鷲尾飛鳥

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第46話『甘い香りの罠』

2014年 10月07日 22:48 (火)

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 鬱蒼とした深い森の中に佇む一軒の古い洋館。今その中で恐ろしい事が始まろうとしていた。洋館の廊下を一つの影が足音とともに移動し、やがて地下への階段を降りて、地下にある地下牢の一室の前で止まった。入り口の前にはネオ‐ブラックリリーの戦闘員が立っている・・・・ そう。ここはネオ‐ブラックリリーのアジトで、影の正体はネオ‐ブラックリリーのダリア魔人だったのだ。

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「開けろ」
「イーッ。かしこまりました」
 扉の鍵が開けられて、鉄製の扉が開かれ、同時に室内の電気が灯って、牢に入ったダリア魔人は、奥の壁に両手を鎖で繫がれた若い女性の姿を見ると、その女性に近づいていった。女性は見かけは大学生くらい。衣服もそのままで特に何かをされた形跡は無い。女性のすぐ前に立ったダリア魔人は、醜怪な大きな目を見開き、女性を見つめた。

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「ん・・・ 」
電気の灯りで女性が目を覚ました。初めは自分が何故こんな所にいるのか理解できなかったが、自分の状態を見て、すぐに恐怖で顔が引きつった。両手を鎖で繫がれて吊るされ、自分の目の前にはこの世のものとは思えない怪物の姿があったからだ。

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「キャアァーッ!! 嫌アァァーッ」
 女性は逃げようとして暴れたが、両手の手枷は外れず、壁に鎖があたってジャラジャラと音をたてた。
「フフフ・・・ 女・・・ 私の生贄になることを光栄に思うのだ」
「や、やめてぇ・・ お願い帰してぇ・・ 助けてぇーッ!」
 女性は完全にパニック状態だった。ダリア魔人は、頭の部分から細い蔓を多数出し、その蔓が女性に次々と巻きついた。

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「やめて! 嫌アーッ!」

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 室内に女性の悲痛な絶叫が響き渡る。そして蔓が赤く染まり始めた。血を吸っているのだ。

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「アアアーッ! ギャアアァァァーッ! あああぁぁぁ・・・・」
女性は断末魔の絶叫とともに、数分後にはがっくりと頭を垂れて意識を失い、体中の血液と体液を吸い尽くされたその体は干からびたミイラのようになり、やがて水蒸気が吹き上がるとともにドロドロに溶け、もはや原型を留めてはいなかった。

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「ヒヒヒヒヒーッ! 若い女の生き血は最高にうまい。最高のエネルギーだ」
 ダリア魔人は吸い尽くした血液の約半分を、戦闘員が持ってきたガラス製の容器に入れ、戦闘員たちに死体の後始末を命じると、容器を持って満足そうに地下牢から出て、地下牢同様地下に設けられた司令室に入った。司令室に入ったダリア魔人は、テーブルの上に容器を置くと、マントを翻してゼネラルダイアの姿になった。そこへスピーカーから大首領の声が響いた。
「ゼネラルダイア。要塞建設が失敗した痛手は非常に大きいぞ。この償いは必ずしてもらう」
「申し訳ありません大首領様」
「私はもうこれ以上待てないのだ。お前自身が陣頭に立ち、世界征服作戦のための攻勢をかけろ。何としてでもエンジェルスの小娘どもと、スカーレットエンジェル。そしてスカーレットエンジェルのガキを始末しろ。それ以外にお前が生き延びる道は無いと思え。ゼネラルダイア。これは私からの最後通牒だ。今度失敗したら、それはお前の死を意味するのだ!」
 ゼネラルダイアは顔が引きつった。今度失敗したら死・・・ ついに追い詰められたのだ。
「か、かしこまりました大首領様。必ずやエンジェルスの小娘どもと、スカーレットエンジェルのガキを血祭りに上げ、その首を大首領様に献上いたします」
 そのあと大首領からの声は皆無だった。司令室全体がシーンと静まり返った。ゼネラルダイアは近くにいた戦闘員を呼びつけた。
「ただちにエンジェルスの抹殺作戦を行う」
「イーッ。かしこまりました。ゼネラルダイア様」
 ゼネラルダイアは血液が入った容器を持って司令室を出ると、戦闘員を伴って倉庫のような部屋に入った。明かりが点灯すると、そこにはベッドに横たわった数人の男女がいた。みな生気を奪われたごとく眠っている。
ゼネラルダイアはその人間達に、容器に入った血液を浴びせると、ベッドの傍にある祭壇の前に立った。祭壇に火がつけられ、ゼネラルダイアはダリア魔人の姿になった。
「全知全能なる邪悪な宇宙の悪霊たちよ! 我がネオ-ブラックリリーに偉大なる力を与えたまえ。このゼネラルダイアに無限の力を与えたまえ! 偉大なる邪悪なお力で、我がネオ‐ブラックリリーの魔人を甦らせたまえ」
 同時に祭壇の炎が激しく吹き上がり、血液を浴びせられた人間達に燃え移った。やがてその人間達の身体が変形し、魔人の姿になって起き上がった。
「ギリギリギリギリーッ!」
「イーッヒッヒッヒッヒッヒーッ!」
 そこにはかつてエンジェルスによって倒された、ラフレシア魔人、キノコ魔人、カトレア魔人、バンブー魔人の姿があった。

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「よくぞ生き返った我が忠実な僕たちよ。さあ行け! エンジェルスの小娘どもを血祭りに上げるのだ」
「ギリギリギリギリーッ!」
「イーッヒッヒッヒッヒッヒーッ!」

   * * * *

「おはよう」
 そう言いながら聖奈子がANGELの扉を開けて店内に入ってきて、テーブルの一つに座った。カウンターにいた佐緒里が水を持ってきて、テーブルの上に置いた。
「おはようございます聖奈子さん」
「佐緒里ちゃんおはよう。コーヒーお願い」
「はい(聖奈子さん機嫌悪そう・・・ )」
 佐緒里は返事をするとカウンターの中に入っていった。
「佐緒里ちゃん。美紀子さんは?」
「叔母様は朝早くから大学の研究室に行っていて・・・  昼頃には戻ってくるって言っていました。それより絵里香さんと美由紀さんは一緒じゃないんですか?」
「絵里香は孝一君とデート。美由紀はテレビ局で、友里さんと一緒に出演するドラマの打ち合わせ」
 聖奈子はぶっきらぼうな返事をした。

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 佐緒里は聖奈子の話を聞きながら、コーヒーの用意をすると、聖奈子の前に置いた。聖奈子は自分だけ蚊帳の外にいるみたいな、不機嫌そうな顔をしていたので、佐緒里はあえて話しかけるのをやめた。

