鷲尾飛鳥

11月 « 2013年12月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  » 03月

第41話『現れた大首領』

2013年 12月31日 14:34 (火)

04-41-00.png

 ここは東南アジアから日本へ向かう貨物船の船内である。今回の物語はここから始まる。貨物船には東南アジアから日本へ送られる輸入物資のほか、東南アジアから日本へ送られる動物が積まれていた。その動物は東南アジアに生息している各種の動物たちで、その中にセンザンコウという動物が一匹いた。哺乳類で、唯一体に鱗を有する珍しい動物であり、乱獲によって数が激減し、国によっては輸出を禁止しているところもある。そしてそのセンザンコウが何者かによって狙われていたのだ・・・

      *      *      *      *

 深夜・・・・・
「しかし夜の真っ暗な船内は気味が悪いな」
「ああ・・ 動物を積んでいるし、鳴き声や動く音だけで、びびりそうだぜ」
 会話をしているのは警備担当の船員たちだった。
「早いとこ巡回を終わらせて船室へ戻ろうぜ」
「ああそうだな・・ ところで、日本まであと何日なんだ?」
「日本までか? さっきのブリッジからの報告では、東シナ海に入ったところだっていうから、あと3日くらいじゃないかな」
 ガタン・・
 突然の物音に、二人の船員は驚いて音のした方を向いた。
「おい、何だ今のは」
「動物を積んでいる部屋だぞ」
「暴れているのかな」
「それにしては随分大きな音だったぜ」
 船員は部屋の扉を開けて、室内の電気をつけた。
「誰かいるのか!?」
 二人の船員は室内を見回した。すると、センザンコウの檻の前に一人の男が立っていた。
「おい。誰だ!? そこで何をしているんだ」
 二人の船員は男の傍へ駆け寄っていった。
「おい。お前・・ この船の乗組員じゃないな。一体どこから入ってきたんだ」
 男は無言のまま天井を指差した。
「何?? ・・・ おい。お前、頭がどうかしてるんじゃないのか!?」
「俺は正気だ」
 そういって男は船員たちの方を向き、クマ魔人の姿になった。

04-41-01.png

「わわっ・・ ば、化け物」
「ベーアーッ! このセンザンコウを頂いていく。俺様の姿を見たお前たちと一緒にな」
「た・・ 助けてくれぇーっ」
「逃がすものか。ベーアーッ」
 クマ魔人は右手を振り上げると、船員の一人を殴りつけた。
「ギャアーッ」
 殴られた船員は一撃で絶命した。もう一人の船員は入り口の所で戦闘員たちに行く手を阻まれ、その後ろからイカ魔人が姿を現した。
「あわわわわ・・・  こ、こ、こっちにも化け物」
「ゲーゾーッ。逃げられはせん。我々と一緒に来るのだ」

04-41-02.png

 戦闘員の一人がスプレーを出し、男の顔に向けてガスを吹きかけた。男はそのまま倒れて仮死状態になった。
「ベーアーッ。生き物を仮死状態にするガスの効き目は抜群だ。よーし。この檻に入った動物と、この男を連れていけ。それから死んだやつはここへ置いておくとまずい。片付けろ」
「イーッ」
 戦闘員たちが次々と室内に入ってきて、センザンコウが入った檻と、気絶した船員を抱えて連れ去って行った。そして死んだ男を甲板へ運び、海へ投げ落とした。

 それから三日後・・・
 船は予定通り横浜の港に到着して、次々と貨物の荷卸しが始められていた。そして船に積んであった車両の中から、一台のトラックが出てきて、何処へともなく走り去っていった。このトラックこそ、ネオ‐ブラックリリーが調達した車両で、中にはセンザンコウの入った檻と、仮死状態になっている男が隠されて積まれていたのである。その後、船内から失踪した二人の船員と、檻ごと消えてしまったセンザンコウについては、船会社の依頼で警察の捜査が入り、行方不明という扱いで事件として報道されたが、誰もネオ‐ブラックリリーの仕業だとは知る由もなかった。

 ここはネオ‐ブラックリリーのアジトである。いや、アジトというよりは、その規模は基地に近かった。ここでは改造魔人や戦闘員の育成施設があり、改造した魔人のトレーニングや、これから改造する予定の人間のトレーニング等を行うための設備があった。一通りの設備が整っていて、かつてドクガ魔人(第13話を参照)に改造された井草杏子(第13話・哀れな生贄を参照)も、改造される前はここで強制強化トレーニングを受けていた。さて、アジトの指令室にいたゼネラルダイアの元に、クマ魔人とイカ魔人が戦闘員を連れて入ってきた。
「ベーアーッ。ゼネラルダイア様。改造用の人間と動物の輸送を終え、帰還しました」
「ゲーゾー。男とセンザンコウは既に手術室に運んであります」
「大義であった。さっそく改造手術を開始する。科学者たちを呼べ」
 ゼネラルダイアは近くにいた戦闘員たちに命令し、戦闘員たちが指令室から出ていった。

 それから数時間後・・・
 アジトの手術室では、手術台の上にクマ魔人とイカ魔人が連れてきた船員の男が仮死状態のまま置かれ、その隣には強奪してきたセンザンコウが檻に入ったまま置かれていた。ゼネラルダイアが手術室に入ってきて、続いて手術担当の科学者たちも次々と入室してきた。
「ではこれより新たな魔人の改造手術を行う。早速取り掛かるのだ」
「イーッ。分かりました」
 科学者たちが所定の位置につき、手術の準備が整えられた。仮死状態のままの男の体に電極や多数のケーブルが取り付けられ、センザンコウに向けて特殊な装置が向けられた。
「よし。手術を開始する。電源を入れろ」
 スイッチが入れられ、男の体に電流が流された。さらに檻の中のセンザンコウにも特殊な電波と光線が照射された。数十分後、男の体とセンザンコウとが融合され、別の光線が照射された。そして手術開始から約一時間たち、男の体とセンザンコウは完全に融合されて、醜怪な怪人の姿に変貌した。
「よし。手術は成功だ。電源を止めろ」
 スイッチが切られてケーブルや電極が外され、手術台の上の怪人、センザンコウ魔人が起き上がった。
「アババババーッ! 俺様はセンザンコウ魔人だ」
 センザンコウ魔人は立ち上がるとゼネラルダイアの方を向いて敬礼した。
「センザンコウ魔人。お前は改造魔人の生成に必要な人間を誘拐し、このトレーニング施設に運んで来て貯蔵するのが任務だ。再生したクマ魔人、イカ魔人とともに、さっそく作戦を開始せよ」
「アバババーッ。かしこまりました。ゼネラルダイア様」

04-41-03.png

 誘拐されて仮死状態になった人間は、既に数人がこの施設内に連れてこられて保存されていた。ゼネラルダイアはセンザンコウ魔人を作り上げ、再生したクマ魔人とイカ魔人を伴わせて、さらに作戦を拡大しようとしていたのだ。

      *      *      *      *

「絵里香おはよう」
「聖奈子、美由紀、おはよう」
 朝、絵里香たちは学校の校門の前で、いつものように挨拶し合うと、三人で校舎の方へと向かって歩いて行った。

04-41-04.png

04-41-05.png

「それにしても・・ この学校、新年度から共学になるのよねー」
「うん・・ どんな感じになるのかな」
「女子の制服は今のままだって言ってたけど」
「そういえば・・ 制服のポスター出ていたよ。男子は女子と同じ色のブレザーで、ズボンはこのスカートより少し濃い目のグレーだった」
 そういって聖奈子がスカートの裾を少しつまんで見せた。
「何やってるのこんなところで」
 突然の声に、絵里香たちは後ろを振り向いた。絵里香と聖奈子の担任の詩織が立っていた。
「あ・・ 藍原先生。おはようございます」

