鷲尾飛鳥

04月 « 2014年05月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31  » 06月

第43話『牙をむく偽エンジェルス』

2014年 05月04日 09:43 (日)

04-43-00.png

 ここは某所にある、ネオ‐ブラックリリーのアジト・・
 アジトの司令室では、ゼネラルダイアがテーブルの前に立ち、テーブルの上に置かれている真っ赤な色をした宝石のようなものを眺めていた。そしてゼネラルダイアの傍らには、新たに改造されて作り出された土偶魔人が立っていた。ゼネラルダイアは宝石を指差し、土偶魔人に向かって言った。

04-43-01.png

04-43-02.png

「土偶魔人よ。これは宇宙第六銀河系にある惑星に産する、デビリュームという鉱石だ。このデビリューム鉱石は、特殊な光線を通すと、生物・・ つまり生きたものに対して特殊な影を形成し、その影を影生物として生まれさせる力があるのだ。早速実験する」
 ゼネラルダイアは指をパチンと鳴らした。すると戦闘員が実験用の人間を連れてきた。
「た、助けてくれ。俺をどうしようというんだ」
 ゼネラルダイアは光線銃のようなものを持った戦闘員に、目で合図をした。戦闘員はその光線銃を鉱石に向かって発射した。光線は鉱石に当たると、その鉱石を透過して、真っ赤な光を形成し、延長上に立っている男に光が降り注いだ。同時にその後ろに男の影が出来て、その影が男と同じ姿恰好になった。影人間の誕生だ。ゼネラルダイアは戦闘員に合図をした。戦闘員は剣を持つと、その影人間に切りつけた。
「ギャアァーッ!」
 同時に男の体に切り傷が出来、男は絶叫とともにそのまま倒れて絶命した。
「どうだ土偶魔人。影人間にダメージを与えれば、実体もこのようにして同じダメージを受け、最悪の時は死に至るのだ」
「ケッケッケッケ。これは素晴らしい」
「お前の頭に、この鉱石と同じものと、光を出すための光線発射装置を埋め込んである。お前はこれを使ってエンジェルスの小娘どもを攻撃するのだ」
「ケッケッケーッ。お任せくださいゼネラルダイア様。小娘どもの影人間を作り出し、小娘どもと戦わせて、お互いが傷つけあい、くたばっていく姿をお見せしましょう」
 そう言って土偶魔人は、戦闘員を引き連れてアジトから出て行った。

 そしてその日の夜・・・・・
 ごく普通のありふれた住宅地。時間は深夜で、通りを歩く人は殆どおらず、街灯以外の電気は殆ど消えている。その住宅地の道路を一人の男が歩いていた。男は会社の飲み会でかなり酒を飲んだらしく、足元はふらついて、ほろ酔い気分で帰宅の途中だった。その男の前に土偶魔人が立ちはだかり、男は土偶魔人とぶつかった。
「何だよお前! 人にぶつかっておいて黙ってる気かよ」
 男は酔った勢いからか、土偶魔人に食ってかかった。が、その顔をはっきりと目の当たりにした瞬間、男は顔が硬直し、後退りしてそのまま躓いて尻餅をついた。
「か・・ かか・・ 怪物・・ 」
 男は立ち上がって逃げ出そうとしたが、酔っていたのと恐怖心で足が竦み、声も出せなかった。
「ケッケッケッケ。お前で実験してやる。俺様のシャドー光線を受けてみよ」
 土偶魔人の頭部の石が真っ赤に光り、光線が発射されて男の体に降り注いだ。
「ワアアーッ!!」
 男は眩しさに手で顔を覆った。男の周辺が真っ赤な色の光で明るくなり、男の後ろに影が出来て、その影が男から離れ、男の姿そのものになった。男はそれを見てまた驚いた。
「お・・ お、俺がもう一人・・・ 」
「実験は大成功だ。ケーッケッケッケ」
 土偶魔人は赤い光を影人間に向けて放った。すると影人間は土偶魔人の頭部にある鉱石の中に吸い込まれた。
「暫くそこで眠っていろ」
 土偶魔人は男に向かって目から光を点滅させた。すると男はビックリしたような顔つきとともに白目をむいて気絶し、そのまま道路上に横になって寝てしまった。

      *      *      *      *

04-43-03.png

「先輩お元気で」
「いつでも遊びに来てください」
「ありがとう。新学期から共学になるけど、みんな頑張ってね」
 今日は明峰学園高校の卒業式。絵里香たちが所属しているバトン部では、藤巻芳江と苅部雅子の二人が巣立って行く。二人が言うように新年度からは男女共学になるので、明峰学園は女子高としての最後の卒業式だった。雅子は美由紀のそばに来て、美由紀に言った。
「城野。副キャプテンとして、菊川を支えてやって。頼んだわよ」
「はい先輩」
「それじゃみんな元気でね」
 そう言うと、芳江と雅子の二人は、花束と卒業証書を持って、部員たちの前から歩いていった。その後ろ姿を見ながら聖奈子が呟いた。
「来年は、あたしたちの番なんだな・・ 高校生活って長いようで短いんだね」
「高校生活もそうだけど、私たちには使命があるのよ」
「そうだね・・ ネオ‐ブラックリリーを絶対に倒さなきゃ」
「そういえば、ここんとこ全然何も無いけど、いつ何処で動き出すか・・・」
 絵里香たちはお互いに頷き合い、小走りに駆け出した。行く先は勿論ANGEL・・・・

