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鷲尾飛鳥

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第40話『大都市壊滅のX-day』

2013年 11月04日 19:24 (月)

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「嫌あーっ。誰かぁーっ。誰か助けてぇーっ!」

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 美由紀は無人の浜辺の砂浜を悲痛な叫び声を上げ、助けを求めながら走っていた。その後ろからはラグナ帝国の戦闘員ファントムが追ってくる。そして・・
 突然砂の中から蔓が出てきて美由紀の足に絡みつき、美由紀はそのまま砂浜の上に転倒した。
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「キャーッ!!」
 ラグナ帝国の戦闘員が追い付いてきて、美由紀に迫ってくる。もはや絶体絶命・・・  そして蔓は美由紀の足だけでなく、両手にも絡みついてきて自由を奪い、砂の中からラグナ帝国の怪人『ツタラグナ』がその醜怪な姿を現した。

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「ジュルジュルルルルーッ。小娘。俺様の姿を見て逃げられるとでも思っているのか」
「キャーッ!! 嫌あーっ」
「ジュルジュルルルルーッ。俺様の姿を見た者は必ず皆死ぬのだ。お前も死ね」

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「嫌あーっ。こ、来ないで・・ 来ないでぇ! 助けてぇーっ!」
 何故美由紀はエンジェルに変身しないのか・・・ 泣き叫ぶ美由紀の姿は、エンジェルの戦士のものではなく、怖いものを目の前にしたごく普通の少女のものだった。蔓に絡まれて逃げられない美由紀に、ツタラグナは緑色の液体を噴射し、液体が次々と美由紀の体に降りかかった。

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「ギャアァーッ!!!」
 美由紀は血を吐くような絶叫とともに悶絶した・・・・・ そして・・・

「ハーイ、OK!」
 スタッフが駆け寄ってきて、美由紀の体に絡んだ蔓を取り払い、さらに全体を覆っていた薄手のビニールを取り払って、タオルで美由紀の顔を拭いてくれた。
「美由紀ちゃん。鬼気迫る迫真の演技だったよ。あともうちょっとだから頑張って」
「ハイ」
「美由紀ちゃん、次は四つん這いになって」
 美由紀は言われたとおりに浜辺に四つん這いになり、その上からスタッフが大きめのタオルを被せた。そして別のスタッフが、表面がスライムのようになっている物体を持ってきた。
「次。犠牲になった女の子が溶けるシーン」
「ドライアイス準備いいか!?」
 スタッフ達の声が飛び交い、美由紀の上からスタッフが二人がかりで、持って来たスライム状の物体を被せた。大量のドライアイスが撒かれて白い煙がモクモクと上がり、撮影が始まった。
「用意・・・  スタート!」
 ツタラグナは、一塊の肉片と化し、原型を留める事無くドロドロに溶解した美由紀の姿を見て息巻いた。

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「ざまぁみろ。思い知ったか俺様の力を。ジュルジュルルルルーッ」
「ハーイ、OK!」

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 スライム状の物体が捲り上げられ、美由紀が起き上がってその場から移動し、代わりにブロックが置かれて、スライムの物体が再び被せられた。
「ハイ美由紀ちゃん」
 美由紀の傍に友里が来てドリンクを差し出した。
「ありがとう。友里さん」
「次。友里ちゃん出番だよ」
「ハーイ。今行きまーす」
 友里は大きな声で返事をしてから、美由紀の方を向いた。
「美由紀ちゃん。それじゃあとで」
「友里さん頑張って」
 友里は右手を上げながら美由紀に背を向けて駆けていき、スタッフ達の中に混じった。距離を置いてスタッフ達の声や指示が聞こえてくる。暫くして友里は少し離れた場所まで行き、スタッフの一人が浜辺に置かれたスライムを指差した。
「由理の登場シーン! 友里ちゃん、ここまで全速で駆けて来て!」
「はーい!!」
「用意・・・ スタート!」
 美由紀の視線の先には、友里が砂浜の上を走り、さっき美由紀がいた場所へ向かって来て、そこで立ち止まり、周りを見回していて、そこへツタラグナが戦闘員と共に姿を現すという、一連のドラマの流れが映っていた。そして、役者の動きや撮影の流れを見ていて、友里の姿を自分に置き換え、自分自身があの場所にいるというイメージを描いていた。

      * * * *

 美由紀は今、湘南海岸の某所にいた。友里に連れられて『聖光美少女戦士ユリ』のロケ現場に来ていたのだが、友里の推薦で急遽エキストラとして出演が決まったのである。その役はラグナ帝国の怪人の毒牙にかかって殺される犠牲者の役だった。最初は迷っていた美由紀だったが、友里の熱心な説得(?)で出演を承諾したのだった。美由紀にとってはこれがドラマの初出演であり、女優としてのデビューそのものだった。

 昼の休憩時間になって、友里が美由紀の傍に来た。
「美由紀ちゃんどう? 感想は。来た早々いきなり殺される役をやるなんて嫌だったろうけど」

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「その事は別に気にしてないですよ。そんな事より、私・・ 今までずっと憧れていたヒロインのドラマに、自分が出演出来て嬉しいんです。それに正直言って・・ 演技も撮影も大変なんだって分かりました。テレビで見てるのと、実際に演技をしているのとは大違いなんですね」

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「うん・・ 私も最初の頃はNGばっかりで苦労したわ。でも美由紀ちゃん素質あるわよ。さっきのシーンずっと見てたけど、素人の演技とは思えなかったわ。台本だと、あそこのシーンは逃げる時のスタイルだけ指示されていて、セリフは殆ど即興でやる事になってたのよ。それなのに一発でオーケーが出るし、スタッフの人たちも美由紀ちゃんの演技に圧倒されていたわよ」
「そんなそんな・・ 私は・・・・ 」
「ううん・・ お世辞抜きで・・・ 美由紀ちゃんは役者に向いてると思う。将来は私なんか霞んじゃうくらいの、一流の女優になれるかもしれないわよ」
「えぇーっ・・・・ ????」
 美由紀は謙遜していたものの、友里に褒められて内心嬉しかった。そこへスタッフの一人がやってきた。
「友里ちゃん、そろそろ次のシーン始めるよ。ユリの衣装に着替えて」
「はい・・・ それじゃ美由紀ちゃん。また後でね」
「うん。友里さん頑張って」
 友里は着替えのため、急造の更衣所へ向かっていった。

      * * * *

 聖光美少女戦士ユリのロケが行われていた時と同じ頃・・ 
 同じ湘南海岸で、ロケ現場から約2km離れた場所では、恐ろしい事が始まろうとしていた。そこでは一人の男が釣りをしていた。そこへ突然海面が盛り上がり、奇怪な物体が現れた。物体は大きな貝殻で、上陸と同時に手足と頭が出てきた。ネオ‐ブラックリリーが新たに改造した怪人、アンボイナ魔人だった。

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「あわわわわわ・・・」
 男はアンボイナ魔人と鉢合わせした。
「俺の姿を見たな。愚かな人間め」
 アンボイナ魔人は男に向かって威嚇した。
「か、かかか・・ か、怪物!!!・・・ 」

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 アンボイナ魔人は口吻を伸ばし、その開口部を大きく広げた。男は釣り道具を投げ捨てて逃げ出した。
「馬鹿め。逃げられると思っているのか」
 アンボイナ魔人はさらに口吻を伸ばし、大きく広がった開口部が男に被さった。
「グギャアアーツ・・ ! ! ・・・・・・」

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 男は絶叫とともにその大きな口から吸い込まれ、強力な溶解液で瞬時に溶かされて、アンボイナ魔人に丸呑みにされた。
「ブォーッ! ブォーッ。ざまぁみろ」
 そこへ騒ぎに気付いた地元の猟師たちが砂浜にやってきた。
「一体何の騒ぎだ」
「おい。あれは何だ!?」
「な・・ な、何だあいつは!?」
「か、か、貝殻の化け物だ」
「見たな・・・ お前たちも死ね。ブォーッ!」
 アンボイナ魔人は左手の先を猟師に向け、猛毒の毒針を立て続けに発射した。猟師たちは逃げる間もなく、次々と毒針に刺されて全員即死し、あっという間に水蒸気を噴き上げて体が溶けてしまった。入れ替わりに数人の戦闘員が現れ、アンボイナ魔人の元に走り寄ってきた。
「イーッ! アンボイナ魔人様。ゼネラルダイア様がお呼びです」
「分かった」
 アンボイナ魔人は戦闘員とともにその場から立ち去っていった。

      * * * *

 ここは湘南海岸の近くにあるネオ‐ブラックリリーのアジト・・・
 司令室にアンボイナ魔人が戦闘員とともに入ってきた。
「ブォーッ。アンボイナ魔人、ただいま参りました」
「大儀であった。アンボイナ魔人。能力テストはどうだったのだ?」
「ブォーッ! 大成功です。ゼネラルダイア様。愚かな人間どもはすべて丸呑みにして食い尽くすか、俺の毒針で皆殺しにしてやります。ブォーッ」
「よろしい。お前を早速殺人光化学スモッグ作戦の責任者に任命する」
「光栄です。ゼネラルダイア様」
「スモッグの発生装置と、それを搭載するミサイルは、現在作戦地域付近のアジトにて製造中で、もうすぐその数が揃う。そうしたらお前は、大都市を狙って殺人光化学スモッグを積んだミサイルを発射し、日本中の都市という都市を壊滅させるのだ。愚かな人間どもはスモッグの中でのたうち回り、みな死んでいくのだ。そして我がネオ‐ブラックリリーは、簡単に日本中の都市を手に入れる事が出来るのだ」
「ブォーッ。ブォーッ。それは素晴らしい」
「殺人光化学スモッグそのものは、現在既に製造が終わり、ガスボンベにして保管してある。それを積んだ船が、間もなくこの漁港に到着する」
 ゼネラルダイアは壁に貼ってある地図の一角を指差した。
「現在地はこの場所。ミサイル基地はここ。お前はすぐに漁港へ向かい、スモッグの入ったボンベを荷揚げして基地まで運ぶのだ。秘密を知った者や近づく者は容赦なく抹殺せよ」
「ブォーッ。かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 アンボイナ魔人が司令室から出て行き、ゼネラルダイアは残った戦闘員たちに命令した。
「直ちにこのアジトを放棄して、基地へ向かう」
「イーッ」

