鷲尾飛鳥

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第44話『ネオ‐ブラックリリー沖縄占領大作戦』

2014年 06月15日 23:07 (日)

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 「やったーっ! 春休みだあーっ」
 絵里香たちが通っている明峰学園高校は、学年末試験と試験休みを経て、終業式が終わり、春休みになった。今まで女子高だった明峰学園は新学期から男女共学になるので、学校ではその準備に忙殺されていた。また、明峰学園は学校経営上の関係から、3年前から東京の城北大学と業務提携しており、城北大学傘下の付属高校として、大学への推薦制度も確立していた。

 さて、終業式を終えて学校から出た絵里香たちは、ANGELに向かう途中のコンビニに寄り、そこから出てきたところだった。
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「あーあ・・・ ついにあたし達も3年生になるのか・・」
「高校生活って、長いようで短いのね」
「3年になれば、今度は受験が迫ってくるわね。聖奈子は国立狙ってるんでしょ?」
「勿論! 将来は教師になって、 明峰学園に戻って来るつもりよ」
「そっか・・ 大学へ行ったら、みんな離れ離れになっちゃうんだ・・ 」
「美由紀はどうするの?」
「私は卒業したら、両親がいる北海道へ行かなきゃならないのよ。今の家は、来月には姉夫婦が子供連れて引っ越してくるし・・ 篤志は新学期から北海道の学校へ転校なのよ」
「そっか・・ 篤志君北海道へ行っちゃうんだ。美由紀も卒業したら北海道へ行っちゃうの?」
「うん・・ でも、大学はこっちを選ぶわよ。なにせ芸能界にデビューしちゃったからね」
「確かあの友里さんと同じ事務所だったっけ」
「そう」
 聖奈子と美由紀が話をしている傍で、絵里香はずっと黙ったまま歩いていた。
「絵里香、ずっと黙ったままだけど、絵里香は将来どうすんの?」
「私は・・・ 進学や進路よりも、まず・・ 」
「やっぱり・・ ネオ‐ブラックリリーの事が気になるのね」
 絵里香は無言で頷いた。
「私たちの偽者が、何時・・ 何処で・・ どんな形で現れるのか・・ 」
 その時美由紀の携帯に着信が入った。
「誰だろう・・・ アレ? 友里さんだわ・・ はい美由紀です。はい・・ えっ? コマーシャルの共演? 私と友里さんが? 良いけど・・・ はい。分かりました。それじゃ」
 美由紀は携帯をポケットに入れ、傍にいた聖奈子が美由紀に聞いた。
「何だったの美由紀」
「コマーシャル出演の依頼が来ちゃった・・・ 」
「コマーシャル?」
「何のコマーシャルかは分からないけど、友里さんがこれから詳しい話をするから、会ってくれないかって」
「ふうん・・ 」
「それじゃ私、行くからここで」
「頑張ってね美由紀」
 美由紀は絵里香と聖奈子に手を振ると、駅の方へ向かって駆けていった。その後ろ姿を見ながら、絵里香は聖奈子に話しかけた。
「聖奈子、私一旦家に帰ってからANGELへ行くから」
「分かった。あたしもそうするね。それじゃ」
 絵里香と聖奈子もお互い別れて、それぞれの家へ帰っていった。

      *     *     *     *

「ゼネラルダイア様。偽エンジェルスの改造が完全に終わりました」
「今度の作戦に使うオニヒトデ魔人様の改造手術も終了しています」
「よし。司令室へ出頭させろ」
「イーッ」
 戦闘員が司令室から出て行き、暫くして、科学者グループを先頭に、にせエンジェルスが入ってきて、続いてオニヒトデ魔人も入ってきた。
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「我が優秀なる科学者諸君。大儀であった」
「ははっ。お褒めに預かり光栄でございます。ゼネラルダイア様」
 科学者グループが退室し、指令室内には偽エンジェルスとオニヒトデ魔人、数人の戦闘員たちが残った。
「さて・・ 我がネオ‐ブラックリリーは、これより一大プロジェクトを遂行する。その場所はここだ!」
 室内にどよめきが起こり、ゼネラルダイアは壁に掲げられた地図を指差した。その指先には沖縄を含めた先島・八重山などの島々があった。
「ネオ‐ブラックリリーは、この沖縄を含めたこれらの地域を全て占領し、ここに世界征服のための拠点を築く」
 その瞬間室内に再びざわめきが起きた。
「まずオニヒトデ魔人」
「ハハーッ」
「お前は直ちに沖縄へ向かい、今度の作戦の下準備のために先行しているウミガメ魔人と、工作員達に合流し、作戦を開始せよ。私も後で向かう。行けッ!!」
「ははーっ。かしこまりました。ゼネラルダイア様。ヒヒヒヒヒーッ」
 オニヒトデ魔人はゼネラルダイアに敬礼すると、指令室から出て行った。そしてゼネラルダイアは偽エンジェルスの3人の方を向いた。
「偽、いやネオ‐ブラックリリーエンジェルスの諸君。お前達には別途任務がある」
 そう言ってゼネラルダイアはテーブルの上に写真を置いた。その写真に写っていたのはエンジェルスの3人・・・・
「お前達三人は、この小娘どもを片付けるのだ。ネオ‐ブラックリリーの沖縄占領作戦を成功に導くため、小娘どもをこっちに足止めしろ。あわよくばこの小娘どもになりすまし、悪事の限りを尽くせ」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様。必ずや、この小娘どもを血祭りに上げ、3人の首を大首領様に献上いたしましょう」
「よし。行け。このアジトはお前達が自由に使ってよい」
「ははーっ」

