鷲尾飛鳥

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第31話『戦隊壊滅 ! ! エンジェルスの危機 ! ! 』

2013年 04月13日 20:38 (土)

第31話表紙


 ここはN県川上町にある聖フローリア女学院・・・・
 聖フローリア女学院はミッションスクールで、昔この土地を訪れた一人の外国人シスターが、健全なる女性の教育を目的として、女性のための神学校と英語塾を設立したのが始まりである。学校創立110年の伝統を持ち、全寮制で生徒数は約250名。生徒は全員学校の敷地内にある寄宿舎で生活している。教職員も全て教員用宿舎で生活し、雰囲気からして一見外界と隔絶されているようにも感じられるが、昔と違って現在の校風は以外と開放的で、校則もさほど厳しくはない。
 そして・・ この聖フローリア学園で、ネオ‐ブラックリリーが恐ろしい事を引き起こそうとしていることに、学校の生徒達や教師達は勿論のこと、他の誰も気付いていなかった。
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 ネオ‐ブラックリリーは一度失敗した学校占領作戦を、N県の川上町にある聖フローリア女学院で、再び実行しようとしていた。都市圏の学校を避けたのは、最初の作戦の失敗を教訓としたもので、作戦区域がエンジェルスのいる場所から大きく離れており、さらに全寮制という隔絶された環境であって、妨害を受けにくいということだった。ネオ‐ブラックリリーの作戦は、まずこの学校を占領して教職員・生徒の全てを洗脳して組織の予備軍とし、優秀な者は将来魔人に改造したり、組織の科学グループに組み入れて、組織の基盤をより強力なものにしようというものだった。この作戦が成功すれば、他の学校に対しても同様の方法で作戦を遂行し、やがては全国の学校をネオ‐ブラックリリーの組織に組み入れてしまおうというものだった。が、実はこの作戦は別の作戦を隠蔽するための、大規模な陽動作戦だった。その作戦内容はここでは省略する。

      *      *      *      *

 ここは天間村の某所に作られた、ネオ‐ブラックリリーのアジト。
「イーッ。ゼネラルダイア様。飛行機魔人様が到着しました」
 戦闘員の報告と同時に、飛行機魔人が司令室に入ってきた。
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「ゼネラルダイア様。聖フローリア学園周辺の偵察任務を終え、ただいま帰還しました」
「ご苦労であった」
 飛行機魔人はゼネラルダイアのそばへ行くと、映してきた航空写真のデータを渡し、ゼネラルダイアは戦闘員に向かって命令した。
「すぐにモニターに映し出せ」
 戦闘員がコンピューターのモニターを操作して、データを入力した。すると、モニターに航空写真が映し出された。ゼネラルダイアはモニターを見ながら考え込んでいた。
「スカーレットエンジェルのペンションがあるな・・ だが、ここにはスカーレットエンジェルはいないのだから、すぐに嗅ぎ付けられる恐れはあるまい」
 その時スピーカーから大首領の声が流れてきた。
「待て。ゼネラルダイア。この作戦は奴等に嗅ぎ付けられてもいいのだ」
「どういう事ですか? 大首領様。それでは作戦に・・・  」
「いいから、まず私の話を聞け。エンジェルスの小娘どもやスカーレットエンジェルに分かるように、大っぴらに作戦を遂行しろ。そして奴等を誘き出し、一気に片付けるのだ」
 ゼネラルダイアは黙って聞いていた。そこへ大首領がさらに話を続けた。
「それからもう一つ! 我がネオ‐ブラックリリーを嗅ぎ回っている連中がいる。そいつらの正体を突き止めて一網打尽にせよ」
「大首領様。そいつらは一体何者ですか?」
「コンピューターの分析では、まだその正体は不明だ。現在分かっているのは、その連中が発している暗号コードの『ACA』だけだ。至急、そのASSAを突き止め、我々ネオ‐ブラックリリーに歯向かうやつらを片付けるのだ。そのために学校占領作戦を大っぴらにやるのだ。エンジェルスの小娘どもが動き出せば、ACAの組織が接触してくるかもしれないではないか。接触してくれば我々にとって都合が良いが、出来る事なら、接触する前にACAの正体を突き止めて叩き潰すのだ」
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「なるほど・・ 」
「直ちに行動に移るのだ」
「かしこまりました。大首領様」
 そこで大首領のメッセージが終わり、ゼネラルダイアは戦闘員達の方を向いた。
「ラフレシア魔人を呼べ」
「イーッ」
 命令を聞いた戦闘員が司令室を出て行った。しばらくしてラフレシア魔人が入ってきた。
「ヒヒヒヒーッ。ラフレシア魔人出頭いたしました」
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「早速お前を学校占領作戦の責任者に任命する。出来るだけ効果的にやれ。標的はこの学校だ」
 ゼネラルダイアは地図を広げると、目的地を指差した。
「聖フローリア学園・・ 」
「そうだ。この学校の生徒を全員洗脳し、戦闘員として養成するのだ」
「かしこまりました」
 ラフレシア魔人が司令室から出ていった。その様子を見届けてから、ゼネラルダイアは戦闘員に命令した。
「クラゲ魔人! い出よ!」
「グゥーラーッ!」
 奇声とともに、クラゲ魔人が司令室に入ってきた。
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「クラゲ魔人。お前はラフレシア魔人とは別行動をとり、天間村一帯に戦闘員を配置して、警戒態勢に入れ」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 クラゲ魔人は戦闘員を伴って司令室から出ていった。

 出動したラフレシア魔人は早速作戦開始のため動き出した。そして聖フローリア学園が見渡せる場所にやってくると、随伴していた戦闘員に指示を出した。
「よし! 作戦を開始する。配置につけ」
「イーッ」
 戦闘員がそれぞれの場所へ散っていった。