      *      *      *      *

 翌日の昼・・・

04-43-04.png

 卒業した二人の先輩のうちの一人、芳江は新間川の土手を歩いていた。芳江の家は美由紀の家の近くで、新間川の傍にあり、高校時代は3年間この土手を自転車で通っていたのである。芳江は自分が通学していた土手を、思い出に耽りながら歩いていたのだ。その芳江の前から美由紀がバイクに乗って走ってきて、芳江の横で止まり、美由紀はヘルメットを脱いだ。
「藤巻先輩」
「あら・・ 城野さんじゃないの。何処へ行くの?」
「これから絵里香たちと会うんで、鷲尾平へ行くんです。先輩はいつ仙台に出発するんですか?」
 芳江の通う大学は宮城県の仙台にあるため、その準備や向こうでの寮生活の手続きなどで、仙台へ行かなければならなかった。
「再来週の初めに一回行ってきて・・・ そのあと今月末には完全にあっちへ行ってしまうわ」
「そうですか・・ 」
「夏休みには帰ってくるから、その時また会いましょう」
「はい」
「それじゃ」
 芳江は近くにあった階段を降りて、河川敷にある公園の方へ行き、美由紀はヘルメットを被ってバイクを発進させた。その直後・・・・
「キャアーッ!!」
 突然の声に、美由紀はバイクを急停車させ、声がした方を振り向いた。
「藤巻先輩の声だ!」
 美由紀は路肩にバイクを置くと、ヘルメットを放り出して駆け出し、階段の所まで来た。美由紀の目に映ったのは、河川敷でネオ‐ブラックリリーの戦闘員に取り囲まれた芳江の姿だった。
「先輩が危ない」
 美由紀は階段を駆け下り、途中でジャンプすると、芳江に飛びかかろうとした戦闘員めがけて飛び蹴りをお見舞いした。
「イーッ!!」
 蹴りをまともに喰った戦闘員は、蹴りの反動で絶叫とともに川の中へ落ちた。
「城野さん・・ あなた一体・・ 」
「先輩。話は後です。早く逃げて」
 美由紀は芳江を庇いながら身構え、戦闘員が飛び掛ってきたのを、美由紀は身をかわして避けた。
「早く逃げてください」
 芳江は逃げ出そうとしたが、それを遮るように土偶魔人が姿を現した。
「ケーッケッケッケ。逃がすものか。我々の姿を見たものは生かしておけん」
「嫌あーっ!! か、怪物・・・ 」
 芳江は咄嗟に美由紀の後ろに隠れ、美由紀は土偶魔人に向かって身構えた。
「出たわね。ネオ‐ブラックリリーの化け物!」
「者ども。こいつらを捕まえろ!」
 土偶魔人に煽られるように、戦闘員がジリジリと迫ってくる。芳江は美由紀の後ろで震えていた。
「(まずい・・・ このままでは先輩が巻き添えになってしまう・・)」
 美由紀はポーズをとると、両手を胸にあてて叫んだ。
「エンジェルチャージ!」
 美由紀の体がまぶしく光り、芳江はまぶしさに手で目を覆った。光が消えたとき、そこにはエンジェルイエローに変身した美由紀がいた。芳江が驚いた事は言うまでも無い。
04-43-05.png
「城野さん・・ 」
「説明は後です。私が先輩を護ります」
「お前がエンジェルの小娘だったのか。丁度いい。引導を渡してやる。かかれっ!」
 戦闘員が襲いかかってきて、美由紀と格闘になった。が、芳江がいるので思うように戦えない。そこへ土偶魔人の目がピカッと光り、破壊光線が発射された。光線は美由紀を外れて、美由紀の後ろにいた戦闘員を直撃し、爆発とともに二~三人の戦闘員が吹っ飛ばされた。
「し、しまった・・ 外したか。ええい今度こそ引導を渡してやる」
 土偶魔人は再び攻撃態勢をとった。
「このままじゃヤバイ・・ 先輩。私につかまって下さい」
 そう言うが早いか、美由紀は芳江の手を取って、自分の肩にかけるとそのままジャンプした。
「キャッ」
 美由紀は驚いている芳江を抱えたまま高くジャンプし、空中で一回転して堤防の土手の上に着地した。
「早く逃げて」
 芳江は美由紀に促されるままに、そのまま堤防の反対側へ下りて逃げ、美由紀は河川敷にいる土偶魔人と戦闘員に向かって叫んだ。
「ネオ‐ブラックリリー! 勝負はお預けよ」
 そう言って、美由紀もその場からダッシュして逃げ、バイクを置いてある場所まで走っていった。そしてそのままバイクに乗って発進し、走りながら変身を解いた。走り去っていくバイクを目で追いながら、土偶魔人が堤防の上に上がってきた。
「クッソオーッ! 逃げられたか・・  まあいい。チャンスはいくらでもある。それに俺様には奥の手があるのだ。今に見ていろ。エンジェルスの小娘ども。ケーッケッケッケ」

      *      *      *      *

 こちらはANGELの店内・・・
 店内では絵里香と聖奈子が美由紀を待っていた。美紀子と佐緒里は買い物のため外出中で、カウンターには孝一がいた。
「美由紀のやつ遅いな・・ 遅れるんだったら電話くらいしたらいいのに」
 ブツブツ言いながら聖奈子は携帯を取り出した。その時絵里香の携帯に着信が入った。
「美由紀からだ・・ ハイ絵里香です。今何処にいるの? 私の傍で聖奈子が怒ってるよ」
『・・・・・』
「ええっ!? ネオ‐ブラックリリーの魔人が出た!? 場所は? うん・・ うん・・ それで先輩は?」
 ネオ‐ブラックリリーと聞いて、聖奈子は絵里香の方を向いた。
『 ・・・・ 』
「そう・・ 分かった! すぐ行くからそこで待ってて」
 絵里香は携帯をしまうと聖奈子の方を向いた。
「聖奈子行くよ!」
 聖奈子は無言で頷くと、立ち上がって入り口の方へ小走りに駆けていき、絵里香もその後に続いた。二人は店先に停めてあったオートバイのエンジンをかけると、オートバイに乗って発進し、美由紀が待っている場所へ向かった。
それと入れ違いに美紀子と佐緒里が帰ってきて店内に入ってきた。
「おかえりなさい。マスター」
「孝一君、あの二人慌てて出て行ったけど、何かあったの?」
「奴等がまた出たんだよ。美由紀さんから電話があって、飛び出していったんだ」
「奴等ってネオ‐ブラックリリーね。それで場所は?」
「そこまでは何も聞いてない」
 美紀子は佐緒里を見た。佐緒里は自分の部屋へ行き、地図を持ってきてテーブルの上に広げた。
「これで大体は探れる」

      *      *      *      *

 美由紀は堤防の外側にある道路脇にバイクを停め、絵里香と聖奈子を待っていた。そこへ爆音とともに二台のオートバイがやってきて、絵里香と聖奈子が降りてきた。
「美由紀お待たせ」
「奴等が出た場所へ案内して」
「こっちよ」
 美由紀は堤防の上を指差すと、斜面を駆け上がっていった。絵里香と聖奈子も美由紀の後を追い、堤防の上の道路に出た。そして川側の方へ行き、美由紀は河川敷の広場を指差した。
「あそこか・・ 」
「聖奈子、下りて調べてみよう」
 絵里香たちは一斉に堤防から河川敷の方へ下りた。その時聖奈子が何かの気配を感じた。

