鷲尾飛鳥

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第42話『伝説魔人の磁力攻撃』

2014年 03月10日 21:57 (月)

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 ここは関東の某所にある高速道路である。道路上では何事も無いように車が走っている。平和のひと時である・・・
そのとき突然、一台の乗用車が道路から浮き上がり、空中を飛行した。乗っていた運転手が驚いたのは言うまでも無い。そして空中を飛行していた乗用車は、道路上から外れて、道路わきにあったビルに向かってコースを変え、そのままビルに激突した。激しい衝撃と爆発音が響き、ビルは火災を起こして数分後に崩れ落ちた。
 さらにもう一度・・・ 今度は同じ場所で走行中のタンクローリーが宙に浮き上がり、後続の車両めがけて落下した。どのような結果になったのかは言うまでも無い。落下したタンクローリーは後続車両にまともに激突して炎上し、さらに後ろから走ってきた車が停止する間もなく次々と突っ込んできて、大爆発とともにあたり一面が火の海になり、大惨事となった。やがて警察と消防の両方が事故現場へ駆けつけてきて、付近にいた人たちを相手に事情聴取が始まった。
「車が急に空に舞い上がって、そして落ちてきたんだよ」
「何だってぇ? 車が空を飛んだ? そんな事あるわけ無いだろうが」
「そうだよ。俺も見た。車が沢山空中に舞い上がったんだ。そして落ちてきて、後ろから来る車に次々とぶつかって、ああああ・・ あとはもう見てられなかったよ」
 目撃者の証言が、現実では有り得ないような話ばっかりで、警察も消防も頭を抱えていた。

 その様子を誰にも気付かれないよう、遠くから眺めている者たちがいた。ゼネラルダイアと戦闘員たちだった。ゼネラルダイアは高速道路での様子を見ながら、満足げに語った。
「実験は大成功だ。車という車は次々と宙に浮き、そして落下して破壊され、道路は使い物にならなくなる。こうして次々と日本中のインフラを破壊していくのだ」

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「ツチノコ魔人! 出でよ!」
 ゼネラルダイアが一点を指差して叫ぶと、醜悪な面構えをしたツチノコ魔人が奇声を上げながら姿を現した。

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「ズルズルルルーッ!」
 ツチノコ魔人はネオ‐ブラックリリーの新たな作戦のために作られた怪人である。その能力と武器は、身体に取り付けられた超強力磁力発生装置より発射される磁力光線で、その威力は自動車や電車は勿論のこと、大型の旅客機まで磁力で思うがままに操る事が出来る。そして魔人の出す磁力は強力な磁界を発生させ、バーリアを張り巡らしたり、強力な電気を起こすことも出来るのだ。
「ツチノコ魔人。お前の磁力装置を使い、現作戦を続行せよ。道路を走る車だけでなく、全国の鉄道も攻撃の対象にするのだ。それから、私が立案したもう一つの作戦の方も実行せよ」
「ズルズルルルーッ! かしこまりました。ゼネラルダイア様」
「よし。者ども。引き揚げるぞ」
「イーッ」

      *      *      *      *

 それから三日が経過した・・・・
 高速道路での事件は大々的に報道されたが、誰もネオ‐ブラックリリーの仕業だと知る由も無く、美紀子や佐緒里は勿論、絵里香たちもまだ気付いていなかった。
 しかし、巷では過去に大ブームとなった、ある一つの事柄が再燃焼していた。それは1970年代に一躍ブームとなった、『ツチノコ』だった。東京近郊の某所の山中(以後雲切山)にてツチノコを見たという人が次々と現れ、ツチノコ見たさに沢山の人たちが、山へ入っていったのである。
 そして今日も、ツチノコを探し出してこの目で見ようと、数人の人が雲切山の麓の村に来ていて、地元の人たちと会話していた。
「あの山ですか? ツチノコが出たというのは」
「ああ・・ あの山だ。雲切山っていうんだが、今まで来ていた人たちで、まだ誰も見たやつはいねえぞ。それに今の季節は、蛇は冬眠してるはずだでよ。誰が最初に言い出したのかわかんねえけど、この静かな村が急にうるさくなっちまって、こっちは迷惑だよ」
 数人の人たちが村人に頭を下げると、山の方へ入っていった。こんな感じで、毎日のように人が出入りしていた。だが麓の村の人々から出る言葉の殆どは、ブームに対する不満と愚痴だった。

 ここで、ゼネラルダイアがツチノコ魔人に言っていた、『もう一つの作戦』の話になる。その作戦とは、ツチノコが出たとか、見たという風評を流し、人々を誘い込んで次々と殺すというものだった。つまり過去に燃焼したブームを再燃させ、それを利用しようとしていたのだ。騒ぎを起こせば美紀子やエンジェルスがやってくるだろうから、その時こそ一網打尽のチャンスだと、ゼネラルダイアは考えたのだ。

 そしてここはネオ‐ブラックリリーのアジトである。ゼネラルダイアは司令室で大首領のメッセージを聞いていた。

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「ゼネラルダイア。今度の作戦は、日本中のインフラ整備をズタズタにし、社会を大混乱に陥れることにある。その隙に我がネオ‐ブラックリリーはこの日本を制圧して、世界征服のための橋頭堡を築くのだ。早急に、邪魔になるエンジェルスの小娘どもを一網打尽にせよ!」
「ははーっ。かしこまりました。大首領様」
 会話が済むと、ゼネラルダイアは後ろに立っていた戦闘員の方へ向き直った。
「作戦中のツチノコ魔人に連絡を入れろ。予てより立てていた作戦を実行させるのだ」
「イーッ。かしこまりました」
 戦闘員が無線機のスイッチを入れ、交信を始めた。
「今に見ていろ小娘ども・・ 」