 さて、今日は日曜日で、生徒たちの一部は外出する者・土曜日から帰省している者など様々であった。現在午後5時。ラフレシア魔人は学校の敷地を眺めていて、外出から帰ってきた一人の生徒を見つけた。その生徒(北本寛子)は帰省先の実家から戻ってきたらしく、大きなバッグを持っていた。
「よし・・・ まずあの娘からだ」
 ラフレシア魔人は門に近づいてきた寛子の前に立って行く手を阻んだ。突然自分の前に現れた醜怪な魔人を目の当たりにして、寛子は持っていたバッグを落とし、大声で叫ぼうとしたが、ラフレシア魔人の目から強い光が点滅した瞬間に瞳が虚ろになり、ボーっとしたような表情になってその場に立ちすくんだ。
「私の名はラフレシア魔人。お前は今から我がネオ‐ブラックリリーの忠実な手下となるのだ。さあ、行くのだ」
「分かりました」
 ラフレシア魔人は寛子の背中にくっついてそのまま乗り移り、寛子は落としたバッグを拾うと、門を通って寄宿舎の建物に向かった。建物の入り口を通過したとき、受付にいた舎監の深谷先生に呼び止められたが、そのまま入って行こうとしたので、深谷先生は追いかけていって、寛子の腕をつかんで言った。
「北本さん。帰ってきたときはちゃんと報告して、外出届けに帰寮したというサインをしなければダメじゃないの」
 寛子は返事もせずに、腕をつかんでいた深谷先生の手首をつかむと、逆に力一杯捻った。
「い… 痛い! 何するんです。はなしなさい」
 騒ぎを聞きつけて、近くの部屋にいた他の生徒達が数人出てきた。同時に寛子に乗り移っていたラフレシア魔人が寛子の体から離れ、その醜怪な姿をさらけ出すと、奇声を上げて威嚇した。
「ヒヒヒヒヒーッ」
「キャーッ! ば… 化け物!」
 深谷先生が叫ぶと同時にラフレシア魔人は目から強い光を続け様に発し、深谷先生を始め、そばにいた他の生徒たちはあっという間に催眠状態になってしまった。
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「者ども、この寄宿舎にいる者全員を我がネオ‐ブラックリリーの手下とせよ。さあ、行くのだ」
 催眠状態になった生徒たちが一斉に歩き出し、ラフレシア魔人は戦闘員を伴ってその最後尾を歩いた。数十分後には寄宿舎内にいた全ての生徒と教職員が洗脳され、ネオ‐ブラックリリーの手下となって、一階のロビーに集められていた。
 しかし・・  洗脳された生徒たちは全員ではなかった。寮生の一人、栗橋里美は、寮がラフレシア魔人に襲われた時に、近くのコンビニに買い物に行っていて留守だった。そして寮に帰って来た時に、ちょうどラフレシア魔人が寮生達に襲いかかっている所(正確には襲われて洗脳されたあと)を見てしまい、寮の外から中の様子を見ていたのだ。
 寮内ではラフレシア魔人が、洗脳した生徒たちや先生たちをロビーに集めていた。が、一人だけ洗脳していない生徒がいる事をまだ知らなかった。
「これでよし。これでこの学校の生徒と、教職員は全て我がネオ‐ブラックリリーの手下となった」
 ラフレシア魔人はそばにいた戦闘員を呼びつけ、携帯電話を渡した。
「ゼネラルダイア様に報告しろ。第一作戦は成功だ」
「イーっ」
 戦闘員が携帯電話を持って、ラフレシア魔人のそばから離れ、里美が覗いている窓の方へ歩いていった。食堂の窓の外から中の様子を見ていた里美は、戦闘員が窓に近づいてきたので、その場から離れようとした時、服の袖が植え込みの枝に引っかかった。
 ガサガサッ・・・
 その音は窓に近づいてきた戦闘員に聞こえた。
「外に誰かいるぞ」
「何?」
 ラフレシア魔人は戦闘員が指さしている窓に向かった。里美は恐怖のあまり、一目散にその場から逃げ出した。ラフレシア魔人は窓を開けると、戦闘員に向かって叫んだ。
「くそっ。まだ生徒がいたのか。逃がすな。追え!」
 寮の外で待機していた戦闘員たちは、ラフレシア魔人の命令で一斉に駆け出し、逃げる里美を追った。里美は日が落ちて暗くなった林の中を、どこを走っているのか分からないくらい夢中で逃げ続けた。後ろからは戦闘員たちが追いかけてくる。

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「逃げ足の早い小娘だ」
「追え。早く捕まえるんだ」
「イーッ」
 走り続けていた里美はもう体力が限界に近かった。ようやく林の中を抜け、街道が見える場所までやってきた。時折通過する車のヘッドライトの明かりが見える。
「ハァハァ・・・ 道路だ・・ も、もう少し・・」
 里美は傍にあった木に寄りかかって、呼吸を整えながら道路を眺めた。そこへ後ろから追ってくる戦闘員の声と足音が聞こえ、慌てて道路の方へ向かって駆け出した。が、その先は下りの斜面で、里美は暗がりのためにそれに気付かず、足がもつれてコケてしまい、そのまま転がりながら下まで落ちていった。追いかけてきた戦闘員たちは、今まで里美がいた場所までやってきて、辺りを見回し、その中のひとりが叫んだ。
「ここを通っているぞ。下の道路だ」
 戦闘員たちは一斉に斜面を下った。

 里美が落ちた場所は国道○○号線の道路脇で、そこへ一台の車が通りかかった。運転していたのは古川誠人で、助手席には妻の久美子が乗っていた。二人は結婚してまだ一年未満の新婚ホヤホヤで、誠人は美紀子の義理の従弟である(スカーレットエンジェルの小説と、エンジェルスの第17話・19話を参照)。二人はともに東京で働いていたのだが、美紀子に天間村のペンションの経営を頼まれて、二人はそれを承諾。一ヶ月程前に東京を離れて天間村に移住し、美紀子がオーナーをやっている、ペンション赤嶺の経営者になっていたのだ。二人は町へ買い出しに行った帰りに、道路脇に倒れている里美を見つけた。
「誠人、誰か倒れているわ。止めて」
「本当だ・・」
 車は里美が倒れている場所の3m程手前で停止し、誠人と久美子が降りてきた。久美子は倒れている里見の傍へ駆け寄り、誠人は道路脇からせり上がっている斜面を見上げた。
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「この上から転げ落ちてきたのか・・ でもこんな時間に何でこんなところを・・・ 」
「誠人、早く運んで」
「お、おう」
 二人は気絶したままの里美を車に乗せると、その場から発進させた。暫くして戦闘員たちがやってきた。
「しまった・・ 車に乗せられて運ばれていったぞ」
「くそっ! 一足遅かったか。とにかく、ラフレシア魔人様に報告するのだ」
「いつまでもここに居るとまずい。引き揚げだ」

      *      *      *      *

「何? 逃がしただと?」
 ラフレシア魔人は戦闘員の報告を聞き、戦闘員に向かって威嚇の構えを見せた。が、そこへゼネラルダイアが姿を現した。
「待て。ラフレシア魔人。逃がしてもいいのだ」
「ゼネラルダイア様。それでは我々の作戦の秘密を知られてしまいます」
「構わぬ。この作戦は、知られた方がかえって都合がいいのだ」
「どういう事ですか?」
「まだお前には話していなかったが、この作戦自体が、我々の憎っくき敵、エンジェルスの小娘どもと、スカーレットエンジェルを誘き出すための罠を兼ねているのだ。お前は洗脳したこの連中を、早急に予備戦闘員として育成しろ」
「かしこまりました。ところで、ゼネラルダイア様。私の知らない所で、別の魔人が行動し、別の作戦が行われているようですが」
「そちらの方については、お前はノータッチで良い。お前は与えられた使命のみを全うすればよいのだ」
「かしこまりました」
 