04-43-06.png

「みんな待って! 何か気配がするわ」
 そう言いながら聖奈子は気配のした方を向いた。するとそこには戦闘員を伴った土偶魔人が立っていた。
「待っていたぞ。小娘ども。そっちから来るとは、探す手間が省けたわい」
「出たわね化け物!」
 絵里香たちはいっせいに身構えた。が、次の瞬間、絵里香たちは身体を硬直させた。戦闘員が芳江を前面に突き出したのだ。
04-43-07.png
「ふ・・ 藤巻先輩!  無事に逃げられたと思ったのに・・ 」
「ケーッケッケッケーッ。馬鹿めぇ。我々の姿を見た者は、絶対に逃がさないのだ。小娘ども。この女がどうなってもいいのか」
「た・・ 助けて・・・ 」
 芳江は戦闘員に押さえ付けられ、ブルブルと震えていた。一度は逃げたものの、執拗に追跡されて、逃げきれずに捕まってしまっていたのだった。
「卑怯者! 先輩を放せ」
「何とでも言いやがれ。卑怯なのが我々の取り柄なのだ。さあ小娘ども! エンジェルスに変身しろ。そうすればこの女は開放してやる」
「(エンジェルスに変身すれば解放する? 一体どういう事なの?)」
 絵里香は戸惑ったが、聖奈子と美由紀は反射的に変身ポーズをとり、絵里香も二人につられて同じようにポーズをとった。
「エンジェルチャージ!」
 眩しい光とともに、絵里香たちはエンジェルスに変身し、土偶魔人と戦闘員相手に身構えた。土偶魔人は芳江を捕まえている戦闘員に合図すると、絵里香たちに向かって捲し立てた。
「約束通り解放してやる」
 戦闘員は芳江を絵里香たちの方へ向けて突き飛ばした。
「キャッ!」
 突き飛ばされた芳江は、絵里香と美由紀が受け止めた。
「先輩早くここから逃げてください」
「分かった。君たちの事はそのうち聞かせてもらうから」
 そう言って芳江はそのまま走り去っていった。
「かかれっ。皆殺しにしろ!」
「イーッ」
 戦闘員が奇声をあげて襲いかかってきた。一部の戦闘員は絵里香たちを素通りし、逃げた芳江の追跡を始めた。
「まずい。奴ら先輩を・・」
 気付いた美由紀が戦闘員を追いかけようとしたが、美由紀の周辺で次々と爆発が起こった。
「キャッ」
 美由紀は爆発に身を竦めた。土偶魔人が破壊光線を放ったのである。その間に芳江を追った戦闘員は遠くに離れていった。残った戦闘員は遠巻きに絵里香たちを包囲し、隙を見て次々と襲ってきたり、頃合いを見て絵里香たちから遠ざかって距離を置く戦法を繰り返した。
「絵里香、奴等襲ってくると思えば逃げていくわ」
「何を企んでんだろう」
 絵里香たちはそれぞれの武器を手に一塊になっていた。
04-43-081.png

      *      *      *      *

 ハアハアハア・・・
 芳江は堤防の上の道路を、息を切らしながら走っていた。後ろからは戦闘員が化けた黒ずくめの男たちが追ってくる。どういうわけか、周囲に人通りは全く無い。しかしその時、下の道路を走ってこちらへ向かってくる一台の車が目に入り、芳江は堤防の斜面を駆け下りて道路に出ると、走ってくる車の前に立ち、両手を広げた。
「叔母様。前!!」
 車に乗っていたのは美紀子と佐緒里だった。芳江に気付いた美紀子はブレーキをかけ、車は芳江の少し手前で止まった。
「何だか様子が変よ」
 そう言いながら佐緒里が車から降り、続いて美紀子も降りて、芳江の傍へ駆け寄った。
「どうしたの?」
 そこへ黒ずくめの男たちが走ってやってきて、芳江は美紀子と佐緒里の後ろへ隠れた。
「ちっ! 邪魔が入ったか。こうなったら力づくで連れて行く!」
 男たちはそう言いながら戦闘員の姿になった。
「イーッ!」
「イーッ!」
「出たわね。ネオ‐ブラックリリー!」
 佐緒里が芳江の前に立ち、戦闘員が奇声を上げて襲いかかってきた。佐緒里は芳江に掴みかかってきた戦闘員に蹴りを入れ、蹴りが戦闘員の腹にヒットして、戦闘員は反動で吹っ飛んだ。残りの戦闘員も美紀子と佐緒里が格闘の末に倒した。
「もう大丈夫よ」
「ありがとうございます。そんな事より、後輩たちが得体の知れない怪物に襲われて大変なんです。助けてください」
「後輩?」
「叔母様。もしかしたら、絵里香さんたちの事よ」
「分かった。とにかく案内して!」
 美紀子は芳江に車に乗るよう促した。
「早く乗って。また奴等がやってくるかもしれない」
 芳江は促されるままに車に乗り、佐緒里も乗って、美紀子は車を発進させた。

 絵里香たちは、それぞれの武器を持ち、自分たちを包囲している戦闘員の襲撃に備えていた。周囲を遠巻きに囲んでいる戦闘員の間から土偶魔人が割って入ってきて、絵里香たちに向けて捲し立てた。
「小娘ども。俺様の本当の力を見せてやる」
 そう言いながら土偶魔人は、周囲にいた戦闘員たちに、その場から退去するよう合図し、戦闘員は一斉にその場から散った。
「俺様のシャドー光線を受けてみよ」

04-43-09.png

 土偶魔人の頭部に埋め込まれた真っ赤な石が赤い色の眩しい閃光を放ち、その光が絵里香たち目掛けて降り注いだ。
「キャッ!」

04-43-10.png

 絵里香たちは眩しさに顔を覆った。光は絵里香たちを覆い、その後ろに鮮明な影が形成された。そしてその影が絵里香たちから離れて、人の形になったかと思うと、やがて絵里香たちと全く同じ姿になった。
「な、何なのあれ・・」
「私たちと同じ姿になってる」

