いた。
「俺だって一緒に戦うぞ」
「僕だって・・」
 孝一がカウンターから出てきて、篤志が立ち上がって大きな声で言った。絵里香は孝一に何か言おうとしたが、孝一の顔色を見て言うのをやめた。
「美紀子さん、これからどうするの?」
 美由紀が泣きそうな顔で美紀子に聞いた。
「絵里香と聖奈子がやられてしまった今、積極的な行動は控えた方がいい。今はやつらの目的を知ることが先決よ。問題は、あのカビを何に使おうとしているかだわ。1つのエリアを潰滅させただけで、やつらの攻撃が終わるとは思えない。とにかく今日のところはみんな休みなさい」
 美紀子はそう言って、聖奈子を車に乗せて家まで送っていった。絵里香は家が近い孝一が送っていき、城間市に住んでいる美由紀は、篤志と一緒にANGELに泊まることになった。

 翌日の朝早く、絵里香と聖奈子は開店前のANGELにやってきた。負傷した昨日と比べて、二人とも普通に歩けるくらいに回復しつつあったが、まだ予断を許さない状態だった。幸いあれからネオ‐ブラックリリーの動きは無かったが、例のカビが絡んでいる以上、大規模な作戦の展開が予想出来た。絵里香と聖奈子がANGELに来たとき、ちょうど美由紀と篤志は美紀子、佐緒里とともに朝食をとっていたところだった。美紀子は絵里香と聖奈子の顔を見て、自分の方へ来て椅子に座るように言い、二人にコーヒーを出してから話をした。
「みんな、ヤキモキしている気持ちは分かるけど、とにかく学校へ行きなさい。ネオ‐ブラックリリーの動きは、みんなが学校へ行っている間は私が調べる。篤志君は私が学校へ送っていくから、美由紀は心配しなくていいわよ」
「分かりました」
 絵里香、聖奈子、美由紀、そして佐緒里は美紀子の言う通りにそれぞれ学校へ行ったが、みんなネオ‐ブラックリリーのことが気になって授業に身が入らなかった。そして学校が終わると、負傷していた絵里香と聖奈子は部活を休んでANGELに向かった。美由紀も自分の家に帰って着替えを持ってやってきた。今のところ新たな事件は起きていなかったが、ネオ‐ブラックりりーの動きがつかめていない分だけ、不安でいっぱいだった。絵里香たちがANGELに着いた時、美紀子は既に篤志を学校から連れてきていて、佐緒里も帰ってきていた。全員が集まったところで、美紀子は店を臨時休業にして、アルバイトに来ていた理奈を帰してから、みんなを集めて対策を話し合った。だが、絵里香と聖奈子はまだ脚のダメージが完治しておらず、まだ戦える状態には程遠かった。
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「一体奴らは何を企んでるんだろう」
「あれだけの威力があるカビよ。きっと大掛かりな作戦をやろうとしている事は間違いないわ」
「例えば・・ ダムを破壊するとか」
「考えられるわ。奴らは以前も何度かダム破壊を画策していたから」
「それとも・・ 街の中に手当り次第撒き散らして大量虐殺・・」
「そうね・・ 人は勿論。物質まで腐らせて溶かしてしまうだけの威力があるんだから、それも考えられるね」
「つまり人気のない場所では奴らの作戦は考えられないってことだね」
「すると作戦地域は都市部や住宅密集地ってことか・・ 」
「それに工業地帯」
「石油コンビナートだって考えられる」
 絵里香たちは様々な意見を出し合ったが、どれも疑わしく、どれも信ぴょう性に欠けた。とにかくネオ‐ブラックリリーのやることである。一度に大量の被害が出て人々をパニック状態にすることが狙いなのだ。
一時間ほど話し合ったところで、みんなの意見が出尽くしてしまい、誰も発言しなくなって静まり返ってしまった。その間、美紀子は黙って考え込みながら、絵里香たちの話の内容を分析していた。