 事件があった日から一週間がたった。ここは明峰学園高校の体育館・・
 放課後の体育館では、絵里香たちがいるバトン部の部活が行われていた。
「はい! ワン・ツー・ワン・ツー」
 引退してから久々に部活を見に来た、三年生の元副キャプテンの苅部雅子のかけ声にあわせて、部員たちがバトンを振りながら歩いていた。
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 部活が終わり、部員たちは挨拶を終えると、雅子の傍に駆け寄ってきた。
「みんなご苦労様」
 雅子は部員たちを労い、キャプテンの孝子が雅子に話しかけた。
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「今日は藤巻先輩はどうしたんですか?」
「芳江は大学の推薦の願書を出しに行ってるわ。みんな相変わらず元気そうね」
「先輩は、受験は?」
「私? 私は来年のセンター試験が控えてるの」
「そういえば先輩は国立志望だったっけ」
「うん。教師になるのが夢なの」

      *      *      *      *

 そんな会話が交わされていた時でも、ネオ‐ブラックリリーは、世界征服作戦の段取りを着々と進めていた。ラフレシア魔人に襲われた聖フローリア女学院は、完全にネオ‐ブラックリリーの支配下になり、学校全体がネオ‐ブラックリリーの恐怖学校になっていた。周りの目を欺くために、高校生としての普通の授業は行われていたが、洗脳された生徒たちは全員戦闘員としての教育を施され、体育会系の生徒たちに対しては、特殊訓練まで施されていた。また、全寮制という隔絶された環境も、周囲の目を欺くのに適していた。

      *      *      *      *
 
 部活を終え、学校を出た絵里香たちは、いつものようにANGELに立ち寄った。店の扉を開けて中に入ると、何だか緊迫感が漂っている。いつも出迎えてくれるはずの孝一と里奈はおらず、奥のテーブルでは美紀子と佐緒里が何かを話していた。美紀子は絵里香たちの姿を見ると、立ち上がって扉の方へ小走りに駆けていき、扉を占めて閉店の札をかけた。
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「美紀子さん。どうかしたんですか?」
「みんな座って! 大事な話があるの」
 美紀子はそう言いながら、絵里香たちを促して椅子に座った。絵里香たちが座ったところで、美紀子は話を始めた。
「天間村でネオ‐ブラックリリーが動き出しているみたいなのよ。なにか大掛かりな作戦を企んでいるようなの」
「また奴らが・・・  !?」
「佐緒里、もう一度詳しく話してちょうだい」
「はい叔母様」
 佐緒里は美紀子に話したことを、絵里香たちにもう一度話し始めた。
「私が前にいた中学校の先輩だった人が、今年の春に聖フローリア学園という全寮制の高校に進学したんです。それで一週間くらい前に、その高校の寮が得体の知れない怪物と、奇妙な集団に襲われて、みんなが捕まってしまったって言っているんです」
「それで、その人は?」
 今度は美紀子が話した。
「その子だけは、たまたま買い物に出ていて、襲われた時には寮の外にいたために無事だったそうなのよ。でも、奴らに見つかって逃げているうちに、斜面から転がり落ちてしまって、その時偶然下の道路を車で走っていた、私の義従弟夫婦が見つけて、病院へ連れて行ったんだけど、今は天間村のペンションで預かっているのよ」
「美紀子さん、ネオ‐ブラックリリーだったら、その子だけじゃなくて、美紀子さんの義従弟夫婦だってヤバイことになるよ」
「早く行かなくちゃ! 奴等の仕業だとしたら、取り返しがつかなくなる!」
「その通りよ。みんなすぐに行くわよ。佐緒里は留守番をお願い」
「はい叔母様」
 絵里香、聖奈子、美由紀の3人は制服姿のまま、急かされるように美紀子の車に乗り込み、天間村のペンションへ向かった。

      *      *      *      *

 アジトにいたゼネラルダイアは、司令室で報告を待っていた。そこへ無線連絡が入り、戦闘員がゼネラルダイアの元にやってきた。
「イーッ。ゼネラルダイア様。県境の道路を見張っている部隊から連絡が入りました」
「うむ・・ 内容は?」
「エンジェルスの小娘どもが乗った車が、県境を越え、天間村に向かってきているとの事です」
「ふふ・・ 来たか・・ ラフレシア魔人とクラゲ魔人に連絡しろ」
「イーッ」

「ラフレシア魔人様、ゼネラルダイア様から電話です」
 聖フローリア学園の校舎内にいたラフレシア魔人は、戦闘員が持ってきた携帯電話を受け取った。
「ゼネラルダイア様、何事ですか」
『どうやらエンジェルスの小娘どもが嗅ぎつけたらしい。現在こちらに向かっているとの報告が入った。洗脳した生徒達の育成状況はどうなっている?』
「ははっ。いつでも行動に移すことが出来ます。」
『よし。直ぐに作戦行動に移れ。クラゲ魔人は既に行動に移っている』
「ヒヒヒヒヒ-ッ。かしこまりました」
 ラフレシア魔人は戦闘員を伴って司令室から出て行き、ゼネラルダイアは向き直ると、近くにいた戦闘員たちに命令した。
「私は出かけるから留守を頼むぞ」
「イーッ」
 ゼネラルダイアは普通の女性の姿に化けると、アジトから出て行った。