04-43-11.png

04-43-12.png

「見たか小娘ども。これこそ影エンジェルス。つまりお前たちのコピーだ」
「コピー?? 影エンジェルス?」
 形成されたのは、絵里香たちエンジェルスと全く同じ姿・・ いや・・ よく見ると若干の違いがあった。コスチュームは絵里香たちと比較すると、全体的に色が濃い目で、肌の色も濃い目。そして顔つきは絵里香たちと違い、鋭い目つきになっていた。
「ケッケッケッケーッ。影エンジェルスはお前たちにとって代わり、ネオ‐ブラックリリーの戦士として世界制服の尖兵となる。今日がお前たちの命日になるのだ。そして明日からはそこにいる影エンジェルスが、お前たちの代わりになぁる」
「そんな事させないわ!」
 絵里香たちは影エンジェルスに向かって身構えた。すると影エンジェルスも絵里香たちと同じ構えをした。
「聖奈子、美由紀、気をつけて!」
 絵里香たちは影エンジェルスに向かって、ジリジリと近づいていった。影エンジェルスも絵里香たちと全く同じ動きをしながら近づいてくる。
「アクアスマッシュ!」
 聖奈子がエネルギー波を放った。と同時に、影の聖奈子も同様にスマッシュを放ってきて、二人の中間でスマッシュが炸裂した。それを見た絵里香たちの表情に戦慄が走った。影エンジェルスは、自分たちと全くといっていいほど同じ動きをするからだった。遠くから様子を窺っていた土偶魔人は、ここぞとばかりに頭部の鉱石から、今度は青色の光を放った。光は影エンジェルスに降り注ぎ、光を浴びた影エンジェルスは、絵里香たちに向かって突進してきて、それぞれの武器を振り翳しながら襲いかかってきた。絵里香たちも武器を手に迎え撃った。
 絵里香は影絵里香のブレードを受け止めると、影絵里香に向かってハイキックをお見舞いし、キックが影絵里香にヒットした。
「あぐう・・・ !!!」
 同時に絵里香も自分の身体に激しい衝撃を感じて、その場に蹲った。
「うう・・・ こ・・ これは一体・・・ 」
 聖奈子と美由紀も同様だった。美由紀はバトンを交差させ、影美由紀に攻撃を仕掛けた。
「ライトニングストーム!」
 バチバチバチッ!!
「キァアァーッ!!」
 激しい電気ショックとともに、影美由紀と美由紀の体が同時に吹っ飛び、美由紀は地上にしこたま叩きつけられた。
「ぐ・・・ か・・ 体が痺れる」
「アクアトルネード」
「聖奈子ダメェーッ!!」
 聖奈子がトルネードを放とうとしたのを、絵里香が大声で叫んで止め、絵里香の声を聞いた聖奈子は、反射的にソードを引っ込めた。
「聖奈子、美由紀。私たちが奴等を攻撃してダメージを与えれば、同じダメージが私たちに降りかかってくるわ」
「ええっ!? そ、それじゃ・・ 攻撃出来ないってこと・・ 」
 絵里香の声を聞いた土偶魔人は、絵里香たちに向かって捲くし立てた。
「小娘ども。ようやく気付いたか!! そろそろ俺様の手でとどめを刺してやる」
 土偶魔人はポーズをとり、両目から破壊光線を発射した。絵里香たちと影エンジェルスの周辺で次々に光線が着弾し、絵里香たちは影とともに爆発と爆風に翻弄された。影エンジェルスがいるため、受けるダメージも普段の倍であるからたまったものではない。そしてついに破壊光線が絵里香たちを直撃した。
「キャアァーッ!!」
「アァァーッ!!」
 絵里香たちは絶叫とともに衝撃で吹っ飛ばされ、地面に激突して変身が解けた。
「うう・・・ 」
「ぐ・・・ 」
 絵里香たちは立ち上がろうにもダメージが大きすぎて、もはや戦う力など無かった。土偶魔人は勝ち誇ったように捲くし立てた。
「ケッケッケッケーッ!! いよいよエンジェルスの小娘どもの最後だ。影たちよ。小娘どもにとどめを刺せぇ」
 絵里香たちは、自分たちに迫ってくるであろう影エンジェルスを見据えた。が、土偶魔人の命令にもかかわらず、影エンジェルスは静止したまま全く動かない。それに気付いて、何かを悟ったのか、聖奈子は傍にあった石を拾うと、影エンジェルス目掛けて投げた。影エンジェルスは全く動かず、静止したままの影絵里香に石が命中した。が、絵里香たちの中で石が当たったダメージを受けた者はいない。
「そういう事か・・ 」
「聖奈子、どういう事?」
「奴等はあたし達がエンジェルスでないと、全く動かないって事よ。つまり生身のあたしたちにはダメージを与えられないのよ」
 絵里香は聖奈子の話を聞き、大体のことは理解したが、攻撃されたダメージが大きすぎて立ち上がる事が出来なかった。このままでは本当にとどめを刺されてしまう・・・

      *      *      *      *

「し・・ しまった・・ 影エンジェルスは、生身の小娘どものコピーではないから、変身していないとダメなのか・・・  ええい! ならば俺様の手で引導を渡してやる」
 土偶魔人は絵里香たちに接近しながら、攻撃態勢をとった。そして破壊光線を発射するというところで、突然土偶魔人の周辺で、次々と爆発が起きた。
「な、何事だ!!」
 そして爆発が土偶魔人を直撃し、土偶魔人は衝撃で吹っ飛ばされて、地面を一回転した。
「くそぉ!! 何処だ。何処から攻撃してきたのだ」
 土偶魔人は戦闘員とともに辺りを見回した。その時上空に黒い影が現れ、太陽を背にしてスカーレットエンジェルJrの姿の佐緒里が急降下してきた。
「エンジェルキック!」
 土偶魔人からは佐緒里の姿が逆光でよく見えず、気付いた時には佐緒里はすでに自分の直前に迫っていた。佐緒里のキックが土偶魔人を直撃し、土偶魔人は再び反動で吹っ飛ばされた。着地した佐緒里は、土偶魔人に向かってブレードの切っ先を向けて威嚇した。