 アンボイナ魔人は、先ほど抹殺した猟師の一人に姿を変え、漁港の岸壁にいた。数人の戦闘員もそれぞれ男の姿に変身していた。ここは先ほどアンボイナ魔人が現れた海岸から1kmほど離れた場所にあって、岸壁には数隻の漁船が停泊し、その中で一際目立つ20トン前後の大きさの漁船が、岸壁に横付けされていた。この漁船こそ、殺人光化学スモッグの入ったボンベを積んでいる偽装船だったのだ。
「よし! 船内の積荷を直ちに陸揚げする。それまで誰も近づかないように見張るのだ」
「かしこまりました」
 何人かが周囲を見張るために走り去っていき、残りは猟師に化けたアンボイナ魔人と一緒に船に乗り込んで、船内にいた者たちと手分けして荷揚げの準備を開始した。

      * * * *

 さて・・ ロケ現場では、ユリの戦闘シーンとクライマックスシーンの撮影中だった。ユリはついに怪人ツタラグナに捕まり、手足・胴体・そして首に蔓が巻きついて締め付けられ、ツタラグナの方へと引きずられていた。ユリの苦悶の表情をアップで映し出すためにカメラが近づいていく。ジッと様子を見ていた美由紀は、演技とはいえ、ユリを演じる友里の事を真剣な顔つきで眺めていた。

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「(ユリちゃん・・ ガンバレ! そんなやつに負けちゃダメ・・ )」
 そしてユリがツタラグナのすぐ傍まで引き寄せられたところで、監督が叫んだ。
「ヨーシ! オッケー!! 今日の撮影はここまで」
「機材や道具の片づけを始めるぞ」
 スタッフ達が友里の傍へ駆け寄り、巻きついた蔓を取って、大きめのタオルを羽織らせた。
「友里ちゃんご苦労様。次も頑張って」
「おーい! エンディングのシーンは、来週またここでやるから、各自機材の点検と準備を入念にやっておけ!  それから戦闘シーンの続きとユリのピンチのシーンは、三日後に特設スタジオで撮るから、そっちの準備もするように」
「もたもたしてたら日が暮れちまうぞ」
 所々でスタッフ達の声が飛び交い、その中を着替えを終えた友里が美由紀に向かって駆けてきて、そのまま美由紀に飛びつくように抱きついた。
「キャッ!!」
「美由紀ちゃん。今日はありがとう」
「そんなぁ・・ お礼なんて。ドラマのエキストラまでやらせてもらって・・ お礼を言うのは私の方ですよ」
 そこへ友里のマネージャーの和歌子から着信が入った。普段ならば友里はマネージャーの和歌子と一緒なのだが、今日は和歌子が事務所の用事で同行出来ず、友里は和歌子から車を借りて、一人でロケ現場に来ていたのである。友里は携帯を開いた。
「ハイ友里です・・・ エ? はい・・」
『友里ちゃん。今日はこの後何もないから、帰って休んでいいわよ。それから明日と明後日はオフだから、ゆっくり休んで鋭気を養って。それから・・・ 』
「はい・・ 瑞樹ちゃんですね・・ はい分かりました」
 友里は会話を終わって携帯をしまった。そこへ監督の石本正太郎がやってきた。年は一見50代後半に見え、髪は少し長めで体格は中肉中背で、茶色のサングラスをかけていた。石本は美由紀の前まで来るとサングラスを外した。
「君は城野美由紀・・ っていったね?」
「は、はい」
「また機会があったら、是非出てくれたまえ。君には素質がある。今日の君の演技を見ていて分かったんだが、私は君に女優になれる天分のようなものを感じたんだ。それから・・ 友里ちゃんのマネージャーから聞いたんだが、君は聖光美少女戦士のオーディションに出るそうじゃないか。頑張ってくれたまえ。それじゃ」
 それだけ言って石本監督は右手を上げると、美由紀に背を向けて去っていった。
「美由紀ちゃん凄い・・・ あそこまで言われたって事は、石本監督に認められたんだよ。あの監督は人を見る目が凄く鋭くて豊かなの。それに滅多に人を褒めないことで有名なのよ」
 友里はまるで人ごとのように美由紀に向かって喋った。
「美由紀ちゃん絶対女優になれる。いや、絶対に女優になって! 私なんか霞んじゃうくらいの大女優になってよ」
「ゆ、友里さん・・・ 」
「それじゃ帰ろうか。美由紀ちゃんの家まで送っていくからね」
 それから友里はロケ現場とその周辺を見回した。美由紀には何かを探しているように見えた。
「友里さんどうかしたの?」
「いないなぁ・・ 」
「いないって・・ だれが・?」
「瑞樹ちゃんよ。朝の打ち合わせの時、小学生くらいの女の子がいたじゃない」
「あ・・ そういえば、私の前にその子のシーンを撮ってたんだっけ」
「それにしても・・ 瑞樹ちゃん何処へ行ったのかしら。帰りは私があの子の事務所まで送っていく事になってたのに」
 二人が話していた『瑞樹』とは、蒲生瑞樹という子役で、現在小学校5年生の10歳。聖光美少女戦士ユリの今回の登場人物として、ロケに同行していたのだが、自分の出番が終わると、誰にも告げずに何処かへ行ってしまったのだ。
 
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「友里さん。瑞樹ちゃん何処へ行ったか分からないの?」
「うん・・ そう遠くへは行ってないと思うけど、連絡が取れないのよ。でも今日のロケの時間とスケジュールは知っているはずだから、そろそろ戻ってくると思うんだけど」
 その時友里の携帯に着信が入った。
「噂をすれば瑞樹ちゃんだわ・・ はいもしもし・・ 瑞樹ちゃん今何処にいるのよ? ・・うん・・ そう・・ 分かった。それじゃ今からそっちへ行くからそこで待ってて」
 友里は携帯をしまうと、美由紀に言った。
「瑞樹ちゃんは波磯漁港にいるって言ってたわ。美由紀ちゃん乗って」
 友里と美由紀は車に乗り込み、友里は車を発進させた。

      * * * *

 波磯漁港の岸壁では、偽装漁船から次々とガスボンベが降ろされ、横付けされた数台のトラックに積み込まれていた。
「早くしろ。もたもたしてると怪しまれるぞ」
 それもそのはず。この漁船はネオ‐ブラックリリーが奪った船であり、収穫した魚介類を積んでいたものの、この漁港の管轄ではない。しかも20トンもある大型船であったため、周囲から見れば目立つのである。
 船からの荷降しが全て終わって、積荷を粗方トラックに積み込んだ頃、漁協の職員がやってきた。見張りがいたのだが、彼らは制止を振り切ってやってきたのだ。
「すみませーん。あなた方は一体何処から来たんですか? この船はこの漁港の所属じゃないはずですけど、何処の管轄なんですか?」
 職員達は停められているトラックと、岸壁に置かれている多数のボンベを見回した。
「この積荷は一体何なんですか? こんな物をここで荷揚げするという連絡は入っていませんよ」
 不審に思った職員達は、タラップに近づいてきた。
「ちょっと中を調べさせてください」
 職員たちが船に乗り込もうとした。
「イーッ」
 突然職員達の前と後ろに戦闘員が現れた。作業をしていた者たちも全て戦闘員の姿になった。
「な、何だお前らは」
「我々の秘密を知った者は生かしておけん」
 そう言いながらアンボイナ魔人が醜怪な姿を見せた。
「ば・・ 化け物」
「ブォーッ」
 アンボイナ魔人は奇声とともに口吻を伸ばして開口部を広げ、職員の一人が口の中に吸い込まれて、叫ぶ間もなくあっという間に丸呑みにされた。アンボイナ魔人は残った二人の方に近づくと、左手の先から毒針を発射した。二人とも即死し、体から水蒸気を噴き上げて溶けた。
「早く積荷を全部トラックに積んで引き揚げるんだ。それから船をすぐに出して、沖へ持っていって処分しろ」
 アンボイナ魔人は戦闘員たちを煽り、戦闘員たちがそれぞれの持ち場に散った。荷降しを終えた船が碇を上げて岸壁からゆっくりと離れ、積荷を積み終えたトラックから順にその場から発進していった。が、その時アンボイナ魔人は、一人の少女(瑞樹)が立っていて、自分たちの方を見ているのに気付いた。瑞樹はロケで自分の出番が終わってから、一人でこの漁港まで遊びに来ていたのだが、時間が来て友里に電話した後、待ち合わせの場所まで行く途中で岸壁のそばまで来たとき、ネオ‐ブラックリリーの作業風景や、アンボイナ魔人が人を殺す場面の一部始終を、偶然に見てしまったのだ。