      *     *     *     *

 翌日の昼・・・
 絵里香と聖奈子はANGELで雑談していた。孝一は美紀子の買出しの手伝いのために留守で、カウンターでは絵里香たち同様、春休みになった佐緒里が二人の会話を聞いていた。
「しかし・・ 本当に奴等全然音沙汰が無いね」
「うん・・ 私たちの偽者を作り出したんだから、奴等のやり方からすれば、とっくの昔に行動を起こしていてもいいはずなんだけど」
「絵里香さん、聖奈子さん」
「何? 佐緒里ちゃん」
「美由紀さんがいないけど、何かあったんですか?」
「美由紀は今、沖縄にいるわ」
「え? 沖縄・・ ですか?」
「友里さんと一緒にコマーシャルの撮影なんだって」
「友里さんって、あの・・ 聖光美少女戦士ユリの?」
「そう。あたしたちがこうして、奴等の動きを気にしてるのに、全くのんきなもんだわ」
「聖奈子。しょうがないよ。仕事なんだから」
「分かっているって。でもいいなぁ・・ 沖縄かぁ・・ 」

      *     *     *     *

 そしてこちらは沖縄の某所にある海岸の砂浜・・・
「はーい。二人ともこっちへ駆けて来るポーズお願い」

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 そこでは美由紀と友里が撮影で、カメラに向かってポーズをとっているところだった。内容はスナック菓子のコマーシャルで、美由紀は友里とのペアでこの仕事のために沖縄に来ていたのだ。美由紀は友里の勧めで友里がいる芸能事務所に入り、“城野みゆき”として芸能活動をスタートさせていたのである。
「ハーイオッケー!!」
 一通りの撮影が終わって、スタッフの人が二人の傍へ駆け寄り、タオルをかけた。沖縄とはいえ、まだ3月だったので、真夏のような暑さではなく、肌寒かった。暫くして友里とみゆきのマネージャーの和歌子がやってきた。
「友里ちゃん、みゆきちゃん、ご苦労様。撮影が上手くいったから、もうこれで終了だそうよ」
「えっ? もう終わっちゃったんですか?」
「予定より早く終わっちゃって、スケジュールが大幅に変わっちゃったわね。他の仕事は今のところ無いから、友里ちゃんは今から5日間オフにして良いわ」
「ええっ?? 5日もですか?」
「確か友里ちゃんの実家はこっちだったわよね」
「はい。でも、この沖縄本島じゃなくて、久米島なんですけど」
 友里は海の方を指差しながら言った。
「久しぶりで帰ったら? 全然行ってないんでしょ。来週からドラマの撮影が始まるし、それまでゆっくり休養しなさい」
「は、はい。それじゃ久しぶりで帰郷してきます」
「美由紀ちゃんはどうするの?」
「私は・・ みんなが待ってるんで、東京へ帰ります」
「えーっ?? 美由紀ちゃん。せっかく沖縄に来たのに、このまま帰っちゃうなんて勿体無いよ」
「でも・・・ 」
「そうだ。私の家へおいでよ」
「友里さんの?」
「そう。せっかく来たんだから、私に付き合ってくれたっていいじゃない」
「分かった。それじゃ友里さんに付き合います」
「やったぁ!」
 友里はそのまま美由紀に抱きついた。
「キャッ・・ 」
 その様子をたまたま居合わせた、ネオ‐ブラックリリーの戦闘員が遠くから見ていた。
「オイ! あれはエンジェルスの小娘ではないのか」
「そうだ。たしかにあの中の一人は・・・ 」
「何故こんな所にいるんだ。まさか・・ 作戦の秘密を知られたのか」
「待て! ここでどうこう言っても始まらん。ゼネラルダイア様に報告するんだ。行くぞ」
「イーッ」
 戦闘員たちは足早にその場から去った。

      *     *     *     *

「何!? エンジェルの小娘が沖縄にいるだと!? それは確かか?」
「イーッ! 間違いありません。ゼネラルダイア様。もしかすると我々の秘密を小娘どもに知られているのでは?」
 沖縄のアジトに移動してきたゼネラルダイアは、アジトの様子を見て愕然とした。アジトの指令室内には重苦しい雰囲気が漂っていて、戦闘員たちは作戦の秘密が漏れているのではないかと口々に言い合い、お互いが疑心暗鬼に陥っていた。
「何をうろたえているのだ。ゼネラルダイア!」
 突然スピーカーから大首領の声が響いた。
「エンジェルスの小娘どもがいるからといって、このザマは何だ!」
「しかし大首領様・・ この作戦は我がネオ‐ブラックリリーの最重要作戦であり、もし秘密が漏れていたのであれば、作戦自体が瓦解してしまいます」
「ゼネラルダイア。本当に小娘どもに秘密が知れているのか!?」
「そ・・ それは・・ 」
「馬鹿者!! 状況を確かめもせずに、何たるザマだ!! 小娘がいるのは偶然に過ぎぬ。ゼネラルダイア! お前はお前の任務を忠実に遂行すればよいのだ」
「か、かしこまりました。大首領様」
 通信が終わり、ゼネラルダイアは指令室内にいる戦闘員たちのほうへ向き直った。
「聞いての通りだ。エンジェルスの小娘を見た者は前へ出ろ!」
「イーッ。我々であります」
 ゼネラルダイアは電光剣を抜くと、戦闘員に切っ先を向け、放電弾を放った。

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「イーッ」
「グギャアァーッ」
 ゼネラルダイアの前に出てきた戦闘員は絶叫とともに一瞬にして消滅した。
「この役立たずの愚か者どもが。ろくに調べもせずに騒ぎおって!」
 ゼネラルダイアは残っている戦闘員の方に向き直って言った。
「岩窟島の要塞建設はどうなっているのだ」
「イーッ。オニヒトデ魔人様が合流し、現在順調に進行しているとの事です」
「先行している工作部隊と、ウミガメ魔人に連絡を入れろ」
「イーッ。かしこまりました」
 岩窟島は沖縄本島と久米島とを結ぶ線上にあり、本島から約5キロ離れた海上にある、周囲3キロほどの無人島で、ネオ‐ブラックリリーはこの岩窟島に目をつけ、ウミガメ魔人と工作部隊を先行させて、密かに要塞の建設をしていたのだ。そして作戦の隠蔽と牽制のため、偽エンジェルスを使ってエンジェルスを足止めしようという、したたかな戦法をとっていた。今度の作戦は絶対機密が条件であり、普通なら行われるはずの奴隷用の人間狩り等は一切行われなかった。また無人島であることと、島の周囲が絶壁になっていて上陸できず、さらに周囲の潮流の関係で、一般の船舶がこの付近を航行しないことも、ネオ‐ブラックリリーにとっては好都合だった。