      *      *      *      *

 美紀子の運転する車は、S県とN県との県境を超え、大瀧村と天間村の境にある美晴峠を越えて天間村に入った。ペンションまで約10kmの地点まで来たとき、道路がバリケードで塞がれているのを見た美紀子は、慌ててブレーキを踏んだ。
「一体何事なの?」
 美紀子と絵里香たちは車を降りてバリケードに近づいた。工事をしているわけでもないし、通行止めになる要素は何一つ無いのだ。一体何事なのかと思っていたら、突然周囲から戦闘員が奇声を上げながら飛び出してきた。
「ネオ‐ブラックリリーよ! みんな気をつけて」
 戦闘員たちは4人を囲んで、少しずつその輪を縮めて迫ってきた。
「やっぱりこいつらの仕業だったのね。私達の邪魔をする気なんだわ」
 戦闘員は奇声を上げながら4人に襲いかかってきた。4人は襲ってくる戦闘員の攻撃をかわしながら一人ずつ倒し、聖奈子が美紀子に向かって叫んだ。
「美紀子さん、ここは私と美由紀でくい止めるから、絵里香と一緒に早くペンションへ行って」
「分かったわ! 聖奈子、美由紀、後は頼んだわよ」
 美紀子と絵里香は戦闘員の攻撃をはねのけながら車に乗り込み、急発進してペンションへと向かった。その後ろ姿を見届けながら、聖奈子は美由紀と共に変身し、武器を出して身構えた。
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「美由紀、行くよ。絶対くい止めるからね」
「分かった。聖奈子」
 戦闘員達が2人を取り囲み、次から次へと襲いかかってきた。聖奈子は楯で攻撃をかわしながらソードで戦闘員を切り伏せ、美由紀はバトンで戦闘員を倒していった。
「そこまでだ。引けぇ!」
 突然の声に、聖奈子と美由紀は辺りを見回した。残った戦闘員たちは2人への攻撃をやめて後ろに下がり、2人との間に間隔を置いて身構えた。醜怪なラフレシア魔人とクラゲ魔人が姿を現し、2体の魔人の後ろからは、制服に身を包んだ10数人の女子高生がついてきて、魔人が足を止めると同時に、魔人の両サイドに1列横隊に並んだ。
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「ヒヒヒヒーッ。エンジェルスの小娘ども。紹介しよう。この者達は我がネオ‐ブラックリリー女子高生部隊だ」
「ネオ‐ブラックリリー女子高生部隊ですって? お前たち、今度は何を企んでいるの!?」
「我がネオ‐ブラックリリーは、世界征服のために、優秀なる学生達を集め、予備軍を編成する事にしたのだ。そのためにここにいる学生達を学校ごと頂いたのだ。お前達に邪魔されて一度は失敗した作戦だが、再び開始したのだ」
「そんな勝手なことさせないわ!」
「何とでもほざけ! お前たちがここへ来たのが運の尽きよ。今頃は別働隊がお前たちの仲間のところへ向かっている。お前たちの仲間も、ここにいる学生たち同様、我がネオ‐ブラックリリーの組織員とすべく、我々がそっくり頂戴する。ヒヒヒヒヒ-ッ」
「しまった・・ 聖奈子、ANGELが危ないわ。美紀子さんに早く知らせないと」
「グゥーラーッ! そうはいくか。おまえたちはここから生きては帰れないのだ」

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ラフレシア魔人が女子高生たちに向けて右手を上げた。すると、制服姿だった女子高生たちが、瞬時に戦闘員の恰好になった。

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「かかれっ! 女子高生部隊」
 女子高生の戦闘員たちが、一斉に駆け出して聖奈子と美由紀に向かってきた。自分たちに迫ってくる女子高生たちを前にして、聖奈子と美由紀はたじろいだ。自分たちに向かってくるのは、ネオ‐ブラックリリーに操られているだけの、普通の女の子たちである。戦って倒すわけにはいかない。戸惑っているうちに、女子高生部隊が奇声を上げながら襲いかかってきて組み付いてきた。手が出せない聖奈子と美由紀は攻撃をかわすのが精一杯で、そのうち次第に押されてきた。
「やめて! みんな、目を覚ましてぇ!」
「やれっ! 学生部隊。エンジェル戦士は手を出すことが出来ないのだ」
「畜生! 卑怯な真似しやがって」
「聖奈子、ここは一旦逃げた方がいいよ」
 美由紀の言葉に、聖奈子も逃げるしかないと悟ったが、逃げようにも完全に周りを囲まれ、さらに自分たちの後ろは崖で、もう後が無かった。
「馬鹿め! 逃げられるとでも思ってか。ヒヒヒヒ-ッ」
「グゥーラーッ。地獄へ案内してやる」
 ラフレシア魔人とクラゲ魔人が、戦闘員と女子高生部隊を煽り立てる。
「ダメ! 美由紀。これじゃ逃げられないよ」
「どうするのよ」
「化け物を倒すしかないよ」
 聖奈子と美由紀は攻撃してくる女子高生部隊と戦闘員を押しのけ、ラフレシア魔人とクラゲ魔人に向かって駆け出した。
「化け物! 覚悟しろ。お前たちの企みは全て粉砕してやる!」
「ふん! こざかしい… ヒヒヒーッ」
「畜生! 化け物め、アクアスマッシュ!」
「ライトニングスマッシュ!」
 聖奈子と美由紀は同時にエネルギー波を二体の魔人目がけて放った。だが、魔人たちはどちらもそれを受け止めて弾き返した
「小癪な小娘どもめ。そんなものが通用するか。者どもかかれ」
 戦闘員と女子高生部隊が襲いかかってきて、ついに聖奈子と美由紀は崖っぷちに追いつめられた。
「グゥーラーッ! もうあがいても無駄だ。小娘ども。地獄の底へ落ちてしまえ」
 クラゲ魔人の鞭が、聖奈子と美由紀に向かって飛んできて、二人の間の地面に接触すると、バチバチっと火花を散らし、衝撃が二人を襲って二人ともバランスを崩した。
「キャッ!!」
 さらにクラゲ魔人の頭部からガスが噴射されて聖奈子と美由紀の周りに漂ってきた。
「か、体が痺れる・・」
 聖奈子と美由紀はガスで体が痺れ、さらに視界がぼやけて周りの景色が歪んで見えてきた。
「聖奈子、幻覚ガスだよ」
「か、体の自由がきかない・・」
「喰らえ小娘!」
 クラゲ魔人の鞭が聖奈子めがけて伸びてきて、ガスでフラフラになっている聖奈子にまともにあたった。
 バチバチバチッ!!!
「キャーッ! アァーッ」
 鞭の電撃を喰った聖奈子は、衝撃で吹っ飛ばされ、叫び声と共にそのまま後の崖からまっさかさまに崖下に落ちていった。
「聖奈子、聖奈子ーっ!」
 聖奈子が落ちた崖の下を見ながら叫ぶ美由紀の後ろから、ネオ‐ブラックリリー女子高生部隊が鎖を振り回しながら迫ってきて、一斉に鎖を投げた。鎖は美由紀の身体に次々と絡みつき、美由紀は身動きがとれなくなってしまった。
「どうだ小娘。それでは身動きできまい」
「く・・・ 」
 ラフレシア魔人が目から催眠光線を発射し、動けない美由紀はまともに光線を浴びた。
「ああぁぁーっ!!」
 光線を浴びた美由紀は変身が解け、気を失ってしまった。
「ヒヒヒヒヒ-ッ! ざまあみろ小娘。よーし! 連れていけ!」
 ラフレシア魔人は戦闘員に命じて、気絶した美由紀を運ばせた。
「全員引き揚げろ」