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「見たな小娘。秘密を知ったからにはお前にも死んでもらう」
 瑞樹は突然の事に立ち尽くしていた。が、戦闘員が自分の方に向かってくるのを見て、一目散に逃げ出した。
「逃がすな!」
 逃げる瑞樹を戦闘員が追った。瑞樹の足では追いつかれてしまう・・・ しかし瑞樹は自分の背丈を生かし、狭い場所に入り込んで戦闘員たちの目をくらまして、漁具置場の中に隠れた。その脇を戦闘員たちが走っていく。
「おのれぇ・・ 何処へ逃げやがった・・ 捜せ! 探し出して捕まえるんだ」
「イーッ」
 瑞樹は周囲が静かになったのを見計らい、漁具置場の中から出てきて岸壁の上を走り抜け、道路に飛び出した。そこへ友里の運転する車がやってくるのが見えて、瑞樹は車に向かって駆けた。車は瑞樹の傍で停止し、友里が降りてきた。友里の姿を見た瑞樹は安堵感からか、その場に座り込んでしまった。心臓の鼓動は激しく脈を打ち、体の震えがまだ続いていた。美由紀も降りてきて、瑞樹のそばに来た。
「どうしたの瑞樹ちゃん。何か変だよ」
 瑞樹は美由紀にすがりついた。
「助けて。怖い・・・ 」
「怖いって・・ 何が?」
「友里さんのドラマに出てくる、ラグナ帝国の化け物みたいなやつが・・・ 貝殻のお化けが出てきて人を丸呑みにしたの」
「え? ラグナ帝国の?」
「貝殻のお化け?(またネオ‐ブラックリリーが出たのか)」
 美由紀は瑞樹の話を聞いて、直感的にそう感じた。
「友里さん、瑞樹ちゃんをお願い」
 美由紀は瑞樹が化け物を見たという岸壁に向かって駆けて行った。しかし岸壁にはネオ‐ブラックリリーの影も形も無くなっていた。船は既に出た後で、ボンベを積んだトラックも全て去って行った後だった。しかし、岸壁には何かが焦げたような形跡と異臭が漂い、焦げた物をよく見るとそれは人の形をしている。
「ここで誰かが殺されたんだわ・・・ 」
 そこへ友里が瑞樹を連れてきて、瑞樹は美由紀に縋り付くように言った。
「ここよ。ここでお化けが・・・ 」
 美由紀は瑞樹の話と、自分が見た物とで、間違いなくネオ‐ブラックリリーだと確信し、携帯を取り出して美紀子に向けて発進した。
「もしもし・・ 美由紀です」
「・・・・・・・」
「それどころじゃないのよ。またネオ‐ブラックリリーが出たんです。 ・・はい・・ はい・・ 絵里香と聖奈子にもすぐ知らせてください」
「・・・・・・・」
「エ? はい・・ いえ、友里さんが一緒です。はい・・ ハイ分かりました。それじゃ今からANGELに向かいます」
 美由紀は会話を終えると、友里に言った。
「友里さん。とにかくここから早く逃げよう。まだ奴等がうろついているかもしれない」
「分かった」
 急いで車のある場所まで戻って、友里は全員が乗ったのを確認すると、その場から車を発進させた。その様子は戦闘員によって見られていて、車が走り去った後にゾロゾロと戦闘員たちが姿を現し、アンボイナ魔人も出てきた。
「くそっ・・ エンジェルスの小娘も一緒だったのか。ゼネラルダイア様の命令がなければ、あのガキと一緒に一網打尽にしたものを」
 作戦の内容が内容なだけに、積荷を基地に運ぶまでは秘密保持に努め、エンジェルスとは事を構えてはいけないという命令が出ていたので、アンボイナ魔人は美由紀の姿を見ても襲わなかったのだ。
「まあいいだろう・・ 目撃者は小学生のガキだ。必ず見つけ出して消してやる」
 そこへ別の戦闘員がやってきた。
「イーッ。アンボイナ魔人様。こんな物が落ちていました」
 戦闘員は拾った物をアンボイナ魔人に差し出した。それは瑞樹の身分証明書で、瑞樹の写真が貼られていた。
「あのガキのものだ。これで探し出す手掛かりが得られる。よーし! 者ども引き揚げろ」
「イーッ」

 走っている車の中で、瑞樹はまだ震えたままだった。その様子は運転していた友里にも、助手席に座っていた美由紀にも分かった。
「美由紀ちゃん。鷲尾平のANGELでいいんだよね」
「はい。お願いします」
 友里は一路、鷲尾平に向かって車を走らせた。

      * * * *

 偽装漁船に積まれていたガスボンベはトラックに積み込まれ、作戦地域にあるアジトに向かっていた。そのアジトは富士山麓に設置されていて、ミサイル製造工場と発射基地があり、日本中の全ての場所を照準出切るよう、コンピューターで制御されていた。一足先にアジトに到着したゼネラルダイアはいつものように、司令室で大首領のメッセージを聞いていた。
「ゼネラルダイア。殺人光化学スモッグを使った、大都市絶滅作戦は進行しているか?」
「はい。現在スモッグのボンベを運搬中で、ミサイルのもあと少しで作戦に使用するだけの量が揃います。ガスボンベ一本分の殺人光化学スモッグで、東京の都心部の人間全てを殺すだけの威力があります」
「よろしい。準備が整い次第、日本中の都市に向けてミサイルを発射し、殺人光化学スモッグで覆い尽くすのだ」
「かしこまりました。大首領様」
 会話が終わるとゼネラルダイアはアジトの一角であるミサイル基地へと足を運んだ。基地は既に完成し、作戦に使用するミサイルはあと少しで作戦遂行に必要な分だけの数が揃い、配備が完了するところだった。そこへ戦闘員が報告に来た。
「イーッ。ゼネラルダイア様。アンボイナ魔人様が戻りました」
 アンボイナ魔人は戦闘員に案内されて基地に入ってきた。

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「ブォーッ。ゼネラルダイア様。ガスボンベの運搬作業を終えて、ただいま戻りました」
「アンボイナ魔人。逃がした目撃者はどうなったのだ?」
「逃げた小娘が落とした身分証から、小娘の居場所や立入りそうな場所は全て特定できています」
「ならばよろしい。アンボイナ魔人、作戦開始までに必ずこのガキを捕えて消すのだ」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」

      * * * *

 美由紀がANGELに来たときには、既に日が落ちて暗くなっていた。絵里香と聖奈子は美紀子からの連絡で既にANGELにいた。美由紀は友里と瑞樹を連れて店内に入り、佐緒里が出迎えた。
「美由紀さんお帰りなさい」
「遅くなってゴメン。みんなは?」
「もう来てる。叔母様も待っているわ」
「美由紀、こっちよ」
 呼ばれた美由紀は絵里香と聖奈子が座っているテーブルへ行き、空いている椅子に座った。友里と瑞樹は佐緒里の案内で、絵里香たちの隣のテーブルの椅子に座った。
「どうぞ」
 そう言って孝一が友里にコーヒーを、瑞樹にはオレンジジュースを出して、再びカウンターに入った。緊張続きで喉が渇いていた瑞樹は、出されたジュースを一気に飲み干した。美紀子は美由紀に話しかけた。
「美由紀、さっきの電話の内容を詳しく聞かせて」
「ここにいる瑞樹ちゃんがネオ‐ブラックリリーの魔人を見たんです」
 美紀子は瑞樹の方を見た。
「瑞樹ちゃん、知っている事があったら、詳しく聞かせて」
「あの・・ 信じてくれるんですか?」
「勿論よ。聞かせてちょうだい」
 瑞樹はようやくホッとしたような表情を見せ、美紀子に向かって話し始めた。
「怪物が出たんです。大きな貝殻を被っていて、大きな口で人を丸呑みにする怪物で・・ それで、左手がホースみたいになっていて・・ そういえばあの怪物・・ 地球上の危険な生物っていう番組で出てきたやつにそっくりだったわ。確か・・ アンボ・・ 何とかって・・」
 そこへ佐緒里が話しかけてきた。
「アンボイナじゃないの?」
「そ、そうです。アンボイナです」
 佐緒里はカウンターから出ると自分の部屋へ行き、図鑑を持ってきてページを開いて、瑞樹に見せた。そこにはアンボイナ貝の写真が載っていた。
「これじゃないの?」
「そうです。これにソックリでした」
 美紀子はさらに瑞樹に聞いた。
「他に何か知っている事はある?」
「港で船から大きなボンベを降ろして、トラックに積んでいました」
 絵里香と聖奈子も会話に混ざった。
「ボンベって・・ 一体何を入れてるんだろう」
「毒ガス・・ それとも・・」
「何かの作戦に使うつもりなんだわ。そのボンベを何処かへ運んだって事か。今度は一体何を企んでるんだろう」
「何か大掛かりな作戦をやろうとしている事に間違いは無さそうね」

      * * * *

 ネオ‐ブラックリリーの秘密を知ってしまい、追われる身となってしまった瑞樹は、その後友里に事務所まで送ってもらい、その後は瑞樹のマネージャーが自宅まで送っていった。
 そして翌日・・・  瑞樹は昨日の悪夢などケロッと忘れたかのように、いつも通り学校へ通っていた。しかし、ネオ‐ブラックリリーの魔手は着実に瑞樹に迫ってきていた。
そして・・・

 キンコーン カンコーン・・・
 ここは瑞樹が通っている都内の某所にある小学校。終業のチャイムが鳴り、学校からは続々と生徒達が校門を通って帰宅の途についていた。瑞樹も友達と一緒に校門から外の通りに出てきた。
「私これから撮影があるから、また明日ね」
「わぁ・・ 瑞樹がうらやましい。私も子役に応募しようかな」
「バイバーイ」
 瑞樹は友達と別れると、昨日の事などすっかり忘れているような足取りで、スキップしながら表通りに向かっていた。その様子を陰から見ている不振な人物が・・・