    *     *     *     *

 コマーシャル撮影の翌日の午前中・・ 
 一隻の船が海上を航行していた。船は沖縄本島と久米島とを結ぶフェリーで、船には友里と美由紀が乗っていた。
「わーっ・・ 風が気持ちいい・・ 空も真っ青だし、海も凄く綺麗」
 美由紀はデッキで海を眺めていて、そこへ友里が来た。

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「美由紀ちゃん。楽しそうだね」
「うん・・」

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 美由紀はその時、海の向こうで何かが動いているのが見えた。
「ん・・ 今の何だろう・・ 」
「どうかしたの?」
 美由紀の目には、海の向こうにある岩窟島が映っていた。動いていた物体はその島の手前にあったが、すぐに見えなくなった。
「(気のせいかな・・・ ) ううん。何でもないよ」
 実は美由紀が見たのは、ネオ‐ブラックリリーのウミガメ魔人が海上に浮かんでいたところだったのだ。だが、距離が遠かったので美由紀にははっきりと認識できなかった。友里は美由紀の視線の先にあるのが、巌窟島だと分かった。
「美由紀ちゃん・・ あの島を見ていたんだね。あの島は岩窟島っていうのよ」
「岩窟島?」
「うん。島の周りが絶壁だらけで、そんな名前がついたっていうけど、周囲があの通りの絶壁で上陸できないし、あのへんは潮の流れが激しいんで、船は勿論、ダイバーやサーファーも近づかないわ」
 本島を出航して約3時間。船は久米島の港に入って岸壁に接岸した。数台の車が船から出て、美由紀と友里も他の客と一緒に船から降りた。岸では友里の両親が出迎えに来ていた。
「お父さんお母さんただいまぁ」
「お帰り友里」
「美由紀ちゃん、私のお父さんとお母さんだよ」
 友里は自分の後ろにいた美由紀を促した。
「お父さん、お母さん。紹介するね。私の友達で、同じ事務所にいる城野美由紀さん」
「よろしく」
 美由紀は軽くお辞儀した。
「こちらこそ、友里がいつもお世話になって。ゆっくりしていってね」
「はい」 

      *     *     *     *

 その頃鷲尾平では、偽エンジェルスが動き出し、その魔手が絵里香たちに徐々に迫ってきていた。第一中学校では今日が終業式で、学校から出てきた佳奈子と佐緒里が帰宅の途についていた。
「美由紀さん沖縄に行ってるの?」
「うん。玉城さんと一緒にコマーシャルのロケだって」
「玉城さんって、あのユリの・・ いいなあ・・ 私も行ってみたい。それにしても、美由紀さん芸能界にデビューしたんだ・・ 」
 その時突然二人の周辺が薄暗くなり、生暖かい風が吹いてきた。
「佐緒里ちゃん。何だか気味が悪い」
「佳奈子ちゃん。私から離れないで」
 何処からとも無く、ネオ‐ブラックリリーの戦闘員が姿を現し、二人の周りを取り囲んだ。
「出たわね。ネオ‐ブラックリリー!」
「カカレッ!」
「イーッ」
 戦闘員が襲いかかってきて、佐緒里は佳奈子を庇いながら戦闘員相手に戦った。
「待ちなさい。ネオ-ブラックリリー! 」
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 そこへ絵里香たちがエンジェルスの姿で現れ、戦闘員と格闘戦になった。
「助かった。お姉ちゃん達が来てくれた」
 佳奈子は喜んだが、佐緒里は表情を変えなかった。
「(おかしい・・ 絵里香さんたちとは違う・・ それに美由紀さんは沖縄にいるはず・・ まさか偽者・・・・  ) 佳奈子ちゃん。行くよ!」
「エ?」
 佐緒里は佳奈子の手を取ると、その場からダッシュして走り出した。
「ど、どうしたのよ佐緒里ちゃん」
「いいから早く!」
 佳奈子は何が何だか分からなかったが、佐緒里は全力に近い状態で佳奈子の手を引いて突っ走った。人通りの多い表通りに出たところで、佐緒里は足を止めて佳奈子の手を離した。
「ハァハァ・・ さ・・ 佐緒里ちゃん・・ い、一体何なのよ」
「佳奈子ちゃん。気づかなかった?」
「何が?」
「何で美由紀さんがいたかって事」
「あ・・ そういえば・・ 」
「二人ともどうしたの?」
 突然後ろから声をかけられて、佳奈子は体をビクッとさせ、佐緒里は振り向きざま佳奈子の前に立って身構えた。そこに立っていたのは美紀子だった。

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「どうしたのよ佐緒里。そんなに血相変えて」
「叔母様・・・ 」
 佐緒里はホッとした表情を見せて両手を下ろした。美紀子は佐緒里と佳奈子の顔色を見て、何かを感じた。
「(何かあったな・・・ ) こんな所ではなんだから、早くANGELへ行きましょう」
 美紀子は佐緒里と佳奈子を促し、一緒に歩き出した。その様子を近くのビルの屋上から眺めている怪しい視線が・・・
「クソッ・・ 一芝居うって奴等を人質にし、エンジェルスを誘き出して一網打尽にしようと思ったが、あのガキがいたおかげで失敗したな」
「いきなり出たのは失敗だった。確かイエローが沖縄にいるとの情報が入っていた。イエローが出たのはまずかったな」
「うむ・・ しかしあのガキは目障りだ。どうやらあのガキは我々の正体を知っているぞ。ゼネラルダイア様が言っていた、スカーレットエンジェルJrというのはあのガキか」
 眺めていたのは偽エンジェルスだった。佐緒里の咄嗟の行動を見て、自分たちが偽者だと見破られた事を悟ったのだ。
「エンジェルスの3人よりも、あのガキを先に片付けたほうがいい」
「よし! 作戦開始だ」
 偽エンジェルスの三人は、その場から消えた。