   * * * *

 一方こちらは城北大学・・・
 美紀子は4月からの大学での講義の準備のため、自分の研究室にいた。美紀子は現在アメリカに行っている恩師の名取教授(4月までに帰国予定)の計らいで、城北大学の教授に推薦されたのだ。美紀子は迷ったが、恩師の好意に報いるため、考えた末に承諾したのだった。そして美紀子は今日朝から大学に呼ばれ、新学期からの講義に関する打ち合わせを終えて、自分の研究室で書類の整理をしていた。その時突然室内の明かりが消えた。
「停電?  いや・・ 様子が変だわ」
 美紀子は何かを直感したのか、椅子から立ち上がって室内を見回した。出入り口の扉が開いてネオ-ブラックリリーの戦闘員が奇声を上げながらなだれ込んできた。
「イーッヒッヒッヒッヒーッ」
 さらにラフレシア魔人が現れた。

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「ネオ‐ブラックリリー!!」
「スカーレットエンジェル。今日こそお前を始末してやる。かかれっ!」
 ラフレシア魔人の命令で、戦闘員たちが迫ってきた。美紀子は正面に立っているラフレシア魔人目掛けて、ダッシュするとそのまま体当たりした。
 ドカッ!!
「ヒーッ! ヒヒヒヒーッ!」
 体当たりされたラフレシア魔人は反動で廊下へ飛び出した。そのタイミングを見計らい、美紀子は廊下に飛び出すと一目散に逃げた。
「おのれ小癪な! 逃がすな!」
 逃げる美紀子のあとから、ラフレシア魔人と戦闘員が追ってきた。美紀子は振り返るとスティックを出して、追って来る魔人と戦闘員に切っ先を向けた。スティックから真っ黒な煙幕が噴き出して、廊下中に充満し、戦闘員たちは煙に巻かれてパニックになった。煙が晴れたときには既に美紀子の姿は無かった。
「ええい! 小賢しい真似をしおって!」
 ラフレシア魔人は地団太踏んで悔しがった。

「ここまで来ればもう大丈夫・・・  」
 大学の敷地内の広場まで逃げてきた美紀子は、足を止めて周りの様子を見た。
「しかし・・ ここまで奴等がやってくるなんて・・・ もしかすると、絵里香たちも同じように襲われるかもしれない」
 美紀子は自分の車のある場所まで駆けていった。

   * * * *

「え?  襲われた!? またネオ‐ブラックリリーが出たんですか?」
 ネオ‐ブラックリリーと聞き、聖奈子は椅子から立ち上がって、佐緒里の顔を見た。
「はい・・ ハイ分かりました。今ですか? 店にいるのは私と聖奈子さんだけです。はい・・・ 私のほうから伝えます。 それじゃ気をつけて戻ってきてください」
 佐緒里が電話を切ると、聖奈子は佐緒里の傍へ寄った。

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「佐緒里ちゃん。奴等が現れたの!?」
「はい。叔母様が大学で奴等に襲撃されたって言ってました。他の人たちも同じように襲われるかもしれないから、充分気をつけるようにとの事です。それから、絵里香さんと美由紀さんには連絡が取れているそうです」
 その時聖奈子の携帯に着信が入った。
「ン? 佳奈子だわ・・・ こ、これは・・ 」
 聖奈子の携帯の画面には、真っ赤な文字で【緊急通信】と出ていた。聖奈子は佳奈子の携帯にアクセスした。しかしいくら経っても佳奈子は電話に出ない。
「おかしい・・ どういう事なんだろう・・ まさか・・・・ 」
 聖奈子の脳裏に一瞬戦慄が走り、体中から血の気が引いた。『他の人たちも襲われるかもしれない』という、つい今しがたの佐緒里との会話の内容である。
「佐緒里ちゃん。あたし家へ帰る。美紀子さんが戻ってきたら伝えておいて」
「分かりました。聖奈子さんも気をつけて」
 聖奈子はコーヒー代を置くと、店から飛び出して家に向かって走っていった。

    * * * *

 時間は少し遡る。
「佳奈子、早くしなさい」
「はーい」
 ここは聖奈子の家である。佳奈子は母親の祥子と一緒に、ショッピングに出かけるところだった。玄関を開けて外へ出るや否や、二人は突然現れたネオ‐ブラックリリーの戦闘員に囲まれた。
「何?? 一体・・・ 」
 戦闘員の囲みの外に、バンブー魔人とキノコ魔人が姿を現した。
「キャーッ! 嫌ぁーっ」
 佳奈子が叫んで、祥子の後ろに隠れた。
「お前達はエンジェルスの小娘どもをおびき出すための人質として連れて行く。大人しくしろ」
「何ですって? そうはいくもんですか」
 祥子は近くに立てかけてあったデッキブラシを持って振り上げたが、バンブー魔人に柄を掴まれ、キノコ魔人に後頭部を殴られて、その場に倒れて気絶した。
「嫌ーっ! ママ、ママー 」
「連れて行け」
 戦闘員たちは二人を連れ出すと、車に押し込めて車を発進させ、その場から消えた。

 それから暫くして聖奈子が家に帰ってきた。玄関先では靴が散らばり、折れたデッキブラシが転がっていて、あたり一面に争った形跡があり、足元には佳奈子の携帯電話が作動中のまま転がっていた。
「佳奈子の携帯だ・・ 」
 聖奈子は携帯を拾うと画面を見た。発信中のままになっている。聖奈子は靴を脱ぎ捨てると、部屋中を見てまわり、全部の部屋を見て回った聖奈子は、リビングに来た。

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「まさかママと佳奈子が奴等に・・ 」
「エンジェルブルー !  清水聖奈子。テレビを見るのだ」
 突然の声に、聖奈子は驚いて部屋中を見回した。何もしていないのにテレビのスイッチが勝手に入り、聖奈子は驚いてテレビの方を見た。画面にはゼネラルダイアが映っている。
「一体どうなっているの? あ… お前は!」
「やっと帰ってきたな。清水聖奈子、いやエンジェルブルー! お前にいいものを見せてやろう」
 ゼネラルダイアが横へ避けると、その先には魔人と戦闘員に羽交い絞めにされた祥子と佳奈子の姿があった。聖奈子は思わずテレビにかじり付くような格好で見入った。
「ママ… それに佳奈子」
「エンジェルブルー。お前の母親と妹は、この通り我々が頂いた」
「ゼネラルダイア。ママと佳奈子をどうするつもりなの!?」
「どうするかはお前次第だ。返してほしかったら、3時までに城跡まで来い。ただしお前一人でだ。分かったな? さもないとお前の母親と妹は拷問にかけて殺す。はっはっはっは」
 そこでテレビのスイッチが切れた。
「卑怯者! ゼネラルダイア。ママと佳奈子を返せ」
 聖奈子は家を飛び出すと、オートバイに乗って発進した。目指す場所は鷲尾平城址公園である。その途中で美由紀とすれ違ったが、気付かずに疾走していった。
「あれ? 聖奈子どうしたんだろう・・・ 何だか様子が変だわ。もしかして、さっきの美紀子さんからの電話と関係があるのかな」