04-41-06.png

「おはよう。みんな相変わらず元気そうね」
 そう言いながら、詩織は教職員用の出入り口の方へ向けて歩いて行った。


 さて、その日の授業が終わり、絵里香たちは校舎から出てきた。学校では入試を明後日に控えていたため、校内は結構あわただしかった。絵里香たちは学校から出ると、いつものようにANGELへと向かっていった。ANGELに着いた時、美由紀は店の脇の車庫のシャッターが開けられていて、車が無いのに気付いた。
「あれ? 美紀子さん出かけているんだね・・・」
 扉の札は『開店中』になっていたので、絵里香たちは扉を開けて中に入った。
「いらっしゃい」
 中に入ると、佐緒里が出迎えてくれた。絵里香たちはテーブルを囲んでそれぞれ椅子に座った。
「佐緒里ちゃん。美紀子さん出かけてるんだね」
「はい。そのことで、叔母様から絵里香さんたちに託があるんです」
「???・・・」
04-41-07.png
 佐緒里はカウンターから出てきて、絵里香たちに新聞を渡した。
「一面にも記事があるし、ニュース欄にも同じ内容の記事が書かれています。朝のニュースでもやっていたんです。東南アジアから日本に送られてきた動物の中に、センザンコウという動物が一匹いたんだけど、船が横浜に着いたときにそのセンザンコウが檻ごと消えていたそうなんです。叔母様は今、ある人から依頼を受けて、それを調べに行ってるんです。それから、船に乗っていた船員が二人、船から忽然と姿を消して、そのうちの一人は今日の朝、東シナ海の海上で水死体として発見されたそうです」
 絵里香たちは佐緒里の話を聞きながら、真剣な眼差しで新聞に見入っていた。
「尋常な事件じゃないわね」
「何故センザンコウだけが消えたんだろう・・・ ほかにも動物はいたんでしょ」
「船員がまだ一人行方不明のままというのも気になるわ」
「まさか、奴らの仕業・・ 」
「美由紀、考え過ぎだよ」
「いや・・ 聖奈子、考えられない事もないわ。船の中で起こった事件でしょ。つまり周りは海で、外からの侵入は尋常な手段だったら不可能なんだけど、ネオ‐ブラックリリーの仕業ならば不可能ではないわよ」
「うーん・・ 絵里香の言う事も一理あるわね。そうすると、これはあたしの推測なんだけど、奴等は向こうの港を出港する前の船内に既に侵入していて、船内で目的を成し遂げ、横浜に着くと同時に船からまんまと目的のものを強奪して去って行った・・・ ってところよ」
「聖奈子の推測・・ 意外と当たりかもしれないね。新聞では航行中にヘリコプターなどの接近は一切無かったって書かれてるし、つまり奴等は出港してから横浜までずっと船の中にいたって事ね」
「しかし、なぜセンザンコウなんだろう」
「船から消えた船員との関係も気になるわ。一人は水死体で発見されたんだし、ネオ‐ブラックリリーの仕業だったら、もしかしたらもう一人も・・」
「奴等に殺されているって事?」
 絵里香は黙ってうなずいた。が、それ以上の事は解明出来なかった。どの推理も疑わしく、そしてどの推理もネオ‐ブラックリリーが関わっているとは言い難かったのだ。
「とにかく、美紀子さんが今いないし、一旦みんな家へ帰って出直してこようよ」
「そうしよう」
「佐緒里ちゃん、美紀子さんが帰ってきたら、一旦家へ帰ってまた来るって言っておいて」
「はい。それじゃみんな気を付けて」
 絵里香たちはANGELを出ると、それぞれの家に帰っていった。

      *      *      *      *

04-41-08.png

 それから約一時間後・・ ここは美由紀が住んでいる城間市の北部にある、新間川放水路の近くである。堤防の下の道路を学校帰りの二人の女の子が歩いていた。名前は水無月かなで、西条明音といい、二人とも同じ中学の三年生で、二人とも仲が良く、いつも一緒だった。いつもなら二人のほかに朝比奈雅、雅の双子の弟の彼方も一緒なのだが、雅と彼方は特別補習授業があったので、まだ学校にいた。

04-41-09-1.png

「かなでちゃん、もうすぐ中学も卒業だね。なんだか寂しいな」
「明音ちゃん、そんな事無いよ。明音ちゃんもアメリカ留学から帰国してきたし、雅と彼方も含めて、私たちみんな揃って同じ高校に決まったんだし、またみんな一緒なんだよ。寂しくなんかないよ」
「うん。またみんな一緒なんだね・・ 」
 同じ時刻、二人がいた道路のすぐそばの堤防の川側の道路で、恐ろしい事が起きていた。若い男がジョギングしていたところ、突然ネオ‐ブラックリリーのセンザンコウ魔人が地中から出てきて、男の前に立ち塞がったのだ。
「アババババーッ」
「な、何だお前は!?」
「俺か? 俺様はネオ‐ブラックリリーの改造人間。センザンコウ魔人だ」

04-41-10.png

「な、何だって!?」
「おとなしく俺と一緒に来い!」
 男は逃げ出そうとしたが、男の後ろには数人の戦闘員がいた。
「馬鹿め。逃げられはせん」
「ワーッ!! た、助けてくれえーっ」
 男の声は、堤防を挟んだ反対側の道路にいた、かなでと明音にも聞こえた。
「かなでちゃん、何だろう今の声」
「明音ちゃん、行ってみよう」
 かなでと明音は堤防の斜面を上がっていき、堤防の上に出た。二人は川側の道の上でセンザンコウ魔人に襲われる若い男の姿を見た。センザンコウ魔人は男の顔めがけてガスを発射した。男は叫ぶ間もなくそのまま仮死状態になってその場に倒れた。
「ざまぁみろ。おい! こいつを連れて行け」
 戦闘員たちが仮死状態になった男を抱えていった。
「キャアーッ」
 明音が思わず叫んでしまい、声を聞いたセンザンコウ魔人は二人の方を向いた。
「見たな!!」
 かなでと明音は魔人に背を向けて一目散に逃げ出したが、かなでは斜面の上で転んでしまい、センザンコウ魔人に追いつかれて捕まって、羽交い絞めにされた。
「やだあーっ!  助けて・・ 助けてえーっ」
 そこへ数人の戦闘員がやってきた。
「このガキを連れていけ」
「イーッ」
 一方、逃げ切って道路に下りてきた明音は、あたりを見回した。そこへ巡回中のパトカーがやってきて、明音はパトカーを止めた。
「大変なんです。助けて。助けてください」
「どうしたんだね」
「化け物が・・ 化け物が友達をさらっていったんです」
「何? 化け物? 君、悪戯はダメだよ」
「ふざけるのも程々にしなさい」
「ふざけてないです。嘘じゃないんです。お願いです。助けて」
「いい加減にしないか!! 我々は忙しいんだ」
 警官は怒り出し、パトカーは明音の傍から走り去っていった。
「どうしよう・・・ 」
 明音は泣きそうになった。そこへ堤防の方から戦闘員の集団がやってくるのが見え、明音はその場から駆け出した。そして今まで明音がいた場所に、センザンコウ魔人が戦闘員を引き連れてやってきた。
「くそっ。どこへ逃げやがったんだ。早く探せ!」
「イーッ」
 センザンコウ魔人と戦闘員は自分たちがやってきた方へと逆戻りして走り去っていった。道路わきのゴミ集積所の中に、ゴミに混じって隠れていた明音は、周囲に誰もいなくなったのを見て、集積所の中から出た。向こうの方から二台のバイクが近づいてくるのが見えて、明音は道路に飛び出し、両手を広げて叫んだ。
「助けて! 助けて」
 二台のバイクは明音の前で停まった。一台は聖奈子が乗っていて、もう一台は美由紀が乗っていた。美由紀が乗っていたのは原付バイクで、最近原付免許を取った美由紀は、原付バイクを買っていたのだ。聖奈子は用事があって美由紀の家へ行き、美由紀と一緒にANGELへ向かう途中だった。聖奈子は明音の顔色を見て、只事ではないと直感した。
「どうしたの君? 顔が真っ青だよ」
「化け物が・・ 全身が鱗のお化けが出て、友達をさらっていったんです」
「え?? 鱗?・・・化け物?」
「聖奈子。またネオ‐ブラックリリーが出たんだわ」