「エ? お姉ちゃん達の偽者?」
「そう。さっきのエンジェルスの三人は偽者よ。何を企んでいるのかは知らないけど、佳奈子ちゃんも気をつけて」
「分かった・・・ 」
 現在店には美紀子と佐緒里に佳奈子がいた。
「しかし、佐緒里ちゃんも凄いな。簡単に偽者だって見破ったんだから」
「雰囲気が違っていたし、それに沖縄にいるはずの美由紀さんがいたからよ」
 チリン・・・
 扉のベルが鳴り、扉が開いて絵里香が入ってきて、続いて孝一が入ってきた。
「絵里香さんに孝一さん」
 佐緒里が声をかけてきたが、絵里香は店内を見回した。
「アレ? 聖奈子まだ来てないの? そろそろ来ててもいいはずなんだけど」
「聖奈子さん? 絵里香さん一緒じゃなかったんですか?」
「聖奈子は全国統一模試で東京へ行ってるのよ」
 聖奈子は全国統一模擬試験を受けるので、東京へ行っていたのだ。試験が終わったらANGELへ行くといっていたので、頃合を見計らって絵里香と孝一はANGELへ来たのだった。
「美紀子さん。それじゃ私、孝一と一緒に一旦帰ります」
 絵里香は美紀子に挨拶すると、孝一と一緒に店を出た。

 その頃聖奈子は・・  自分の家に帰宅していて、部屋で着替えていた。
「佳奈子まだ帰っていないのか」
 聖奈子は呟きながら着替えを終えると、下の部屋に降りてきた。そこへ携帯に着信が入った。
「佳奈子だ・・ もしもし・・ うん・・ ええっ? エンジェルスの偽者が現れた? それで? うん・・ うん分かった。すぐ迎えに行くから」
 聖奈子は身支度をすると家から飛び出し、ANGELへ向かった。その途中で絵里香と鉢合わせした。
「絵里香。丁度良かったわ。あたし達の偽者が現れたって、佳奈子が言ってきたのよ。すぐANGELへ行くわよ」
「その必要は無いわ」
「え? ど、どうしてよ」
「お前の妹が見た偽者は、今、お前の目の前にいるからだ」
「え? ま、まさか・・・ 」
 そう言いながら絵里香は偽エンジェルレッドに変身した。さらに聖奈子の後ろからブルーとイエローの偽者が現れ、聖奈子を取り囲んだ。

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「お前はANGELへ行く事は出来ない。ここで我々が片付けるからだ」
「そうはいかないわ!」
 聖奈子は変身のポーズをとったが、それよりも早く偽エンジェルの攻撃が始まった。
「変身させるものか。アイビーム!」
「電磁波ビーム!」
 偽ブルーが両目からレーザービームを、偽イエローが両手を合わせて電磁波ビームを放ち、聖奈子に命中した。
「ウワアアァーッ!」
 ビームをまともに浴びた聖奈子は体全体が痺れ、地面に両膝をついた。そこへ偽レッドが近づいてきて、聖奈子の襟首を掴みあげた。
「ぐ・・・ 」
「エネルギーが最小レベルだったから、身体が痺れるだけで済んだのだ。お前を殺す事などいつでも出来る。だが、私の要求に応えれば、命だけは助けてやってもいいぞ」
「く・・ な、何をさせるつもりなのよ」
「スカーレットエンジェルのガキを呼び出してもらおう」
「佐緒里ちゃんを? そんな事、自分達でやればいいじゃないの。あたしが協力するとでも思ってるの!? お前達なんかに服従なんかしないわ」
「まあいい・・ お前とお前の妹を人質にすれば誘き出す事も可能だ」
「そ、そんな事させるもんか!」
「減らず口を叩くな。お前は既に我々の手中にあるのだ」
 バシイッ! バシイッ! バシイッ!
「あぐうっ・・・・ 」
 偽レッドは聖奈子の頬を立て続けに2~3発叩いた。聖奈子は抵抗しようとしたが、体が痺れてどうにも出来ない。偽レッドは右手を上げた。すると何処からとも無く戦闘員が現れ、聖奈子の腕をつかむと両手をロープで縛り上げた。
「アジトへ連れて行け」
「イーッ」
 戦闘員は返事をすると、縛った聖奈子を車に押し込め、車を発進させた。
「よし。次の作戦だ。引き揚げるぞ」
「いよいよこの偽ブルー様の出番だな」

「お姉ちゃん遅いなぁ・・」
 ANGELでは佳奈子が、なかなか来ない聖奈子に痺れを切らしていた。そこへ扉が開いて聖奈子(偽者)が入ってきた。
「お待たせ。佳奈子、さあ帰ろう」
「お姉ちゃん遅かったじゃないの」
 佳奈子は膨れっ面をしながら席を立つと聖奈子の傍まで行った。が、佐緒里は入ってきた聖奈子が偽者だとすぐに見破った。
「ダメ! 佳奈子ちゃん。聖奈子さんじゃないわ!」
「え?」
 しかし佳奈子は既に偽聖奈子に両腕を掴まれていた。
「や・・ やだ・・ 放して」
「よく見破ったな。だがもうこの小娘は我々の手中にあるのだ」
 そう言いながら偽聖奈子は偽ブルーに変身した。
「やだあっ! 助けて。助けて」
 佳奈子が人質にされ、居合わせた美紀子も佐緒里も手が出せない。
「佳奈子ちゃんを放せ!」
「いいだろう。だが、お前が身代わりになる事が条件だ」
 佐緒里は一瞬躊躇した。が、すぐに我に返った。
「分かったわ。身代わりになるから、佳奈子ちゃんを放して」
「ガキとはいえ、さすがはスカーレットエンジェル。物分りが良いな」
 偽ブルーが指をパチンと鳴らすと、数人の戦闘員が店内になだれ込んできた。
「そのガキを捕まえろ」
 戦闘員たちは佐緒里の両腕をつかんで押さえつけ、チェーンで縛り上げた。