04-43-13.png

「ネオ‐ブラックリリーの化け物! これ以上お前達の勝手にはさせない!」
「おのれ、ガキめ! お前もシャドー光線を喰らえ!」
「佐緒里ちゃん逃げて!」
 絵里香が叫んだが、土偶魔人は佐緒里目掛けてシャドー光線を放った。佐緒里はブレードで十字を切った。すると佐緒里の前にプリズム状の半透明な物体が出来て、シャドー光線はその物体にあたって光が拡散した。
「ば・・ 馬鹿な」
「今度はこっちの番よ! エンジェルスマッシュ!」
 佐緒里がブレードの切っ先を土偶魔人に向けると、球体のエネルギー波が土偶魔人に向かって飛んでいき、土偶魔人を直撃した。
「ケケケケーッ」
 土偶魔人は奇声を上げながら反動で尻餅を突いた。身体の一部からはブスブスと煙を吐き出している。
「おのれ。このガキ!」
 土偶魔人は右手を上げた。すると、静止していた影エンジェルスが、土偶魔人の頭部の鉱石の中に吸い込まれた。
「ひとまず引き揚げだ。今度は必ず皆殺しにしてやる」
 そう言うと土偶魔人は戦闘員たちとともにその場から消えた。それと入れ替わるように、美紀子が芳江を連れて、絵里香たちの傍まで駆け寄ってきた。佐緒里も変身を解いて駆け寄ってきた。
「みんなしっかりして」
 絵里香たちはヨロヨロと立ち上がった。
「この場はとにかく逃げるわよ。急いで」
 美紀子はふらついている絵里香の手を取り、自分の肩にかけた。
「絵里香、しっかりして」
 聖奈子と美由紀も、それぞれ佐緒里と芳江が肩を貸してやった。

      *      *      *      *

「ゼネラルダイア! 土偶魔人の作戦の失敗をどう償うのだ!?」
 アジトの指令室では、ゼネラルダイアが大首領のメッセージを聞いていた。
「大首領様。お言葉ですが、作戦に失敗したわけではありません」
「黙れ!! 影エンジェルスを作り出し、小娘どもと戦わせて共倒れにするはずが、小娘どもがエンジェルスでなければ、影エンジェルスは全く役に立たないではないか」
 大首領クイーンリリーは、怒りをあらわにして捲し立てた。
「大首領様。このような事態は想定内の事です。こういう事態を予測し、既に次の手は打ってあります」
 ゼネラルダイアは戦闘員に命令した。
「土偶魔人を此処へ呼べ!」
「イーッ」
 戦闘員が指令室を出ていき、しばらくして土偶魔人が指令室に入ってきた。
「土偶魔人。出頭しました」
「土偶魔人。影エンジェルスは、小娘どもがエンジェルスでなければ、全く能力を出せないという事だが」
「その通りです。あくまでもエンジェルスのコピーであり、エンジェルスと戦わせなければ、ダメージを与える事は出来ません。生身の小娘相手ではコピーにはならないのです」
「分かった。ならば次の手は打ってある。影エンジェルスをここに出すのだ」
「かしこまりました」
 土偶魔人は頭の鉱石から光を放った。するとエンジェルスの黒いシルエットが光の中から浮かび上がり、やがて影エンジェルスが実体化してゼネラルダイアの前に立った。
「この影エンジェルスを改造人間にして、にせエンジェルスを作り出す。そうすれば、影エンジェルスの弱点を解消出来る。改造するための人間もすでに用意してある。土偶魔人。お前にはそのための時間稼ぎをやってもらう。どんな手段を使ってでも、小娘どもを始末しろ。行け!!」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 土偶魔人は戦闘員を引き連れて、指令室から出た。その様子を見届けてから、ゼネラルダイアは指令室を出て、影エンジェルスを伴って手術室へ向かった。手術室では白衣姿の戦闘員たちが、手術用の人間を3人用意して待機していた。3人の人間はすべて女性で、凶悪犯罪を犯して死刑判決が下され、全国の刑務所や拘置所内に収監されていた者たちであり、改造人間用として奪ってきたのである。
「さっそく改造手術を開始する。準備しろ」
「イーッ!」
 手術台の上には麻酔で眠っている3人の女性が拘束状態で並べられ、頭を向いている方に、影エンジェルスの3人がそれぞれ立たされた。戦闘員の一人がスイッチを入れると、影エンジェルスの頭上から透明な円筒形の物体が降りてきて、影エンジェルスにそれぞれ覆い被さった。
「手術開始!」
 別のスイッチが入れられ、円筒形の物体が眩しく光って、中でバチバチっと火花が散り、強力な電流が流れた。そして物体から出ているケーブルを伝わり、手術台の上に寝ている女性たちの体も、電流と特殊な光線が浴びせられた。

      *      *      *      *

「え?? あなたたちの影?」
「そうです美紀子さん。あの土偶の化け物が真っ赤な光を出して、私たちに降り注いで、それで私たちの影が出来て、その影が私たちを襲ってきたんです」
「厄介なのは、あたしたちと全く同じ動き、同じ攻撃力をもっていて、あたしたちが攻撃すると、同じ攻撃が返ってくるのよ」
「てっとり早く言えば、私たちが奴らに与えたダメージと、全く同じダメージが私たちに降りかかってくるのよ」
「絵里香、他にその魔人の特徴は分る?」
「確か・・ 頭に真っ赤な石がありました。その石から真っ赤な光を出すんです」
 絵里香の話を聞き、美紀子は一瞬考え込んでから言った。
「みんなちょっと待ってて」
 美紀子は何かを思ったかのように、席を立つと店内から自分の部屋へ行った。美紀子がいなくなって、芳江が絵里香たちを問い詰めた。
「あなたたち・・ いったい何者なの? あの姿といい、身のこなしといい・・ それに私やあなたたちを襲ってきた変な連中・・ もう何が何だか分からないわ。そういえば部活の時も、何だかおかしな行動が目立ったし・・ 藍原先生が適当に言い繕ってたけど、私、納得できないわ」
 絵里香が答えた。
「先輩は、出来る事なら知らない方がいいと思います。もし知ってしまえば先輩が奴等に狙われてしまう」
「何言ってんのよ。もう狙われているじゃないの」
 芳江の声はもう泣き出しそうだった。そこへ美紀子が戻ってきた。
「藤巻さん。落ち着いて。私が絵里香たちの代わりに話をするわ」
 そう言いながら美紀子は、真っ赤な色をした宝石のような石をテーブルの上に置いた。
「絵里香たちが言っていた石は、これじゃないの?」
「これ! この石です。これと同じものが、化け物の頭についていました」
「この石はデビリューム鉱石といって、地球上の物質ではないの」
「デビリューム・・ つまり宇宙の石って事ですか?」
 美紀子は無言で頷くと、話を始めた。