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「見つけたぞ・・・ よし。アンボイナ魔人様に連絡だ」
「了解」
 瑞樹は表通りに出ると、そこに立ち止まっていた。暫くしてタクシーが来たので、瑞樹は手を上げてタクシーを止めて乗り込んだ。
「〇〇テレビ局へお願いします」
 タクシーはその場から滑るように発進して走り出した。

 一方、こちらは絵里香たちが通う明峰学園高校である。授業が終わり、絵里香たちは急ぎ足で校門から出てきた。ネオ‐ブラックリリーの動きが気になっていたからだ。
「しかし・・ やつら全然姿を見せないね」
「何をしようとしているのかさえ分かればいいんだけど」
「ANGELへ早く行こう」
 その時クラクションが鳴り、絵里香たちは音のした方を向いた。そこには人が乗った一台のオートバイがあって、オートバイに乗っていた人物がヘルメットを脱いだ。
「友里さん・・・ 」
「美由紀ちゃん。みんな、こんにちは」
 美由紀が真っ先に友里の元に駆け寄った。
「友里さん、このオートバイは?」
「私のよ。撮影があるときはマネージャーの車で移動するんだけど、今日はオフだから。それより瑞樹ちゃんが心配なのよ。美由紀ちゃん、ちょっと付き合ってくれる?」
「付き合うって・・ 何処へ? 私たち今、奴等の動きが心配なのよ」
「だったらなおさらよ。瑞樹ちゃんが危ないのよ。あの子は奴等に狙われているのよ。さ、乗って」
 友里は美由紀にヘルメットを渡すと、半分強引に後ろに乗るよう促した。美由紀が戸惑っていると、絵里香と聖奈子がそばに来た。

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「美由紀、行っていいよ。そのかわり携帯の緊急モードを忘れないでね」
「あとの事はあたし達に任せて」
「ありがとう。それじゃ行ってくるわ」
 友里はオートバイに乗ってエンジンをかけ、美由紀は後ろに乗って友里の腰を両手で抱きかかえるようにつかまった。
「美由紀ちゃん行くよ」
 友里はアクセルをふかすと、その場から勢いよく発進した。
「聖奈子、私たちもANGELへ急ごう。何だか胸騒ぎがする」
「うん・・」
 絵里香と聖奈子は小走りに駆け出すと、ANGELへ向かった。

      * * * *

 瑞樹を乗せたタクシーは、都心へ向かうと見せかけて逆のコースを走り、県境を越えてY県の方へと向かっていた。さすがの瑞樹もようやくおかしいと気付いた。
「運転手さん。コースが逆ですよ」
「これでいいんですよ。お嬢さん」
「ひっ・・・・」
 運転手の顔が、戦闘員の姿になり、瑞樹は思わず身を引いた。そしていつの間にか、助手席にはアンボイナ魔人が座っていた。瑞樹の胸中に昨日の悪夢が甦った。
「我々の秘密を知ったからには、絶対に生かしておくことは出来ないのだ。気の毒だがお前の待っているものは『死』だ」
「い、いや・・ 助けて。お願いここから降ろして」
 瑞樹はドアを開けようとしたが、ドアは開かない。
「無駄だ。暫く眠っていろ」
 タクシーの車内の前と後ろの席の間に、アクリル状の仕切りが出てきて、後ろの座席が密封状態になり、シューッという音とともにガスが出てきて、瑞樹はあっという間にその場に眠ってしまった。

      * * * *

「えっ? 瑞樹ちゃん来ていないんですか?」
「そうなんだよ。何回電話してもつながらないし・・ 一体何処へ行ってるんだろう・・ あぁぁどうしよう」
 スタジオでは瑞樹のマネージャーが、時間になっても瑞樹が現れず、連絡もつかないのであたふたしていた。美由紀と友里はお互いの顔を見合った。二人同時に不吉な予感が頭をよぎったのである。
「まさか・・・ 」
 その時美由紀の携帯に着信が入り、美由紀は携帯を開いた。
「絵里香だ・・ はい美由紀です。エ? はい・・ はい・・ 分かった。すぐ戻るから」
 美由紀は友里の方を向いた。
「美由紀ちゃん、何かあったの?」
「うん。ANGELにすぐ戻ってくるようにって。嫌な予感が当たっているかもしれない・・」
「分かった。私も一緒に行くわ。乗っけてってあげるから」
「ありがとう」

      * * * *

 ここで時系列は少し前に遡る・・・・
「ミサイル発射準備」
「秒読み開始します」
 ネオ‐ブラックリリーの基地では、ミサイルの発射実験が開始されようとしていた。ミサイルは本体と弾頭部とに分かれていて、打ち上げると一気に成層圏まで上がり、そこで本体と弾頭部が切り離されて、弾頭部は地上から300メートル位の高さまで降下してきて、そこで空中静止して殺人光化学スモッグを撒き散らす仕組みになっていた。

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「秒読みを始めろ」
 ゼネラルダイアの命令で、戦闘員が秒読みを開始した。
「発射10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、ゼロ」
 スイッチが押され、基地の天井部が開いて、発射台に設置されたミサイルが発射された。ミサイルは予定通り成層圏に達すると、そこで弾頭部が切り離されてゆっくりと降下してきた。そして山あいにある小さな集落の上空まで来ると、地上300メートルにて殺人光化学スモッグが弾頭部から噴射された。このスモッグは二酸化炭素と同じで空気より重いため、噴射されると地上に降りてきて、あたり一面に充満するのだ。暫くすると、家の中から村の住人たちが苦しそうな顔をしながら、次々と家から飛び出してきた。
「グアァーッ・・ く、苦しい」
「体が焼けそうだ」
「た、助けてくれえーッ」
 暫くすると、集落に住んでいた人たちは、のた打ち回りながら体が溶けて骨だけになった。設置してあったカメラのモニターを見ながら、ゼネラルダイアは満足そうに言った。
「効果は抜群だ。ミサイルの数が揃ったら、日本全国の都市を狙ってミサイルを撃ち込んでやる。愚かな人間どもは、あのように全て骨だけになって死んでゆくのだ。ハーッハッハッハ」
 そこへ戦闘員が報告に来た。
「イーッ。ゼネラルダイア様。アンボイナ魔人様が目撃者の小娘を捕えて連れて来ました」
「そうか・・ うーむ・・ これは案外利用できるかもしれんな。アンボイナ魔人に司令室に来るよう伝えるのだ」
「イーッ」
 暫くして、アンボイナ魔人が戦闘員を伴って司令室に入ってきた。
「ブォーッ。ゼネラルダイア様。ただいま戻りました」
「大儀であった。目撃者の小娘はどうした」
「ブォーッ。地下牢にて監禁してあります。麻酔ガスのため、まだ眠ったままです。そしてこれが小娘の所持品です」
 戦闘員が、瑞樹のランドセルと携帯電話をテーブルの上に置いた。ゼネラルダイアは瑞樹の所持品を検分し、その中から携帯電話を取った。
「こいつを使って、エンジェルスの小娘どもを誘き出し、一網打尽にしてやる。ふふふ・・・ 今に見ていろ」

      * * * *

 そして時系列は再び元に戻り、美由紀が友里のオートバイに乗って戻ってきて、ANGELの店内に入ってきた・・・・
「美由紀、こっちよ。早く」
 聖奈子に急かされ、美由紀は友里と一緒に絵里香と聖奈子が座っているテーブルの椅子に座った。
「大変よ。昨日来た女の子・・ 瑞樹ちゃんが奴等に拉致されたのよ」
「やっぱり・・・ 嫌な予感は当たっていたんだわ」
「やっぱりって・・ 友里さん、何か知ってるんですか?」
「詳しくは分からないけど、美由紀ちゃんを連れて、あの子が今日撮影するスタジオへ行ったら、時間になっても来ないのよ。学校を出た所まではあの子からの連絡で分かっていたらしいんだけど、その後全く連絡がつかないのよ」
 そこへ美紀子と佐緒里が来た。
「微弱だけど、昨日ここに来た瑞樹ちゃんの携帯電話から定期的に電波が出ているのよ。その電波の発信源を逆探知したら、大体の場所を特定できたわ」
「それで、電波は何処から流れているんですか?」
「富士山麓の近く。佐緒里、地図を開いて」
「はい。叔母様」
 佐緒里は地図を持ってきてテーブルの上に置いた。美紀子は富士山が載っているページを開くと、ある一点を指差した。
「このあたりよ」
 美紀子が指差した場所は、青木ヶ原樹海の北東端の一角だった。佐緒里は絵里香たちに言った。
「私の力で探ってみたら、電波が出ている場所の近くに瑞樹ちゃんもいるわ。東京に住んでいる小学生の女の子が、一人でこんな場所にいる事自体不自然だし、間違いなく奴等に捕まっていると考えていいわ」
「恐らく奴等のアジトの場所もそこよ」
「瑞樹ちゃんの命が危ない。紅林さん、瑞樹ちゃんを助けてください」
「友里さん。勿論助け出すわよ。でも慌てたら奴等の思う壺よ」
「しかし・・ 電波を出すなんて、何故わざわざそんな事して場所を教えているのよ」
「自分たちの力を見せ付けているって所ね。これだけ大胆に仕掛けてくるって事は、恐らく今度の作戦に相当自身があるって事だわ」
「今度の作戦か・・ どんな作戦を企んでいるんだろう」
「みんな。落ち着いて聞いて。さっき臨時ニュースがあって、Y県にある村が一つ、何者かの仕業によって全滅し、村人達が皆殺しにされたのよ。建物はそのままなんだけど、人は勿論、飼っていた動物も全て骨だけになって転がっていたそうよ」
「ええっ・・・??? 村が一つ全滅した?」
 美紀子の話を聞き、絵里香たちはゴクンと生唾を飲み込んだ。友里も然りだった。
「でも一体どうやって・・・」
「奴等が使用したのは光化学スモッグよ」
「こ、光化学・・ スモッグ・・」
「そう。それも強力な・・・ しいて言えば殺人光化学スモッグ。現場では高濃度の光化学スモッグの反応が出たそうよ。おそらくミサイルのようなものを使って、上空から光化学スモッグを撒き散らしたんだわ」
「すると昨日瑞樹ちゃんが見た物は、光化学スモッグが詰まっていたボンベだったってことね」
「村を標的にしたって事は、恐らく威力を試すための実験・・・ 」
「奴等の事だ。きっと今度は東京のような大都市を狙ってくるわ」
「何としてでも阻止しなきゃ、このままじゃ日本が全滅してしまう」
 絵里香たちは再度ゴクンと生唾を飲み込んだ。
「みんな、ちょっと寄って。もっと近くに」
 美紀子は絵里香たちと佐緒里を自分の傍に寄せた。