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「約束どおり小娘は放してやる。スカーレットエンジェルのガキを捕まえた以上、こんな奴は用済みだ。それっ!」
 そう言って偽ブルーは佳奈子を美紀子の方へと突き飛ばした。
「キャッ」
 突き飛ばされた佳奈子は美紀子が受け止めた。
「そのガキを連れて行け」
「イーッ」
 戦闘員は捕らえた佐緒里を店外へ連れ出し、外に停めてあった車に押し込めて車を発進させた。美紀子は後を追って店の入り口まで走ったが、車は走り去っていった。
「嫌あーっ。佐緒里ちゃんがぁーっ」
 美紀子の傍では佳奈子が悲痛な叫び声を上げた。美紀子は店内に戻ると、カウンターに置いてあった携帯を取って電話をかけた。

 その頃絵里香は孝一と別れて自宅にいた。そこへ携帯に着信が入った。
「美紀子さんだわ・・ はい絵里香です。はい・・  ええっ!? 佐緒里ちゃんが連れて行かれた? それで・・ はい・・ はい分かりました。すぐ行きます」
 絵里香は身支度をして家から飛び出した。そこへ丁度いいタイミングでオートバイのエンジン音が聞こえ、オートバイが絵里香の前で止まった。
「絵里香どうしたんだ。そんなに慌てて」
「孝一。すぐANGELへ行って。佐緒里ちゃんが奴等に捕まって連れて行かれたのよ」
「何だって!? 分かった。絵里香、早く乗れ!」
 絵里香が孝一の後ろに乗ると、孝一はオートバイを発進させた。

      *     *     *     *

 同じ頃・・・・・・・
「どうもお邪魔しました」
「美由紀ちゃん。いつでも遊びに来てね」
「はい。どうもありがとうございます」
「それじゃお父さん。お母さん。行ってきます」
「行ってらっしゃい友里」
 こちらは久米島にある友里の家の前。美由紀は友里の実家で2日間お世話になり、今日は友里と一緒に沖縄本島へ行き、明日の昼頃東京へ戻る事になっていた。美由紀と友里はフェリーに乗り、久米島をあとにして、沖縄本島へと向かっていた。
「美由紀ちゃん。無理につきあわせちゃって、ゴメンね」
「そんなそんな・・ 友里さん。とっても楽しかったですよ。どうもありがとう」
 美由紀はそう言いながら携帯を取り出して電話した。が、通話先の相手につながらない。
「あれ・・ 絵里香も聖奈子も出ないな・・ どうしたんだろう」
 その様子を密かに窺っている影があった。ネオ‐ブラックリリーの戦闘員たちが人間に化け、監視していたのだ。

「小娘が本島へ向かっているだと?」
「イーッ。今しがたフェリーに潜入した仲間から連絡が入りました」
「どうやら我々の計画を嗅ぎ付けられずに済みそうだ。しかしいずれは知られてしまうだろう。だがその時はすでに岩窟島の要塞は完成し、沖縄占領作戦は稼動しているのだ」
 本島にあるアジトの司令室では、ゼネラルダイアが戦闘員たちから次々と入ってくる報告を聞いていた。
「あちらには偽エンジェルたちがいて、既に作戦が開始され、小娘の一人とスカーレットエンジェルのガキを生け捕りにしたという報告が入っている・・・ 足止めして時間を稼ぐには充分だ。よし! イエローの小娘は鷲尾平へ帰さず、こちらで始末してやる」
 ゼネラルダイアは近くにいた戦闘員を呼んだ。
「オニヒトデ魔人とウミガメ魔人を呼び出せ」
「イーッ。かしこまりました」
 戦闘員が無線機とモニターを作動させ、暫くして画面に魔人の姿が映った。
「お呼びですか? ゼネラルダイア様」
「要塞建設は順調か?」
「はっ! 施設は全て完成です。あとは兵器を据え付けて、必要な弾薬等を運ぶのみです。
「分かった。残りの作業は戦闘員たちに任せて、お前達はすぐに本島へ移動しろ」
「かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 通信が終わった。
「今に見ていろ。エンジェルスの小娘ども」

      *     *     *     *

 ANGELの店の扉が開き、絵里香と孝一が飛び込んできた。テーブルの一つでは、佳奈子が突っ伏して泣いていた。
「美紀子さん。捕まった佐緒里ちゃんを助けないと」
「佐緒里だけじゃないのよ。奴等は聖奈子も捕らえたと言っていたわ」
「聖奈子まで・・ このままだと奴等の事だから、二人とも殺されてしまうわ」
「でも、奴等のアジトが何処なのか分からないぜ。どうすりゃいいんだよ」
「心配ないわ。佐緒里から私にテレパスが送られ続けている。絵里香、行くわよ」
「はい!」
「俺も行くぜ」
 孝一は絵里香の顔を見た。絵里香は無言のまま頷いた。
「佳奈子ちゃん。佐緒里ちゃんとお姉さんは必ず助ける」
「私も連れて行ってください」
 絵里香は一瞬躊躇した。
「お願いです! お願い」
 佳奈子が真顔で頼むので、絵里香は仕方なく承諾した。
「分かったわ。それじゃ一緒に来て」
 美紀子は車に乗る前に、オートバイに跨っている孝一と絵里香のそばへ来た。
「絵里香。携帯のXモードをずっとオンにしていて」
「は、はい」
 Xモードとは、美紀子と佐緒里の発するテレパスを受信するためのもので、美紀子が絵里香たちの携帯電話を改造した時に一緒に設定を組み込んでいたのだ。美紀子は佳奈子を乗せて車を発進させ、続いて孝一もアクセルをふかして発進した。