04-43-14.png

「この石には特別な性質があって、特殊な光をあてると真っ赤な光を出して、物体・・ しいて言うと生き物の特殊な影を作り出す事が出来るのよ。つまりあなたたちはその赤い光を浴びて、影エンジェルスを作られたという事よ。その影の特徴については、もう話すまでも無いわね」
 絵里香たちは生唾を飲み込んだ。

04-43-15.png

「でも、影は私たちが生身の人間だったら、襲ってこないしダメージも受けない」
「だからって言って、あたしたちがエンジェルスにならなければ、奴等とは戦えないよ」
「その心配はないわ。これがあればね」
 そう言って美紀子はデビリューム鉱石を指差した。
「この鉱石は二つあれば、一つが光を出すと、もう一つがその光を吸収する性質があるのよ。だから魔人が光線を発射した時、この鉱石をかざせば、魔人の放った光線は全てこっちの鉱石に吸い込まれてしまうという事よ。だからあなたたちがエンジェルスになっても大丈夫だという事。でも・・・ 影になったあなたたちのコピーは厄介な存在だわ」
 その時聖奈子が何かを閃いた。
「だったらその性質を逆手に使えばいいんだわ」
「聖奈子、どういう事?」
「コピーがあたしたちと同じ動きをするなら、あたしたちがあの土偶の化け物を攻撃すれば、コピーも同じ事をすると思うよ」
「そっかぁ・・ なんでそんな事に気付かなかったんだろう。聖奈子やっぱり頭いい」
「聖奈子。いい発想なんだけど、既に影の弱点と欠点が分かっている以上、奴等がそのまま放っておくはずがないわ。何らかの策を練ってくると思うわ。たとえば影を改造人間にするとか・・」
「絵里香の言う事もあたってるわね。改造人間か・・ 私たちのニセ者を使って、良からぬ事を企んでいるかもしれない」
「美由紀、どういう事よ」
「単純な事なんだけど、ニセ者を使って作戦を遂行すれば、私たちが出てきた時に、その非難は私たちに向けられるって事よ」
「そんな事になったら厄介ね・・ 私たちエンジェルスがみんなにとって敵になってしまうわ」
 絵里香の一言で、聖奈子も美由紀も何も言えなくなった。偽エンジェルスが魔人として動き出せば、絵里香たちは悪の手先にされてしまうからだ。カウンターにいた佐緒里と孝一も、黙って話を聞いているだけだった。
「佐緒里。ちょっとこっちへ来て」
 美紀子はカウンターにいた佐緒里を呼び寄せた。
「今回は佐緒里も絵里香たちと一緒に戦うのよ。佐緒里はこれを持って行って」
 美紀子は佐緒里にデビリュームを渡した。
「はい。叔母様」

       *      *      *      *

 そして翌日・・
 絵里香たちは学校にいた。ネオ‐ブラックリリーの事が気がかりで、授業に身が入らず、3人とも終始上の空だった。その日の授業が終わって、聖奈子は担任の詩織に呼ばれて職員室にいた。
04-43-16.png
「清水さん。どうしたのよ。おかしいのはあなただけじゃなくて、赤城さんもだったけど、もうすぐ学年末試験なのよ。しっかりしなきゃ」
「すみません」
「別に謝る事は無いよ。大方の見当はついてるから。でも、学業をおそろかにしてはダメよ」
「はい」
「もう行っていいわよ。これから部活でしょ?」
「はい。それじゃ失礼します」
 聖奈子が職員室から出て行って、詩織は一つため息をついた。
「やっぱり・・ ネオ‐ブラックリリーが気になるんだな・・ そういえば昔、美紀子もそうだったっけ・・・」

 絵里香たちは部活で体育館にいた。新年度になれば新入生が入ってくるため、新入部員の勧誘のための公開演技の練習に余念が無かった。
 やがて部活が終わり、絵里香たちは体育館から出てきた。絵里香たち三人が体育館から出てくると、入り口の横に芳江が立っていて、絵里香たちに向かって手招きで合図した。
「先輩・・ 」
 通り過ぎていく部員たちが芳江に向かって会釈しながら、校舎の方へ小走りに駆けていく。絵里香たちは芳江と向かい合っていた。
「紅林さんから話を聞いたわ。昨日は取り乱してゴメンね。あなたたちはエンジェルスという正義の味方の戦士だったのね」
04-43-17.png
「正義の・・ そんな立派なものじゃないです」
「私を襲ってきた悪の秘密結社の事も聞いたわ。あなたたちはあんな物騒な連中相手に今まで戦っていたのね。驚いた・・・ みんな頑張って。絶対に死なないでよ」
 絵里香たちは無言で頷いた。
「言いたかったのはそれだけ。じゃ」
 そう言って芳江は踵を返すと、絵里香たちの傍から去っていった。
「私たちも早く行こう」
「うん。やつらの動きが気になるわ」
「美紀子さんが何か新しい情報を仕入れているかもしれない」
 絵里香たちは校舎に向かって小走りに駆け出した。

      *      *      *      *

「あら・・ 藤巻さん」
「あ・・ 藍原先生」
 絵里香たちと分かれた芳江は、校門の前で詩織と鉢合わせした。
「この前卒業したばかりなのに、もう学校が恋しくなったの?」
「いえ・・ そんなんじゃ・・ ちょっと後輩達に会いに」
「それはそうと、もうすぐ仙台へ行くんでしょ? 体に気をつけてね」
「ありがとうございます。先生」
「少し一緒に歩こうか」
「はい」
 芳江は詩織と一緒に歩き始めた。そしてその様子を窺っている怪しい影が・・・
「あの女はこの前の奴だ」
「土偶魔人様に報告しろ」
「イーッ」

 芳江は詩織と話しをしながら、新間川の傍まで来た。堤防の上をずっと歩いていけば、芳江の家までの帰り道である。
「それじゃ先生。私はここで」
「じゃ、藤巻さん。あっちへ行っても頑張って」
 その時だった。突然二人の周辺が薄暗くなり、二人とも辺りを見回した。
「(まさか・・ )」
 詩織が呟くと同時に、二人の周りに戦闘員が現れた。
04-43-18.png