 数分後、聖奈子と美由紀は明音を連れて、堤防の上にいた。
「ここです。ここで若い男の人が化け物にやられて、友達が捕まっちゃったの」
 明音は泣きそうな声で聖奈子と美由紀に訴えた。その時聖奈子は斜面の上に何かが落ちているのを見つけ、美由紀は堤防の下でスニーカーが落ちているのを見つけて、それぞれ落ちていたものを拾ってきた。
「スニーカーはやられた男の人の物のようだわ」
「こっちは携帯電話」
「それ・・ かなでちゃんの携帯・・ 」
「お友達の携帯なの? お友達の名前はかなでちゃんっていうのね」
「はい」
 聖奈子は明音に携帯電話を渡すと、明音に聞いた。
「君、名前は?」
「西条明音です」
「明音ちゃん。さらわれた友達は必ず助けてあげるから、あたしたちと一緒に来て」

04-41-11.png

 三人は堤防から急いで道路に降りると、聖奈子は明音にヘルメットを渡して後ろに乗せ、美由紀と一緒に発進してその場から急いで走り去った。

      *      *      *      *

 同じ頃、別の場所でも事件が起きた。絵里香が帰宅して着替えて、再びANGELへ行こうとして家を出た時、孝一がバイクでやってきた。
「絵里香。丁度いいタイミングだったぜ。お前を迎えに来たんだ」
「タイミングって、何かあったの?」
「ネオ‐ブラックリリーが出たんだ。美由紀さんから電話があって、城間市の新間川の堤防で奴等の化け物が人をさらったって。今、二人ともANGELへ向かってる」
「えっ?」
「絵里香、早く乗れ」
 孝一は絵里香にヘルメットを渡すと絵里香を後ろに乗せて、バイクを発進させた。そしてANGELへ向かう途中、緑ヶ丘公園から若いカップルが道路に飛び出してきて、孝一はバイクを停止させた。孝一はバイクから降りると、カップルに向かっていこうとした。
「何やってんだ! 危ねえじゃねえか!!」
「待って孝一。あの二人、様子が変だよ」
 絵里香はヘルメットを脱いでバイクから降りると、カップルに向かって駆け寄っていった。
「何かあったんですか?」
「かか・・ か、怪物・・ 」
「怪物だって?」
「怪物が・・・・ 公園にいる人たちを次々と襲って、殺しているんです」
 絵里香はその話を聞くや、何も言わずに一目散に公園の中へ飛び込んでいった。
「絵里香! 待てよ」
 孝一も絵里香の後を追った。
 公園内のほぼ中央にある噴水の所まで来たとき、絵里香の周りに戦闘員が奇声を上げながら次々と姿を現し、続けてクマ魔人が出てきた。
「出たわね。ネオ‐ブラックリリーの化け物! お前は確かやられたはずの・・ 」
「ベーアーッ! 俺様は大首領様の魔力で生き返ったのだ」
「今度は何を企んでるの!?」
「やかましい! そんな事教える必要はない。かかれえっ」
 戦闘員が絵里香に襲いかかってきて、絵里香と格闘になった。絵里香は戦闘員を二人ほど倒したところでジャンプし、空中で変身して着地した。
「炎の戦士。エンジェルレッド」

04-41-12.png

04-41-13.png

「何を小癪な。者ども。小娘をやっつけろ!」
 戦闘員たちはクマ魔人とともに絵里香の周りを囲み、それぞれがスプレーを持って構えた。
「(あのスプレーは一体・・ )」
「ヤレッ!」
 戦闘員が一斉にスプレーを噴射した。絵里香はジャンプしてガスを避け、噴射されたガスはそれぞれ対面にいた戦闘員にかかり、戦闘員は呻き声を上げて全てその場に倒れた。そしてクマ魔人にもガスがかかった。
「し・・ しまった・・ 」
 クマ魔人は慌てて容器を取り出して、中から薬のようなものを出すと、それを自分の口の中に入れた。絵里香は着地すると、クマ魔人に向かって行って組み付き、クマ魔人が持っていた薬入りの容器を奪い取った。
「おのれ小娘!!」
 クマ魔人の蹴りが絵里香にヒットし、絵里香は反動でボールのように跳ねて地面を転がった。クマ魔人は絵里香に向かって突進してきたが、そこへ孝一が駆けてきて、持っていた棒切れをクマ魔人に向かって投げつけた。クマ魔人は走りながら棒切れを手で払い落としたが、足に棒が引っかかって、もんどりうってその場に転び、頭を地面に突っ込んだ。孝一は絵里香の傍へ来ると、倒れていた絵里香を抱き起こした。
「絵里香! 大丈夫か!?」
「孝一。危ないからさがっていて」
 絵里香は立ち上がるとブレードを出して身構えた。
「畜生!! 覚えていろ。今度あったときは必ずぶっ殺してやる」
 クマ魔人は絵里香に背を向けて逃げ出し、そのまま消えた。絵里香は変身を解き、孝一は付近に散らばっているスプレーの缶を見つけ、ひとつ拾ってきて絵里香の前に差し出した。
「絵里香。何だよこれ・・」
「分からないわ。私が化け物から奪ったこれと、何か関係があるのかもしれない」
 絵里香の右手には、クマ魔人から奪った薬入りの容器が握られていた。
「孝一、早く行こう。このスプレーの中身と、この薬を美紀子さんに調べてもらおう。う・・・」
 絵里香は孝一に寄りかかり、孝一は慌てて絵里香を支えた。
「絵里香、どうしたんだ!」
「さっきやつに蹴られた時、ダメージを受けたみたい・・ 痛たたっ・・ 」
「しっかりしろ。とにかくANGELへ行くぞ」
 絵里香は孝一に抱えられながら、公園の外へ向かった。