     *       *       *       *

 その頃、ペンションにたどり着いた美紀子と絵里香は、車を降りるとそのまま玄関に向かったが、雰囲気がおかしいのに気付いた美紀子は、玄関の手前で足を止めた。
「美紀子さん、どうかしたんですか?」
「絵里香静かに」
 絵里香は何かを直感したのか、黙って美紀子を見ていた。美紀子は玄関の扉の横に張り付くと、扉越しに中の様子を窺った。
「人の気配が無い・・・ まさか・・」
 美紀子は絵里香に来るよう合図をし、絵里香も扉の横についた。美紀子は勢いよく扉を開けて中に入り、絵里香もそれに続いた。絵里香と美紀子は全ての部屋という部屋を捜したが、自分達以外に誰も室内にいる気配が感じられない。結局全て捜し尽くして、絵里香と美紀子はリビングルームで合流した。リビングルームには争った形跡があり、椅子やテーブルの位置が乱れていて、小物がそこいらじゅうに散乱していた。
「美紀子さん、まさか、ここまでネオ‐ブラックリリーが… 」
「この部屋の状態を見れば一目瞭然よ。奴等にさらわれたんだわ」
「それじゃ、美紀子さんの義従弟夫婦も」
「多分・・ もしそうだとすればきっと学校よ。絵里香、聖フローリア学園のことなんだけど、隣の川上町にあるの。ここから車で30分位のところにあるのよ。私たちで行って調べてみよう」
「それなら、聖奈子と美由紀を急いで呼ばなきゃ」
「そんな悠長な時間はないわ。2人には後で連絡することにして、とにかくまず私達だけで調べるのよ」
「分かった」

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 ペンションを後にして、聖フローリア学園に向かって発進しようとしていた時、絵里香の携帯に聖奈子からの緊急着信が入ってきた。聖奈子はクラゲ魔人の攻撃で崖から落ち、そのまま下を流れている川に落ちて、それと同時に変身が解けたのだが、まだ意識があった。そして残された力を振り絞って川から這い上がり、絵里香の携帯にメールを送ったのだが、その途中で力つきて気を失ってしまったのである。
「大変よ! 美紀子さん、ANGELが危ないわ。やつらは私達の留守を狙ってANGELを襲うつもりなのよ」
「何ですって?」
「美紀子さん、急いでANGELに戻って! 私はこっちに残って、聖奈子と美由紀を捜して合流するから。見つかったら連絡する」
「分かった絵里香。じゃ後は頼んだわよ」
 美紀子は周りに誰もいないのを確かめてから、スティックを出して一振りした。瞬時に美紀子はその場から消えた。残った絵里香は、自分の格好を見て呟いた。
「制服じゃ目立って危ないな… 」
 絵里香はペンションの中に戻り、美紀子の私室に入るとクローゼットの中にあった服を選び出して、着替えることにした。
「美紀子さん… 服を借りるわね」

    *      *      *      *

 テレポートした美紀子は、鷲尾平のANGELに戻ってきた。扉を開けると佐緒里がいたが、別に特に変わった様子はないように感じられた。まだネオ‐ブラックリリーはここへは来ていなかったのかという安堵感からか、美紀子は急に喉が渇いて、佐緒里に飲み物を頼んだ。そして佐緒里が持ってきたオレンジジュースを一気に飲んだ美紀子は、急に目眩がしてきて、前にあったテーブルに両手をついた。さらに目眩だけでなく、体全体が痺れてきた。
「こ、これは… い、一体… 体が痺れる」
 気が付くと、美紀子の前には佐緒里が立っていて、佐緒里の目が据わっている。
「佐緒里、い、一体どういうことなの?」
「こういう事よ。叔母様」
 そこへゼネラルダイアが出てきて、美紀子の前に立った。

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「ゼ、ゼネラルダイア… まさか… 」
「佐緒里は既に私の催眠光線で、私の意のままなのだ。ふふふ・・・ いくらスカーレットエンジェルでも、体に毒が回っては手も足も出まい。さあ、この私の催眠光線を受けてみよ」
 ゼネラルダイアの目から催眠光線が発射された。体が痺れている美紀子は為す術もなく、催眠光線を浴びて、そのまま気を失ってしまった。
「連れて行け」
 ゼネラルダイアが言うと同時に、戦闘員たちが店内に入ってきて、気絶した美紀子を運び出し、外に止めてあった車に押し込んだ。続いて佐緒里も乗って車が発進した。
「これでよし。私は一足先にアジトへ戻るとするか」
 そう言うとゼネラルダイアはその場から消えた。

      *      *      *      *

 瞬間移動によってアジトに戻ってきたゼネラルダイアは司令室に入った。司令室にはラフレシア魔人と数人の戦闘員がいた。戦闘員の一人がゼネラルダイアの元に駆け寄ってきた。
「報告します。ラフレシア魔人様とクラゲ魔人様がエンジェルスの小娘どもと戦い、一人を崖から落とし、一人を生け捕りにしました」
「うむ・・ 崖から落ちたほうは、生死を確認したか?」
 ラフレシア魔人が返事をした。
「ヒヒヒ-ッ。クラゲ魔人が崖の下に降りて調べに行きましたが、見つかったという報告はまだ入っておりません」
「クラゲ魔人を呼び出せ」
「イ-ッ」
 戦闘員は司令室の通信機でクラゲ魔人を呼び出した。
「クラゲ魔人様が出ました」
 ゼネラルダイアはモニターの前に立った。
「お呼びですか? ゼネラルダイア様」
「崖から落ちた小娘は見つかったか!?」
「落ちた場所の下では発見出来ず、落ちた場所から下流の方を探索していますが、まだ見つかっていません」
「(川に流されたか・・ しかしあの崖から落ちたのでは、いくらエンジェルといえど、助かるまい・・・ ) よし。捜索を打ち切ってアジトに戻って来い」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 無線を切ったゼネラルダイアは、ラフレシア魔人の方に向き直った。
「それで、生け捕りにしたほうの小娘はどうしたのだ」
「ヒヒヒ-ッ。私の洗脳光線で生気を失い、気絶したままアジトに連行して、現在地下牢に入れてあります」
「よし。様子を見に行くぞ。一緒に来い」
 ゼネラルダイアがラフレシア魔人と共に司令室から出ようとした時、別の戦闘員がやってきた。
「ゼネラルダイア様。聖フローリア女学院の寄宿舎から逃げていた生徒が見つかり、ヘビ魔人様が一緒にいた者たちと共に捕らえて連れてきました」
 報告が終わると同時にヘビ魔人が司令室に入ってきた。

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「ゼネラルダイア様。ただいま戻りました。シャシャシャシャ-ッ」
「ヘビ魔人。逃げた女生徒はどこに隠れていたのだ」
「天間村にあるペンション赤嶺という所です。一緒にいた連中も捕らえて連行してきました。現在地下牢に入れてあります」
「(ペンション赤嶺か・・ 。すると一緒にいた連中はスカーレットエンジェルに関係がありそうだな。これは好都合だ) よし。ご苦労だった。地下牢へ行くからお前も来い」
「かしこまりました。シャシャシャ-ッ」