      * * * *

「うう・・・ い・・ 痛い。痛いよ・・ お願いおろしてぇ」
 ネオ‐ブラックリリーに捕まった瑞樹は、ガスによる眠りから覚めると、アジトの地下牢で両手を鎖で繋がれ、天井から吊るされていた。両手に鉄枷が食い込み、腕が抜けそうな痛みに、瑞樹は涙を流しながら哀願した。

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「小娘、どうだ。痛いか。苦しいか。ブォーッ。ブォーッ」
「痛いよ・・ 許してぇ・・・ 腕がちぎれるうーっ」
「我々の秘密を知ったお前は死刑だ。だが、すぐには殺さん。いずれお前の仲間がここにやってくるから、それまで待っていろ」
「うぐ・・ 嫌だぁ。死にたくないよぉ・・ い、痛い・・ 痛・・ い・ 」
 瑞樹は激痛に耐えられずに、気を失った。
「アンボイナ魔人様。ガキが気絶しました」
「鎖を外しておろしてやれ。エンジェルスの小娘どもがやってくるまでの、大切なお客さんだ」
「イーッ」
 気絶した瑞樹は鎖を緩められて、足が床についたところで鎖を外され、そのまま床の上に横にされた。そこへゼネラルダイアがやってきて、アンボイナ魔人と戦闘員たちが敬礼した。
「奴等がやってくるまでの間、この小娘を貴賓室へ連れて行き、丁重に扱え。ただし、監視は絶対に怠るな」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」

      * * * *

 翌日の早朝・・・
 まだ薄暗い国道を、富士山麓へ向かって疾走する一台のオートバイの姿があった。運転しているのは友里で、後ろには美由紀が乗っていた。美紀子は朝になってから一斉に行動を起こす作戦を取ったのだが、瑞樹を助けたくて気持ちが逸っていた友里は、美由紀を誘っていち早く向かっていたのだった。
 一方、ANGELでは朝になって絵里香と聖奈子がやってきた。美紀子は既に店の前で車のエンジンを始動して準備していた。絵里香と聖奈子が店の入り口まで来ると、それを待っていたかのように佐緒里が扉を開けた。
「絵里香さん、聖奈子さん。大変なんです。すぐ来てください」
「大変って・・」
 絵里香と聖奈子は訝しげに店に入った。すると奥にいた美紀子が一枚の紙切れを持って駆け寄ってきた。
「急いで。すぐ出発するわよ」
「でも美由紀がまだ・・・ 」
「美由紀はもう向かってるわ。あれほど言ったのに・・・ それに友里さんも一緒よ」
「ええっ?」
 美紀子は美由紀が書いた置手紙を絵里香と聖奈子に見せた。
『友里さんと一緒に先に行ってます。美由紀』
「あーっ! 全くもう・・・・ 美由紀がやばいよ。友里さんも一緒だし、急ごう」
 聖奈子は置手紙を床に向けて投げた。絵里香と聖奈子は店の外に出ると、すぐにオートバイに乗った。美紀子は佐緒里が乗ったのを確認すると、アクセルを踏み込んでその場から車を発進させ、続いて聖奈子もオートバイを発進させた。
「佐緒里、ナビゲーターの画面に注意していて」
「はい叔母様」
 美紀子はしばらく走ってから高速道路に車を乗り入れ、聖奈子もその後を追った。目的地は富士山麓・・ 

      * * * *

「イーッ。ゼネラルダイア様。ミサイルの配備が全て完了しました。日本中の全ての大都市に照準を合わせ、いつでも発射出来ます」
「そうか。よーし。いよいよ作戦開始だ。アンボイナ魔人を呼べ」
「イーッ」
 暫くしてアンボイナ魔人がやってきた。傍らには後ろ手に縛られた瑞樹が・・・ 
「助けて。助けてぇ」
 ゼネラルダイアは電光剣を抜くと、瑞樹の顔に向けて近づけた。
「ひっ・・・ お願い・・ 助けて」
「もうすぐお前の仲間がここにやってくる。そうしたら、そいつらをお前と一緒に処刑してやる。それまで念仏でも唱えて待っていろ」
「嫌だ。そんなの嫌よ。私まだ死にたくないよ。今日はコマーシャルの撮影があるのよ。お願いだから帰してぇ」
「地下牢へ連れて行け」
「イーッ」
「嫌だあーっ。嫌だ。助けてぇー」
 戦闘員は嫌がって暴れる瑞樹を無理矢理地下牢へと連行していった。今度は別の戦闘員がやってきた。
「イーッ。ゼネラルダイア様。怪しいオートバイが近づいてきます」
「何?」
 ゼネラルダイアはモニターを見た。画面の向こうには二人が乗っている一台のオートバイが走っているのが見えた。
「警戒態勢だ。アンボイナ魔人、行け!」
「ブォーッ。かしこまりました」


「ここから先は歩くしかないわね」
「美由紀ちゃん、行こう」
 道が行き止まりになって、美由紀と友里はオートバイから降りると歩き出した。歩いて5分ほどで深い森の中に入り、周りが薄暗くなった。だが、携帯電話から流れてくる電波によって、美由紀の携帯の受信装置がアジトの方向を教えていた。
「こっちの方だわ」
 暫く歩いていると、友里が何か嫌な気配を感じた。
「美由紀ちゃんストップ!」
「どうしたの?」
「変な気配がする・・ 近いわ」
「そういえば・・・ 何だか薄気味が悪い」
「イーッ」
「イーッ」
 突然二人の周辺に戦闘員が現れた。さらにアンボイナ魔人も姿を現した。
「待っていたぞ。小娘ども」
「出た!! ネオ-ブラックリリーだわ。友里さん、気をつけて」
 美由紀と友里はお互いが背中合わせになって身構え、美由紀は変身のポーズを取った。
「待て。小娘ども。これを見ろ!」

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 アンボイナ魔人の傍らに、人質になった瑞樹が立っていた。
「瑞樹ちゃん」
「友里さん、美由紀さん。助けて。助けてぇ。私、殺されちゃうよぉ」
「このガキがどうなっても良いのか」
「卑怯者! 瑞樹ちゃんを放せ」
「何とでも言いやがれ。ガキの命を助けたかったら、我々と一緒に来い」
 美由紀は一呼吸置いてから、友里に言った。
「友里さん。仕方が無いわ。瑞樹ちゃんの命には代えられない」
「私たちだけで先走ったのが仇になってしまったわね。美由紀ちゃんゴメンね」
 戦闘員たちが美由紀と友里のそばにやってきて、二人の両腕をつかんだ。
「こいつらを基地へ連れて行け」
「イーッ」
 戦闘員に連れられていく美由紀と友里の後ろから、アンボイナ魔人は勝ち誇ったかのように歩いていった。

      * * * *

「小娘ども。とっとと来い!」
「痛っ・・・ 乱暴にしないでよ」
「うるさい。とっとと歩け!」
 捕えられてアジトの司令室に連行された美由紀と友里の前に、ゼネラルダイアがやってきた。ゼネラルダイアは電光剣を抜くと、切っ先を美由紀に向けて息巻いた。
「エンジェルイエロー。いや、城野美由紀。せっかくここまで来たのに残念だったな。間もなく殺人光化学スモッグを積んだミサイルが、日本中の都市に向けて発射される。お前達が守ってきた愚かな人間どもが、目の前で虫けらのように死んでいく様子をその目で見届けるがいい」
「そんな勝手な事させないわ。エンジェルは私だけじゃないのよ。きっと絵里香と聖奈子が助けに来てくれるわ。それに美紀子さんや佐緒里ちゃんだっているんだから」
「ふん! 笑わせるな。いくらスカーレットエンジェルでも、飛んでいるミサイルを止められるものか。おい! こいつらを地下牢に放り込んでおけ!」
「イーツ」
「嫌だ! まだ死にたくない。助けて」
 戦闘員たちは泣きじゃくる瑞樹を、そして捕えた美由紀と友里を連行していった。

       * * * *

 その頃、美紀子の車と聖奈子のオートバイは、高速道路を下りて一路青木ヶ原樹海へと向かい、その入り口まで差し掛かっていた。
「佐緒里。電波は?」
「まだ出ているわ。この道をそのまま行って」
 暫く走っていると、道は行き止まりになり、その片隅にオートバイが一台停まっていた。絵里香と聖奈子はオートバイから降りると、停まっているオートバイのそばへ行った。
「友里さんのオートバイだわ。すると、あの二人もここから入って行ったんだわ」
 そこへ美紀子と佐緒里も駆け寄ってきて、佐緒里が小型の受信装置の画面を二人に見せた。
「絵里香さん、聖奈子さん。あの二人も捕まっているわ」
 それを聞いて聖奈子が吐き捨てるように言った。
「だから言わんこっちゃない。作戦通りに動かないで、先走るからこんな事になるのよ」
「待って聖奈子。これはある意味では不幸中の幸いだわ」
「不幸中の幸い? 絵里香、どういう意味よ」
「奴等はわざわざ電波を出して、私たちにアジトの場所を教えていたのよ。だから私たちがやってくることを既に予測していたはず。それに瑞樹ちゃんという人質がいるから、もし全員一緒だったら、みんなが一緒に捕まっていたかもしれない。そうなったら、作戦も何も無いわよ」
「そっか・・ 絵里香の言うことも一理あるわね。佐緒里ちゃん、基地の場所は推定できる?」
「ここから大体3km行った付近よ」
「みんな焦っちゃダメよ。美由紀と友里さんが捕まっている以上、正面から行ったんではあの二人の二の舞いになるわ。みんな集まって」
 美紀子は絵里香と聖奈子、佐緒里を自分のそばに寄せた。