      *      *      *      *

「エンジェルスの小娘どもはカビ攻撃で深手を追っている。もはやスカーレットエンジェルもエンジェルスの小娘どもも恐れる必要はない。それにスカーレットエンジェルJrのガキの力も知れたものだ。いよいよ本格的な作戦を開始する時が来たのだ」
 ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、ゼネラルダイアが司令室で捲し立てていた。そして大きなモニターに映し出された地図の一角を指差した。
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「カビ魔人。この地図を見ろ」
「カビビビーッ」
「まず手始めに、西武台市のガス基地を襲撃するのだ。ここのガスタンク群は内陸のものとしては最大の規模である。ここのガスタンクを全て破壊すれば、燃え盛る炎は風に乗り、東京の都心部まで飛び火することは確実。そして周辺の道路という道路を全て腐食させて寸断してしまえば、消火活動も救助活動も不可能になり、被害をより拡大させることが出来る。既に先遣隊が現地の近くで準備を始めている。お前はその部隊と合流し、ガス基地破壊作戦を手早く実行しろ」
「かしこまりました」
 その時スピーカーから大首領クイーンリリーの声が響いた。
「ゼネラルダイア。作戦を成功させるのだ。ガスタンクを破壊したら、次は京浜工業地帯の石油コンビナートを攻撃せよ。流れ出した石油に火がつけば、東京湾岸の都市は全て壊滅させる事が出来る。首都圏もその機能を失い、日本全土が混乱する。我がネオ‐ブラックリリーはその隙に首都圏を占領し、世界征服の橋頭堡を築くのだ」
「大首領様。必ず成功してご覧に入れましょう」
「ただし、くれぐれもスカーレットエンジェルとエンジェルスへの警戒は怠るな。バイオカビとはいえ、絶対的なものではないのだ。スカーレットエンジェルがカビの弱点を見つけ、対策を立てられてしまったら、すべてが台無しになってしまうのだ」
「心得ております。大首領様」
 そこで大首領との会話が終わり、ゼネラルダイアはカビ魔人に命令した。
「行け! カビ魔人。スカーレットエンジェルとエンジェルスの小娘どもが対抗策をとる前に、攻撃を開始するのだ。愚かな人間どもをこの世から全て抹殺せよ!」
「ハハーッ。かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 カビ魔人は戦闘員を引き連れ、アジトの司令室から出て行った。

 その頃西武台市にあるガスタンク基地周辺では、先遣隊として送り込まれた戦闘員たちが基地に侵入して、基地の職員を全て殺し、自分たちが職員になりすまして周辺に監視の目を光らせていた。その一方で別働隊が、基地周辺の道路に例のカビを撒き散らして腐食させ、バリケードなどを置いて道路工事を偽装し、通行の妨害を始めていた。その妨害ポイントの一つに、偶然巡回中のパトカーがやってきた。パトカーに乗っていた警官は、工事の様子を不審に思ってパトカーを止めて降りてきた。そして工事をしていた作業員(戦闘員が化けている)に近づいてきた。
「この付近で工事があるという届出はないはずです。工事の内容を記した看板も無いようですけど、すみませんが、道路使用許可証を見せてください」
「あの・・ 緊急なので申請はまだなんです」
 警官が工事現場の周りを見ると、確かに舗装が取り払われ、土には穴が掘られている。
「一体何の工事ですか?」
 そう言いながら警官は道路に掘られた穴を見た。
「イーッ!」
 突然そこにいた作業員が全員戦闘員の姿になった。
「な・ な・ 何だお前ら」
「死ねぇーっ!」
 戦闘員の一人がカプセルに入っていたカビの塊を警官に向けてぶちまけた。
「ギャアァーッ!」
 カビを被った警官は、絶叫しながら全身から緑色の煙を吹き上げ、頭から溶けていって数秒後に全身が骸骨になった。
「こいつを早く片付けろ」
「イーッ」
 別の戦闘員が骸骨を回収して、別の場所へ運んでいった。そこへ今度はカビ魔人が数人の戦闘員を伴ってやってきた。
「妨害工作は完璧なようだな」
「イーッ」
「ほかの場所でも同じ事を指示したが、近づくものは全て抹殺しろ」
「わかりました。イーッ」
 カビ魔人は止めてあったパトカーを見ると、随伴していた戦闘員に指示を出した。
「あのパトカーを運転して、ガスタンク基地へ向かえ」
「かしこまりました。カビ魔人様」
 戦闘員のひとりがパトカーに乗り込むと、カビ魔人も乗り込み、パトカーはその場から発進して、ガスタンク基地の方へと走り去っていった。