 佐緒里からのテレパスで、美紀子は正確にアジトの方角へと向かっていた。そのテレパスは発信機と違い、電波を出していないので、偽エンジェルスたちには気付かれていないのだ。車を走らせていた美紀子は、鷲尾平市郊外にある雑木林のそばに車を停止させた。雑木林の中には、木々越しに建物が見えている。孝一のオートバイも美紀子の車の傍で止まり、絵里香が飛び降りた。美紀子は雑木林の中にある建物を指差した。
「佐緒里のテレパスはあの建物から出続けているわ。あれが奴等のアジトよ。孝一君は佳奈子ちゃんとここに残って。もし危なくなったら、佳奈子ちゃんを乗せて、すぐにここから逃げるのよ」
「分かりました。二人とも気をつけて」
 美紀子と絵里香は颯爽と雑木林の中にある建物に向かって駆け出した。

      *     *     *     *

 アジトに連れ込まれた聖奈子と佐緒里はそのまま司令室に連行された。
「こいつらは即刻死刑だ。準備しろ!」
「イーッ」
 偽レッドが戦闘員に向かって捲くし立て、戦闘員たちは縛られて抵抗出来ない聖奈子と佐緒里を司令室から連れ出し、処刑するための部屋へと連行した。
「入れ!」
 聖奈子と佐緒里は広めの部屋に、突き飛ばされるように入れられた。室内では偽ブルーと偽イエローが処刑の準備をして待機していた。部屋の中心にはX型の磔台があって、戦闘員たちは聖奈子と佐緒里をそれぞれ磔台に縛り付けて拘束した。別の戦闘員がケーブルやコードを持ってきて、磔台に電極を取り付けた。

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 その頃絵里香と美紀子は既にアジト内に潜入し、監視用のテレビカメラをかわしながら廊下を進んでいた。そしてついに聖奈子と佐緒里が処刑されようとしている部屋を突き止めた。
 室内では処刑の準備が全て整い、戦闘員たちが磔台から離れた。
「いよいよお前達の最後だな。念仏でも唱えろ」
「ふん! 誰が・・ 」
「最後までお前達の姿をこの目でしっかりと見続けてやる」
「減らず口ばかり叩きやがって」
 偽レッドが指をパチンと鳴らすと、戦闘員が再び磔台に近づき、聖奈子と佐緒里に目隠しをした。
「よし! 処刑用意!」
 偽ブルーが通電スイッチのそばへ行き、レバーを手に取った。
「処刑開始!!」
 レバーが下げられ、スイッチが入った。
 ドオォーン!!!
「ワアーツ!!」
 同時に電気がショートして爆発し、レバーを持っていた偽ブルーは衝撃で吹っ飛ばされ、床に叩きつけられた。さらに磔台の電極と繫がっていたケーブルやコードの一部が、煙を上げて床の上に焼け落ちた。
「な、何だ! 何事だ・・ 一体何が起こったんだ」
 偽レッドが通電装置を見ると、通電装置に剣が突き刺さっていた。剣の周りではバチバチと電気がショートして火花を上げていた。絵里香が部屋に飛び込むと同時に、ブレードを出して投げつけたのだ。
「炎の戦士。エンジェルレッド参上!」
 続いて美紀子も室内に飛び込んできて、素早く磔台の後ろに回り、聖奈子と佐緒里の拘束を解いた。拘束を解かれた聖奈子と佐緒里は、床に着地すると同時に変身した。
「水の戦士。エンジェルブルー!」
「真紅の戦士。スカーレットエンジェルJr!」
「もうこれ以上、お前達の思うがままにはさせない!!」
 偽レッドは絵里香と美紀子に向かって怒鳴った。
「おのれ貴様ら! どうしてここが分かったのだ」
「そんな事どうでもいいじゃないの。お前達が悪を行っている所に、私たちは必ず現れるのよ。さあ観念しろ。偽者ども!」
「おのれぇ・・ 者どもかかれ!」
 戦闘員が奇声を上げながら襲いかかってきて、絵里香たちとの間で格闘戦になった。絵里香は通電装置に突き刺さったブレードを抜き取り、襲ってくる戦闘員を次々と斬り伏せた。聖奈子と佐緒里、美紀子も襲ってくる戦闘員を次々と倒した。
「ええい不甲斐ない奴らめ」
 偽レッドはポーズをとると、口から火炎を放射した。

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 火炎は一番近くにいた佐緒里目掛けて伸びていき、気付いた佐緒里は火炎をかわした。外れた火炎は佐緒里の向こう側にあった機材に命中して炎に包まれ、機材が爆発して室内に次々と飛び火していってやがて室内全体が炎に包まれた。
「しまった・・ このままではアジトが爆発する。外へ逃げろ」
 偽レッドが叫ぶと同時に、偽レッド、偽イエローと数人の戦闘員が次々と室外へ飛び出し、絵里香と美紀子もそのあとを追いかけて室外へ出た。続いて佐緒里も二人を追って室外へ出た。室内の一番奥の方にいた聖奈子は炎の中を何とかくぐり抜け、出入り口に達したが、そこへレーザービームが放たれて壁に命中して爆発した。聖奈子が振り返ると、そこには最初の爆発で床に叩きつけられた偽ブルーが態勢を立て直して立っていた。
「お前だけは外へは出させない。ここで道連れにしてやる。アイビーム!」
偽ブルーの両目からレーザービームが発射され、聖奈子は体を捻ってかわした。
「アイビーム!」

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「エンジェルアイギス!」
 聖奈子は楯を出して、ビームに向けて翳した。ビームは楯に当たって跳ね返り、天井で炸裂して、天井からコンクリートや金属の破片が落下してきた。聖奈子はソードも出し、偽ブルーに向かって身構えた。