      * * * *

 ネオ‐ブラックリリーのミサイル基地では、コンピューターに攻撃目標が入力され、ミサイルの照準装置に次々とデータが送られていた。ゼネラルダイアは大首領からの言葉を聞いていた。
「ゼネラルダイア。準備は出来たようだな」
「はい。ミサイルは全て完成し、日本中の各都市に照準を合わせて、いつでも攻撃出来るように配備も完了しております」
「よろしい。それではまず第一次攻撃作戦として、東京、大阪、名古屋、博多、仙台、札幌の各都市に照準を合わせ、ミサイルを発射するのだ」
「かしこまりました。大首領様」
 ゼネラルダイアは会話を終えると、戦闘員に命令した。
「直ちにミサイル発射の準備をしろ。攻撃目標を東京、大阪、名古屋、博多、仙台、札幌の各都市に設定し、データをリンクするのだ」
「イーッ」
 基地内のミサイル発射台が不気味な音をたてて動き出し、ミサイルが次々とセットされていった。
「ゼネラルダイア様。全てのミサイルの発射まで一時間です」
「よーし。いよいよ我がネオ‐ブラックリリーが世界征服への第一歩を踏み出す時が来たのだ」


 アジトの地下牢の中では、美由紀と友里、瑞樹が悶々としていた。瑞樹は相変わらず泣きべそをかいていて、友里が宥めていた。美由紀は扉の前に立って、考え事をしていた。
「(絵里香たちが来る前にミサイルが発射されてしまったら元も子もない・・・ どうすれば・・・ )」
「美由紀ちゃん。何を考え事してるの?」
「ここから出る方法を考えていたのよ」
「エンジェルに変身したらいいじゃない。美由紀ちゃんは戦士なんでしょ? その気になれば簡単に出られるじゃないの」
「しっ・・・ 友里さん。あまり大きな声出さないで。瑞樹ちゃんがいるのよ」
 美由紀にいわれて、友里はハッと気付いた。瑞樹がいるのだ。
「分かった・・・ ゴメン美由紀ちゃん。それより今、ここから逃げ出すためのいい考えを思いついたわ」
「どうするの? 友里さん」
「奴等にこの地下牢の扉の鍵を開けさせるのよ」
「どうやって?」
 友里は美由紀に耳打ちして囁いた。
「え? 私と友里さんとで取っ組み合いの喧嘩をする?」
「そう。ワザと大騒ぎして、奴等をこの中に入れさせるのよ」
「なるほど・・・ 名案だわ。でも、お手柔らかにね」
「よーし。行くわよ」
 友里は美由紀の頬めがけて鉄拳をお見舞いした。美由紀は殴られるふりをして、紙一重で避けてから友里に向かって怒鳴った。
「何するのよ!」
「うるさい! あんたのせいでこんな事になっちゃったのよ! 少しは反省しろ!」
「何よ! 私のせいにしないでよ!」
 美由紀は友里に掴み掛り、ついに取っ組み合いのケンカになった。
「やめてぇ。二人とも喧嘩やめてぇ」
 瑞樹が泣きながら大きな声で叫んだ。そこへ戦闘員がやってきた。
「何やってるんだ。静かにしろ!」
 美由紀と友里はお互いに怒鳴りあいながら取っ組み合いの喧嘩を続けていた。
「おい! 静かにしろというのが分からんのか!」
 三人の戦闘員が扉の鍵を開けて中に入ってきて、美由紀と友里を引き離そうとした。
「美由紀ちゃん今だ!」
 美由紀と友里は二人揃って戦闘員の方に向き直ると、それぞれ自分に組み付いた戦闘員を締め上げ、殴り倒した。さらにもう一人を美由紀と友里の二人がかりで倒した。
「よし。大成功だわ。脱出するわよ」
 傍らでは瑞樹が呆気にとられて二人を見ていた。
「あの・・ ふたりとも・・ 喧嘩してたんじゃなかったの?」
「演技よ。演技。私たちは役者なのよ。これくらい序の口よ。さ、逃げるよ」
「うん」
 瑞樹の顔が急に明るくなった。美由紀は廊下の様子を隅々まで見通した。
「大丈夫。行くわよ」
 美由紀が先頭になって用心しながら廊下を歩き、その後ろから瑞樹と友里の順で続いた。

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 美由紀は時折全体を見渡した。テレビカメラや罠を警戒していたのだ。やがて廊下が左右に分かれるТ字路になった。
「どっちへ行けばいいかな・・ 」
 その時左の方から足音が聞こえてきた。
「静かに・・ 誰か来る」
 美由紀は角から少し顔を出した。戦闘員が近づいてくるのが見えた。しかし戦闘員は美由紀たちの方へ来る前に扉の前に止まった。自動ドアが開いて、戦闘員は室内へ入っていった。
 美由紀は友里と瑞樹に合図をしてから、戦闘員が来た方の廊下へ足を踏み出して、戦闘員が入った部屋の扉の横の壁に張り付き、その後から友里と瑞樹もついてきた。
「美由紀ちゃん、何の部屋だろう」
「ねえ・・ 私怖い・・」
「静かに・・」
 美由紀は扉の前に立った。すると自動ドアが開き、美由紀は友里と瑞樹を連れて室内に飛び込んだ。そこは司令室だった。が、ゼネラルダイアは基地の方へ行っていて司令室にはおらず、戦闘員たちもミサイルの発射準備で殆ど出払っていて、室内には戦闘員が三人しかいなかった。
「イーッ」
 戦闘員が奇声を上げながら向かってきた。美由紀は戦闘員の一撃をかわすと、膝で戦闘員のわき腹を蹴って倒した。もう一人が組み付いてきたが、友里が素早く戦闘員を引き離して、正拳突きでたおした。最後の一人は慌てて無線の所へ走ったが、美由紀は戦闘員が落とした剣を拾って投げつけた。
「イーッ・・・・・     」
 剣は戦闘員の背中に突き刺さり、戦闘員は絶命した。室内にいた戦闘員が全て片付き、美由紀は室内を見回した。瑞樹はテーブルの上に置いてある自分のランドセルと携帯を見つけ、携帯を開いた。携帯はずっと操作中になっていたので、バッテリー残量が僅かだった。
「あーあ・・ 電池が殆ど残ってない・・」
 瑞樹は携帯のスイッチを切ると、ランドセルの中に入れ、ランドセルを背負った。美由紀のリュックもテーブルの上にあり、美由紀はリュックの中から、美紀子から貰った煙幕弾を出し、友里に渡してからリュックを背負った。
「ここは奴等の司令室だわ。でも・・・ それにしては随分と無用心ね」
「美由紀さん、友里さん。奴等はミサイル基地にいるのよ」
「え? ミサイル基地? 瑞樹ちゃん、どういう事? 何か知ってるの?」
「捕まっていた時、奴等が話しているのを聞いたの。あいつらは日本中の大都市に向けて、ミサイルで殺人光化学スモッグを撒き散らすって言ってたわ」
「美由紀ちゃん。これを見て」
 友里が何かを見つけて、美由紀を自分の方へ呼んだ。大きなモニターにアジトの見取り図が映し出されている。
「ここが現在地の司令室・・ こっちの大きなエリアがきっとミサイル基地なんだわ。出入り口は・・ 一番近いやつは、私たちがさっき来た逆の通路だわ」
「ねえ・・ 早くここから出ようよ」
 瑞樹が美由紀と友里を急かした。
「待って瑞樹ちゃん。焦っちゃダメよ」
 その時突然警報が鳴り、天井の赤いランプが点滅して、三人ともドキッとした。
「しまった・・ 見つかった」
「美由紀ちゃん、違うみたいよ。あれを見て」
 友里が室内にあったモニターの一つを指差した。モニターには絵里香たちの姿が映っている。
「絵里香たちだわ。来てくれたんだ。佐緒里ちゃんと美紀子さんも来ているわ」
 その時ドアが開いて、数人の戦闘員が入ってきた。
「奴等がやってきたぞ。警戒態勢を敷け! わわっ・・・ き、貴様ら・・ 」
「どうやって脱走したんだ」
 後ろからアンボイナ魔人も入ってきた。
「何の騒ぎだ。う・・ おのれ小娘ども! 牢から出られてもこの基地からは逃げられんぞ。丸呑みにしてくれるわ」
 アンボイナ魔人は口吻を延ばして開口部を広げると、一番近くにいた美由紀に向けてきた。美由紀は咄嗟に身をかわすと、持っていた煙幕弾の安全ピンを抜き、アンボイナ魔人の口めがけて投げつけた。
「化け物! こいつを食ってみろ!」
 煙幕弾がアンボイナ魔人の口の中に吸い込まれ、口から真っ黒い煙が出てきた。
「ブォブォブォブォーッ! ゲホゲホゲホーッ。お、おのれ小娘」
「友里さん。煙幕弾を投げて」
 友里は煙幕弾の安全ピンを引き抜くと、自分の前に転がし、瑞樹の手を引いて美由紀のそばに来た。煙幕弾から真っ黒い煙が噴出し、司令室の中に煙が充満して、その中でアンボイナ魔人と戦闘員たちが右往左往した。警報は相変わらずけたたましく鳴り続け、さらに煙のために火災報知器が作動した。
「友里さん、瑞樹ちゃんを連れて逃げて。私たちがさっき通ったТ字路を反対方向へ行けば出入り口につながっているわ」
「分かった。美由紀ちゃん気をつけて。瑞樹ちゃん行くよ」
 三人は口をふさぎながら、煙幕の中を右往左往している戦闘員の間をすり抜け、司令室の出口に向かって走って室外へ出た。
「友里さん早く行って」
「オーケー」
 友里は瑞樹の手を引くと、出入り口の方へ向かって駆けていった。
「エンジェルチャージ!」
 美由紀はかけ声とともに変身し、ドアの上にあるセンサーを見つけた。
「あれが自動ドアのセンサーだわ。よーし。ライトニングスマッシュ!」
 センサーがエネルギー波で破壊され、司令室の出入り口のドアが閉じてロックされた。内側からドンドンとドアを叩く音が聞こえてくる。美由紀は友里たちと逆の方向、つまりミサイル基地の方へ向かって駆けた。