      *      *      *      *

 次の日・・ 土曜日だったが、絵里香たちは午前中に部活があるので学校へ行っていた。絵里香たちが学校へ行っている間は、美紀子がネオ‐ブラックリリーの動きを見張ってくれているので、絵里香たちは安心していた。そして部活が終わると急ぎ足でANGELに向かった。カビ魔人にやられた絵里香と聖奈子は足の負傷は殆ど回復していたが、体全体のダメージがまだ完全に回復していなかった。
 絵里香たちがANGELに着くと、表側の扉に『本日休業』の札が出ていたので、裏に回って裏口から入り、店内に入った。
「おかえりなさい。みんな座って」
 絵里香は美紀子の表情からすると、何かが分かったのではないかと直感した。
「美紀子さん、何か分かったんですか?」
「落ち着いて。とにかくまず座りなさい」
 絵里香たちが座ったところで、美紀子はコーヒーを持ってきてテーブルの上に置いた。
「佐緒里が奴等の事で、何かが分かったみたいなの」
「佐緒里ちゃんが?」
 美紀子は佐緒里を促した。
「佐緒里。いま分かっている事を絵里香たちに話して」
「はい叔母様」
 絵里香たちの視線は一斉に佐緒里を向いた。 
「西武台にやつらの気配を感じるんです。まだ何をしようとしているかは分からないけど、例のカビが絡んでいることに間違い無いです」
 佐緒里にはスカーレットエンジェルの血が流れている。当然地球人には無い特殊な能力が備わっている。その事は絵里香たちも既に知っていたので、何の疑いもなく佐緒里の話を聞いていた。佐緒里は地図を持ってくると、自分の頭の中に浮かんだ場所を地図上で指差した。
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「ここよ。ここでやつらは何かをやろうとしている」
「ここって… 西部台市と城間市の境だけど」
 聖奈子が迷ったように呟いていると、美由紀が何かを思い出したかのように言った。
「この場所って・・ 西武台のガス局があって、ガスタンクがいっぱいあるところよ」
 みんなの目が美由紀の方を向いた。そして聖奈子が閃いた。
「そうか! やつらはカビでガスタンクを腐食させて、ガスを流すつもりなんだわ。もし流れ出したガスに、何かの拍子でスパークでもしたら、たちどころに大爆発を起こして… 」
「そうよ! そんなことになったら、西武台市は勿論、周辺の町や、あるいはガスの流れ方や広がり方では東京にまで被害が広がってしまうわ」
「絶対にそんな事させるわけにはいかない! 行くわよみんな!」
 絵里香がそう言いながら立ち上がり、同時に聖奈子と美由紀も立ち上がった。
「叔母様、私も行くわ。絵里香さんと聖奈子さんがダメージを受けている現在、私が戦わなければ」
 そう言って佐緒里も立ち上がった。
「待って! 絵里香と聖奈子は」
 そこまで美紀子が言いかけたところで絵里香が言った。
「私たちがいれば、佐緒里ちゃんは自分の力を考えずに戦えるわ。佐緒里ちゃんはまだエンジェルとしては未熟かもしれないけど、私と聖奈子でサポートすれば、存分に力を使える」
「そうね・・ 確かに絵里香と聖奈子のパワーがあれば佐緒里はそれを使って戦う力を使える。分かったわ。あなたたちも一緒よ」
 美紀子は車庫から車を出して店の前に止めた。
「篤志君はここに残って。必ず奴らをやっつけて帰ってくるから」
「分かりました」
 美紀子は絵里香たちを車に乗せると、ANGELの前から発信し、篤志は遠ざかっていく車を見届けながら店内に戻った。