 ゼネラルダイアはラフレシア魔人とヘビ魔人を伴って司令室から出て行き、地下牢に向かった。入口に着くと、見張りの戦闘員がいて、ゼネラルダイアに向かって敬礼した。
「中に入るぞ。エンジェルの小娘を閉じ込めている部屋へ案内しろ」
「イ-ッ」
 戦闘員が入口の鉄格子の鍵を開け、鉄格子を開けると、ゼネラルダイアは中に入った。
「この部屋です」
 ゼネラルダイアは戦闘員が指差した部屋を、鉄格子の外から見た。中では制服姿の美由紀が、両足を前に投げ出した格好で壁にもたれ、上の空でゼネラルダイアの方を見ていた。
「どうやら、ラフレシア魔人の催眠光線で、完全に洗脳されているようだな」
 ゼネラルダイアはそう呟き、ラフレシア魔人は美由紀に向かって言った。
「立つのだ小娘」
 ラフレシア魔人の声で、美由紀は急に目がシャキッとしたような表情になり、ゆっくりと立ち上がった。そして目が徐々に据わってきた。ゼネラルダイアの思惑通り、美由紀は完全に洗脳されていた。
「扉を開けて外へ出せ」
「イ-ッ」
 扉が開けられ、中にいた美由紀は牢の外へ出てきた。ラフレシア魔人は目から光を点滅させながら美由紀に向かって言った。
「お前は我がネオ-ブラックリリーの一員だ」
「はい。ラフレシア魔人様」
「ゼネラルダイア様。この通りでございます。この小娘は完全に私の思い通りに動きます」
「うむ・・ 他に捕らえた連中は」
「こっちです」
 ヘビ魔人が美由紀のいた部屋の隣に案内した。隣の牢の中では、誠人と久美子が気絶したまま放り込まれていた。
「こいつらを起こせ。ラフレシア魔人の催眠光線で洗脳するのだ」
「イ-ッ」
 戦闘員が扉の鍵を開けて中に入り、気絶したままの誠人と久美子の傍へ行った。
「おい! 起きろ!」
 戦闘員たちに体を揺すられて、誠人と久美子は目を覚ました。と同時に戦闘員たちは二人の顔をラフレシア魔人の方へ向かせた。その瞬間、ラフレシア魔人の目から強烈な光が点滅して、誠人と久美子は瞬時に目がトローンとした状態になった。それを見たラフレシア魔人は、二人に向かって叫んだ。
「立て。我がしもべよ。お前たちは今から私の思い通りに動くのだ」
 二人はゆっくりと立ち上がり、牢の外へ出てきた。二人の目も美由紀と同じように据わっていた。
「さて・・ 残りは逃げた女生徒だな」
 ゼネラルダイアは里美が閉じ込められている部屋の前に立った。中では両手両足を縛られて、猿轡を噛まされている里美の姿があった。

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「ん・・ んーっ・・・(助けて・・ 助けて)」
「この女生徒はエンジェルスの小娘を誘き出すための餌に使えそうだ。ラフレシア魔人!」
「ハッ」
 ラフレシア魔人は扉を開けて中に入ると、里美に近づいていった。
「んーっ・・・ んーっ (嫌あーっ。来ないで・・・ 来ないで)」
 里美は必死でもがいたが、縛られていてはそれも空しかった。ラフレシア魔人は両手で里美の頭を押さえると、目から催眠光線を発射した。里美もこれで洗脳状態になった。戦闘員が入ってきて、里美を縛っているロープを解き、猿轡を外した。里美は立ち上がると、戦闘員に連れられて牢の外へ出た。ゼネラルダイアはラフレシア魔人に向かって言った。
「こいつらを、お前が仕切っている聖フローリア女学院へ連れていけ。エンジェルスの残った一人は必ずやってくる。この者たちを利用し、待ち伏せして片付けるのだ」
「かしこまりました。ヒヒヒヒーッ」
 ラフレシア魔人は、洗脳した者たちを聖フローリア女学院へと連れて行った。
「スカーレットエンジェルも、やつのガキも洗脳してある。早く来いエンジェルレッド・・ お前の味方はもう誰もいないのだ」
 ゼネラルダイアは含み笑いをしながら呟いた。

      *      *      *      *

「これでよし… と」
 絵里香は着替えると、部屋にあったリュックに必要な物を詰め込み、ペンションを出た。入り口の横には、原付バイクが置いてあって、ガソリンも入っていた。おあつらえ向きにエンジンキーもあったので、絵里香はバイクも拝借することにした。
「美紀子さん、バイクも借りるね」
 絵里香はキーを回してエンジンをかけ、発進させた。フローリア女学院に行く前に、まず聖奈子と美由紀を捜さなければならないので、ここへ来る途中でネオ‐ブラックリリーに襲われた場所へ向かった。目的地に着いた絵里香は、戦いの跡を横目に見ながら、聖奈子と美由紀を捜した。
「聖奈子-っ! 美由紀―っ。何処なのーっ」
 二人を捜しているうちに、崖っぷちに辿り着いた絵里香は、崖の下を眺めた。
「もしかして… この下に。よし! エンジェルチャージ」
 絵里香は何かを直感したのか、エンジェルに変身して崖から飛び降りた。崖下を流れている川は片方は絶壁だが、もう片方には河原があって、絵里香はそこへ降り立った。
「聖奈子ーっ。美由紀ーっ」
 2人の名前を呼びながら歩いていた絵里香だったが、誰もいる気配がない。絵里香は考えたが、どうしても考えがまとまらず、一旦上へ上がって変身を解き、今度はANGELに戻ったはずの美紀子に連絡を入れたのだが、連絡が取れない。
「おかしい… どうしたんだろう」
 絵里香は妙な胸騒ぎがしたが、まず学校の様子を知ることが先決だと悟って、バイクのエンジンをかけて発進した。だが、走行中の様子は、見張りの戦闘員によって発見された。
「こちらAブロック044地点。エンジェルの小娘を発見。聖フローリア学園に向かっています」

      *      *      *      *

 バイクを走らせていた絵里香は、学校が見えるところでバイクを止めた。その様子もネオ-ブラックリリーによって見張られていて、テレビカメラに映し出されていた。
「学校のそばまで来たな・・ よし。例の女生徒をやつに接触させるのだ」
「イ-ッ」
 戦闘員は返事をすると、洗脳した里美を連れてきて、絵里香がいる場所の方へ行くよう促し、里美は無言のまま小走りに駆けていった。

 絵梨香は乗ってきたバイクを道路脇に置くと、用心しながら学校の敷地へと近づいていった。そこへ絵里香に向かって里美が走って向かってきた。
「助けて! たすけて」
「どうしたの? もしかして、あなた栗橋里美さん?」
「はい。私・・ 得体の知れない奴らに捕まって・・ でも隙を見て逃げてきたんです」
「私はあなたを助けに来たの。あなたの学校の様子がおかしいって聞いたんで、調べに来たのよ。里美さん、学校を案内してくれる?」
「はい」
 絵里香は里美の案内で寄宿舎のある方の門へと近づいた。既に夕方近くになっていたが、門は開かれていて、絵里香と里美はそのまま寄宿舎の中へと入っていった。
「やけに静かだわ」
 寄宿舎の中は誰もいる様子が無く、静まり返っている。どういう事かと思いながら、絵里香は里美に校舎の方を案内するよう頼んだ。
「こっちです」
 寄宿舎を出て、絵里香と里美は校舎の方へ向かっていたが、学校の生徒たちは何処にいるのかと思うくらい、誰もいる気配がない。校舎の前まで来たとき、突然大きな声が響いた。