      * * * *

 アジトの廊下を走っていた友里と瑞樹の前から、絵里香と聖奈子がやってきて、お互いに鉢合わせした。
「友里さんに瑞樹ちゃん。無事だったのね」
「絵里香さんに聖奈子さん。美由紀ちゃんはミサイル基地の方へ向かったわ」
「分かりました。この回廊をそのまま行けば外へ出られますから、早く逃げてください」
「ありがとう」
「聖奈子行こう」
「オッケー」
 絵里香と聖奈子は回廊を奥の方へ駆けて行き、友里と瑞樹は入り口に到達して外へ出た。
「やった。出られたわ」
「二人とも。早くこっちへ来て」
 外で待機していた美紀子と佐緒里が友里と瑞樹を促した。


 司令室の中では煙が充満し、大騒ぎになっていた。さらに出入り口の自動ドアがロックされ、室外へ出る事が出来なくなった。
「部屋の換気だ。早く換気装置を作動させろ」
 換気装置のスイッチが入れられ、ようやく充満していた煙が晴れて、火災報知器が止まった。
「早くドアを開けろ」
「イーッ。センサーの故障で、ロックされています」
「どけ!」
 アンボイナ魔人はドアの前に集まっていた戦闘員をどかすと、口から溶解液を噴射した。頑丈なドアがたちまち溶けて穴が開き、アンボイナ魔人はドアを蹴り飛ばした。
「大至急基地の方へ連絡しろ」
 戦闘員が電話を取り、ミサイル基地へ連絡を入れた。
「お前らは逃げた小娘どもを追え」
「イーッ」
「そうはさせないわよ!」
 絵里香と聖奈子がやってきて、その場で格闘戦になり、絵里香と聖奈子は戦闘員と格闘しながら司令室に飛び込んで、アンボイナ魔人と鉢合わせした。
「ネオ‐ブラックリリーの化け物! 覚悟しろ」
「おのれ小娘ども。皆殺しだ。かかれっ」
「イーッ」
 新手の戦闘員が襲いかかってきて格闘戦になり、絵里香と聖奈子は次々と戦闘員を倒した。アンボイナ魔人は左手を絵里香と聖奈子に向け、毒針を発射した。が、毒針は間に割り込んできた戦闘員に突き刺さった。
「イーッ」
 戦闘員はたちどころに絶命し、その場に倒れて身体が溶けた。それを見た絵里香は一歩後ろに引いた。
「聖奈子、化け物の毒針に気をつけて」
 聖奈子は胸のブローチに手をあて、ソードと楯を出して身構えた。そこへアンボイナ魔人の毒針が飛んできて、聖奈子は楯をかざして跳ね返した。
「おのれぇ。小癪な。丸呑みにしてやる。ブォオーツ」
 アンボイナ魔人は開口部を大きく広げて威嚇した。

      * * * *

 一方、ミサイル基地でも警戒警報が鳴り、司令室からの連絡で、ゼネラルダイアも絵里香たちが進入してきたことを知っていた。しかし捕えた美由紀たちが脱走したことは知らなかった。
「イーッ。ネラルダイア様。小娘どもがアジトに侵入してきました。現在司令室の付近でアンボイナ魔人様との間で戦闘が続いています」
「よーし。非常用防護扉を閉めて基地との間を遮断しろ。アジトの方は放棄して自爆装置を作動させるんだ」
「しかし、司令室付近にはアンボイナ魔人様を含めた、我々の同士がいて、エンジェルスの小娘どもと戦っております」
「構わん。エンジェルの小娘どもと一緒に吹っ飛ばすんだ!」 
「かしこまりました」
 戦闘員がコンピューターと連動している装置のスイッチを入れ、アジトとミサイル基地とをつないでいる回廊部分の防護扉が閉じられた。さらにアジトの自爆装置のタイマーが、不気味な音をたてて動き出した。
「ミサイル発射までどれくらいだ!?」
「イーッ。後10分で発射出来ます」
 そこへ見張りの戦闘員を倒して美由紀が基地内に飛び込んできた。美由紀は防護扉が閉じる前に回廊内を通過していたので、基地のエリアに入ることが出来たのだ。

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「ネオ-ブラックリリー! 私たちエンジェルスがいる限り、お前たちなんかに勝手な真似はさせないわ!!」
「エンジェルの小娘! おのれぇ・・ 者ども片付けろ! 絶対に邪魔させるな」
「イーッ」
 戦闘員が一斉に美由紀に襲いかかった。美由紀はバトンを出すと、自分に向かってくる戦闘員と戦った。ゼネラルダイアは電光剣を抜いてジャンプすると、美由紀の前に着地し、剣の切っ先を美由紀に向けて威嚇した。
「ゼネラルダイア! お前の作戦もこれで終わりよ」
「ほざくな小娘! 喰らえ!!」
 ゼネラルダイアが電光剣を振り下ろすと、稲光とともに高圧放電弾が美由紀を襲い、美由紀は二本のバトンをクロスさせた。
「ライトニングシールド!」
 美由紀の周りに電磁波のバーリアが張られ、放電弾がバーリアによって跳ね返された。
「今度はこっちの番よ! ライトニングクロスブーメラン!!」
 美由紀はバトンをクロスさせたままゼネラルダイアめがけて投げた。クロスしたバトンが光の塊になって回転しながらゼネラルダイアに向かっていく。
「ヤアーッ!!」
 ゼネラルダイアはかけ声とともに電光剣で弾き返し、ブーメランは美由紀の元に帰ってきた。美由紀とゼネラルダイアは相対して睨み合い、お互いに攻撃の機会を窺っていた。
「ミサイル発射一分前。秒読みを開始します」
 スピーカーから声が出てきて、美由紀は一瞬声のした方を向いた。そこへゼネラルダイアが突進してきて、電光剣を振り回してきた。美由紀は体制を崩しながらも二本のバトンで応戦し、キィーンキィーンと、剣とバトンが触れる音が基地のエリア内でこだました。ゼネラルダイアが電光剣を振り下ろし、美由紀はバトンで受け止めた。そこへゼネラルダイアが蹴りを入れてきて美由紀の腹にまともにヒットし、美由紀の体が反動でボールのように跳ねて床の上を転がった。
「お前如きが私に勝てると思っているのか!! キェエーッ!」
 ゼネラルダイアは奇声を上げながら電光剣を天井に向けた。稲妻の電光とともに放電弾が美由紀を襲い、美由紀の周辺に次々と放電弾が落下した。
「キャアァーッ!!」
 凄まじい衝撃と電撃に、美由紀は絶叫しながら悶絶した。
「ザマァミロ小娘。止めを刺してやる」
「(ダメだ・・ このままじゃやられちゃう・・ 一か八か・・・ )」
 ゼネラルダイアが電光剣を手に美由紀に突進してきた。
「今だ!」
 美由紀は立ち上がると同時にジャンプして、突進してきたゼネラルダイアの肩を踏み台にし、空中で一回転して着地した。同時にバトンをクロスさせて弓にし、矢を番えて発射寸前のミサイルに向けた。
「ライトニングアローアタック!!」
 矢が放たれ、一本の閃光となって、発射寸前のミサイルのうちの一本に命中した。衝撃でミサイルの弾頭部分が爆発し、中に詰まっていた殺人光化学スモッグが噴出して、基地のエリア内に充満した。
「グァアーッ! イィーッ」
「ヒイィーッ」
 戦闘員たちが光化学スモッグのガスを浴びて、悶絶しながら次々と白骨死体になった。さらに美由紀の矢に貫かれたミサイルは炎を噴き出し、燃料に引火して爆発して真っ二つに折れて、床の上に倒れ、近くにあった燃料や火薬に引火して誘爆し、基地全体が炎に包まれ、もはや手の付けられない状態になった。
「し、しまった・・ ミサイルが爆発する」
「ざまぁ見ろ! お前の作戦もこれで完全にジ・エンドよ。観念しろ」
「おのれぇ小娘!」
 ゼネラルダイアは凄い形相で、電光剣を美由紀に向けて威嚇した。その時ゼネラルダイアの近くで爆発が起こり、ゼネラルダイアは爆風で吹っ飛ばされた。と同時に、ゼネラルダイアはその場から消えた。今度は美由紀がピンチの番だった。美由紀の周辺にも殺人光化学スモッグのガスが迫り、さらに小規模の爆発が次々と美由紀の近くで起こった。
「やばい・・ 逃げないと巻き添えになってしまう」
 美由紀は自分が入ってきた出入り口から基地の外へ出て回廊を走った。しかし、その途中で防護扉が閉じているところまで来て立ち止まった。美由紀は扉を足で蹴ったがびくともしない。後ろの方では爆発の音が聞こえてくる。
「確か他にも出入り口があったはず・・・ 」
 美由紀はさっき見たモニターに出ていた見取り図を思い出し、基地の方へ引き返した。基地の出入り口のそばに非常用の通路があったのだ。しかし、既にその付近は紅蓮の炎が燃え盛り、美由紀の行く手を阻んだ。通路まではあと10メートル・・・・ 