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「くたばれ小娘! アイビーム!」
「てめえこそくたばれ! アクアスマッシュ!」
 双方のエネルギーがぶつかって、二人の中間で爆発した。聖奈子は間髪を入れずに、ソードを偽ブルー目掛けて投げつけた。
「アクアストーム!」
 ソードは狙いすましたように、偽ブルーの左目に突き刺さった。
「グギャアァーッ!」
 突き刺さったところからバチバチと火花が迸り、偽ブルーのもう片方の目も電気がショートしたような衝撃とともに吹っ飛んだ。続いて体全体にバチバチと火花が迸り、爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「やった・・・ 」
 聖奈子がホッとしたのも束の間、室内は既に全体が火災で焼けていて、次々と爆発が起き、天井も崩れてきた。
「ヤバイ! 早く逃げなきゃ」
 聖奈子は慌てて室外へ飛び出し、廊下を駆け抜けた。そのうしろからは激しい爆発音が轟き、時折グラグラと周囲が揺れた。
 一方、外では絵里香と佐緒里が偽レッドと偽イエロー相手に戦っていた。美紀子は外へ出るとすぐに孝一と佳奈子がいる所まで行き、二人を守るために二人のそばについていた。
 雑木林の中を双方のエネルギー波が行き交い、所々で爆発音が響く。戦闘員は全て倒され、残っているのは偽レッドと偽イエローだけだった。絵里香と佐緒里は武器を手に身構えた。

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「偽者! お前達の野望もこれまでよ。観念しなさい!」
「何を小癪な!」
 偽レッドが口から火炎を放射し、絵里香と佐緒里に向かってくる。二人はジャンプして火炎を避け、偽レッドの後ろに着地した。同時に偽イエローの電磁波ビームが向かってきた。佐緒里はブレードを自分の前に翳して十字を切った。すると佐緒里の前にプリズム状の物体が現れ、ビームを拡散させた。
「偽者は偽者なのよ! 所詮本物の私たちの敵ではないわ!」
「何だとぉ・・・ 殺してやる!」
 絵里香と佐緒里は背中合わせになって身構えた。それぞれの正面には偽レッドと偽イエローが立っている。
「佐緒里ちゃん、奴等が攻撃してきたらジャンプして」
「分かった」
 偽レッドが火炎を放射し、偽イエローが電磁波ビームを放った。
「いまだ!」
 絵里香と佐緒里はほぼ同時にその場からジャンプした。二人を外れた火炎と電磁波ビームは、偽レッドと偽イエローにそれぞれ命中した。
「グギャアーッ!!」
「グアァーッ!!」
 絵里香と佐緒里がそれぞれ着地すると、偽レッドは電磁波ビームを、偽イエローは火炎を浴びて、それぞれが火だるまになって断末魔の叫びとともに、大爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。
「やった!」
 絵里香と佐緒里はハイタッチした。が、絵里香はすぐに周りを見回した。
「そうだ・・ 聖奈子は??」
「ハーイ! あたしはここよ」
 木の影から聖奈子が出てきた。アジトの中で爆発と炎の中を駆け抜けたため、衣装のあちこちがボロボロになり、少し火傷も負っていたが、元気に返事をしながら絵里香と佐緒里の前まで来た。
「偽ブルーはあたしがやっつけたわ。偽者は全部片付けたわね。奴等のアジトもあの通り・・・ 」
 聖奈子はアジトのあった建物を指差した。建物は完全に崩壊していた。
 そこへ美紀子が孝一と佳奈子を連れてやってきて、佳奈子はダッシュするとそのまま聖奈子に抱きついて泣き出した。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん」
「佳奈子。もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
 偽者エンジェルスを全て倒し、絵里香たちの表情は明るかったが、美紀子だけは深刻な表情で辺りを見回していた。そして喜んでいる絵里香たちの傍へ行った。美紀子の表情に真っ先に気付いたのは佐緒里だった。
「叔母様。どうかしたの?」
「佐緒里、絵里香、聖奈子。何だか変だと思わない?」
「変って、どういうことですか美紀子さん」
「これまでの奴等の作戦とは、あまりにも様子が違う気がするのよ。何のためにあなたたちの偽者を作って、あなたたちと戦わせたのか・・ それに大幹部のゼネラルダイアが全然姿を見せないのもすごく気になるわ」
 絵里香たちの顔からも笑みが消えた。
「確かに・・ 考えてみると何かが違うような気がする」
「とにかくすぐにここを離れるのよ」
「はい!」
 美紀子は絵里香たちを促すと、踵を返して車を置いてある場所まで歩き出し、絵里香たちもそのあとを追った。

      *     *     *     *

 美紀子が抱いていた不吉な予感は、既に沖縄で的中し始めていた。
 その頃美由紀は友里と一緒に沖縄本島に戻っていて、本島の観光名所を徘徊していたところだった。そして二人は休憩所で、ベンチに腰掛けて休んでいた。
「美由紀ちゃん。明日あっちへ帰るんだけど、お友達と連絡は取れたの?」
「ダメなのよ。さっきから何度か電話してるんでけど、全然出ないのよ」
 友里はそんな美由紀の顔を窺っていた。
「ねえ美由紀ちゃん・・ まさかあっちで何か起きたとか・・・ たとえばあなたたちが戦っているネオ‐何とかという奴等が・・」
「だったら向こうからこっちへ電話が入ってくるわ」
「そっか・・ 何も連絡がないって事は・・ 向こうでは何も無いって事かな・・ 」
「友里さん静かにして」
 美由紀は立ち上がると、周囲を見回した。
「どうかしたの?」
 友里も立ち上がった。
「何かがいる・・ 」
「え?」
 突然周りから戦闘員が奇声とともに姿を現し、美由紀と友里を遠巻きに取り囲んだ。
「ネオ‐ブラックリリー!」
 美由紀が叫ぶと同時に、オニヒトデ魔人とウミガメ魔人も姿を現した。