      *      *      *      *


(14)04-41-14.png

04-41-15.png

04-41-16.png

 明音を連れた聖奈子と美由紀はANGELに着くと、扉を開けて店内に入った。すると正面のテーブルを囲んで座っている、美紀子と瑞樹の姿が目に入った。そして隣のテーブルには雅と彼方が座っていた。雅と彼方は、学校を出たときに明音からの電話でかなでが誘拐されたことを知り、ANGELにやってきたのである。明音は雅の姿を見ると駆け出し、雅に飛びついてそのまま縋るように抱きついて泣き出した。
「雅ちゃん・・ かなでが・・ かなでちゃんが・・ 」
 雅は明音を無理矢理引き離して言った。
「明音、落ち着いて。もう知ってるから。かなでは紅林さんが必ず助けてくれるって言っているんだから大丈夫よ」
 美由紀は店内を見回し、絵里香がいないのに気付いて、佐緒里に聞いた。
「佐緒里ちゃん、絵里香は?」
「孝一さんが迎えに行きました。そろそろ来ると思います」
 美由紀は聖奈子と一緒に空いているテーブルに座った。
「この雰囲気・・ ただ事じゃないわね」
「うん・・ ネオ‐ブラックリリーがまた何か企んでいるんだわ」
「二人とも。絵里香が来たら詳しい話をするから、それまで待っていて」
「分かりました」
 聖奈子が返事をすると同時に、外でバイクのエンジン音がした。
「絵里香が来たみたい・・・ 」
 扉が開いて、孝一に抱えられた絵里香が入ってきた。それを見て聖奈子と美由紀が絵里香に駆け寄り、孝一と一緒に絵里香を支えた。
「絵里香どうしたのよ」
「しっかりして」
 絵里香の代わりに孝一が返事をした。
「奴等の化け物が出たんだ。絵里香はそいつと戦ってやられたんだ」
「ええっ!!? 他にも奴等の魔人が?」
「何だって? 他にも・・・ って事は・・ 」
「とにかく絵里香をこっちへ」
「よし。ゆっくりと、静かに座らせるんだ」
 絵里香は孝一と、聖奈子、美由紀に支えられながら、椅子に座った。美紀子は絵里香が持っていたスプレー缶と容器を見て、絵里香に聞いた。
「絵里香、それは何?」
「美紀子さん、これは奴等が持っていたものです。大至急調べてくれませんか?」
「分かったわ」
 美紀子は絵里香からスプレー缶と容器を受け取ると、奥の部屋へ持って行った。一方、落ち着きを取り戻した明音は、ようやく周りの雰囲気に慣れてきた。
「そうだ・・ そういえば・・ ねえ、瑞樹ちゃん。どうしてここにいるの?」 
 瑞樹はかなでと同じ芸能事務所の先輩後輩の関係で、明音はかなでの紹介で瑞樹と知り合っていたのだ。
「明音さん。うちの事務所の先輩で、ナッキーさんの事知ってますよね?」
「うん。かなでちゃんと一緒に『世界の果てまでGO! GO! GO!』に出てる人でしょ?」
「そう。そのナッキーさんから、ここのオーナーの紅林さんへの依頼なのよ。行方不明になったセンザンコウを探してほしいって。ただ、ナッキーさんがどうしても用事があって来れないから、それで私がナッキーさんの手紙を持って、ここに来たってわけ」
「センザンコウ・・・ あーっ!!」
「何よ明音。いきなり大声出して」
「さっき見た化け物は、何処かで見たことあると思ったら、センザンコウそっくりだったわ」
「化け物って・・ もしかしてかなでをさらっていったって奴か?」
 横から彼方が話しかけてきた。
「明音、かなでは一体何処へ連れて行かれたんだ。おい! 知ってるなら教えてくれよ」
 彼方はガラにも無く明音に食って掛かった。それを雅が止めに入った。
「彼方、落ち着いて。紅林さんが探し出して助けてくれるって言ってるんだから」
「そんな事言ったって・・ 」
「彼方!! 落ち着けッたら!!」
 バシイッ!!
 雅が彼方の頬を引っ叩いた。彼方は椅子に座るとそのまま俯いてしまった。
「彼方、叩いてゴメンね。私だって泣きたいのを我慢してるのよ。とにかく落ち着いてよ」
 彼方は無言のまま首を縦に振った。
「一体何の騒ぎなの?」
 美紀子が部屋から店内に戻ってきた。両手にはさっき絵里香から受け取ったスプレー缶と容器があった。美紀子は絵里香の前に座ると、スプレー缶と容器を置いた。
「スプレーの中身は液体ガス。調べてみたら成分の中に、生き物の脳の働きを弱める物質が含まれていたわ。このガスを浴びると仮死状態になってしまうのよ」
「ええっ!? そうか・・ それでガスを浴びた戦闘員がみんな倒れたんだわ」
「それからこっちの容器に入っていたのは、スプレーの中に入っているガスの成分を分解する、いわゆる解毒剤よ」
「それであの魔人は、自分がガスを浴びても大丈夫なように、これを持っていたのか」
 聖奈子と美由紀も話に混じってきた。
「つまり、奴等はこのガスを使って人間誘拐作戦を企んでいるって事か」
「それで最近失踪事件が続いているのね」
「何が目的なんだろう」
「これだけ大量の人を拉致するって事は、改造人間用・・・ ってところかな」
「改造人間!?」
 俯いていた彼方がビックリしたように顔を上げた。
「嫌! いやだ。かなでちゃんが改造人間にされちゃうなんて。そんなの嫌だ!」
 明音が突然叫んだと思うと、そのままテーブルに突っ伏して泣き出し、傍にいた雅と彼方、瑞樹が明音を宥めた。
 美紀子は瑞樹が持ってきた手紙を開くと、椅子に座ってみんなを傍に寄せた。
「瑞樹ちゃんが持ってきたナッキーさんの手紙の内容と、今度の人間大量失踪事件は、私の感だけど、何処かでつながっているみたいなのよ」
「どういう事ですか、美紀子さん」
「初めに起きた事件から整理していくわ。センザンコウが何者かの手によって強奪され、貨物船の船員が二人行方不明になって、ひとりは水死体で発見された・・ しかし、死体で発見された船員は解剖の結果、溺死ではなくて、何者かに殴り殺されてから海に捨てられているのよ。殴った凶器は大型のハンマーのようなものらしいわ」
 美紀子はさらに話を続けた。
「強奪されたセンザンコウは、ナッキーさんが番組で使う事になっていて、そのために送られてきたものなのよ。それで私の所に捜査依頼が来たというわけなの。そこにいる明音さんが見たというセンザンコウのような形をした化け物は、恐らく、強奪したセンザンコウから改造したものに間違いないわ」
 美紀子の話を聞き、絵里香たちはもちろん、他のみんなもゴクンと生唾を飲み込んだ。
「それからもう一つ・・ 奴等は複数の魔人を使っているみたいだけど、恐らく今度の作戦の内容は大がかりなものに間違いないわ」
「つまり、一気に作戦を進めているって事?」
「そういう事になるわ。複数の魔人を複数の場所で使えば、私たちの戦力を分散させ、私たちの行動を撹乱させることが出来るし、一度に大量の人たちを誘拐する事が可能なのよ。だから奴等の作戦を潰して挫折させるためには、奴等を一箇所に集めなければダメよ」
「つまり・・ 奴等のアジトを突き止めて潰すってことね」
「そういうことよ絵里香。アジトを潰せば、奴等は私たちを抹殺するために、必ず集まってくるわ」
「でも・・ その肝心要のアジトが何処にあるか分からないわ」
 美由紀が困ったように言った。
「佐緒里」
「はい叔母様」
 佐緒里は地図を持ってきて、テーブルの上に置くと、地図の中の1点を指差した。
「この辺りに奴等のアジトらしきものがある。でも、アジトというよりはかなり規模の大きな、基地のようなものよ」
「意外と人目につく場所にあったのね。確かこの辺りは・・ 」
「昔紡績工場があった場所よ。今は廃墟になっているはずだわ」
 その時傍で話を聞いていた瑞樹が、興味深そうにさりげなく聞いてきた。
「あの・・ 何故そんな事が簡単に分かるんですか? それに、前々から気になってたんだけど、あなたたちは一体何者なんですか?」
 美紀子が答えた。
「一口に言って、正義の味方・・ そう思ってくれれば良いわ。私たちは、この子たちの友達をさらっていった奴等と戦っているのよ」
「え? すると・・ あなたたちは、聖光美少女戦士ユリのようなヒロインだって事?」
 瑞樹がユリの事を持ち出したのは、自分自身がユリのドラマのレギュラー出演者であり(第40話参照)、悪の組織と戦うヒロインの事について、ある程度の知識があったからである。しかも自分自身がネオ‐ブラックリリーを見ているし、実際に捕まって酷い目にあっている。それに絵里香たちに助けられていたので、美紀子や絵里香たちが、ユリとだぶって見えていたのだ。
「そんなところね・・ でも、この事は絶対秘密にして。お願いよ」
「はい・・ 」
 瑞樹は納得したように返事をしたが、まだ半信半疑だった。傍らでは絵里香たちが真剣な顔つきで地図を囲んでいた。

     *      *      *      *

「佐緒里ちゃんが言っていたのはあの建物ね・・・」
「佐緒里ちゃんにはいくら感謝しても足りないくらいだわ。こうやって奴等のアジトや秘密基地を探り当ててくれるんだから」
 絵里香たちは佐緒里の特殊能力のおかげで、ネオ‐ブラックリリーの秘密基地にたどり着くことが出来た。その佐緒里は美紀子と一緒に、絵里香たちの後方で待機していた。絵里香たちの視線の先には、廃墟同然の閉鎖された工場があった。絵里香たちは物陰から建物の周囲を見回し、聖奈子が何かの気配を感じて、気配がした方向を見た。
「絵里香、美由紀。あれを見て」
 絵里香たちの視線の中に、周囲を見張っているネオ‐ブラックリリーの戦闘員がいた。
「奴等だ・・ これで確実ね・・・」
「聖奈子、美由紀、一旦戻るわよ」
「オッケー」
 絵里香たちは自分たちがいる場所から、美紀子と佐緒里がいる場所へと戻ろうとした。その時聖奈子は人の気配を感じて、気配がした方を向いて身構えた。
「どうしたの聖奈子」
「誰かいる・・ そこにいるのは誰!? 出てきなさい」
 すると繁みの間から明音が出てきた。