      *      *      *      *

「ん・・ 冷えてきたな・・ 」
「こんな季節にツチノコなんて本当に出るのかよ。今は冬だぜ」
「見た人がいるって話だけど・・・ 」
「うー寒い・・ もう限界だぜ。寒いし風は冷たいし・・ そろそろ山を降りようぜ」
 ツチノコ騒ぎを聞きつけて、雲切山にやってきていた若者たちは、口々にそんな事を言い合っていた。若者達は東南大学の探検部の学生達だった。
 カサカサ・・・
 その時黒っぽい物が目の前の地面を横切っていき、一人がそれに気付いた。
「何だ、今のは」
 一人が横切っていったものを追った。
「おい! 何かいたのか?」
「ああ。何かが横切っていったんだ」
 つられて他の者も一緒に後を追った。そして山の斜面の雑木林と杉林の境目あたりで、その黒いものの動きが止まった。
「つ、ツチノコ・・・ おい! みんな来い。ツチノコがいたぞ」
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 若者の一人が見たものは、まさしくツチノコだった。他の者達もそばにやってきた。そのツチノコは、視線が合った若者めがけて、口から火炎を吐き出した。
「ウワアアーッ!!」
 火炎を浴びた若者はたちどころに全身を炎に包まれ、数秒後にはそのまま倒れて体から水蒸気のようなものを噴き出して消滅した。
「き・・ 消えちまった・・・ こいつ・・・ 口から火を噴いたぞ」
 他の者たちは一同に驚き、仲間が消えてしまった場所を見つめた。一人が石を拾うと、ツチノコめがけて投げつけた。石が命中すると同時に、白い煙が上がり、醜怪なツチノコ魔人の姿になった。
「ズルズルルルーッ!」
「ワーッ! ば・・ 化け物」
「ズルズルルルーッ! 皆殺しにしてやぁるぅ」
「た、助けてくれえーっ」
 若者たちは一斉に逃げ出したが、ツチノコ魔人は奇声とともに体から強力な磁力光線を発射した。稲妻のような光が網の目状に拡散し、逃げる若者たちに次々と降りかかった。

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「ワーッ」
「ギャアーッ」
 若者たちは次々と光線の餌食になり、水蒸気をあげながら消滅した。
「ズルズルルルーッ! ざまぁみろ! 見たか俺様の力を。ン?」
 ツチノコ魔人は空を見上げた。爆音とともに一機のヘリコプターが頭上に接近してきた。
「まずい・・ 今の光景を見られたかもしれん」
 ツチノコ魔人は空に向けて磁力光線を放った。

 一方、こちらはヘリコプターのコックピットにいるパイロットである。操縦していたら突然自分の前に見えている計器が次々と狂い出し、操縦不能になった。
「な・・ 何事だ・・ どうなってるんだ。操縦桿が全然きかない」
 慌てて無線を発したが、雑音ばかりで全く繋がらない。そのうちヘリコプターは猛スピードで地上に向けて落下を始めた。
「ワーッ! 落ちる・・ た、助けてくれえーっ」
 ドオォーン!! メリメリメリ・・・
 ヘリコプターは大音響とともに山の斜面に激突し、付近の木々をなぎ倒して紅蓮の炎を上げて炎上した。その様子を見ながら、ツチノコ魔人は意気揚々と引き揚げていった。

      *      *      *      *

「え? ツチノコ?」
「ああ。1970年代に一躍ブームになった、幻の生物なんだ」
「孝一さんが言うように、1970年代後半からブームになった幻の生物で、蛇の仲間らしいんですけど、実在するのかどうかまでは定かではないらしいんです」
「でも、目撃情報も結構あったらしいぜ」

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 学校が終わってANGELに集まっていた絵里香たちは、佐緒里と孝一を交えて雑談していた。絵里香たちは話を聞き、何だそれはといった趣で、お互いの顔を見合っていた。テーブルの上には話題を扱った新聞や雑誌、ツチノコの資料や写真が置かれていた。聖奈子が資料の一つである一冊の雑誌を手にしながら言った。
「70年代後半・・・ か。あたしたちまだ生まれてないのよね」
「それで・・ そのツチノコが雲切山に現れたって事なの?」
「はい。実はその事でエモトさんから私の方に電話が来たんです」
「エモトって、あの『世界の果てまでGO! GO! GO!』のエモトアヤカ?」
「そうなんです。エモトさんの話だと、今度あの番組で、ツチノコ探しの企画が組まれることになったんです」
「でも、あの人確か蛇が大の苦手だったはずじゃ・・」
「そうなんです。珍獣ハンターのエモトさんが担当に指名されていたんですけど、相手が蛇ということで本人が露骨に嫌がったんです。それで企画の担当はエモトさんじゃなくて、他の人になったようです」
「でも、今頃になってまたブームかよ。しかし蛇は変温動物だから、冬は冬眠しているはずなんだけどな」
「孝一の言う事も、もっともだわ。急にブームになって騒ぎになるなんて、何だか胸騒ぎがする」
「ところで・・ 美紀子さんは?」
「叔母様は最近頻繁に起きている車の事故を調べに行ってます」
「事故って・・ 新聞に載っていた・・ 車が宙に浮いて落ちてきたってやつ?」
「それって、目撃者の証言でしょ? 曖昧な点が多いんじゃないの?」
「どうやら叔母様は、事故はネオ‐ブラックリリーの仕業だと疑っています」
「ネオ‐ブラックリリー・・ か。そう言われてみれば・・ 車が宙に浮かんで落ちてくるなんて話・・ 信じろっていう事自体無理があるわ」
「確かに臭いわ。やつらだったら、物を浮き上がらせる事ぐらい可能だわ」
「今度は一体何をするつもりなんだろう・・」