「待っていたぞ小娘」
 突然の声に絵里香は辺りを見回した。その時、後ろにいた里美がいきなり絵里香を羽交い締めにした。
「何するの? 放して! 放してっ」
 校舎の中から戦闘員を従えたラフレシア魔人が出てきた。そして戦闘員がやってきて、絵里香の両腕を左右からつかんだ。
「よくやったぞ。我がネオ-ブラックリリー女子高生部隊」
「ネオ-ブラックリリー女子高生部隊・・ どういうことなの?」
「ヒヒヒーッ。小娘、教えてやろう。この学校は我がネオ-ブラックリリーがそっくり頂いたのだ。いずれは優秀なネオ-ブラックリリー組織員となるように我々が教育し、世界征服のために働くことになるのだ」
「そんな勝手なことさせないわ」
「ほざくな。者ども、小娘を処刑場に案内するのだ。連れて行け」
 ラフレシア魔人は絵里香を校庭に連れてくると、絵里香の髪をつかんで校庭の真ん中を向けさせた。そこには学園の生徒達に混じって、美紀子と佐緒里、それに誠人と久美子、そして美由紀が立っていた。そして美紀子を先頭に、みんなが剣を手に絵里香に迫ってきた。明らかに自分を襲ってくるということが分かった絵里香は、美紀子たちに向かって叫んだ

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「美紀子さん、美由紀、みんな、私よ。絵里香よ。私が分からないの?」
「無駄だ小娘。みんな我がネオ-ブラックリリーの手下となったのだ。まずお前をこの場で処刑してやる。執行人は目の前にいるお前の元の仲間達だ。お前の仲間はもう誰もいないのだ。孤独の中で、元の仲間達の手にかかって死んで行け」
 よく見ると、美紀子も美由紀も佐緒里たちも、みんな目が据わっていて正気ではないようだ。絵里香は悔しさに唇を噛んだ。美紀子たちは、絵里香の前まで来ると、剣の切っ先を一斉に絵里香に向けた。
「やめて! みんな、目を覚ましてぇ」
 美紀子たちが剣を手に絵里香に向けて振りかぶった瞬間、絵里香は両腕の力を込めて、自分のことを押さえつけていた戦闘員をラフレシア魔人目がけて投げ飛ばした。2人の戦闘員はそのままラフレシア魔人に体当たりする格好になり、ラフレシア魔人は不意をつかれて尻餅をついた。
「おのれ! 小娘」
 体勢を立て直したラフレシア魔人は、絵里香目がけて右手に持っていた鞭を飛ばしてきたが、絵里香は間一髪でジャンプし、空中でポーズをとった。
「エンジェルチャージ!」
 絵里香は空中で変身し、一回転して地上に着地すると、ブレードを手にラフレシア魔人に向かって身構えた。
「ネオ-ブラックリリー! これ以上お前達の勝手にはさせないわ」
「何を小癪な。女子高生部隊かかれっ」
 戦闘員の姿になっている聖フローリア学園の生徒達が、武器を手に絵里香に向かってきた。さらに美紀子たちも向かってきて、絵里香に斬りかかってきた。
「やめて! みんな操られているのよ。目を覚まして!」
絵里香は組みかかってきた美紀子たちや学校の生徒たちをかわしながら、包囲の輪の外へ出て、ラフレシア魔人に向かって行った。自分に向かってくる絵里香に、ラフレシア魔人は屋上を指さして叫んだ。
「小娘。屋上を見ろ」
 絵里香が屋上を見ると、数十人の生徒が整然と並んでいる。
「あの生徒たちは私の命令一つで、屋上から飛び降りるのだ。あの生徒達を助けたかったら大人しく降参しろ」
「卑怯者!」
「何とでもほざけ。ヒヒヒ-ッ」
 絵里香は悩んだ。ラフレシア魔人を倒そうにも、人質を取られては手も足も出ない。
「分かったわ・・・ 好きにしなさいよ」
「ふふふ… 観念したか。者どもかかれっ。小娘は何も出来ん。なぶり物にしてしまえ」
「イ-ッ」
「イーッ」
 戦闘員が一斉に絵里香に組み付いて、無抵抗の絵里香に代わる代わる殴る蹴るの暴行を繰り返した。何度か殴られ、蹴られた絵里香は体勢を崩して地面に倒れた。
「小娘、寝るのはまだ早いぞ」
 ラフレシア魔人がやってきて、絵里香の髪をつかんで引き上げた。苦痛に呻く絵里香… ラフレシア魔人は絵里香を突き飛ばすと、右手に鞭を持って絵里香めがけて飛ばし、絵里香の首に巻きつけて引っ張った。絵里香の身体が宙に浮き、巻き付いた鞭がさらに締め上げた。
「あぐぅ・・・ 」
 絵里香は両手で鞭を解こうとしたが、さらに鞭が締め付けてきた。
「ぐ・・・・・ 」
「どうだ。もっと苦しめ」
 ラフレシア魔人は鞭から衝撃波を流した。バチバチバチっと猛烈な火花が迸る。
「ウワアァーッ!」


 絵里香は悲痛な叫び声を上げ、数分後には全身の力が抜けて頭をぐったりと垂れた。ラフレシア魔人はここぞとばかりに、絵里香を振り回して地上に叩きつけた。
「小娘。トドメをさしてやる。さあ覚悟しろ。お前の首と胴体を生き別れにしてやる」
 ラフレシア魔人は戦闘員が持っていた剣を奪うと、絵里香に近づき、絵里香の首を切断しようとしたが、絵里香は素早く起き上がって、ラフレシア魔人の後ろに回って抱きついた。
「ヒヒヒ-ッ。おのれ小娘。屋上の奴らを落としてやる」
「そんな事させるもんか! お前が私に近づくのを待っていたのよ。覚悟しろ化け物! エンジェルミラクルチャージアップ!」
 絵里香はラフレシア魔人に抱きついたままチャージアップし、身体を炎の塊に変化させた。
「ヒィ-ッ! ヒヒヒ-ッ! ヒィ-ッ!」
 ラフレシア魔人は紅蓮の炎の中でのたうち回り、ついに・・・
 ドオオォォォーン!!
 ラフレシア魔人は大爆発を起こし、木っ端微塵に吹っ飛んで跡形もなく消えた。そして炎となった絵里香の身体も、ラフレシア魔人の爆発と共に消えてしまった。同時に洗脳されていた美紀子たちと、聖フローリア学園の教師や生徒たちは、ラフレシア魔人の魔力が消えてその場に皆バタバタと倒れて気を失った。