    * * * *

 ANGELでは佐緒里が相変わらず店番をしていた。二人いたカップルの客が店を出ていき、それと入れ替わりに美紀子が帰ってきた。
「ただいま」
「お帰りなさい叔母様」
「(どうやらここは無事だったようだわ・・・ )佐緒里。何も無かったようね」
「はい。特に何も・・」
 そこへ美由紀が息を切らしながら入ってきた。
「大変… 大変よ」
「どうしたんですか美由紀さん。そんなに血相を変えて」
「それより… 何か飲み物頂だい」
 佐緒里が氷水を差し出すと、美由紀はそのまま一気に飲み干した。
「どう? 落ち着いた?」
「聖奈子が大変よ」
「大変って・・・ どういうこと?」
「よくわかんないけど、何だか思いつめたような感じだったわ。オートバイで城跡公園の方へ走っていったんだけど。さっきの美紀子さんの話と何か関係があるんじゃ」
「そうか・・ それでさっき慌しくここから出て行ったんだわ。きっと聖奈子さんの家で何かあったのよ」
「わかった。美由紀、とにかく行ってみましょう。佐緒里、後は頼むわよ」
「はい。叔母様」
 美紀子は美由紀を連れてANGELを出ていった。

 美紀子からの電話は、孝一と一緒にいた絵里香の元にも入っていた。2人は鷲尾平から3つ先の駅の近くにあるショッピングモールでの某イベントを見に行き、その帰りに、近くの公園で休んでいた。

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「孝一。今日は楽しかったわ」
「絵里香が喜んでくれて良かったぜ。それで・・ さっきの電話は何だったんだ」
「奴等が動き出して、美紀子さんが襲われたのよ。だから私たちにも気をつけるようにって」
「そうか・・」
 その時突然あたり一面が薄暗くなり、ヒューッという音とともに生暖かい風が吹いてきた。
「孝一。何だか様子が変よ!」
「ああ・・ 確かに・・ 一体何なんだこれは・・ 」
 絵里香は孝一と背中合わせになり、あたり一面を見回した。その時花の香りのような甘い匂いが漂ってきた。
「絵里香。何だこれは・・ 」
「花の香りみたい。それにしても随分強い匂いだわ」
 しかし絵里香と孝一の周辺には甘い香りを出すような花は咲いていない。
「な・・ 何だか眠くなってきたぞ」
「まさか・・・ う・・ 体が痺れる・・・ 」
 絵里香も孝一も意識が朦朧としてきた。そこへネオ‐ブラックリリーの戦闘員が奇声とともに現れた。全員がガスマスクを着用している。そして戦闘員の後ろには、甘い香りを出している張本人、ダリア魔人が立っていた。
「ね、ネオ‐ブラックリリーの化け物・・・ か、体に力が入らない・・ 」
 甘い香りがさらに強くなり、絵里香と孝一はついにその場に膝を突き、そのまま倒れて気絶した。ダリア魔人はゼネラルダイアの姿になると、戦闘員に命令した。
「この2人を連れて行け!」
「イーッ!」
 戦闘員たちは気絶した絵里香と孝一を担ぎ上げると、そのまま運び去った。
「ふん! 人質は多ければ多いほど良い・・・  仮に片方が失敗しても、もう片方が上手くいけばそれで良いのだ。それにこいつらはとっておきの人質でもあり、利用価値も高い」
 ゼネラルダイアは捲くし立てながら、絵里香と孝一を抱えて歩いていく戦闘員の後ろからついていった。しばらく歩くと、そこには森があり、その森を抜けて開けた所には例の洋館が建っていて、洋館の周囲には季節外れの花が沢山咲いていた。戦闘員たちは気絶した絵里香と孝一を抱えて、その洋館の中へ入っていった。

    * * * *

 そして今度はANGEL・・・・
 美紀子が美由紀を連れて出て行って暫く経った店内では、佐緒里が一人で店番をしていた。
「叔母様は美由紀さんと一緒に出て行ったし、絵里香さんからは何の連絡もなし・・ か。何だか嫌な予感がする」
 その嫌な予感、不吉な予感は佐緒里が呟いた時に、既に当たり始めていた。突然店内の照明が点滅し、真っ暗になった。そして再び照明が点灯された時、テーブルの一つにネオ‐ブラックリリーのカトレア魔人とバンブー魔人。そして数人の戦闘員がいた。
「ネオ‐ブラックリリー!!」
 佐緒里が叫びながらカウンターを飛び越えて身構えた時、戦闘員の一人が佐緒里に向かって手招きの仕草をした。それをみた佐緒里は、思わず営業スマイルを見せた。
「い、いらっしゃいませ。あの・・ ご注文は・・?? 」
 カトレア魔人が返事をした。
「スカーレットエンジェルと、エンジェルスの小娘どもをくれ! それから、スカーレットエンジェルJrのガキもだ」
「そ・・ そんな物注文されたって、作れません」
「ならばスカーレットエンジェルのガキ。お前だけでも良い」
 戦闘員が立ち上がって佐緒里を威嚇し、カトレア魔人とバンブー魔人も戦闘態勢をとった。
「スカーレット・・ う・・・ 」
 佐緒里は変身しようとしたが、突然頭を押さえて苦しみだした。カトレア魔人が催眠音波を出していたのだ。
「く・・ 頭が・・ 頭が・・ 体の力が抜ける・・ 」
 数秒後には佐緒里は意識を飛ばしてその場に倒れた。
「ゼネラルダイア様から預かったものをもってこい!」
「イーッ!」
 戦闘員の一人がカトレア魔人のところに来て、ケースを差し出し、さらにもう一人が花の咲いた鉢植えを持ってきて、カウンターの上に置いた。カトレア魔人はケースを開けると、中にあったリング状の物体を取り出し、佐緒里の首に嵌めた。物体は佐緒里の首に嵌まると消えた。
「これでよし! これでこのガキは、我がネオ‐ブラックリリーの意のままに操る事が出来るのだ。他の奴等が戻ってくるとまずい。者ども引き揚げろ」
「イーッ!」
 二体の魔人と戦闘員たちはANGELから潮が引くごとく次々と引き揚げて消えた。

    * * * *

 聖奈子は城跡公園の山の麓にある駐車場に乗り付けると、オートバイを停めて飛び降り、公園に向かって駆けていった。頂上への道を全力で駆け上り、上りきって平坦な場所まで来た聖奈子が見たものは、縛られて首に縄をかけられている母の祥子と、妹の佳奈子の姿だった。

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「ママ! 佳奈子!」
 聖奈子は二人に向かって駆け出そうとした。
「待て!! そこで止まれ!」
 聖奈子と2人の間に、戦闘員が立ちふさがり、木の影からキノコ魔人が出てきた。手にはロープを持っていて、そのロープは木の枝にかけられ、佳奈子の首にかかったロープに繫がっている。
「これ以上近づくと、このロープを引っ張り上げるぞ。そうすればこのガキは首が締まってあの世行きだ。キキキキキーッ」
「んんーっ! んーっ! (お姉ちゃん助けて・・)」
「ゼネラルダイアは何処だ!?」
「ゼネラルダイア様は此処にはいない。お前の相手など俺一人で充分だ。この人質がいればな。キキキキキーッ」
「ママと佳奈子を返して!」
「そうはいくか。こいつらはお前を倒すための大事な人質だ。お前を殺したあとで、こいつらもあの世行きだ」
「卑怯者!」 
「今頃気付いたか。我がネオ‐ブラックリリーは、卑怯なのが取り柄なのだ」
「く・・・」
「者ども。小娘を押さえつけろ。小娘は手出し出来んのだ」
「イーッ」
 戦闘員が聖奈子の傍まで駆け寄ってきて、聖奈子の両腕をつかんで押さえつけた。キノコ魔人は持っていたロープを近くにいた戦闘員に持たせると、剣を持って聖奈子に近づいてきて、切っ先を聖奈子の顔の前に突きつけた。
「キキキキーッ! 今まで散々梃子摺らせたお返しだ。嬲り殺しにしてやる」