 チリン・・
 ベルの音とともに扉が開き、佐緒里は立ち上がると扉の方を向いた。
「いらっしゃいませ」
 佐緒里はそう言いながら、店に入ってきた人の方へ歩いていった。入ってきたのは美紀子だった。
「ただいま」
「お帰りなさい。叔母様」
「佐緒里。あなたにお客さんよ」
「え? 私に?」
「さ、入って」
 美紀子に促されて、エモトが入ってきた。
「こんにちは。佐緒里ちゃんお久しぶり」
「あら・・ エモトさん。お久しぶりです」
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 入ってきたのはエモトだった。今日のエモトはコスプレスタイルではなく、またいつものトレードマークの太い眉毛でもなく、髪も切っていてさっぱりした様に見えた。
「佐緒里ちゃん。財宝探しの企画が決まったわよ。今年のゴールデンウイークの特番で大々的にやることになったの」
「それって、例のプランドラーの財宝ですね。おめでとうございます」
「それでお願いなんだけど、佐緒里ちゃんにも是非一緒に出てほしいの。協力してくれる?」
「え? 協力って・・ 」
「君はあの古文書の暗号を解読したし、私が変な奴等に捕まった時に、私の命を助けてくれたじゃないの。その恩返しよ。それにスタッフの人に話したら、佐緒里ちゃんにも是非出て欲しいって言っていたわ」
 佐緒里は突然の事に戸惑った。
「佐緒里、協力してあげたらいいじゃないの。ほら、二人ともそこに座って」
 そう言いながら美紀子は佐緒里とエモトを促し、佐緒里とエモトはそばにある椅子に座って、テーブルを挟んで向かい合った。
「どう? 佐緒里ちゃん。協力してくれる?」
「佐緒里。こんな事、滅多に無い事なのよ。エモトさんに協力してあげなさい」
「はい・・」
「やったぁ! 佐緒里ちゃんありがとう」
 美紀子はエモトの方を見ていった。
「エモトさん。佐緒里の事よろしくお願いね」
「は、はい・・ こちらこそよろしくお願いします。佐緒里ちゃん。それじゃ頼んだわよ」
 そう言うとエモトは立ち上がり、外へ出て行こうとした。
「あら。エモトさん。ゆっくりしていったら良いのに」
「すみません。これからドラマの撮影があるんで、これで失礼します」
 そう言ってエモトは店の外へ出て、駅のほうへ向かって小走りに駆けていった。

「そういえば、エモトさん・・ 今度ドラマの主演やることになってたのよね」
「確か・・ 『二人は迷探偵』っていうドラマだったんじゃないかな・・ 」
「しかし・・・ 芸能人って、あんなにせわしいのかな・・ 」
「美由紀も女優目指してたんだよね。有名になってもあたし達の事忘れないでよ」
「そんな事しないよ。私たちは親友同士なんだよ」
 奥のテーブルにいた絵里香たちは、そんな事を言い合っていた。そこへ美紀子がやってきて、絵里香たちに無言で合図をした。絵里香たちは立ち上がると、美紀子についていって奥の部屋に入った。

      *      *      *      *

「雲切山へ行った人たちが行方不明?」
「ヘリコプターが墜落・・ 」
「美紀子さん。一体どういう事ですか?」
「昨日、東南大学の探検部の学生6人が、ツチノコを探しに雲切山へ行ったのよ。ところが、麓の村の人たちの証言だと、山へ入った6人の学生は一人も下山していないのよ。それに雲切山上空を飛んでいた新聞社のヘリコプターが、原因不明の墜落事故を起こして、雲切山に落ちたの。警察の捜査と現場検証では、事故現場付近には墜落したヘリの残骸と、学生達の遺留品があったんで、学生達はヘリの墜落事故に巻き込まれたということで処理されているわ。でもヘリのパイロットの遺体はあったんだけど、学生たちの遺体は発見されていないのよ」
「それって変ね」
「そうよ。いくら事故に巻き込まれたからっていっても、遺体が消えてしまうはずは無いわ」
「ネオ‐ブラックリリー ・・・」
「考えられるけど、もし奴等の仕業だとした場合、何が目的なんだろう」
「学生の遭難、ツチノコ騒ぎ、頻繁に起きている原因不明の事故、そしてヘリコプターが謎の墜落・・・ か。どうすればこれらの物が全部つながるのかしら」
 美由紀の疑問に対し、聖奈子がボソッと呟いた。
「騒ぎを起こして、あたし達を誘い出そうとしている・・ 」
「そうか! 聖奈子の言う事が当たっていれば、これからも同じような事件が起こりうるわ」
「ちなみに雲切山は昨日の事件のため、当分の間立入り禁止。その煽りで、某テレビ局が企画していた『ツチノコ探索』の企画も中止になったわ。誰も山に入らなければ、雲切山での奴等の作戦の意味が無くなる。だから、奴等が行動を起こすとしたら、別の場所になる。それに、原因不明の事故は、不特定多数の場所で起きているわ。既に車の事故だけで約20件。およそ50台近い車が事故に巻き込まれているわ」
「奴等の仕業だとしたら、車だけでは済まないわ。きっと、もっと大掛かりな・・ つまり新幹線とか飛行機とか・・」
 絵里香はそこまでいいかけて、急に背筋が凍るような想いを抱いた。一緒にいた聖奈子と美由紀も同様だった。