04-41-17.png

04-41-18.png

「あなた・・・ 明音ちゃん。どうして来たのよ」
「ごめんなさい。どうしてもかなでちゃんが心配で・・」
「バカ! 何考えてんのよ。それにそんな恰好で・・ 奴等に見つかったらどうすんのよ!」
「聖奈子ダメだよ。そんなに怒っちゃ。明音ちゃんが泣きそうだよ」
 美由紀に言われて聖奈子は明音を見た。確かに泣き顔だった。
「ゴメンね明音ちゃん。とにかくあたし達と一緒に来て」
 聖奈子は明音の手を引いて駆け出し、絵里香と美由紀が後に続いた。

      *      *      *      *

 一方、こちらはネオ‐ブラックリリーの基地の中である。仮死状態にされて貯蔵されていた人たちの一部が蘇生され、実験室に集められていた。集められた人たちは男と女が入り混じっていて、既に予備注射によって無気力状態であり、抵抗の意思はまるで無く、整然と並んでいた。そこへかなでが戦闘員に連行されて入ってきた。捕まったかなでは、さっきまで地下牢の中に監禁されていたのだが、ゼネラルダイアの嗜好で、地下牢から出されて連れてこられたのだった。

04-41-19.png

「やめてよ! はなして! 汚らしい手で触らないでよ」
 かなでは後ろ手に縛られ、両腕を戦闘員によって押さえつけられながらも、毅然とした表情でゼネラルダイアを見据えた。
「なかなか生きの良さそうな小娘だな」
「あなたが親玉なの!?  私はお前達みたいな奴等なんかには絶対負けないわ」
「ふん・・ 生意気な。随分といい度胸をしているではないか」
 ゼネラルダイアはそう言いながら、かなでの顎を小突いた。そして実験用の人たちを指差しながら、戦闘員に命令した。
「こいつらを順番にテストしろ。この小娘に我々の恐ろしさを見せてやるのだ」
「イーッ」
 まず一人目の男が台の上に四肢を拘束されて寝かされた。
「実験開始!」
 ゼネラルダイアの声で、戦闘員が台の横にあるスイッチを入れた。男の体に電流が流れ、男は苦痛に絶叫して悶絶した。かなでは思わず目を瞑って顔を背けた。徐々に電圧が上がり、男は体を大きく仰け反らせたが、電流の苦痛に耐え、電流が止められた。
「こいつは合格だ。洗脳後にトレーニング施設へ回せ」
「イーッ」
 男は拘束を解かれて、戦闘員に室外へ連れ出された。続いて2人目の男が拘束され、同様の実験が行われたが、あっというまに感電死した。
「不合格! 廃棄処分にせよ」
 実験室に連れ込まれた人たちが次々と電流による実験で、絶叫と悶絶を繰り返し、約八割の人は感電死して廃棄処分にされた。その度にかなでは顔を逸らして目を瞑り、凄惨な状況に耐えていたが、次第に両脚がガクガクと震え始め、全ての人の実験が終わった頃には、その場に座り込んでしまっていた。
「ふん・・ 突っ張っていたわりには、やはり小娘だな。少しは我々の恐怖が分かっただろう」
 そこへ戦闘員の一人が報告に来た。
「イーッ。ゼネラルダイア様。基地の外をうろついている怪しいやつをカメラが捕らえました」
「何だと? エンジェルスか?」
「違うようです。そこにいる小娘と同じくらいの年のやつでした」
「分かった。すぐ司令室へ行く。こいつを連れてこい」
「イーッ」
 かなでは戦闘員に室外へ連れ出され、ゼネラルダイアとともに司令室へ向かった。

 指令室の扉が開き、ゼネラルダイアが入ってくると、室内にいたセンザンコウ魔人と戦闘員が一斉に敬礼した。
「カメラに映っていたのは何だ」
「イーッ。これです」
 戦闘員は再生された映像をゼネラルダイアに見せた。そこには基地の近くの林の中の道を歩いている明音の姿が映し出されていて、かなでは叫びそうになったのをグッとこらえた。センザンコウ魔人が、モニターの前にやってきた。
「ゼネラルダイア様。こいつは、そこにいる小娘と一緒にいた奴です」
「何? するとこの小娘の仲間か」
「ゼネラルダイア様。如何いたしましょう。こいつは我々の姿を見ています。もしかしたら、エンジェルスの小娘どもと接触している可能性も・・・」
「追跡して捕えるのだ」
「イーッ。既に一隊が小娘の後を追っています。捕まえるのも時間の問題です」
 かなでは驚いたように叫んだ。
「やめて。お願い。明音には手を出さないで」
 かなでは慌てて哀願したが、ゼネラルダイアは平然と言ってのけた。
「黙れ小娘。我々の秘密を知った者は全て死あるのみなのだ」
「小娘小娘って気安く言わないで。私にはちゃんと水無月かなでって名前があるのよ」
「うるさい!」
 バシイッ!
 ゼネラルダイアの平手がかなでの頬にヒットした。かなでは顔を殴られた屈辱から涙を浮かべながらも、ゼネラルダイアを睨み付けて言った。
「あんた! それでも人間なの!?」
 ゼネラルダイアは含み笑いをしながら返事をした。
「愚か者め。生憎私を含めたここにいる者たちは、みな人間ではないのだ。残念だったな」
 ゼネラルダイアはかなでを小突きながら、さらに言った。
「かなでとかいったな。お前は案外と利用出来そうだ。お前を餌にしてエンジェルスの小娘どもをおびき出してやる」
「・・・・」
「この小娘を処刑場へ連行しろ。出来るだけ目立つように晒すのだ」
「イーッ」
「センザンコウ魔人。お前も行け」
「アバババーッ。かしこまりました」
 戦闘員がかなでを指令室から連れ出した。さらにゼネラルダイアは戦闘員に命令した。
「作戦中のクマ魔人とイカ魔人を呼び戻せ。基地の周辺の警戒を厳重にするのだ」
「イーッ」

     *      *      *      *

 偵察から戻った絵里香たちは、明音を連れて美紀子と佐緒里が待機している場所まで来ていた。そこには美紀子と佐緒里のほか、雅と彼方もいた。みんなかなでが心配で、ついてきていたのだった。
「美紀子さん。間違いなく奴等の基地がある」
「警戒はかなり厳重よ」
 その時佐緒里が何かを感じて、絵里香たちに言った。
「静かに・・・ 何かやってくるわ。みんな隠れて」
 絵里香たちは反射的に、近くにある木や岩の陰に身を隠した。しばらくすると、ネオ‐ブラックリリーの戦闘員が姿を現し、近づいてきた。
「奴等だ・・ どうして・・」
「きっと明音ちゃんが奴等に見つかっていたんだわ」
「ごめんなさい・・ 私のために」
 明音が泣きそうな顔で言うので、傍にいた聖奈子が宥めた。
「とにかく隠れていて。絶対に出ちゃダメよ」
「聖奈子、美由紀。やつらがここまで来たら一気に飛び出して仕留めるわよ」
「分かった」
 戦闘員がすぐ近くまでやってきた。
「今だ!!」
 絵里香が真っ先に飛び出して戦闘員の一人に組み付き、続いて聖奈子と美由紀もそれぞれ戦闘員に組み付いて格闘戦になった。そこへ剣と楯で武装したクマ魔人が現れた。
「出たわね化け物!」
「ベーアーッ。お前ら小娘どもを始末するためには何度でも生き返ってくるのだ」
「だったら何度でも成仏させてやるわ!」
 絵里香と美由紀はエンジェルに変身して、クマ魔人に向かって身構えた。そこへ後ろから突然触手のようなものが飛んできて、絵里香と美由紀の首に巻きついて締め上げてきた。
「ぐ・・ 」
 絵里香と美由紀は巻きついた触手を振りほどこうとしてもがいた。触手の正体はイカ魔人の腕だった。イカ魔人は姿を現すと、絵里香と美由紀に向かって息巻いた。
「ゲーゾーッ。やっぱり嗅ぎ付けてきておったか。このまま絞め殺してやる」
「やばい。絵里香と美由紀が危ない・・ 」
 聖奈子は自分の周りにいた戦闘員を倒すと、両手を胸に当てて叫んだ。傍には雅と彼方、明音がいたのだが、自分の秘密を知られる事を心配している余裕は無かった。
「エンジェルチャージ!」
 聖奈子の体がまぶしい閃光に包まれ、近くにいた三人は眩しさに目を覆った。光が消えたとき、そこにはエンジェルブルーに変身した聖奈子が立っていた。
「え・・ み・・ 聖奈子さん・・ 」
 聖奈子のうしろでは、変身した聖奈子に驚いた三人が呆然として聖奈子を見つめていた。
「こっちへ来ちゃダメよ。あたし達が君達を絶対に守ってあげる。友達のかなでちゃんも絶対に助けてあげるから」