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 数分後には聖奈子は後ろ手に縛られて、祥子、佳奈子と同じように首に縄をかけられ、三人揃って並べられていた。キノコ魔人は勝ち誇ったように捲くし立てた。
「キキキーッ! さあ誰から吊るしてやろうか」
「んーっ!(助けて・・ 嫌あーっ)」
「私はどうなってもいいから、ママと佳奈子は助けて」
「ウルセエッ!」
 バシィーン!
 キノコ魔人の平手が聖奈子の頬を直撃した。
「キキキーッ。よおーし・・・  望み通りお前から吊るしてやる。母親と妹の死に様を見れないのが残念だな。エンジェルブルーの最後だぁ」
「く・・・ 」
 キノコ魔人は戦闘員に合図をした。戦闘員が三人がかりで聖奈子の首にかかったロープを引っ張り上げた。
「ぐぅ・・・・・ 」
 呻き声とともに聖奈子の体が宙に浮き、祥子と佳奈子は思わず顔を背けた。その時、光の輪が回転しながら飛んできて、聖奈子を吊るしているロープを切り裂き、聖奈子は地上に落ちた。ロープを引っ張っていた戦闘員も、奇声とともに倒れて転がった。続いて祥子と佳奈子のロープも切り裂かれた。突然の事にキノコ魔人は狼狽した。
「な・・ 何者だ。何処だ!! 出て来ぉい!!」

「ここよ!」
 キノコ魔人が声がした方を向くと、そこには美紀子が立っていた。
「おのれぇスカーレットエンジェル!」
「もう一人いるわよ!」
 声と同時にキノコ魔人の真上から、美由紀が急降下してきた。
「エンジェルキック!」
「キキキキーッ!」
 キノコ魔人は衝撃で吹っ飛び、地面を一回転した。美由紀は着地すると同時に、空中を飛んでいた光の輪を自分の両手に引き寄せて掴み、光の輪がバトンになった。

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「ネオ‐ブラックリリー! お前達の思い通りにはさせないわ!」
「おのれ小癪な! かかれえっ!」
 戦闘員が美由紀に襲いかかり、美由紀と格闘戦になった。その隙に美紀子は祥子と佳奈子を縛っていた縄を切り、逃げるように促してから、聖奈子の傍へ行って介抱した。
「聖奈子。しっかりして」
「ぐ・・ ゲホゲホ・・・ も、もう少しで首吊り死体になるところだったわ」
「キャーッ! 助けてぇーっ!」
 佳奈子の声が聞こえ、聖奈子が振り向くと、戦闘員に追いつかれて囲まれている佳奈子と祥子の姿があった。
聖奈子は立ち上がると、走りながらポーズをとった。
「エンジェルチャージ!」
 聖奈子の体が光に包まれ、光が消えると同時に聖奈子はエンジェルブルーになった。聖奈子はそのまま戦闘員の一人に飛びかかり、殴り倒してから佳奈子と祥子の前に立った。しかし多数の戦闘員が隙を窺って襲い掛かる体勢をとっている。その時戦闘員の一人が呻き声とともに倒れ、その後ろから美紀子がスティックを手に、聖奈子の傍まで駆け寄ってきた。
「お母さんと佳奈子ちゃんは私が護るから、聖奈子は美由紀を援護して」
「はい!」
 聖奈子は返事をすると、ダッシュして美由紀のいる方へ走り、美紀子は周りにいる戦闘員を倒しながら、祥子と佳奈子の2人を誘導した。

 一方の美由紀は、培われた得意の身軽さとダンスのテクニックで、戦闘員の攻撃をあしらいながら、一人ずつ倒していた。
「おのれ小娘!」
 キノコ魔人が出てきて、毒胞子を吐いた。気付いた美由紀はバトンを光の輪に変えて回転させた。胞子が跳ね返されて拡散し、近くにいた戦闘員に降りかかって、戦闘員は絶叫とともに悶絶して溶けた。その時美由紀の後ろから聖奈子がジャンプして美由紀を飛び越え、キノコ魔人目掛けて急降下した。聖奈子の位置が美由紀の陰になっていたため、キノコ魔人は聖奈子に気付かず、不意打ちを食う恰好になった。
「エンジェルキック!」
 ドカッ!!!
「キキキキーッ!!」
 キノコ魔人は絶叫とともに反動で地面を一回転した。聖奈子は着地すると、ソードと楯を出して攻撃態勢をとり、キノコ魔人を威嚇した。
「よくもやったな化け物! あたしだけじゃなく、ママと佳奈子まで・・・ 借りを返してやるから覚悟しやがれ!」
 聖奈子は捲くし立てると、ソードを振り上げながらキノコ魔人目掛けて突進した。戦闘員が割り込んできたが、ソードでなぎ倒し、立ち上がって態勢を立て直そうとしていたキノコ魔人にソードを突き刺した。
「アクアストーム!!」

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「ギーッ!! ギギギーッ」
 ソードが突き刺さったところから火花が迸り、聖奈子はソードを抜き取ると、ジャンプして空中で反転し、美由紀の傍に着地した。キノコ魔人は呻き声を上げながら、前のめりに倒れて爆発し、跡形も無く吹っ飛んだ。周囲に群がっていた戦闘員は美由紀と美紀子によって倒され、生き残ったものは我先にと逃げ出して、あたりに静寂が戻ったところで、みんなは一箇所に集まってきた。佳奈子は聖奈子に向かって駆け出し、そのまま飛びついて聖奈子を抱きしめながら大泣きした。
「奴等の狙いは一体なんだろう・・ 」
 美由紀が気付いたように、美紀子に言った。
「これまでの経緯だと、私たちの戦力を分散させて、何かをしようとしているのは確かだわ」
 話が聞こえた聖奈子は、佳奈子を引き離すと変身を解いて美紀子の傍に来た。美紀子は携帯を取り出すと、電話をかけ始めた。
「繫がらない・・ 」
「美紀子さん。何処へかけたの?」
「佐緒里よ。あの子は今、ANGELで留守番しているはずなんだけど・・・ 」
 傍では美由紀も絵里香に携帯で連絡していたが・・・
「ダメだわ。絵里香も繫がらない」
「みんな! 急いで戻るわよ。段々奴等の狙いが読めてきたわ」
「そうか分かった! もしかすると、あたしたちを次々と狙って、撹乱させようとしているのね」
「聖奈子。それだけじゃないと思うわ。恐らく作戦の確率だわ」
「何よ美由紀。確率なんて、急に数学めいた表現使って」
「つまり複数の場所で同時に動いて、作戦を同時にやって、一方がダメでも、もう一方で成功させようとしているのよ」
「ふたりとも。とにかく急いで戻るわよ」
「はい」