      *     *     *     *

 佐緒里が言った通り、カビ魔人は西武台市のガスタンク基地にいた。基地に詰めていた職員はことごとく殺されていて、基地内にいるのはカビ魔人と戦闘員だけだった。カビ魔人は戦闘員を使って、ガスタンク周辺の至る所に、カビがたっぷり詰め込まれたドラム缶を配置し、それに時限爆破装置を取り付けさせていた。ドラム缶を爆発させることにより、効率よくカビを撒き散らそうとしていたのだ。さらに、近くにある鉄塔にもカビ入りドラム缶を配置していた。
「ここのガスタンクを全て破壊し、さらにあの鉄塔を倒してしまえば、漏れたガスに高圧電流がスパークして、西武台市は勿論、近隣の地域も全て一瞬のうちに焼け野原となり、壊滅するのだ。もはやエンジェルスの小娘など恐るるに足らん。この作戦が終了したら、一網打尽にしてくれる」

 美紀子は西武台市に入ると、真っ直ぐガスタンク基地へと向かっていった。が、その途中で佐緒里が何かを感じた。
「叔母様止めて」
「どうしたの?」
 美紀子は車を左に寄せて止めた。
「基地の周辺の様子がおかしいわ。奴らの気配を感じる」
「何ですって!?」
 美紀子は周辺を見回した。特にこれといって何の変化もない。そこで美紀子は佐緒里に言った。
「もう少し走っていくから、気配が強くなったら教えて」
「はい」
 美紀子は再び車を発進させた。ガス基地まで500mくらいの所まで近づいたところで、前方約50mの所に『工事中・迂回路』と書かれた看板を見つけた。その先ではバリケードがあって、確かに道路工事をしている。佐緒里はその工事現場を指差した。
「叔母様あれよ! あの工事現場が」
 美紀子は工事をしている作業員を透視した。すると一瞬の間だけ戦闘員の姿になった。
「なるほど・・ 分かったわ」
 美紀子は迂回路の手前で車を止め、Uターンした。そして来た道をしばらく戻り、空き地を見つけるとそこへ車を乗り入れて止めた。
「周りは奴らが見張っているわ。ここで降りてテレポートで基地内に入るわよ」
 絵里香たちと佐緒里はゴクンと生唾を飲みこみ、それぞれポーズをとってその場で変身した。美紀子はみんなが変身したのを見ると、スティックを出してひと振りした。みんなの姿がその場から消え、次の瞬間、みんなはガスタンク基地の敷地内に姿を現した。
 美紀子と絵里香たちがテレポートした場所は基地内の広場だった。が、幸い周辺には誰もおらず、みんなは即座に駆け出して、いちばん近くにある建物の陰に隠れた。
「全く気配を感じない・・  奴等はみんなガスタンクの周りにいるようね」
「みんな行くわよ」
 美紀子を先頭に、絵里香たちは用心深くガスタンクがある場所へと近づいていった。ガスタンクが見える場所まで到達すると、タンクの周辺には案の定カビ魔人と戦闘員たちが屯している。
「みんな集まって」
 美紀子は絵里香たちと佐緒里を自分の方へ寄せ、小声でみんなに自分の作戦を話した。