04-41-20.png

「は・・ はい (聖奈子さんって凛々しい・・ カッコイイ・・)」
 明音は聖奈子を見つめながら、そんな事を呟いていた。聖奈子はソードと楯を出すと、ピンチになっている絵里香と美由紀に向かって駆けて行った。
 絵里香と美由紀は首に巻きついたイカ魔人の腕を振り解こうと必死だった。が、絞めつけがさらに強くなり、二人とも気が遠のき始めた。
「アイギスカッター!」
 聖奈子が投げた楯が回転しながら飛んできて、絵里香と美由紀を締め付けていたイカ魔人の腕が切断された。
「ゲーゾーッ!! う、腕がもげたぁ」
 楯は聖奈子の手に戻り、聖奈子はイカ魔人に向かって捲くし立てた。
「くたばれ化け物! アクアストーム!」
 聖奈子はイカ魔人めがけてソードを投げつけた。ソードは狙いすましたようにイカ魔人の腹部に突き刺さり、イカ魔人は悶絶しながら氷の塊になって砕け散った。成り行きを見守っていた明音は、聖奈子がイカ魔人を倒したのを見て歓声を上げた。
「お姉さまーっ! かっこいい! 頑張れえーっ」
「お・・ お姉さま・・ って」
 聖奈子は思いも寄らない声援に、唖然として明音の方を見た。すると自分に向かって大きく手を振っている明音の姿が見えた。そこへクマ魔人が襲いかかってきた。
「キャッ」
 聖奈子は不意を突かれて態勢を崩し、クマ魔人が振り下ろしてきた剣を避けようとしてバランスを崩して地面に倒れた。そこへクマ魔人が剣を突いてきた。聖奈子は間一髪で体を捻って避け、今まで聖奈子がいた場所に剣が突き刺さった。
「くそっ! 今度こそぶっ殺してやる」
 クマ魔人が突き刺さった剣を抜いて身構えた。
「聖奈子が危ない!」
 態勢を立て直した絵里香と美由紀はクマ魔人めがけてダッシュし、ジャンプした。
「ダブルエンジェルキック!」
「ベーアーッ」
 クマ魔人は反動で吹っ飛ばされ、そのまま地面に激突して一回転した。
「おのれ小娘!」
 クマ魔人は起き上がると突進の構えを見せた。絵里香たちはクマ魔人に向かって攻撃態勢をとると、武器を振り上げた。
「トリプルエンジェルスマッシュ!」
 三つのエネルギー波が球体となり、それが一つになってクマ魔人に吸い込まれた。
 ドオォーン!!!
 クマ魔人は大爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「やったぁ!」
 歓声を上げながら、明音を先頭に雅と彼方が絵里香たちの傍へ駆け寄ってきた。聖奈子は慌てて三人を制した。
「こっちへ来ないで! まだ終わっていないわ」
 言い終わると同時に、絵里香たちの周辺で次々と爆発が起こって地面が吹き上がり、絵里香たちは身を竦めた。
「みんな大丈夫!?」
 絵里香が周囲を見ながら叫んだ。駆け寄ってきた三人は、聖奈子と美由紀が庇っていたので無事だった。その時得体の知れない物体が次々と飛んできて、絵里香たちの周辺の地面に次々と突き刺さった。さらにもう一回・・・
「危ない!」
 聖奈子は楯を翳して、飛んできた物体を楯で跳ね返した。飛んできたのは鱗の形をした手裏剣だった。
「チキショー! 何処から攻撃してくるんだ」
「聖奈子! あそこよ」
 美由紀が指差した方向に、センザンコウ魔人が立っていた。そしてそのそばには・・・
「エンジェルの小娘ども!! これを見ろ」

04-41-21.png

 センザンコウ魔人のそばには、晒し台に立てられた丸太に縛り付けられるかなでの姿があった。センザンコウ魔人は体の鱗を数枚取ると、かなでを縛り付けている丸太めがけて次々と投げつけた。鱗一枚一枚が鋭い切れ味の刃物になるのである。鱗はかなでの頭上すれすれを通過して次々と丸太に命中し、薄い輪切りになった丸太の破片が散らばって落ちてきた。
「嫌あーっ! かなでちゃん」
 明音は絶叫しながらそのまま失神し、倒れそうになったのを雅と彼方が支えた。センザンコウ魔人は地面に散らばっている輪切りの破片を指差して息巻いた。
「見たか。俺様の力を。少しでも近づいてみろ。今度はこのガキの体をこの輪切りの破片のようにしてやるぞ」
 そこへゼネラルダイアも姿を現した。
「エンジェルスの小娘ども。人質がいては手も足も出まい」
「卑怯者!」
「何とでもほざけ。センザンコウ魔人。小娘どもを皆殺しにしろ」
「アバババーツ。かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 絵里香たちは苦悩した。かなでを人質にとられては手も足も出せない・・
 
 その時、縛り付けられたかなでの周辺にいた戦闘員たちが、突然次々と倒された。驚いたゼネラルダイアはかなでの方を向いた。そこには美紀子とスカーレットエンジェルJrに変身した佐緒里がいて戦闘員と格闘していた。二人はセンザンコウ魔人と戦闘員たちが絵里香たちに気を取られている隙を突き、得意のテレポートで後ろに回りこんだのだ。佐緒里はかなでのそばにいた戦闘員を倒すと、かなでを縛り付けている丸太の後ろへ回ってロープを切り、かなでの手を引いて自分の後ろに下げた。
「かなでさん。もう大丈夫ですよ」
「あなたは一体・・ 」
「私はスカーレットエンジェルJr」
「スカーレット・・・ あなた・・・ もしかして佐緒里ちゃん? 佐緒里ちゃんでしょ?」
 かなでが佐緒里を知っている訳は、自分が出演している『世界の果てまでGO! GO! GO!』という番組で、一緒に出ているエモトアヤカ(第30話参照)の紹介で対面していたからである。それに佐緒里はかなでのファンだったのだ
「分かってしまったんですね。説明は後です。私と一緒に来てください」
 佐緒里はかなでの手を引いて駆け出し、美紀子のそばへ来た。美紀子はゼネラルダイアに向かって怒鳴った。
「ゼネラルダイア! お前の作戦もこれで終わりよ」
「何だとぉ!? おのれスカーレットエンジェル! センザンコウ魔人。片付けろ!」
「アババババーッ」
 センザンコウ魔人が襲いかかってきた。
「叔母様。かなでさんを頼みます」
「分かったわ。さ、こっちへ来て。あなたの友達があなたを心配して、みんな来ているのよ」
 美紀子はかなでと一緒にその場から逃げ、追いかけようとした戦闘員の前に佐緒里が立ちはだかった。