   * * * *

 さて・・・ こちらは絵里香と孝一が拉致されて連れ込まれた、例の洋館。
 建物内の一室では、孝一がベッドの上に横たわっていた。絵里香の姿は無い・・
「ん・・・・・ 」
 孝一は目を覚まし、真っ先に部屋中を見回した。
「何処だここは・・・ 確か、公園で甘い香りがして・・ そのあと何だか眠くなってきて・・・そうだ。一緒にいた絵里香は・・ 絵里香がいない」
 孝一はベッドから飛び上がるように起きて、ドアの方へ行こうとしたが、突然ドアが開いたのでその場に止まった。ドアを開けて入ってきたのは、自分より5~6歳位年上の、背の高いスレンダーな体型の女性で、孝一はその女性の姿を目の当たりにして、一瞬硬直した。

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「あら・・ 起きたのですか?」
「ここは?」
「私の家です。貴方が我が家の敷地のそばで倒れていたのを見かけたので、家のものにお願いしてここへ運ばせたんです」
「あの・・ もう一人いたんですけど・・ 女の子がいたんですけど、知りませんか?」
「女の子? 倒れていたのは貴方だけでした」
「俺だけ? (何か変だな・・ どういう事なんだ。それにこの香り・・ さっきのものと同じものだ。この女性から出ている・・・・ まさか・・)」
 孝一の前に立つ女性からは、甘い香りが漂っていた。さっきの匂いほど強い香りではないものの、孝一はその香りを覚えていたのだ。
「あの・・ 助けてくれてありがとうございました。それじゃ俺帰りますから。と・・・」
「あ・・ ダメですよ。まだフラフラしてるじゃないですか」
 そう言って女性はふらついている孝一を支えた。
「大丈夫ですから」
 そう言って孝一が無理矢理外へ出ようとしたその時、部屋の壁にかかっていた鏡に女性が映っていないのを見て、反射的に女性から離れて距離をとった。
「てめぇ! 何者だ!? 鏡に姿が映っていない。それにお前から出ているその香り。あの公園で漂っていたものと同じだ」
 突然女性の目つきが鋭くなった。
「お前・・・ 見たわね・・・・ 気付かれたのなら仕方が無い」
 女性の体の周りに白い水蒸気のような煙が立ち込め、ゼネラルダイアの姿になった。

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「お前はネオ‐ブラックリリーの」
「いかにも・・ 私がゼネラルダイアだ」
「絵里香を何処へやったんだ。絵里香を返せ!」
「ふふふふ・・・ いまからお前の愛しい絵里香に会わせてあげるわ。ただし、その前に・・ イーッヒッヒッヒッヒ」
そう言いながらゼネラルダイアはダリア魔人に変身し、孝一を威嚇した。
「ば・・ 化け物! う・・・」
 孝一は急に両手で頭を押さえて苦しみだした。ダリア魔人が催眠電波を発していたのだ。さらに例の甘い香りが強くなって、部屋中に充満し、孝一はたまらずその場に倒れて気を失った。
「イーッヒッヒッヒッヒ。よーし! これでこいつは私の操り人形だ。こいつを使ってこれからお楽しみのショータイムだ」
 ダリア魔人はゼネラルダイアに戻ると指をパチンと鳴らした。すると室内に戦闘員が入ってきた。
「こいつを地下牢に連れて行け!」
「イーッ」
 室内に戦闘員が入ってきて、孝一を抱え上げると部屋の外へ運び出した。

    * * * *

 美紀子と聖奈子、美由紀は祥子と佳奈子を連れてANGELまで戻ってきた。店の前まで来て、美由紀が扉を開けようとしたが、美紀子が止めた。
「美由紀待って!」
 美紀子の声に美由紀は扉の取っ手を掴もうとした手を離し、美紀子は美由紀を退けて扉の前に立った。何か異様な胸騒ぎを直感で感じたのだ。
「美紀子さん。どうかしたんですか?」
「シーッ。静かに」
 美紀子は静かにするように言うと、精神を統一するかのごとく目を瞑った。そして目を開けると、後ろに立っていたみんなの方を向いて言った。
「扉から離れて!」
 美紀子は店の扉を全開にした。途端に店内に充満していた甘い香りが外に出てきた。
「何この匂い・・ 」
「なんか花の香りみたい・・ ツーンとくるわ」
「ダメよ! みんな。この匂いを嗅いではダメ!」
 言うが早いか、美紀子は片手で口を覆い、聖奈子と美由紀、祥子と佳奈子も言う通りにした。美紀子は急ぎ足で店内に飛び込むと、店の窓を全て開け、カウンターにある換気扇のスイッチを『強』にした。さらに周辺の部屋の窓も全て開け、自分の部屋から消臭剤を持ってきて、店内に撒いた。数分後には店内に充満していた花の香りが消え、美紀子は店の外にいるみんなを呼んだ。
「もう大丈夫よ。みんな入って」
 美紀子は全員が中に入ったのを確認すると、扉を開けたままにして『準備中』の札を下げた。
「美紀子さん。一体この匂いは何だったの?」
「正体はこれよ」
「鉢植え?」
 美紀子はカウンターに置かれていた鉢植えを持つと、自分の部屋から持ってきた円筒形の缶の中に入れ、厳重に蓋をした。
「後で詳しく分析するけど、あの匂いには人間の脳をコントロールして、催眠状態にする物質が含まれているわ。私は昔クイーンリリーの差し向けた怪物と戦った時、同じ香りを嗅いだ事があったからすぐわかったのよ。恐らく私たちが出て行った後で、奴等がここへ来て、これを置いていったんだわ」
「え・・ それじゃ・・ そうだ! 佐緒里ちゃんは? 佐緒里ちゃんは何処に・・」
 聖奈子が思い出したように店内を見回した。
「お姉ちゃん。あそこ!」
 佳奈子が店の隅っこで倒れている佐緒里を見つけ、美紀子は倒れている佐緒里の傍へ行った。
「佐緒里! しっかりして」
 しかし美紀子はすぐに佐緒里のそばから離れた。さっき佐緒里が襲われて気絶した時に、佐緒里の首に嵌められた物体(普通の人には見えない)が、美紀子には見えたのだ。美紀子はスティックを出すと、その切っ先を佐緒里に向けた。
「み、美紀子さん! 何をするの?」
 驚いた佳奈子が叫んだ。
「佳奈子ちゃん静かにして!」
 美紀子はスティックを一度上に向けてから、もう一度佐緒里に向けた。スティックから光線が発射されて、佐緒里の首に命中し、パリーンという音とともに二つに裂けたリング状の半透明な物体が現れて床に転がった。
「何これ・・」
 佳奈子が手を触れようとしたのを美紀子が止めた。
「みんな下がって!」
 美紀子は物体にスティックを向け、物体はスティックに吸い込まれるように消えた。
「これは恐らく遠隔操作で人を操るためのものよ。私たちが出て行った後で、佐緒里ちゃんは奴等に襲われたのよ。奴等は佐緒里を操り人形のようにして、私たちを襲わせようとしていたんだわ。そして鉢植えの花の香りで、私たちを一網打尽にしようとしたのよ」
「なるほど・・ 。奴等らしい汚い手口だわ」
「ん・・・・・・」
 佐緒里の口から微かな声が漏れて、佐緒里が目を覚ました。
「美紀子さん。佐緒里ちゃんが目を覚ました」
「佐緒里。佐緒里」
 佐緒里はゆっくりと立ち上がり、ふらつく体を支えるように椅子の背凭れに手を掛けた。
「しっかりして」
「叔母様・・ それにみんな・・ 」
「佐緒里。一体何があったの?」
 佐緒里は事の経緯を話し始めた。