      *     *     *     *

「カビ魔人様、攻撃準備が出来ました」
「よし! 起爆装置を持って来い!」
 カビ魔人の命令で、戦闘員が起爆装置を持ってきた。カビ魔人は戦闘員から起爆装置入りのケースを受け取ると、ケースを開けて安全装置を外した。
「これでこの地域はジ‐エンドだ。者ども、引き揚げの準備をしろ」
「イーッ」
 戦闘員が敬礼して引き揚げの態勢をとり始めた。

「待ちなさい! お前達の勝手にはさせないわ!」
 突然の声にカビ魔人と戦闘員は驚いて、声のした方を振り向いた。
「な・・ 何者だ! 何処だ。出てこおーい」
 カビ魔人は大声で怒鳴り散らした。気がつくと美紀子と絵里香たちエンジェルスが立っていた。
「ん… お前達はエンジェルの小娘どもとスカーレットエンジェル。ふん! 性懲りも無く来おったか。そんなに死に急ぎたいのなら、ガスタンクを破壊したらすぐ殺してやるから待っていろ」
 カビ魔人が美紀子と絵里香たちに気を取られている一瞬の隙を突いて、反対の方から佐緒里が走ってきて、カビ魔人の前にあった起爆装置のケースを奪い取ると、ブレードをカビ魔人に向けて威嚇しながら捲くし立てた。
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「これはもらうわよ。絶対お前たちなんかの思い通りにはさせないわ!」
 一瞬の隙を突かれたカビ魔人は、スカーレットエンジェルの姿をした佐緒里を見て狼狽した。
「お、お前はエンジェルスの小娘ではないな。何者だ」
「私は正義の戦士、スカーレットエンジェルJr!」
「な、何だと? スカーレットエンジェルJrだと?」
「叔母様、ケースを受け取って」
 佐緒里はケースを美紀子に向けて放り投げ、美紀子はそれを受け取ると、起爆装置を破壊してから、ケースを地面に投げて叩きつけた。
「これでもう時限装置は使えないわ」
「おのれ! 起爆装置など無くても、俺様の体についているカビだけで充分だ。ものどもかかれ! 絶対に作戦の邪魔をさせるな」
「イーッ」
「イィーッ」
 戦闘員たちが一斉に襲いかかってきて、格闘戦になった。美紀子は戦闘員相手に戦いながら、絵里香たちと佐緒里に向かって叫んだ。
「みんな、絶対に魔人と接触してはダメよ。接近戦ではあなた達が逆にやられてしまうから気をつけて!」
「小癪なやつらめ! 皆殺しだ」
 カビ魔人が戦闘員の間から割り込んで出てきて、体のカビを毟り取ると絵里香たちに向かって投げつけた。カビが地面に落ちると、その部分が腐食して地面に穴が開き。ガスタンクの周囲に並べられたドラム缶に命中したカビは、猛烈に繁殖しながらドラム缶を腐食させ、中に詰められていたカビが出てきて一斉に広がり出した。このままではガスタンクを腐食させてしまう。
「しまった! このままじゃガスタンクが危ない」
 その時佐緒里が何かを思いついたかのように、絵理香に向かって叫んだ。絵里香と聖奈子は佐緒里をサポートするために、佐緒里の傍についていたのだ。
「そうだ! 絵里香さん、ファイヤースマッシュでカビを焼き払うのよ。カビは熱や火に弱いわ」
「でも佐緒里、それじゃガスタンクまで巻き添えにしてしまう」
「大丈夫! 私の言う通りにして。絶対ガスタンクを守ってみせるから」
「分かった。ファイヤースマッシュ!」
 絵里香がファイヤースマッシュを放ち、エネルギー波がカビを包み込むと、カビは炎の熱でたちまち焼き払われた。だがこのままでは燃え広がる炎がガスタンクを巻き込み、大爆発を起こしてしまう。そこへ佐緒里が自分のブレードを炎に向けて伸ばした。
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「絵里香さん、聖奈子さん。サポートをお願い!」
「分かった」
「オッケー!」
 絵里香と聖奈子はそれぞれ自分たちの武器を出して、佐緒里に向け、佐緒里はブレードを炎に向けた。
「フリーザートルネード!」
 冷凍ガスが渦を巻いて燃え盛る炎を包み込み、たちまち火が消えた。さらに周辺で繁殖していたカビが全て氷漬けになった。
「やい化け物! ざまあ見ろ。これでもうカビは使えないわよ」
「おのれ小娘ども! よくも作戦を台無しにしたな! 皆殺しにしてやる。食らえ!」
 カビ魔人は体についているカビをむしり取ると、手当たり次第に投げつけてきた。絵里香たちを外れたカビが戦闘員に命中し、戦闘員は絶叫と共に溶けてしまった。美紀子が絵里香たちに向かって叫ぶ。
「カビに気をつけて! 接近戦は絶対ダメよ」