04-41-22.png

「ここから先へは絶対に行かせない!!」
「何を小癪な。者ども片付けろ」
 ゼネラルダイアが戦闘員を煽りたて、戦闘員が一斉に佐緒里に向かってきた。佐緒里はブレードを出すと、襲いかかってくる戦闘員と戦った。その間に美紀子はかなでを連れてみんながいるところまで来た。
「かなで!」
 雅が真っ先にかなでに飛びつき、続いて彼方も飛びついた。美紀子は絵里香たちに向かって言った。
「みんな! ここは私と佐緒里に任せて、あなたたちは基地の仲へ突入して」
「分かりました。聖奈子、美由紀、行くよ」
「オーケー!!」
 絵里香たちはネオ‐ブラックリリーの基地へ向かって駆け出した。途中で何度か戦闘員が襲ってきたが、全て倒して基地の中へ進入した。
「小娘どもを追え!」
 センザンコウ魔人も戦闘員とともに絵里香たちを追った。

 基地の中に侵入した絵里香たちは、地下へ行く階段を見つけると、そこから中へ入て階段を降りた。長い廊下を用心しながら進み、やがて沢山の部屋がある場所まで来た。
「随分と扉が多いわね」
「ここには誘拐された人たちがたくさんいるはずよ」
「手分けして捜そう。美紀子さんが作った解毒剤があるから、助けられるわ」
 絵里香たちは自分たちの近くにある扉を片っ端から開けた。暫くして美由紀が何かを見つけた。
「絵里香、聖奈子。こっちだよ」
 美由紀の声に、絵里香と聖奈子が室内に入ってきた。その部屋の中にあるものを見て、3人ともギョッとした。室内には誘拐されたらしい多数の人が、仮死状態のまま男といわず女といわず整然と並べられていたからだ。
「ざっと20人くらいはいるわね・・・ 」
「これで全部なのかしら・・ 」
「とにかくこの人たちを蘇生させるのよ。聖奈子、美由紀、用意して」
 絵里香は美紀子から預かってきた解毒剤を、聖奈子と美由紀に分け、三人で手分けして、仮死状態の人たちに投与した。数分後、薬を投与された人たちが目を覚ました。
「あれ・・ ここは何処だ」
「俺達なんでこんな所にいるんだよ」
「確か私・・ 変な奴等に教われて・・」
 そんな事を口々に言い合い、傍に立っている絵里香たちに視線がいった。
「あなた方は一体・・ ??」
「みなさん。説明している暇はありません。早くここから逃げてください」
「出口はこっちです」
 居合わせた人たちは我先にと室外へ出て、絵里香たちの案内で出入り口へ向かって走り、外へ出た。そして美紀子の案内で安全な場所へと誘導された。絵里香たちは再び戻り、別の部屋も全て捜索した。
「他の部屋は誰もいないわ」
「さっきのあの部屋で全部だったみたいね」

04-41-23.png

「よし。基地を爆破するわよ」
「待ってました!」
「そうはさせんぞ」
 突然の声に絵里香たちが振り向くと、突然絵里香たちの前後に鉄格子が降りてきて、絵里香たちは完全に閉じ込められた。
「しまった!」
「アバババーッ。ザマァミロ小娘ども」
 センザンコウ魔人が姿を現し、鉄格子の外から絵里香たちを威嚇しながら言った。
「小娘ども。俺様の催眠ガスでお前達を仮死状態にし、改造人間用のモルモットにしてやる」
 センザンコウ魔人は口からガスを吐き出し、絵里香たちにガスがかかった。
「ゲホゲホ・・」
「く・・ 苦しい・・」
「聖奈子、美由紀、口をふさいで」
「そんな事をしても無駄だ」
 数分後には絵里香たちはその場に倒れた。
「よーし。やったぞ。小娘どもを生け捕りにしたぞ。鉄格子を開けて小娘どもを連れて行くのだ」
「イーッ」
 鉄格子があがり、戦闘員たちが気絶した絵里香たちを運び出そうとした。その時・・・

「エイッ!!」
 気絶したと思われていた絵里香が目を覚まし、仰向けになったまま戦闘員に向かって蹴りを入れた。戦闘員は反動で吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。続いて聖奈子と美由紀も目を覚まして立ち上がった。
「ば・・ 馬鹿な・・ 何故だ」
「お生憎様。私たちにはお前のガスは効かないのよ。美紀子さんが解毒剤を完成させているのよ。お前達の野望もこれまでよ」
「お・・ おのれ小娘ども。ものどもかかれ!」
 戦闘員が一斉に襲いかかり、絵里香たちと格闘戦になった。しかし居合わせた戦闘員は全て倒され、絵里香たちはセンザンコウ魔人に向かって身構えた。

04-41-24.png

「覚悟しろ化け物!」
「何を小癪な!」
 センザンコウ魔人は体の鱗を飛ばしてきた。聖奈子は素早く楯を出して鱗を跳ね返した。外れた鱗は近くの壁に次々と突き刺さり、金属製の扉にも突き刺さった。
「みんな気をつけて。やつの鱗は金属でも簡単に突き刺さるわ」
 センザンコウ魔人は次は口から長い舌を出して飛ばしてきた。
「危ない!」
 舌が扉に突き刺さって貫通した。美由紀がダッシュしてセンザンコウ魔人に組み付いたが、センザンコウ魔人は力任せに絵里香を引き離して突き飛ばした。
「キャッ」
 美由紀の体がボールのように飛んで、後ろにいた聖奈子と絵里香が絵里香を受け止めた。
「美由紀しっかりして!」
 センザンコウ魔人は絵里香たちを威嚇しながら体を丸め、ボールのようになって、絵里香たちに向かって勢いよく転がってきた。
「キャーッ!」
 絵里香たちは避ける事が出来ず、体当たりされて吹っ飛ばされ、床に叩きつけられた。
「痛たた・・・ 」
「チキショー。化け物め」
「聖奈子、美由紀。やつと戦うより、まず基地の破壊が先決よ」
「わ、分かった。とにかく司令室を捜さなきゃ」
「二人とも、タイミングを見計らって、そこにある部屋へ飛び込むわよ」
「オーケー」
「何をごちゃごちゃ言っているのだ。とどめをさしてやる。アバババーッ」
 センザンコウ魔人は再び体を丸めて、転がってきた。
「今だ!」
 絵里香たちは自分たちの真横にあった部屋の扉を蹴破り、部屋の中に飛び込んだ。
「し、しまった」
 標的を失ったセンザンコウ魔人はそのまま勢いよく転がっていって、突きあたりにあった部屋の扉に激突して止まり、扉が衝撃で吹っ飛んで、中の部屋の様子が丸見えになった。その部屋こそ司令室だった。

 一方、外では佐緒里と美紀子がかなでたちを庇いながら、ゼネラルダイアと戦っていた。ゼネラルダイアは電光剣を抜くと、二人に向かって斬りかかっていった。佐緒里がブレードで電光剣を受け止めると、電流がバチバチっと迸った。
「キャーッ!」
 佐緒里は電撃で体が吹っ飛び、悲鳴とともに地面を一回転して転がった。
「このガキめ。私に勝てるとでも思ってか! とどめをさして地獄へ送ってやる」
 ゼネラルダイアは電光剣を振り上げると、佐緒里に向かって斬りかかった。
 ガキィーン
 金属音が響いて、ゼネラルダイアの電光剣が跳ね返された。美紀子がスティックで跳ね返したのだ。
「ゼネラルダイア! 野望を捨てなさい」
「何を小癪な!」
 美紀子はスティックを剣に変えると、ゼネラルダイアに切っ先を向けて身構えた。佐緒里も立ち上がってブレードを手に、ゼネラルダイアと対峙した。
「今頃絵里香たちが基地を破壊しているわ。お前の作戦もこれで終わりよ。観念しなさい」

04-41-25.png

「黙れ! ネオ‐ブラックリリーは不滅なのだ。アジトや基地の一つや二つ潰されても、大勢に影響は無いのだ。いつか必ず決着をつけてやる」
近くにいた戦闘員を全て倒されたゼネラルダイアは、自分の不利を悟ってか、マントを翻すとその場から消えた。

      *      *      *      *

 センザンコウ魔人が扉を壊したおかげで、絵里香たちは司令室の場所を知る事が出来た。司令室に突入した絵里香たちは、向かってきた戦闘員と格闘の末に排除して、指令室内にある機材めがけ、手当たり次第にエネルギー波を放った。