    * * * *

 例の洋館では、地下へ続く階段をゼネラルダイアを先頭に地下室へと降りていた。気絶した孝一は戦闘員に担がれ、やがて全員地下室の一室の前に止まった。扉の外では見張りの戦闘員が立っていて、ゼネラルダイアを見て敬礼した。
「捕えた小娘は?」
「イーッ。ゼネラルダイア様。まだ気を失ったままです」
「よし。開けろ!」
 戦闘員が地下室の扉を開け、ゼネラルダイア魔人を先頭に全員中に入った。部屋の一番奥の壁には鎖で四肢を繫がれた絵里香の姿があった。
「エンジェルスの小娘め。目に物見せてくれようぞ」
 ゼネラルダイアは後ろにいた戦闘員に向かって合図をし、戦闘員は抱えていた孝一を静かに床の上に横たえた。ゼネラルダイアは絵里香の傍まで近づくと、平手で絵里香の頬を2~3回叩いた。
「起きろ! 小娘」
「ん・・・ 」
 絵里香はうっすらと眼を開けた。そしてすぐに自分が捕えられていると認識した。真正面に立っているゼネラルダイアを見た絵里香は、両手を動かしたが、鎖がジャラジャラと鳴るだけで、それ以上は動けなかった。両手だけでなく、両脚も鎖で繋がれている。

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「小娘。今からお前のショータイムの時間だ」
「どうするつもりなのよ」
「あれを見ろ」
 ゼネラルダイアは出入り口を指差した。そこには気絶したまま床に横になっている孝一がいた。
「こ、孝一! お前たち孝一に何をしたのよ」
 絵里香が暴れて、鎖がジャラジャラと音をたてる。
「ふふふ・・ それはこいつが目を覚ましたときのお楽しみだ」
 ゼネラルダイアは絵里香の顎を右手でしゃくりあげ、絵里香は首を振って顔を横にそむけた。ゼネラルダイアは絵里香から少し離れて距離をとると電光剣を抜き、その切っ先を絵里香に向けて電流を流した。
「ウワアァァァーッ!」
 絵里香は苦痛に身体を悶絶させ、そのたびに鎖がジャラジャラ、ガチャガチャと音をたてる。数分後には絵里香はハアハアと荒い息遣いをしながら、グッタリとしていた。
「余興はこのくらいでいいだろう。いよいよ本番の始まりだ」
 ゼネラルダイアは戦闘員に向かって合図をした。戦闘員は横たわっている孝一の体を揺すった。
「ん・・・ 」
 孝一は目を覚まして、ゆっくりと立ち上がった。しかし、その顔は青ざめていて、完全に目が据わっている。ゼネラルダイアは孝一に向かって指をパチンと鳴らした。すると孝一が何かに反応したように、絵里香の方を向いた。
「さあやれ! 我が僕よ。お前の手でこの小娘を殺すのだ」
「カシコマリマシタ。ゼネラルダイアサマ」
 孝一は両手を前に出して絵里香に向けると、絵里香に向かってゆっくりと近づいた。そしてその手が絵里香の首にかかった。
「孝一。孝一! やめて!! 私よ。絵里香よ。おねがいやめて」
「無駄だ小娘。お前の愛しい恋人は、私の操り人形になっているのだ。いまから楽しいショータイムの始まりだ。さあやれ! 小娘を殺すのだ」
 孝一の両手が絵里香の首を・・ 締め付けなかった。孝一はどういうわけか回れ右をして絵里香に背を向けた。
「おい。どうしたのだ。私の命令が聞こえないのか」
 孝一は無言のままゆっくりと右手を上げて、ゼネラルダイアの腰にある電光剣を指差した。
「ん? そうか・・・ これで小娘を一突きにしようというのか。それともバッサリと斬るか・・ 」
 ゼネラルダイアは何の疑いも無く、電光剣を抜いて孝一に渡した。電光剣を受け取った孝一は再び回れ右をして絵里香の方を向き、電光剣の切っ先を絵里香に向けた。そして上段に構えて絵里香に近づいた。
「やめて・・・ お願い目を覚まして・・ 」
 そう言いながら絵理香は孝一が自分に向かってウインクしたのに気付いた。
「(え・・ もしかして正気・・・ ???)」
「デヤアァァァーッ!」
 孝一は大きなかけ声とともに、電光剣を絵里香目掛けて振り下ろした。
「キャアーッ」
 部屋全体に絵里香の悲鳴が轟く・・・
 が、電光剣は絵里香の身体をそれて、右手を繋いでいる鎖を切り、返す刀で今度は左手の鎖を切り裂いた。続いて足枷の鎖も・・ ここでようやくゼネラルダイアは異変に気付いた。鎖が切れて枷が全て外れ、絵里香は壁に寄りかかって自分の体を支えた。
「こ、これはどういう事だ・・・ 」
 実はこういう事だったのである。ゼネラルダイアが催眠電波を発した時、同時に強い香りが部屋に充満したので、孝一は完全な催眠状態になる前に、香りの毒で気を失ってしまったため、洗脳が中途半端だったのだ。それでゼネラルダイアが絵里香に電撃を加えたとき、その閃光と衝撃で正気に戻っていたのだ。
 孝一はゼネラルダイアの後ろに素早く回りこんで、ゼネラルダイアの片手を捩じ上げ、持っていた電光剣を首筋にあてがった。
「てめえの思い通りにならなくて悪かったな」
「き・・ 貴様・・ 何故洗脳が効かなかったのだ。それに私の出す香りは人間の体の機能を一時的に停止させる事が出来るのに」
「そんな事知るか! 俺はある程度の毒にはやられないように、美紀子さんからワクチンを打ってもらってるんだ」
「くそ・・ おのれ」
 絵里香も駆け寄ってきて、ゼネラルダイアのもう片方の腕をつかんだ。しかしここは地下牢の中である。周りにいた戦闘員たちがジリジリと近づいてきた。
「オット待った! こいつを死なせたくなかったら、俺を安全な場所まで連れて行け。まずこの屋敷から出してもらおうか」
 孝一は電光剣の刃をゼネラルダイアの首に押し当てた。
「まずそこにいる物騒な奴等から外へ出てもらおうか」
「くそっ・・ 止むを得ん・・ おい。貴様ら先導しろ」
「イーッ」
 戦闘員たちが地下室から廊下へ出て、そのあとからゼネラルダイアを人質にした絵里香と孝一が出た。廊下を歩いて一階へ上がり、屋敷の外へ出て庭園内を通り、門が開けられて敷地の外へ出た。周囲は鬱蒼とした森で囲まれている。戦闘員たちは遠巻きに取り囲んでいた。森の中の道をある程度歩いたところで、絵里香と孝一はゼネラルダイアを思いっきり突き飛ばし、ゼネラルダイアは反動で森の中のブッシュに身体を突っ込んだ。二人はその場からダッシュすると、そのまま駆けた。
「くそっ! おのれ! 絶対に逃がすな!」
 ゼネラルダイアが怒鳴って、戦闘員が一斉に二人を追った。
「絵里香。ここは無理しないで、とにかく逃げるんだ」
「うん」
 孝一は振り向くと、追いかけてくる戦闘員に向けて電光剣を投げつけた。電光剣はゼネラルダイアがいた場所のすぐ近くにある木に突き刺さり、木が落雷に遭った如く電光に包まれて縦に真っ二つに裂け、付近で次々と爆発の炎が上がって、数人の戦闘員が巻き添えで吹っ飛んだ。ゼネラルダイアたちが態勢を立て直したときには、既に二人の姿は無かった。
「おのれ・・ 逃げられたか。だがやつらの行き先は分かっているのだ。やつらの知らせで必ずスカーレットエンジェルと、エンジェルの小娘どもがやってくるはずだ。者ども。次の作戦だ。アジトへ戻れ」
「イーッ」