      *      *      *      *

 翌日の昼下がり・・
 絵里香が心配していた事が現実となって起ころうとしていた。絵里香が危惧していた新幹線ではなかったが、都内を走る鉄道の沿線に奇妙な集団が姿を現した。全員が黒ずくめの服装でサングラスをかけ、いかにも不審者か一昔前のギャング団のようないでたちだった。
「間もなく電車が来る。者ども用意しろ!」
「イーッ」
 かけ声とともに男たちが戦闘員の姿になった。そして最後の一人がツチノコ魔人になった。その時警笛音とともに電車が近づいてきた。ツチノコ魔人はアンテナを出すと、電車に向けて磁力光線を発射した。近づいてきた電車が突然停止し、運転士が慌てたのは言うまでも無い。
「何だ・・ ?? どうなってんだ。何故止まったんだ」
 運転士は慌てて運転装置と計器を見た。しかし運転装置は正常で、速度計の針も60kmを指している。それなのに、電車は全然進んでいないのだ。実は電車は止まったのではなく、線路から約2㎝のところで浮いていたのだ。
「おい! 電車が止まったぞ」
「どうなってんだ」
「お願い降ろしてぇ。助けてぇ」
 乗っていた乗客たちも、突然停止した電車の中でパニック状態になっていた。そこへ反対側から電車が近づいてきた。停止していた電車はそのまま横へスライドして、反対側の線路の上に乗った。と同時に電車が前進を始めた。
「ワーッ! どうなってるんだ。ぶ、ぶつかる・・ た、助けてくれえーッ」
 運転士は慌てて急制動をかけたが、向かってきた電車とまともに激突し、その衝撃で双方の電車は脱戦して、周辺一体に車輌が飛び散って近くの住宅を破壊し、一部は炎上して大惨事になった。その様子をテレビの画面越しにアジトで眺めていたゼネラルダイアは、満足そうに言った。
「よーし・・・ こうして日本中のインフラ整備をズタズタにしてやるのだ。雲切山の事件で、エンジェルスの小娘どもを雲切山に誘い出す作戦はダメになったが、あちこちでこれだけ派手にやれば、必ず小娘どもはやってくる」
 ゼネラルダイアは戦闘員の方を向くと、命令を下した。
「ツチノコ魔人に連絡を入れろ。もっと派手に作戦を遂行させるのだ」
「イーッ」

 それから一時間後・・・
 今度は別の鉄道で同様の大事件が起こった。走っていた電車がカーブの手前に差し掛かったときに、運転士が制動をかけたにもかかわらず、スピードが落ちないのだ。それどころか電車は線路から浮き上がり、そのまま空中を直進して住宅街に突っ込み、数件の住宅を破壊して大火災が発生した。燃え上がる紅蓮の炎を見つめながら、二台のオートバイが現場に向かっていた。
「畜生・・ 奴等ついに始めやがった。一体どれだけ人を殺せば気が済むんだ」
 オートバイは線路を見下ろす高台にある広場で停止した。真っ先に飛び降りた絵里香は、燃えている住宅街と、それに突っ込んだ電車を見て呟いた。
「酷い・・ 何てことするんだ」
 聖奈子と美由紀も絵里香の傍に立って、惨状を見つめた。その時美由紀が何かを見つけた。
「絵里香、聖奈子、あそこ!!」
 そににはツチノコ魔人と戦闘員たちが立っていた。