 司令室とその周辺では相変わらず戦闘が続いていて、戦闘員の一人が時限装置が作動していることに気付いた。
「大変だ。時限装置が作動している。爆発まで後5分だ」
「何だと!?」
 戦闘員の悲痛な声がアンボイナ魔人の耳にも入った。
「早く脱出だ。アジトが爆発するぞ」
 アンボイナ魔人と戦闘員たちは、目の前にいる絵里香と聖奈子をそっちのけにして、我先にと逃げ出した。
「絵里香、アジトが爆発するって言ってる」
「聖奈子、逃げるよ」
 絵里香と聖奈子も出入り口に向かって駆け出し、アジトの外へ飛び出した。
「化け物は何処だ」
 聖奈子はあたり一面を見回した。回りは鬱蒼とした針葉樹林帯である。美紀子と佐緒里、友里と瑞樹は既に安全な場所まで退避したらしく、その姿は見えない。その時絵里香が何かの気配を感じた。
「危ない聖奈子。散って!」
 絵里香と聖奈子はその場から素早く離れた。今まで二人がいた場所に次々と毒針が飛んできて地面や木に突き刺さった。
「イーッ」
「イーッ」
 奇声とともに戦闘員が木々の間から飛び出してきて、二人を取り囲み、ジリジリと迫ってきた。そして包囲の輪の外にはアンボイナ魔人が姿を現した。
「ブォーッ! 小娘ども。引導を渡してやる。かかれっ」
 戦闘員が奇声を上げながら一斉に襲いかかってきた。絵里香と聖奈子はそれぞれ武器を持ち、襲ってくる戦闘員と戦った。その間からアンボイナ魔人が毒針を飛ばし、口吻を伸ばして口を広げて襲ってくる。聖奈子にアンボイナ魔人の口が向かってきて、聖奈子は戦闘員を突き飛ばした。戦闘員はアンボイナ魔人の口に吸い込まれ、絶叫とともに丸呑みにされた。
「溶解液を喰らえ」
 アンボイナ魔人が溶解液を噴射し、絵里香はジャンプしてかわした。絵里香の後ろにいた戦闘員に液体が降り注ぎ、戦闘員が瞬時に溶けて蒸発した。
「絵里香、化け物の毒針と溶解液を何とかしなきゃ」
「聖奈子、接近戦に持ち込むのよ」
 絵里香と聖奈子はアンボイナ魔人を挟むような形で立ち、攻撃の隙を窺った。まず正面側にいた聖奈子が仕掛けた。アンボイナ魔人は毒針を発射してきて、聖奈子は楯を自分の前にかざして跳ね返した。
「ファイヤースマッシュ!」
 同時に絵里香がエネルギー波を放ち、アンボイナ魔人に命中した。アンボイナ魔人は衝撃で態勢を崩し、そこを聖奈子がジャンプして急降下した。
「エンジェルキック!」
「ブォーッ!!」
 アンボイナ魔人はキックの反動で地面を転がった。その時アジトの時限タイマーがゼロになって、地鳴りとともに大爆発を起こし、地面が吹き上がった。さらに火災を起こしていたミサイル基地も、大爆発を起こし、あたり一帯が激しく揺れた。
 アンボイナ魔人は立ち上がり、それを見た絵里香と聖奈子は身構えた。
「おのれ小娘ども。こうなったら地獄の道連れにしてやる」
 アンボイナ魔人は立て続けに毒針を発射し、溶解液を噴射してきた。そのたびに絵里香と聖奈子は攻撃をかわした。絵里香はブレードを振り上げると、アンボイナ魔人めがけて投げた。

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「ファイヤーストーム!」
 ブレードはアンボイナ魔人の貝殻を突き抜け、身体に突き刺さった。
「ブォーッ! グギャアーッ」
 続いて聖奈子もソードを投げつけ、アンボイナ魔人の身体に突き刺さった。アンボイナ魔人の身体から薄い黄色の液体が漏れ、ジューッという音とともに、アンボイナ魔人の身体から水蒸気のようなものが噴き出して、見る見るうちに溶け始めた。そして身体が崩れてドロドロのスライムのようになって、最後には炎に包まれて全身が消滅した。
「やった・・・・ 」
「これで奴等の作戦もお釈迦というわけね」
「絵里香―っ。聖奈子-っ」
 自分たちを呼ぶ声が聞こえて、二人は声がした方を向いた。美紀子と佐緒里が、友里と瑞樹を連れてやってきたので、絵里香と聖奈子は変身を解いた。そこへ美紀子がみんなを連れて絵里香と聖奈子の傍に集まってきた。瑞樹は周りを見回している。友里が不思議に思って瑞樹に聞いた。
「瑞樹ちゃん。どうしたの?」
「確か・・・ ユリみたいな人たちがいたような気がしたんだけど・・ 」
 友里は絵里香と聖奈子の方を見た。絵里香と聖奈子は首を横に振った。友里は何かを直感して瑞樹に応えた。
「私は何も見てないわよ。瑞樹ちゃん幻覚でも見たんじゃないの?」
「そうかなぁ・・・・ 」
「そうだ・・ 美由紀ちゃんは? 美由紀ちゃんはどうしたの?」
 今度は友里が周りを見回した。絵里香が友里に応えた。
「美由紀なら、ほら・・・ こっちへ走ってくるわよ」
 絵里香は美由紀を見つけた方向を指差した。
「みんなあーっ」
 美由紀が大きな声を出して手を振りながら走ってきた。
「美由紀ちゃーん!」
 友里は美由紀に向かって駆け出し、そのまま美由紀と抱き合った。
「キャッ」
 美由紀は思わず声を上げた。美由紀は何故脱出できたのか・・ それは、通路が炎で遮られたとき、ミラクルチャージアップで身体を光の粒子に変化させ、炎の中を走り抜けて脱出用の通路から外へ出たからである。そして安全な場所まで来たときにタイミングよくエネルギーが無くなって変身が解けたのだ。


 それから五日後・・・・
「用意・・ スタート!」
 監督の一声でフイルムが回された。ここは湘南海岸。聖光美少女戦士ユリのロケが再び始まっていた。海の中に仕掛けられた爆薬が爆発して海面が盛り上がり、暫くして再び静かに波が寄せる海岸の風景になった。
 経緯は次の通りである。ユリは必殺技で怪人ツタラグナに体当たりし、ツタラグナとともに海の中に飛び込んで、海中で大爆発を起こした。そしてユリを追ってきた一人の少女が砂浜で、友里が飛び込んだ海を見つめているシーンだった。
 少女の目からは涙が落ちる・・ そして次の瞬間、少女の泣き顔が笑顔に変わる。ツタラグナと相打ちになったと思われたユリが、変身を解いた由理の姿で、海の中から出てきて砂浜に向かって歩いてきたのだ。カメラは太陽を背にした由理の姿を映し出す。そして少女と抱き合ったところでエンディングとなった。
「ヨーシ!  ОK!!」
 周りの空気が一気に和み、スタッフたちが由理役の友里と、少女役の瑞樹の元に駆け寄っていった。成り行きをずっと見ていた美由紀は、二人に向けて拍手を送った。一時間後、ずぶ濡れになった服を着替えた友里は美由紀の傍にいた。
「友里さん。すごく良かったですよ」
「ありがとう」
 そこへスタッフの一人がやってきた。
「友里ちゃん。記念写真撮るよ。美由紀ちゃんと瑞樹ちゃんも一緒に並んで」
「はい」
 友里は返事をすると、美由紀を促した。砂浜の上を海をバックに瑞樹が真ん中に立ち、友里と美由紀が左右に並んだ。カメラのレンズが二人を捉え、まさにシャッターが押されようとした時、瑞樹が美由紀と友里のスカートの裾をつかむと、思いっきり捲り上げた。

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「キャッ!」
 二人の悲鳴と同時にシャッターが下りて、二人はパンツ丸見えの恥ずかしい姿をまともにフイルムに納める事になった。二人は同時に瑞樹の方を向き、瑞樹はその場からダッシュして逃げた。
「こら待て!!」
「よくもやったわね」
 美由紀と友里は逃げる瑞樹を追いかけた。

      * * * *

 殺人光化学スモッグを使い、人類絶滅を企んだネオ‐ブラックリリーの作戦はエンジェルスの奮戦によって潰された。しかし、ネオ‐ブラックリリーの世界征服の野望が消えたわけではないのだ。頑張れエンジェルス!


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 次回予告
 第41話『現れた大首領!』
 ネオ‐ブラックリリーは改造魔人用の人間を集めるため、新たに作り出したセンザンコウ魔人と再生魔人を使って大規模な誘拐作戦を展開。某所に設置した改造魔人育成用の施設に次々と運び込む。そして誘拐の場面を偶然見てしまった絵里香たちの先輩の芳江もさらわれてしまう。
 作戦の概要を知った絵里香たちは阻止行動に出るが、その前にセンザンコウ魔人と再生魔人が立ちふさがる。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第41話『現れた大首領!』にご期待ください。


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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学