 美由紀はジャンプすると、空中で一回転してカビ魔人の後ろに着地した。カビ魔人の前に絵里香と聖奈子、そして佐緒里が立ち、後ろに美由紀が立って、挟み撃ちにするような態勢をとって、カビ魔人のカビ攻撃の射程距離ぎりぎりで身構えた。
「覚悟しろ。化け物」
「ええい小癪な小娘ども。一人づつカビで溶かしてやる」
 カビ魔人は手当たり次第にカビを投げつけてきた。
「ファイヤースマッシュ!」
 絵里香のエネルギー波が、飛んでくるカビを焼き払った。後ろにいた美由紀がバトンを弓にチェンジし、矢を番えるとカビ魔人に向けて矢を放った。

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「ライトニングアローアタック!」
 矢は真っ直ぐカビ魔人に向かって飛んでカビ魔人に命中した。
「グアァーッ!」
 矢はカビ魔人の身体を貫いて、その部分から火花が激しく迸った。
「お… おのれ小娘ども」
 カビ魔人は体のあちこちから火花と煙を噴き出しながら、前のめりになって倒れ、緑色の煙を噴き出しながら同じ色の液体をドロドロと吐き出し、最後にはカビ魔人自身がドロドロに溶けて消滅した。
「やったぁ!」
 カビ魔人を倒した絵里香たちと佐緒里は、お互いに手を握り合って喜んだ。そこへ美紀子がやってきて、手を握り合っている四人の手の上に、自分の手を置いた。
「みんなご苦労様。よくやったわ」
 ガスタンクが並んだガスタンク基地内は、さっきまでの戦いが嘘のように静まり返っていた。

*     *     *     *

 バイオカビを使ったネオ‐ブラックリリーの作戦は、エンジェルスの奮闘により挫折させられ、ネオ‐ブラックリリーの世界征服作戦はまたも失敗に終わった。しかし、ネオ‐ブラックリリーは世界征服を諦めたわけではないのだ。頑張れエンジェルス!

(つづく)


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 次回予告
 ◎第27話『凶悪軍隊蟻 迫る黒い絨毯』

 世界征服を画策し、エンジェルスを狙うネオ‐ブラックリリーが送り込んだ次なる使者は、凶悪軍隊蟻魔人。魔人が操る人食い蟻が黒い絨毯となって人々を襲う・・
 一方、佳奈子の通う第一中学校では文化祭が始まり、佳奈子たちチアリーディング部は、出し物の喫茶店とコスプレショーで大忙し。佳奈子は佐緒里、裕香と3人でテレビアニメ放映中の『ウエスタンプリキュア』の衣装を着て大はりきり。しかし文化祭の余韻を楽しんで、プリキュアの衣装姿で公園にいたところを、作戦中のネオブラックリリーと鉢合わせしてしまう。佳奈子たちが危ない・・

 次回 美少女戦隊『エンジェルス』第27話 『凶悪軍隊蟻 迫る黒い絨毯』にご期待下さい。


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