04-41-26.png

04-41-27.png

04-41-28.png

「ファイヤースマッシュ!」
「アクアスマッシュ!」
「ライトニングスマッシュ!」
 室内のあちこちで爆発が起き、ついにメインコンピューターが紅蓮の炎を上げ、ついに基地の自爆装置が作動した。
「メインコンピューターが火を噴いたぞ」
「基地が爆発するぞ。逃げろ」
 周りにいた戦闘員たちが悲鳴を上げながら、次々と我先にと逃げ出した。センザンコウ魔人も丸めていた体を元に戻して逃げ出した。
「爆発する。早く逃げよう」
 絵里香たちは一斉に司令室から飛び出し、基地の外へ向かって逃げた。出入り口から外へ出た絵里香たちは、美紀子に向かって大きな声で叫んだ。
「早くここから離れて。基地が爆発するわ」
 声を聞いた美紀子だったが、突然小さい爆発とともに地鳴りがして、美紀子は近くにいたかなでたちや佐緒里に向かって叫んだ。
「もう間に合わない! みんなその場に伏せて!」

 やがて地鳴りがしてきて、かなでたちはその場に身を伏せ、美紀子と佐緒里も伏せた。やがて体に響くような激しい振動とともに、地面が吹き上がって大爆発が起き、基地にあった施設や建物が次々に吹っ飛んだ。数分後、爆発が収まって周囲に静寂が戻り、美紀子と佐緒里、かなでたちは伏せていた場所でそのまま立ち上がり、絵里香たちもゆっくりと立ち上がって周囲を見回した。
「聖奈子、美由紀、周囲を見張って。魔人はまだ近くにいるはずよ」
 絵里香が言うや否や、黒い影が頭上に迫って来たかと思うと、丸まった状態のセンザンコウ魔人が絵里香たちめがけて飛んできた。
「危ない!」
 絵里香たちは一斉に散開し、その真ん中にセンザンコウ魔人が落ちてきて、丸めていた体を元に戻した。
「おのれ小娘ども。皆殺しにしてやる」
 センザンコウ魔人は鋭い爪を振りかざしながら、絵里香たちに向かって突進してきて、一番近くにいた絵里香に向かって爪を振り下ろした。絵里香は間一髪で攻撃を避け、センザンコウ魔人の腕を受け止めた。センザンコウ魔人は絵里香に組み付き、そのまま取っ組み合いの格闘になった。パンチとキックの応酬を経て、センザンコウ魔人の長い尾が絵里香の両足を直撃し、絵里香は足払いにかけられた恰好でそのまま地面に倒された。
「グっ!」
 そこへセンザンコウ魔人の爪が絵里香の頭上から振り下ろされ、美由紀がバトンで受け止めて、センザンコウ魔人に蹴りをお見舞いした。センザンコウ魔人は一回転して地面を転がった。絵里香と美由紀の傍へ聖奈子が駆け寄ってきて、ソードと楯を手にセンザンコウ魔人に向かって身構えた。
「小娘ども。これでも喰らえ!」
 センザンコウ魔人が鱗を立て続けに飛ばしてきて、聖奈子の楯に次々と当たって跳ね返った。
「おのれ!」
 センザンコウ魔人が凄い形相で突進してきた。
「アクアスマッシュ!」
 聖奈子はソードを振り下ろし、エネルギー波を放った。エネルギー波は突進してきたセンザンコウ魔人にそのまま命中し、センザンコウ魔人の体がよろけた。
「今だ! 絵里香、美由紀!」
 聖奈子はソードを翳し、絵里香と美由紀もそれぞれ武器を手に身構えた。
「トリプルエンジェルスマッシュ!!」

04-41-29.png

 エネルギー波が大きな球体となってセンザンコウ魔人に吸い込まれた。
「アバババババーッ」
 センザンコウ魔人は絶叫しながら光に包み込まれ、そのまま地面に倒れた。そして光が消えたとき、そこには気絶した一人の男と、その傍を歩き回っている一匹のセンザンコウがいた。
「どうなってるの・・ これ」
「どちらも元の姿に戻ったのよ」
 いつの間にか絵里香たちの傍に美紀子が来ていた。絵里香たちはきぜつしている男のそばへ行き、その姿を眺めた。
「この人・・ 行方不明になっていた貨物船の船員じゃないの」
「ネオ‐ブラックリリーはこの人と、そこにいるセンザンコウを使って改造魔人を作り出したんだわ。みんな、とにかく この人を運んで」
「はい」
 絵里香たちは変身を解くと、気絶している男を道路まで運んだ。そこへタイミング良く救急車がやってきた。絵里香たちが戸惑っていると、美紀子が説明した。
「こんな事もあろうかと思って、私が呼んだのよ」
 救急車が停止して、降りてきた職員に美紀子が何かを話し、職員達は気絶したままの男を救急車に乗せ、救急車はサイレンを鳴らして走り去っていった。
「さあ、私たちも帰るわよ。絵里香、聖奈子、美由紀。そこにいるセンザンコウを私の車に乗せるから手伝って」
「分かりました」
 絵里香はセンザンコウを捕まえると、抱きかかえて美紀子の車の荷物室に乗せた。助けられたかなでは他の三人とともに絵里香たちの傍にやってきた。
「みなさん。私の事助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ。お礼なんていいから」
「とにかく無事で良かったわ」
 明音が聖奈子の傍に寄ってきて、聖奈子の腕に自分の腕を絡めて、ギュッとした。驚いた聖奈子は明音の方を向いた。
「な、な、何よ明音ちゃん」
「聖奈子お姉様。凛々しい。素敵・・ 私と付き合ってください」
「ちょ・・ ちょっとやめて。離れて」
 聖奈子は顔を真っ赤にしながら明音を引き離すと、その場から逃げて距離を置いた。その時周りが急に薄暗くなり、絵里香たちは勿論、美紀子と佐緒里、かなでたちも辺りを見回した。
「何? 一体何なの??」
「みんな! 空を見て」
 空を見上げると、真っ黒い陰が現れ、それは人の形になった。
「何あれ・・」
 美紀子が絵里香たちに言った。
「ネオ‐ブラックリリーの大首領、クイーンリリーだわ」
「あれが大首領・・・ 」

04-41-30.png

「小娘ども! それにスカーレットエンジェル。この世界は必ず我がネオ‐ブラックリリーが征服する。そして、必ずお前達を皆殺しにする」
「クイーンリリー! 野望を捨てて地球を出て行け!」
「ワーッハッハッハッハッハ」
 大首領の笑い声とともに、その姿が少しずつ薄くなり、やがて消えて再びあたり一面が明るくなった。
「ネオ‐ブラックリリー・・・ 必ず倒してやる」
「あんな奴等にこの世界を蹂躙されてたまるものか」
「私たちの手でいつか必ず・・・ 」
 絵里香たちは拳を握りしめ、闘志を新たにするのであった。

      *      *      *      *

 ネオ‐ブラックリリーの改造魔人製造工場と訓練施設は、エンジェルスの三人によって破壊された。しかしネオ‐ブラックリリーの野望が潰えた訳ではないのだ。ネオ‐ブラックリリーは新たな改造魔人を差し向け、絵里香たちに挑戦してくるのである。負けるなエンジェルス!

 (つづく)



      -----------------------------------------------------

 次回予告
 第42話『伝説魔人の磁力攻撃』
高速道路を走っていた車が、突然空に舞い上がり、道路の脇にあった建物に激突した。さらに電車が突然線路から浮き上がったかと思うと、そのまま落下してきて地面に激突。そんな事件が繰り返して起こる。
 一連の事件はネオ‐ブラックリリーの新たな怪人。ツチノコ魔人が持つ強力磁力光線によるものだった。ツチノコ魔人は今度は空港に狙いを付け、旅客機を破壊する作戦に出る。エンジェルスは作戦を阻止できるのか・・・

 次回 美少女戦隊エンジェルス第42話『伝説魔人の磁力攻撃』にご期待ください。



スポンサーサイト

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学