04-43-19.png

「やっぱりネオ‐ブラックリリー!」
「先生。この連中・・ この前私を襲ってきた奴等です」
「分かってるわ。藤巻さん早く逃げて」
 詩織は芳江を連れて逃げ出した。が、あちこちから戦闘員が現れて、二人は堤防下の河川敷に追い立てられ、周りを取り囲まれた。さらに土偶魔人も現れた。詩織は携帯を取り出すと、『緊急』の発信を送った。同時に土偶魔人の頭の部分の鉱石が赤く光って、シャドー光線が二人に向けて発射された。
「キァアアーッ・・・ 」
 二人が叫ぶと同時に、二人の後ろに黒い影が現れ、そのまま二人の姿になった。
「お前達は暫く眠っていろ」
 土偶魔人は目をピカッと光らせた。詩織と芳江はビクッとした顔とともに、白目をむいて気絶した。そして土偶魔人は二人の影を鉱石の中に吸い込んだ。

 ANGELに向かっていた絵里香たちの携帯に、緊急受信の着信音が響いた。
「聖奈子、美由紀。緊急着信だわ」
 絵里香たちはその場で足を止めると、それぞれの携帯を開いた。
「美紀子さんだ」
 絵里香は発信モードにして美紀子に電話した。
「もしもし・・・  はい・・ 藍原先生から緊急通信?  はい・・ ハイ分かりました」
 絵里香は携帯を切ると、聖奈子と美由紀の方を向いた。
「聖奈子、美由紀。緊急通信よ。美紀子さんと佐緒里ちゃんも発信源に向かっているわ」
「場所は!?」
「近いわ。新間川の河川敷よ」

      *      *      *      *

 絵里香たちは息を切らしながら、堤防を越えて河川敷に下りてきた。ここは先日絵里香たちが襲われた場所より少し下流の場所だった。
「電波の発信源はこのあたりよ」
「何もいないね・・・ 」
 絵里香たちはあたり一体を見回し、聖奈子が倒れている詩織を見つけた。
「絵里香、美由紀。あそこ!!」
「藍原先生だわ」
 絵里香たちは、倒れている詩織の傍へ駆け寄った。手には発信モードになったままの携帯電話が握られている。
「先生。しっかりしてください」
「ん・・ 」
 詩織は目を覚ますと、周りを見回した。
「先生。大丈夫ですか?」
「あなたたち・・ 藤巻さんは? 藤巻さんは何処?」
「先輩ですか?」
「先輩も一緒だったの?」
「もしかして、奴等に捕まったんじゃ・・ 」
「その通り!! 女はここにいるぞ」
 土偶魔人と戦闘員が何処からともなく現れ、土偶魔人が捲くし立てた。土偶魔人の傍らには、後ろ手に縛られた芳江が立っていた。
「助けて。たすけてぇーッ」
「卑怯者。先輩を放せ」
「ケーッケッケッケ。言われなくても開放してやる。人質など無くてもお前達小娘ごときにやられる俺様ではないのだ」
 土偶魔人は縛られたままの芳江を突き飛ばした。
「キャッ」
 突き飛ばされた芳江は絵里香たちが受け止め、縄を解いた。
「小娘ともども皆殺しだ。お前達のために、特別なお客さんたちを用意しておいたのだ」
 土偶魔人は頭の鉱石から青い光を出した。光が地面に達すると、そこから今まで影にされた人たちが影人間として現れた。その中には詩織と芳江の姿もあった。影人間達は絵里香たちと詩織、芳江の周りを取り囲んだ。
04-43-20.png
「冥土の土産に教えてやる。お前達がそこにいる影人間たちを倒せば、本体も同じように死ぬのだ。お前達が守るべき人類をお前達の手で殺すのだ」
「何ですって!?」
「奴等・・ とんでもない事を・・ 」
「く・・・ 卑怯なやつらめ・・・ 」
 土偶魔人が右手をサッと上げた。影人間達が一斉に歩き出して、絵里香たちに迫ってくる。
「ケーッケッケッケ。小娘ども。これでは手も足も出まい。俺様はここで高みの見物だ」


「そうはさせないわよ!!」
「何だと!?」
 突然聞こえてきた声に、土偶魔人は声がした方を振り返った。そこには佐緒里と美紀子が立っていた。
「お前達に勝手な真似はさせない! スカーレットスパーク‐エンジェルチャージ!!」
 佐緒里の体が眩しい光に包まれ、佐緒里はスカーレットエンジェルJrに変身した。
04-43-21.png
「正義の戦士、スカーレットエンジェルJR!」
「くそっ! 忌々しいガキめ! お前もシャドー光線で影人間を作ってやる」
 土偶魔人は頭の鉱石から真っ赤な光を発射した。
「佐緒里! 今よ!」
 佐緒里は美紀子から預かっていたデビリューム鉱石を空に掲げた。土偶魔人の放ったシャドー光線は全て佐緒里の持っている鉱石に吸い込まれた。
「こ・・ これは・・ こんな事が・・ な、何故お前がそれを・・ 」
 美紀子が佐緒里の前に出て、土偶魔人に向かって捲くし立てた。
「私たちを見くびっていたようね。私は元はスカーレットエンジェル。かつて宇宙でこの鉱石を手に入れているのよ」
 佐緒里は、持っていたデビリューム鉱石を影人間達に向けた。鉱石が赤い光を出し、絵里香たちの周りにいた影人間達が実体からシルエットになり、そのまま鉱石の中に吸い込まれた。
「し・・ しまった。おのれこのガキ」
 土偶魔人は地団太踏んだ。
「これで影にされた人たちは大丈夫よ。絵里香さん、聖奈子さん、美由紀さん。みんな変身して!」
 絵里香たちは一斉にポーズをとり、かけ声とともに変身すると、土偶魔人に向かって身構えた。
「炎の戦士。エンジェルレッド!」
「水の戦士。エンジェルブルー!」
「光の戦士。エンジェルイエロー!」
「私たちは正義の戦士。美少女戦隊エンジェルス!!」