    * * * *

 ANGELでは、連絡が取れない絵里香に聖奈子と美由紀が必死で携帯をかけていた。
「ダメだわ・・・ 全然出ない」
 そこへ佐緒里がやってきた。
「いくらかけてもダメです。絵里香さんは奴等に捕まっています」
「ってことは、孝一君も・・ 」
 佐緒里は無言で首を縦に振った。
「こっちへ来てください」
 佐緒里は聖奈子と美由紀をテーブルの一つに誘った。テーブルの上には例によって地図が広げられていて、佐緒里はタウジングのような要領で、いつものように探索をしていたのだ。地図の一角には赤で丸印がつけられている。
「佐緒里ちゃん。これは?」
「ここに奴等のアジトらしきものがあります。絵里香さんと孝一君は恐らくここに・・・ 」
「くそっ! やつらはこれが狙いだったのか。それであちこちであたし達を襲っていたのか」
「誰でもいいから手当たり次第に襲って、結局は絵里香が狙いだったってわけか」
 ピーッ ピーッ
 突然アラームのような音がした。店内にいた全員の携帯電話が鳴っていて、美紀子が真っ先に携帯を開いた。
「孝一君からの緊急通信だわ」
 みんなが美紀子の方を向いた。
「電波の発信源は・・・ このあたりです」
 佐緒里が指差した場所は、赤い丸印から2キロほど東へ行った場所だった。その時美紀子の携帯に着信が入った。

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「はい美紀子です。孝一君・・ 無事だったの? 今何処なの? うん・・ 絵里香も一緒・・ うん・・ うん分かった。もし安全な場所があったら、動き回らないでその場所にいてジッとしていて」
 美紀子は携帯を切ると、自分の部屋へ飛び込んだ。
「孝一君無事だったんだわ」
「絵理香も無事か・・ 」
 聖奈子も美由紀もホッとため息をついた。そこへ美紀子が中型のケースを持って慌しく出てきた。
「みんな出発よ! 急がないと二人の命が危ないわ」
「はい!」
「佐緒里はここで聖奈子のお母さんと妹さんの傍にいてあげて。もうここが襲われる事は無いと思うけど、充分気をつけて」
「はい叔母様」
 聖奈子と美由紀は美紀子について慌しく外へ出た。美紀子は自分の車を出して発進し、聖奈子は後ろに美由紀を乗せてオートバイで発進した。

    * * * *

「しかし・・ 凄い深い森だな。あの屋敷からは大分来ているはずだけど・・ 」
「とにかく今は動かない方がいいわ。それより孝一。もう手を離して。いつまでも握られてると恥ずかしいよ」
「あ・・ 悪い悪い」
 二人はお互いの顔を見合った。たちまち2人とも顔が赤くなった。
「これがデートだったら良かったんだけどな」
「喋らないで。奴等に話し声が聞こえたらやばいよ」
 絵里香と孝一は森の中で動かないでジッとしていた。二人のいる場所は窪みのような地形で、周囲はブッシュが窪みを取り囲んでいた。2人ともバカではない。道があるところを逃げれば、追っ手に追いつかれて捕まる確率が高い。それで見つかりにくいようにブッシュや繁みの中をぬうように逃げていたのだ。それに森の中は静かなので、ちょっとした音でも二人の耳に入る。

    * * * *

 その頃美紀子は既に、絵里香と孝一が最初に襲われた公園のすぐ傍まで来ていた。例の甘い香りがまだ残留していて、美紀子の持っていた探知機のメーターの針が触れた。
「例の匂いの反応だわ」
 傍にいた聖奈子と美由紀がお互いの顔を見合った。
「貴方達には私の作ったワクチンを投与しているから、匂いを嗅いだだけなら大丈夫よ」
 美紀子は携帯を開いて電波の発信源を探った。
「ここから西北西の方向へ約2キロ・・・ 二人とも行くわよ」
 美紀子は再び車を発進させ、その後から聖奈子と美由紀がオートバイで追った。暫く走っていると鬱蒼とした森林地帯が見えてきた。このあたりは都市計画から外れた場所で、自然林という形で残されている場所である。木々はおもに針葉樹と常緑樹で占められていて、季節に関係なく木々は緑に覆われている。美紀子は森の傍で車を停めて降りると、探知機を作動させた。
「反応が相当強いわ。メーターが振り切れている・・ 」
「アジトもこの近くね・・」
「この森の中の何処かに、絵里香と孝一君がいるのか・・ 」
 聖奈子と美由紀も美紀子の傍に寄ってきた。美紀子は車からケースを出すと、それを持って森の中へ入っていき、聖奈子と美由紀もその後からついていった。例の香りも強くなっていたが、美紀子のワクチンのおかげで有害物質に冒される事は無かった。
 暫く歩いたところで、美紀子は足を止め、聖奈子と美由紀は辺りを見回した。周囲は静寂としていて、ネオ‐ブラックリリーの気配は全く無い。
「電波の反応が強い。二人はこのあたりにいる」
 その時突然近くの繁みがガサガサと音がして、誰かが近づいてきた。
「誰!?」
 聖奈子と美由紀は変身ポーズをとって身構えた。出てきたのは絵里香と孝一だった。
「2人とも待って」
「孝一君・・ 絵里香・・」
「無事でよかったぁ・・」
 絵里香と孝一は美紀子たちの話し声が聞こえたので、隠れていたところから出てきたのだ。
「奴等のアジトはこの先よ」
 絵里香がアジトのある方角を指差した。