      *      *      *      *

 それから数分後・・・
「あれ… 私たち何でこんな所にいるの?」
「ねえ、ここ何処?」
 正気に戻った美紀子たちは、目を覚ますとお互いを見合わせて、辺りを見回した。
「そうだ・・ 絵里香さんは? 叔母様、絵里香さんはどこへ行ったの?」
 美紀子たちは絵里香を捜したが、絵里香は返事どころか姿も見えない。
「嫌ーっ! 絵里香ーっ。出てきてよーっ。死んじゃ嫌だよー」
 美由紀はその場に伏して泣き崩れた。美紀子が寄ってきて、美由紀の髪をなでながら宥めた。
「大丈夫。絵里香は死んでなんかいないわ。きっと帰ってくる! 信じるのよ。美由紀、エンジェル戦士には絶望の2文字はないのよ!」
「だって… だって、化け物と一緒に吹っ飛んじゃったのよ。それに聖奈子も崖から落ちて… 」
「叔母様… 本当に… 2人とももう帰ってこないの」
 佐緒里の問いに、美紀子は何も答えられなかった。2人とも大丈夫だと言っても、それを証明する根拠が何もないのである。さすがの美紀子も美由紀たちを安心させる自身がなかった。

 今、エンジェルスは最大のピンチと、最大の試練を迎えようとしていた。絵里香と聖奈子は本当に帰ってこないのか… 本当に死んでしまったのか… 夜間照明に照らされた聖フローリア女学院の校庭で、絵里香と聖奈子を呼ぶみんなの声が空しく響く。
「絵里香… 聖奈子… 私一人でこれからどうすればいいのよぉ。お願いだから帰ってきてよ」
 エンジェル戦士として一人残った美由紀は、夜空に向かって泣きながら叫んだ。そんな光景を見て、美紀子がみんなに向かって言った。
「とにかく、気絶した学校の先生や生徒たちが目を覚ます前に、みんな早くここから移動するのよ。さあ、早く」
 美紀子は皆を促して、足早に学校の敷地から出た。
「とりあえず、私のペンションに行きましょう。大丈夫! きっと2人は生きている。必ず帰ってくるから。みんな元気を出しなさい」

      *     *     *     *

 ネオ-ブラックリリーのアジトでは、ゼネラルダイアが司令室で次の作戦準備をしていた。
「ラフレシア魔人がやられ、学校占領作戦は中止になった。ラフレシア魔人にはもっと仕事をして欲しかったが、エンジェルの小娘と共倒れになったのだから良しとしよう。それにもう一人も崖から落ちて行方不明だが、恐らく生きてはいまい。あとは残った一人・・・ エンジェルイエローだけだ! こいつを片付け、スレットエンジェルと、ジュニアのガキを始末してしまえば、もう我々を邪魔するものはいない。それと・・ 我々の事を探っているASSAとかいう組織も、いずれ暴き出して一掃してやる」
 ゼネラルダイアは指をパチンと鳴らした。すると司令室の扉が開き、ヘビ魔人とクラゲ魔人が入ってきた。
「お呼びでございますか? ゼネラルダイア様」
「お前たちの出番だ。お前たちは残ったエンジェルスの最後の一人、エンジェルイエローとスカーレットエンジェル、そしてジュニアのガキを始末するのだ」
 ゼネラルダイアがそこまで言った時、司令室のスピーカーから、大首領の声が響いてきた。
「ゼネラルダイアよ。一人だけとはいえ、エンジェルスの小娘を絶対に侮るな。エンジェルスには我々の知らない能力がまだあるかもしれないのだ。それから、スカーレットエンジェルは変身出来なくても、地球人には無い能力がある。ジュニアのガキも不完全とはいえ、スカーレットエンジェルと同様の力があることを忘れるな」
「心得ております。大首領様。スカーレットエンジェルを始めとした、エンジェルスの周辺にいる者達に対しては、別の作戦を既に立案中です。ジワジワと締め上げて、必ずやつらを一網打尽にしてご覧に入れます」
「よろしい! 期待しているぞ。ゼネラルダイア」
 大首領との会話が済むと、ゼネラルダイアは再びヘビ魔人とクラゲ魔人の方に向き直った。
「ヘビ魔人。クラゲ魔人。どんな手段を使ってもいい。人間を何人殺してもいい。直ちに行動を開始しろ」
「シャシャシャシャ-ッ! かしこまりました」
「グゥーラーッ。かしこまりました」
「よし。行けッ!」
 ヘビ魔人とクラゲ魔人は命令を受けると、戦闘員を伴ってアジトから出ていった。

       *    *      *      *


 ラフレシア魔人によって洗脳された聖フローリア女学院の教師と生徒たちは、絵里香の身を挺した必殺技で、ラフレシア魔人が倒され、全員が正気に戻って、学園には再び平和が訪れた。そして洗脳されていた美紀子・美由紀・佐緒里、そして誠人と久美子も正気に戻った。
 しかし、絵里香はラフレシア魔人との相打ちで、爆発に巻き込まれてその場から消えてしまい、その生死は不明だった。・・・ そして聖奈子も崖から落ちて、その生死は不明・・・ 一人残された美由紀はどう戦えばいいのか・・ ネオ-ブラックリリーは既に次の作戦を始め、その魔手はジワジワと迫ってきていた。
 負けるなエンジェルス!! 君たちには『絶望』という二文字は無いのだ。


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 次回予告
 第32話『エンジェル戦士は二度死ぬ』

 絵里香と聖奈子が行方不明になり、その生死すら分からないという状況の中で、一人残された美由紀は、ネオ-ブラックリリーに対抗している謎の組織の事を知り、その手掛かりを探すために東京へ向かう。
 そんな中でS県の和久井渓谷にハイキングに来ていた宮代麻美と麻美の従姉の早苗は、河原に倒れている絵里香を見つけ、絵里香は早苗が勤めている和久井村の診療所に運び込まれる。

 次回はhalka様原作の小説『正義のヒロインミルキーピンク』のキャラクタ-がエンジェルスと共演します。この企画は先にhaluka様がエンジェルスとミルキーピンクのコラボ小説を作成してくれた事に敬意を評し、今度は私の方でミルキーピンクとのコラボ小説を作成することにしましたが、特別編として作成しているだけの余裕がないため、本編の中に組み込む形となりました。
 この企画はhaluka様と私とで、お互いのヒロインを共演させる『交換コラボ』として、お互いの了解の下に成立しています。
 なお、宮代早苗は麻美の従姉という設定ですが、エンジェルスとミルキーピンクとの世界観を繋げるために、私が作ったキャラクターで、ミルキーピンクの本編には(現在は)登場していません。

次回 美少女戦隊エンジェルス第32話『エンジェル戦士は二度死ぬ』にご期待ください。

 halka様は、ピクシブにて小説を書かれているユーザーさんです。
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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学