 電車と住宅街が燃え、大惨事になっている様子を見ながら、ツチノコ魔人は息巻いた。
「ズルズルルルーッ! ザマァミロ。愚かな人間ども」
 ツチノコ魔人は戦闘員の方に向き直った。
「よーし。次の作戦だ。引き揚げろ」
「待ちなさい!」
「ん??」
 ツチノコ魔人が振り返ると、絵里香たちの姿があった。
「ネオ‐ブラックリリーの化け物! これ以上お前達の勝手にはさせない! 私たちは正義の戦士! 『美少女戦隊エンジェルス!』」
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「ついに出てきたな小娘ども。お前ら小娘ごときにやられる俺様ではなぁい。者どもかかれえっ」
「イーッ!」
 戦闘員が一斉に襲いかかってきて格闘戦になった。その中から絵里香が飛び出し、ツチノコ魔人めがけてエネルギー波を放った。
「ファイヤースマッシュ!」
 同時にツチノコ魔人はアンテナから磁力光線を発射し、自分の周囲に磁界バーリアを張り巡らせた。絵里香の放ったスマッシュはバーリアによって遮られ、あさっての方向へ飛んでいった。呆然としている絵里香に向かって、ツチノコ魔人は息巻いた。
「馬鹿め。そんなものが俺様に通用するか。今度はこっちの番だぁ」
 ツチノコ魔人は磁力エネルギーを増幅させて磁力光線を発射した。付近に駐車してあった数台の車が浮き上がり、絵里香めがけて飛んできた。
「キャッ!!」
 絵里香は自分に向かって飛んできた車を間一髪で避けた。飛んできた車は地上に落下して轟音とともにクラッシュし、さらに車が次々と絵里香に向かって飛んできて、絵里香はツチノコ魔人に近づく事が出来なかった。
「なんて奴なんだ・・ これじゃ奴に近づけない」
 さらに金属製の電柱が根こそぎ引き抜かれるように浮き上がったかと思うと、絵里香めがけて倒れてきた。
「危ない!!」
 間一髪でかわした絵里香だったが、切れた電線が飛んできて、態勢を立て直す前の絵里香を直撃した。
 バシィッ! バチバチバチッ!!
「キャーッ!!」
 絵里香の身体を電流が貫き、その衝撃で絵里香は悲鳴とともに大きく仰け反って、そのまま気絶して変身が解けた。
「絵里香!」
 戦闘員と戦っていた聖奈子は、絵里香がやられたのに気付き、美由紀を呼んだ
「美由紀! 絵里香がやばい」
 聖奈子と美由紀が絵里香の元に駆け付けたが、その前に次々と車が落ちてきて、二人はそれぞれ散開した。
「聖奈子、車が飛んでくるわ」
「あの化け物・・ 磁力で物を操っているんだわ。高速道路の事故はあいつの仕業だったのか」
 さらにツチノコ魔人の磁力で操られた、ありとあらゆる金属製の物体が、聖奈子と美由紀に向かって立て続けに飛んできた。
「アクアスマッシュ!」
「ライトニングスマッシュ!」
 聖奈子と美由紀はエネルギー波を放ち、物体を次々と爆破して防いだが、全ての物体が消えたとき、そこにはツチノコ魔人の姿は無かった。そして絵里香の姿も・・・・・
「くそっ・・ 化け物の奴・・ 逃げやがったか」
「聖奈子、絵里香がいないわ」
 美由紀に言われて、聖奈子は周辺を見回した。
「やばい・・ 美由紀、絵里香は奴等に連れていかれたんだわ」
「どうしよう・・」
「どうしようって・・ そんな事言ってる場合じゃないわよ。一刻も早く奴等のアジトを探し出して助けなきゃ」
 聖奈子と美由紀が言い合っているところに、車のクラクションが鳴った。二人が音のした方を向くと、そこに車が止まっていて、車から美紀子が降りてきた。
「美紀子さん」
 聖奈子と美由紀は変身を解くと、美紀子の方へ駆けていった。

      *      *      *      *

「ん・・ 」
 絵里香は薄暗い部屋の中で目を覚ました。絵里香は広い部屋の中心で、宙づりの格好で四肢をX型に拘束されていた。絵里香を拘束しているのは電子チェーンといい、磁力によって電子ロックがかけられ、先端はそれぞれ制御装置によって固定されていた。見かけはそんなにギチギチの拘束ではないが、電子ロックによって固定されているため、絵里香は身動きが出来なかった。

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「これは・・ そうか。私捕まったのね・・ 何とかしなきゃ」
 絵里香は拘束から逃れようとして体を動かした。その途端、四肢を拘束していた電子チェーンが絵里香の両手両足を引っ張り、体に巻きつけられているチェーンが、絵里香の身体を締め上げた。
「ぐ・・ く、くっ。あああ・・ か、体が引き裂かれる・・・」
 絵里香は身体を締め付けられる痛みに、うめき声をあげた。その時部屋の照明が点灯されて室内が明るくなり、ツチノコ魔人が戦闘員を伴って部屋に入ってきた。
「ネオ‐ブラックリリーの化け物」
「いかにも! 俺様はツチノコ魔人だ」
「ツチノコ魔人!?」
「どうだ小娘。その拘束は、お前がもがけばもがくほど、お前の体を締め付けて手足が引っ張られ、やがてはお前の手足は引きちぎられ、体は締め付けられて潰されてしまうのだ」
 ツチノコ魔人は絵里香に近寄ってくると、絵里香に向かって息巻いた。
「小娘。お前らごときに、俺様の邪魔はさせん。もっと苦しめてやる」
 ツチノコ魔人は戦闘員に向かって合図した。戦闘員は傍らにあるスイッチの一つをオンにした。
「あ・・ あぁ・・ ウワアァァーッ!!」
 絵里香の身体に電流が流され、絵里香は苦痛に体を悶えさせた。その瞬間、絵里香を締め付けていた電子チェーンが、さらに絵里香の体を締め付け、手足が引っ張られた。
「あーっ! か、体がちぎれるぅ」
 電流が止められ、絵里香はハァハアと苦しい息遣いをした。体を動かせば余計に締め付けられ、手足が引っ張られるので、絵里香はできる限り身体の力を抜いた。それを見越しているかのように、ツチノコ魔人は絵里香の正面に来ると、絵里香の脚をつかんで揺すった。すると絵里香を拘束している電子チェーンが絵里香をさらに締め付けた。
「ああ・・ や、やめてぇ! 体がちぎれるうーっ!」
 絵里香を拘束している電子チェーンは、ついにピーンと張った状態になり、絵里香の手足は完全に動かなくなってしまった。
「お前が苦しむ姿をもっと見ていたいところだが、俺様はこれから大きな作戦が待っているから、これでおさらばだ。小娘、お前が死んでいく姿を見られないのが残念だ。ズルズルルルーッ」
「な・・ 何を企んでいるのよ」
「そんな事教える必要はなぁい。お前はここで体を引き裂かれて死んでいけ。もし作戦が終わって帰ってきたとき、奇跡的にまだ生きていたら、今度こそ嬲り殺しだ。あばよ。ズルズルルルーッ」
 ツチノコ魔人は戦闘員を伴って部屋から出て行き、室内には繫がれた絵里香と、見張りを命じられた3人の戦闘員が残された。その戦闘員の中の一人が、絵里香の様子をジッと見続けていた事に、他の戦闘員は気づいていなかった。それどころか、その戦闘員は、一瞬の隙を突いて、まず一人に当て身を食らわせてから、後頭部に蹴りを入れて倒した。そしてその戦闘員が持っていた剣を奪い、もう一人の戦闘員を袈裟懸けに切り伏せた。そして絵里香を拘束しているチェーンの電子ロックのスイッチをオフにすると、すぐに絵里香の真下へ行った。絵里香を拘束していた電子チェーンが消え、宙吊りになっていた絵里香の身体が落ちてきたところを、その戦闘員が受け止めて静かに床におろし、立たせて支えた。
「もう大丈夫だぞ。しっかりしろ」
「あなたは一体・・」
 戦闘員の意外な行動に絵里香は戸惑った。
「絵里香。俺だよ」
 戦闘員に化けていた孝一は、マスクを取って自分の素顔を見せた。
「え・・ こ、孝一 ?? どうしてここへ・・」
「お前が奴等に捕まったのを見て、密かに後をつけてここまで来たんだよ。そして戦闘員を一人倒して、そいつに化けてアジトの中に入ったってわけ」
「そうだったの・・ 助けてくれてありがとう」
「礼はいいから。絵里香、早くここから脱出するんだ。やつらは空港へ向かっているぞ」
「空港? まさか・・ やつら飛行機を・・ 」
「戦闘員に化けてアジトに潜入した時に、化け物と女幹部が話をしているのを聞いたんだ。絵里香。行くぞ」
「わ、分かった」
 アジトから脱出した絵里香と孝一は、孝一がオートバイを置いた場所まで走った。