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「お前達は・・ 何故こんな所に」
「ヒヒヒヒヒーッ。そんな事は分かっているだろう」
「ガーメーッ! エンジェルスを抹殺するために決まっているではないか」
 戦闘員がジリジリと迫ってくる。
「それっ! かかれえっ」
「イーッ」
 戦闘員が奇声を上げながら襲いかかってきた。
「友里さん。逃げて!」
 美由紀は友里の手を取ると、襲ってきた戦闘員をかわしながら囲みの外へ出た。
「早く逃げて」
「分かった。すぐお友達に連絡するからね」
 友里は全力でその場から駆け出した。美由紀は踵を返すと、ポーズをとって構えた。
「エンジェルチャージ!」
 美由紀の体が光に包まれ、光が消えると同時にエンジェルイエローの姿になった。
「光の戦士。エンジェルイエロー!」
「ヒヒヒヒーッ。小癪なやつめ。かかれっ」
 戦闘員が一斉に襲いかかってきた。一部は逃げた友里を追いかけようとしたが、その前に美由紀が立ちふさがった。
「ここから先へは絶対に行かせない!」

      *     *     *     *

 人通りのある場所まで何とか逃げ切った友里は、携帯電話を取り出して電話した。が、なかなか出ない・・・
「あぁぁぁ・・ どうしよう・・ このままじゃ美由紀さんが危ないよ。化け物が二人もいるんだから」
 何度か発進してようやく電話が繫がった。
『ハイ美紀子です。今運転中だったのよ。車停めたからもう大丈夫よ。何?』
「やっと出てくれた・・ 紅林さん・・ たた、大変です。美由紀ちゃんが化け物に襲われて・・ たしかネオ‐何とかっていう奴等の」
 電話の向こうからは真剣な顔をした美紀子の姿が想像出来た。
「はい・・ そうです。今沖縄です。美由紀ちゃんと二人でいた時に襲われて、私は何とか逃げてきて・・ このままじゃ美由紀ちゃんがやられちゃう。お願い早く助けてぇ」
 最後の方は友里の声は涙声だった。
 通話を終えると、友里は再びさっきの場所へ戻っていった。美由紀が心配だったからである。

 その頃美由紀は・・・
 襲いかかってくる戦闘員を倒しながら、自分も逃げる手段を考えていた。魔人二人相手には自分だけでは分が悪いと悟っていたからだ。しかしもはや遅かった。戦闘員の数が多く、美由紀の体力にも限度があった。美由紀は荒い息遣いをしながらも、何とか逃げようとしたが、前後をウミガメ魔人とオニヒトデ魔人に阻まれ、回りは多数の戦闘員が完全に囲んでいた。
「小娘。もはや逃げられはせん」
「そろそろ引導を渡してやる」
 オニヒトデ魔人は体についている棘を取ると、美由紀目掛けて投げた。一本目はかわしたが、二本目が美由紀の太股をかすった。
「う・・・ 」
 三本目は戦闘員に刺さり、戦闘員は絶叫とともに絶命して白骨になった。美由紀はそれを見て青ざめた。
「運のいい奴だ小娘。かすっただけではたいした事は無いが、まともに刺さればそこに転がっている骨のようになるのだ」
「そう簡単にやられてたまるもんか!」
 美由紀は身構えたが足が動かず、その場で転んでしまった。
「あ・・ 脚が・・ か、体が痺れる・・・ 」
「どうやら毒が回ってきた様だな。さっきも言ったように、かすっただけなら死にはせんが、そうやって体全体が痺れて動けなくなるのだ。ヒヒヒヒヒーッ」
「く・・・ か、体が・・ もう・・ 動かない・・ 絵里香・・ 聖奈子・・ 」
 美由紀危うし・・・ 絶体絶命・・・・ 
「そろそろとどめを刺してやる。ガーメーッ!」
 ウミガメ魔人が前に出てきて身構え、口から火炎を放射した。

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火炎は美由紀の至近に着弾し、轟音とともに付近一帯が爆発で吹っ飛び、美由紀の体が爆風で宙に舞った。

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「キャアァァァァァーツ!!!」
 宙に舞った美由紀は悲痛な叫び声とともに地上に叩きつけられて変身が解け、そのまま転がって崖の上から落ちていき、ザブーンという音とともに海の中に落ちた。
「み、みゆ・・ んんん・・・ 」
 戻ってきた友里は、美由紀の惨状を見て叫びそうになったのを、後ろから誰かに口を塞がれた。
「ん・・ んーっ」
「声を立てないで。暴れないで。私はあなたの敵じゃないわ」
 友里が振り返ると、そこには友里の知らない女性が立っていた。
「あなたは・・ 」
 その女性は言葉を遮るように右手を上げた。
「何も言わないで。説明は後。海に落ちたあなたの友達を助ける方が先よ。一緒に来て」
 女性は踵を返すと、海のほうへ向かって駆け出した。友里はわけが分からなかったが、とにかく美由紀を助ける事が先だと悟って、その女性の後を追って駆け出した。

 一方崖の上からはウミガメ魔人とオニヒトデ魔人が、美由紀が落ちた海を見ていた。
「海に落ちてくたばったか」
「いや・・ 油断は出来ん。まず死体を捜し出して見つけるのだ」
 二人の魔人は、戦闘員に向かって命令した。
「海に落ちた小娘を捜す。全員下へ降りろ」
「イーッ」
 戦闘員は敬礼すると、二人の魔人の後を追って走り出した。

    *     *     *     *

 海に落ちた美由紀は死んでしまったのか・・
 友里が出会った謎の女性は一体何者なのか・・・
 絵里香と聖奈子は間に合うのか・・・
 ネオ‐ブラックリリーの沖縄占領作戦は着々と進みつつある。負けるなエンジェルス! ネオ‐ブラックリリーの野望を打ち砕くのだ!

    (つづく)

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 次回予告
 第45話『ゼネラルダイアの正体?』

 海に落ちた美由紀は、瀕死の状態のところを友里と謎の女性に助けられ、匿われる。そして友里からの連絡で、ネオ‐ブラックリリーが沖縄で何かをしようとしていると悟った美紀子は、絵里香と聖奈子、佐緒里を連れて沖縄に向かう。傷ついてしまった美由紀は果たして助かるのか・・ 絵里香たちは間に合うのか・・ ネオ‐ブラックリリーの要塞は、着々とその牙を剥こうとしている。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第45話『ゼネラルダイアの正体?』にご期待ください。

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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学