「おのれ小癪な。かかれえっ!」
 戦闘員が奇声を上げながら、一斉に襲いかかってきた。
「行くわよみんな!!」
「オッケー」
 絵里香たちは向かってくる戦闘員目掛けて突進し、格闘戦になった。美紀子はスティック片手に、佐緒里はブレード片手に詩織と芳江の前に立った。
 戦闘員は一人また一人と絵里香たちに倒された。
「おのれ小娘ども」
 土偶魔人が出てきて、絵里香たち目掛けて破壊光線を放った。
 ドオォーン!!
「イィーッ」
 光線が着弾し、爆発に巻き込まれた戦闘員が吹っ飛んだ。
「みんな。奴の破壊光線に気をつけて」
 土偶魔人は立て続けに破壊光線を放ってきて、絵里香たちの周辺で次々と爆発し、爆風が絵里香たちを襲った。その中で聖奈子が爆風の中を駆け抜け、土偶魔人に飛び掛った。
「喰らえ。化け物!」
 飛び掛った聖奈子は土偶魔人にパンチをお見舞いしたが、土偶魔人はそれをあしらって、聖奈子に蹴りを入れた。
「あぐうっ・・ 」
 聖奈子は呻き声とともに体がボールのように跳ね、地面を転がった。土偶魔人はここぞとばかりに聖奈子に襲いかかり、聖奈子の上に覆い被さると、両手で首を締め上げた。
「死ね! 小娘」
「ぐう・・・ く、苦しい・・・・ 」
「聖奈子が危ない!!」
 絵里香はブレードを出すと、土偶魔人に向けて投げつけた。が、気付いた土偶魔人は聖奈子の首を締め上げていた手を離すと、ブレードを払い落とした。続いて美由紀がバトンをクロスさせて投げつけた。
「ライトニングブーメラン!」
 土偶魔人は飛んできたバトンを手でつかんだ。その途端、バチバチバチッと電撃が土偶魔人に降り掛かった。
「ケケケケーッ」
 土偶魔人は電撃のショックで飛び上がり、聖奈子は隙を見て両足を踏ん張ると、土偶魔人を蹴り上げた。
「よくもやったな。土偶の化け物! 今度はあたしの番よ」
 聖奈子はソードと楯を出すと、土偶魔人にソードの切っ先を向けた。
「アクアスマッシュ!」
 エネルギー波が発射され、土偶魔人を直撃した。
「ケケケーッ!!」
 至近距離でエネルギー波を喰った土偶魔人は、絶叫とともに反動で吹っ飛ばされ、地面を転がった。
「クソーッ! おのれぇ」
 土偶魔人は破壊光線を発射し、聖奈子は反射的に楯を自分の前に翳した。光線が楯にあたり、聖奈子は衝撃と反動で後ろに吹っ飛んで尻餅をついた。一方跳ね返された光線は土偶魔人にそのまま降り掛かり、爆発とともに土偶魔人の身体がバラバラになって、地面を転がった。
「やった・・・ 」
 聖奈子はホッと息をついたが、後ろで絵里香が怒鳴った。
「聖奈子! 油断しちゃダメ。奴はまだやられていないわ」
「エ? キャッ」
突然聖奈子の前に土偶魔人の腕が飛んできて、聖奈子は反射的に避けた。よく見ると土偶魔人のバラバラになった身体が空中を飛んで襲い掛かってくる。

04-43-22.png

「小娘ども! 覚悟しろ」
 土偶魔人のバラバラになった身体が、代わる代わる絵里香たちに襲いかかり、絵里香たちは土偶魔人の攻撃に翻弄された。その様子を見ていた美紀子は、絵里香たちに向かって言った。
「みんな。化け物の頭の部分を狙うのよ!」
 美紀子の声は絵里香たちに聞こえたが、土偶魔人はバラバラの状態で代わる代わる攻撃してくるため、狙いがつけられなかった。
「(これじゃ埒が明かない。こうなったら・・ ) 聖奈子、美由紀。あたらなくてもいいから、スマッシュを手当たり次第に撃つのよ」
「わ、わかった。アクアスマッシュ!」
「ライトニングスマッシュ!」
「ファイヤースマッシュ!」
 絵里香たちのスマッシュが、土偶魔人が飛んでいる空へ向けて、滅茶苦茶に放たれた。絵里香の考えでは、手当たり次第にスマッシュを撃てば、スマッシュが弾幕になって、『下手な鉄砲数撃てば当たる』というものだった。こんどは土偶魔人が空中で、絵里香たちの放ったスマッシュに翻弄され、ついに頭部に命中した。
「ケケケケケーッ」
 土偶魔人の頭部がフラフラと地上に落ちてきて、バラバラになっていた身体が元に戻った。体中からはブスブスと白煙が上がっている。
「今だ。聖奈子、美由紀!」
「オーケー」
「オッケー」
 絵里香たちは武器を出して、その切っ先を土偶魔人に向けた。
「トリプルエンジェルトルネード‐アタック!!」

04-43-23.png

 三つのエネルギー波が渦になって土偶魔人に吸い込まれた。
「ケケケケケーッ! ケーッ!!!」
ドオオォーン!!!!

04-43-24.png

 土偶魔人は絶叫とともに木っ端微塵に吹っ飛び、その後には静寂が戻った。絵里香たちはお互いに向き合い、ハイタッチした。が、絵里香の表情は再び厳しくなった。
「土偶の化け物は倒したけど、私たちのコピーはまだ・・・ 」
「そうだった・・ あたしたちのニセ者がまだいるんだわ」
「今度は何時・・ 何処で・・ 」
 絵里香たちがそんな会話をしていると、突然空から大きな声が響いてきた。
「小娘ども! お前達のコピーがもうすぐ完成するぞ。それまで首を洗ってまっていろ。ハーッハッハッハッハ」
「あれはゼネラルダイアの声だわ」
 美紀子がそう言いながら絵里香たちの方へやってきて、絵里香たちは変身を解いた。絵里香たちは声が聞こえてきた空を見上げながら、新たなる脅威を感じ取っていた。


      *      *      *      *

 土偶魔人は倒れ、魔人に影人間にされた人たちは、みんな元に戻った。しかし、絵里香たちエンジェルスの影が、改造人間として絵里香たちの前に立ちふさがり、牙を剥いてくる日は近い。負けるなエンジェルス。



      -----------------------------------------------------

 次回予告
 第44話『ネオ‐ブラックリリー 沖縄占領大作戦』

 影エンジェルスを偽エンジェルスに改造したネオ‐ブラックリリーは、東京と沖縄での二面作戦を開始。東京で偽エンジェルスを使ってエンジェルスを足止めし、その間に本命である沖縄占領作戦を実行しようとしていた。
 たまたまコマーシャルのロケで沖縄に来ていた美由紀は、沖縄でのネオ‐ブラックリリーの作戦に遭遇。一人で戦う美由紀は窮地に追い詰められる。偽エンジェルスと戦っている絵里香と聖奈子は、はたして間に合うのか・・・

 ※次回は第39話・40話にゲストとして登場した玉城友里が再度登場し、美由紀と共演します。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第44話『ネオ‐ブラックリリー 沖縄占領大作戦』にご期待ください。

スポンサーサイト

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学