      *      *      *      *

「強力な磁力を持った魔人?」
「そうなんです。車や電車が空中に浮いて落ちてきた事故は、奴の仕業です。そんなことより、美紀子さん。絵里香が捕まっちゃったのよ」
「早く助けに行かなきゃ」
「二人とも落ち着いて。今、佐緒里がやつらのアジトの場所を探してくれているから」
 美紀子の傍らにある、美紀子の車の助手席では、佐緒里がスマートフォンのような器械を使い、真剣な顔でネオ‐ブラックリリーのアジトの場所を探っていた。オートバイのエンジンをかけ、いつでも発進できる態勢にあった聖奈子は、美由紀と一緒になって、佐緒里の事を見ていた。その時美紀子の携帯に着信が入り、美紀子は携帯を取り出して画面を見た。
「絵里香だわ・・ 」
 絵里香からの着信だと知った聖奈子と美由紀は同時に美紀子の方を向いた。
「はい美紀子です。絵里香、あなた無事だったの? うん・・ うん・・ そうだったの。とにかく無事で良かったわ。え? うん・・ うん。分かった。すぐに聖奈子と美由紀に伝えるわ」
 美紀子は携帯のスイッチを切り、携帯をポケットに入れた。

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「美紀子さん。絵里香は?」
「絵里香は無事だったんですか!?」
「二人とも落ち着いて話を聞いて。捕まった絵里香は孝一君が助け出して、二人ともアジトから脱出したわ」
 聖奈子と美由紀はホッとしてため息をついた。
「二人とも。成田空港へ向かうわよ。急いで!」
「成田空港?」
「奴等は空港を襲って、旅客機を片っ端から墜落させようとしているのよ」
「やばいよ。旅客機が墜落したら、大変な被害が出るわ」
「それで絵里香は?」
「孝一君と一緒に既に向かっているわ。行くわよ二人とも!」
「はい!」
 聖奈子はヘルメットを被ってオートバイに飛び乗ると、アクセルを思いっきりふかし、勢いよく発進させた。続いて美由紀もバイクを発進させ、美紀子も車に乗ってその場から発進した。

      *      *      *      *

 ツチノコ魔人は戦闘員を引きつれ。空港が見える場所まで来ていた。ここから空港までの距離は約2km。戦闘員の一人が双眼鏡で空港の様子を眺めている。
「この場所からは空港の殆ど全てが見渡せる。よし! ここで作戦を行う。直ちに準備しろ」
「イーッ! かしこまりました。ツチノコ魔人様」
 戦闘員がそれぞれの持ち場に散った。そこへゼネラルダイアが現れた。
「ツチノコ魔人。首尾は上々か?」
「ズルズルルルーッ! 準備が出来次第、いつでも決行出来ます」
 ツチノコ魔人が返事をしたとき、ゼネラルダイアの視線はある一点を向いていた。そしてツチノコ魔人の方に向き直り、ツチノコ魔人に向かってその一点を指差しながら言った。
「ツチノコ魔人! あれは何だ!?」
 ツチノコ魔人はゼネラルダイアが指差した一点を見た。そこでは某ドラマの撮影が行われていて、ドラマに出演する役者やスタッフ達が集まり、それぞれの持ち場についていた。
「奴等がいては作戦の邪魔になる。ツチノコ魔人! 作戦開始の前に、あの邪魔なやつらを片付けるのだ!」
「ズルズルルルーッ! かしこまりました」
 ゼネラルダイアはマントを翻してその場から姿を消し、ツチノコ魔人は戦闘員たちを引き連れて撮影現場に向かっていった。

 撮影現場では、某テレビ局のドラマ『二人は迷探偵』の撮影が行われていた。現在主演の女探偵が登場する場面で、その探偵役のエモトと、助手役のかなでが台本片手に、監督と打ち合わせをしていた。
「探偵の登場シーン行くよ! エモトちゃん、かなでちゃん。スタンバって」
「はい!」
「はい!」
 エモトとかなでは返事をすると、カメラのレンズが向いている場所へ向かって歩き出した。
「よーし! シーン302スタート!」
 その声と同時に、カメラが突然地上から浮き上がり、近くにあった撮影機材や小道具も次々と空中に浮き上がった。さらに近くにあった自動車まで・・・ 
「な・・ 何だ何だ」
「どうなってるんだ」
「た、助けてくれえーッ」
 スタッフ達は突然の出来事にパニック状態になり、逃げ惑った。エモトとかなでも同様だった。そこへツチノコ魔人が戦闘員たちとともに乗り込んできた。
「ズルズルルルーッ」
「ワーッ!! か、怪物」
 ツチノコ魔人は磁力光線を手当たり次第に放ち、空中に浮かんでいた車や機材が次々と爆発して、炎上しながら地上に落下してきた。その一部は逃げ惑うスタッフ達の頭上に落ちてきて、数人の人たちが落ちてきた自動車や機材とぶつかって怪我をした。さらに戦闘員たちがパニック状態になった人々を追い回し、数十分後には全員が多数の戦闘員に囲まれた状態になり、その中にエモトとかなでの姿もあった。ツチノコ魔人が囲みの中に入ってきて息巻いた。
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「ズルズルルルーッ。お前達は作戦の邪魔になる。ここで皆殺しだぁ」
「い、嫌だ。死にたくない。助けてくれ」
 一人がいきなり走り出して囲みの外に出ようとしたが、ツチノコ魔人がその前に回りこみ、その男の襟首を掴むと、そのまま囲みの中央へ向けて突き飛ばした。男は叫びながら吹っ飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられた。
ツチノコ魔人はアンテナを出すと、磁力光線を発射する態勢をとった。そこへ爆音とともに孝一と絵里香が乗ったオートバイが全力で走ってきて、囲んでいた戦闘員に突っ込んだ。
「イーッ!」
 2~3人の戦闘員が絶叫とともに跳ね飛ばされ、他の戦闘員たちも突然の事に態勢が乱れた。後ろに乗っていた絵里香はジャンプすると空中で変身し、エンジェルレッドになって着地した。
「みんな早くここから逃げて!」
 居合わせた人たちは、反射的に我先にと駆け出し、逃げ始めた。それを戦闘員たちが追いかけようとしたのを絵里香が組み付き、次々と戦闘員を倒した。
「おのれ小娘! どうやって脱出したのだ」
「そこにいる孝一が助けてくれたのよ。お前たちなんかに負ける私たちじゃないわ! ネオ‐ブラックリリーがいる限り、私たちは絶対に負けない。これ以上お前たちの勝手にはさせないわ!」
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「くそぉ! 者どもかかれ。やっつけろ!」
「イーッ」
 近くにいた戦闘員の一部は、逃げる人たちを追うのをやめ、絵里香と孝一に襲いかかってきた。
「孝一。ここは私が引き受けるから、逃げた人たちを誘導して」
「分かった!」
 孝一は大きな声で返事をすると、オートバイを発進させ、その場から離れた。絵里香は向かってくる戦闘員と格闘し、一人ずつ倒していった。
「えーい、どけどけ! 俺様が片づけてやる」
 ツチノコ魔人が出てきて、磁力光線を発射した。絵里香の周辺で次々と爆発が起こり、絵里香は身をすくめた。そしてついに至近距離で爆発が起きた。
「キャアーッ!」
 絵里香は悲痛な悲鳴とともに爆風で吹き飛ばされ、地上に叩きつけられた。
「ぐ・・・・ 」
 そこへツチノコ魔人が近づいてきて、再び磁力光線を発射した。光線が電磁鞭のようになって絵里香に巻きつき、絵里香は苦痛に悲鳴を上げた。
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「ああ・・ ああぁぁーっ!」
 絵里香は両目に霞がかかったようになり、意識が遠のきつつあった。
「もっと苦しめ小娘。そろそろ出力を最大にして地獄へ送ってやる」
 そこへ・・・・

 ドカッ!!!
「ズルズルルルーッ」
 ツチノコ魔人にオートバイが突っ込んできた。逃げる人たちを誘導するために一時離れた孝一が戻ってきたのだ。絵里香のピンチを見た孝一は、全速力でツチノコ魔人めがけて疾走し、そのまま体当たりしたのである。絵里香に気を取られていたツチノコ魔人は、孝一のオートバイが接近していた事に気付かず、後ろからまともに体当たりを食って、反動で吹っ飛ばされ、地面に叩き付けられて一回転した。絵里香を締め付けていた電磁鞭も、絵里香から離れた。
「おのれ・・・ 何者だ」
 孝一はそのまま絵里香の傍までオートバイを走らせ、停止させると飛び降りて絵里香の傍へ駆け寄った。
「絵里香! しっかりしろ!!」
 孝一は、意識が朦朧としていて、地面に横たわっていた絵里香を抱き起こした。気がついた絵里香には、戦闘員の集団が近づいてくるのが見えた。
「孝一。早く逃げて。奴らが迫ってくるわ」
「お前を見捨てて逃げれるわけねえだろ。おい。お前の武器・・ ブレードを貸せ!」
「ダメだよ。そんな・・ 」
「早くしろーッ!!」
 絵里香は孝一の声と形相に圧倒され、思わず胸のブローチに手を当ててエンジェルブレードを出した。孝一はブレードをひったくるように手に取ると、襲いかかってきた戦闘員の中に飛び込んでいき、戦闘員との間で格闘戦になった。孝一は剣道の経験があり、一応初段の腕前があるので、武器を手に襲ってくる戦闘員と戦い、ブレードで切り伏せて戦闘員を次々と倒していった。そのあいだに態勢を立て直したツチノコ魔人は、孝一に向けて攻撃態勢をとった。
「おのれ・・・ 小娘の前にあいつから片付けてやる」
「まずい! 孝一が危ない」
 絵里香は立ち上がって走り出そうとしたが、足元がふらついて蹲った。ツチノコ魔人から受けたダメージのため、体に力が入らないのだ。その間にも、ツチノコ魔人は攻撃態勢を整えていた。
「磁力光線を喰らえ!!」
 ツチノコ魔人が磁力光線を発射し、孝一の周辺で次々と爆発が起きて地面が吹き上がった。孝一は反射的にその場に伏せ、孝一の周辺にいた戦闘員が巻き添えで吹っ飛ばされた。
「今度こそ片付けてやる」
 ツチノコ魔人は再び攻撃態勢をとった。その瞬間、今度はツチノコ魔人の周辺で次々と爆発が起き、ツチノコ魔人は爆風で吹っ飛ばされて、もんどりうって地面を一回転した。
「くそオーッ!! 何事だ」
 爆発は空から降ってきたエネルギー波によるものだった。それに気付いた絵里香と孝一は空を見上げた。すると二つの影が上空に現れたかと思うと、そのまま地上に降りてきた。
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「聖奈子、美由紀」
「絵里香お待たせ!!」
 着地した聖奈子は絵里香の方へ、美由紀は孝一の方へそれぞれ駆けて行き、二人を庇うように身構えた。
「やいツチノコの化け物! てめえもこれでジ・エンドだ。覚悟しろ!」
「何を小癪な!!」
 ツチノコ魔人は磁力光線を放った。聖奈子は楯で、美由紀はバトンをクロスさせてシールドを張り、それぞれ攻撃を防いだ。
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「絵里香! あとはあたし達に任せて」
「孝一君は絵里香を守ってあげて」
「わ、分かった」
 聖奈子と美由紀はそう言うと、ツチノコ魔人に向かって身構えた。
「美由紀。絵里香があの状態だから、あたし達だけで何とかするよ」
「分かった聖奈子」

 聖奈子と美由紀はツチノコ魔人を両側から挟むような態勢で身構えていた。
「小癪な小娘どもめ。磁力光線で引導を渡してやる」
 ツチノコ魔人は二人に向けて磁力光線を発射した。光線が電磁鞭のような形になり、二人に向かってきた。
「美由紀、あいつに絡まれたらやばいよ。気をつけて!」
 二人は飛んでくる電磁鞭をかわしながら、間合いを詰めようとしていたが、ツチノコ魔人の磁力光線と、ツチノコ魔人が発している磁界のため、近づく事が出来なかった。
「磁力光線を最大出力で食らわせてやる」
 ツチノコ魔人は最大出力で磁力光線を発射してきた。同時にツチノコ魔人の周辺に透明な膜が出来て、光線が跳ね返され、逆にツチノコ魔人に光線が降りかかった。
「ズルズルルルルーッ!!」
 ツチノコ魔人は叫び声とともに、体のあちこちで小規模な爆発を起こし、そのまま地面に倒れて一回転した。
「何、今のは・・・」
「一体どうなってんの?」
 聖奈子と美由紀が突然の事に戸惑っていると、佐緒里が二人の傍に駆け寄ってきた。
「佐緒里ちゃん」
「奴が光線を発射すると同時に、奴の周りにバーリアを張り巡らせたのよ。聖奈子さん、美由紀さん。今よ!」
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 ツチノコ魔人はヨロヨロと立ち上がり、攻撃態勢をとってきた。
「美由紀! 行くよ」
「オーケー」
「アクアトルネード!」
「ライトニングトルネード!」
「エンジェルトルネード!」
 三人のエネルギー波が一つに合体して大きな渦になり、ツチノコ魔人に向かっていって、ツチノコ魔人を包み込んだ。
「ズルズルーッ! ズーッ!!!」
 ドオォーン!!!!
 ツチノコ魔人は絶叫とともに、大爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「やったぁ!!」
 美由紀が歓声を上げ、聖奈子と佐緒里も一箇所に集まってきて、絵里香も孝一に支えられながら三人の元にやってきた。さらに美紀子が車で乗り付けてきて、車をとめて降りてきた。
「みんな。怪我をした人たちは全員命に別状は無いわ。エモトさんと水無月さんも無事よ」
「そっか・・ よかったぁ」
「でも・・ やつらの作戦も、ついに大量殺戮が目的になってきたわ」
「何としてでもネオ-ブラックリリーを倒さないと」
 絵里香たちはネオ-ブラックリリー打倒の誓いを新たにするのだった。

      *      *      *      *
  
 ネオ‐ブラックリリーのインフラ破滅作戦は、ツチノコ魔人が倒された事によって挫折を余儀なくされた。しかし、ネオ-ブラックリリーはまた新たな作戦をもって、エンジェルスに襲いかかってくるのだ。負けるなエンジェルス!!




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 次回予告
 第43話『牙をむく偽エンジェルス』

 ネオ-ブラックリリーは人間の影を実体化させる、シャドー光線を開発。それを新たな魔人の土偶魔人に取り付けて人々を襲わせる。阻止行動に出たエンジェルスだったが、3人ともそのシャドー光線を浴びてしまい、エンジェルスの影が実体化して、偽エンジェルスが誕生してしまう。偽エンジェルスと戦えば、そのダメージが自分たちに及び、絵里香たち三人は窮地に立たされる。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第43話『牙をむく偽エンジェルス』にご期待ください。

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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学