 それから暫くして、美紀子と絵里香、聖奈子に美由紀、そして孝一の五人は、森が無くなった先にある一軒の洋館が見える位置にいた。
「あれが奴等のアジトだ」
「庭にある花からは、例の香りが漂っているわ」
「しっ・・ 静かに」
 玄関の周辺には見張りの戦闘員が数人たむろしている。その時突然警報が鳴り、戦闘員たちが慌しく動き出した。さらに屋敷の中から次々と戦闘員が出てきて、森の中へ入っていった。ゼネラルダイアも出てきて、戦闘員とともに森の中へ入っていった。
「どういう事かしら・・ 」
「あたしたちに気付いたんじゃないみたいね」
「ゼネラルダイアが出てきたって事は、恐らく中はもぬけの殻に近いはずだわ」
「よし。中に入るわよ。絵里香、孝一君。案内して」
「分かりました」
 美紀子たちは急ぎ足で洋館の中へ入り、地下への通路を降りていった。
「不気味なくらい静かだわ」
 廊下の左右には地下室が並んでいたが、室内は壁に鎖がぶら下がっているだけで、捕えられた人はいないようだ。やがてみんなはアジトの司令室にたどり着いた。
「ここが司令室だわ」
 自動ドアが開き、全員一斉に司令室になだれ込んだ。が、司令室も蛻の殻だった。コンピューターや機材は動いていたものの、室内は誰もいない。
 ガシャーン!!
 突然の音に、真っ先に絵里香が振り向いた。今入ってきた司令室の出入り口が閉まっている。絵理香は扉の傍へ駆け寄り、前に立ったが開く気配が無い。聖奈子と美由紀も駆け寄ってきて、扉を叩いたり蹴ったりしたが、全くびくともしない。
「閉じ込められたんだわ」
「罠だったのね」
 その時突然大音響とともに室内がグラグラと揺れ、みんなはその場でよろけた。そして揺れが収まると同時に、室内のスピーカーから声が響いてきた。
「バカメ! 罠にはまったな。お前達が来ていた事は既に分かっていたのだ」
「これは大首領の声だわ」
 美紀子がスピーカーを見て言った。
「お前達をこのアジトに誘い込み、閉じ込めたところで起爆装置が作動し、アジトが爆発するようにセットしておいたのだ。 全員揃って爆発に巻き込まれて地獄へ落ちろ。ワーッハッハッハ」
 声が終わると同時に再び大音響とともに爆発音が響き、天井が崩れ始めた。
「みんな! ここから逃げるわよ」
 美紀子は絵里香たちを促し、三人は一斉に変身した。そして出入り口に向けて一斉にエネルギー波を放った。分厚い扉が吹っ飛び、みんなは司令室から飛び出して廊下へ出た。爆発が続き、司令室の壁や天井が崩れて、機材が火に包まれ、炎が廊下まで出てきた。みんなは廊下を走って逃げ、その後ろからは爆発の炎が追ってくる。一階に上がったところで大音響とともに、激しい爆発音が轟き、今度は洋館の建物が崩れ落ちてきた。
「ダメよ。もう間に合わないわ。みんな集まって!」
 美紀子はみんなを集めると、スティックを真上に掲げた。透明な膜が広がり、崩れ落ちてきた建物の破片が次々と膜に当たって跳ね返った。美紀子はシールドを張り巡らしたのだ。爆発と振動が収まったとき、洋館の建物は跡形も無く崩れ落ちていて、周囲は森に囲まれた更地のようになっていた。
「みんな無事ね」
 爆発が収まったのを見て、美紀子はシールドを解き、絵里香たちは立ち上がると周囲の様子を見た。あたり一面静寂が漂っている。
「静か過ぎる・・ 」
「おのれ小娘ども。悪運の強い奴等だ」
 捲くし立てるような声とともにゼネラルダイアが姿を現した。
「出たなゼネラルダイア! 今日こそてめえの命日にしてやる!」
「ふん! お前ら小娘ごときにやられる私ではない。者ども出でよ!」
「イーッヒヒヒヒーッ」
「ビビビビーッ」
 森の中からラフレシア魔人、カトレア魔人、バンブー魔人が姿を現し、続いて多数の戦闘員が出てきて、みんなを取り囲んだ。絵里香たちは美紀子と孝一の前に出た。
「炎の戦士! エンジェルレッド」
「水の戦士! エンジェルブルー」
「光の戦士! エンジェルイエロー」
「私たちは正義の戦士! 美少女戦隊エンジェルス!」

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「何を小癪な! 者どもかかれっ! 皆殺しだ!」
 奇声を上げながら魔人と戦闘員たちが一斉に向かってきた。美紀子は孝一を連れて、逆の方向へと逃げ、森の中に飛び込んだ。
 絵里香たちと戦闘員、魔人との間で乱戦になり、戦闘員たちは次々と斬り伏せられた。
「退け! イーッヒッヒッヒ」
 奇声とともにラフレシア魔人が出てきて、一番近くにいた美由紀目掛けて目からレーザーを放った。美由紀はバトンをクロスさせてシールドを張り、レーザーが拡散した。さらにカトレア魔人が念力で拳大の石を次々と飛ばしてきて、絵里香たちの周辺に落下した。バンブー魔人の手裏剣が絵里香たちを襲う。立て続けの攻撃に、絵里香たちは思うように戦闘態勢をとれず、次第に押されていった。カトレア魔人が絵里香たちに向かって念波を発射し、絵里香たちはその場に蹲って苦しみだした。
「く・・ 頭が・・ 頭が割れそう・・ 」
「チキショー! 化け物の念派だ」
「死ね! 小娘ども」
 そこへラフレシア魔人のレーザーが放たれ、絵里香たちの至近距離で炸裂して、絵里香たちは爆風で吹っ飛ばされた。
「キャアーッ!」

 一方、戦闘員の一部は、森に逃げた美紀子と孝一を追い、二人は追いつかれて囲まれた。
「孝一君。私から離れちゃダメよ」
「美紀子さん。俺だって戦うぜ」
 バンブー魔人も姿を現し、一斉に襲いかかる構えを見せた。
「かかれ! こいつらをぶっ殺せ!」
「イーッ」
 戦闘員が孝一に飛び掛ってきた。孝一は体を捻ってかわすと、戦闘員が持っていた剣を奪い取って、その戦闘員を斬り伏せた。美紀子もスティックを剣に変え、襲ってくる戦闘員と戦った。
「スカーレットエンジェル! 引導を渡してやる」
 バンブー魔人が手裏剣を投げつけ、一本目が美紀子のすぐ傍にあった木に突き刺さり、二本目は美紀子がスティックで叩き落した。
「えーい! しぶといやつめ!」
 バンブー魔人はさらに手裏剣を投げてきた。美紀子は飛んできた手裏剣をつかむと、それをバンブー魔人目掛けて投げ返した。
「ビビビビーッ!!」
 手裏剣はバンブー魔人の眉間に突き刺さり、バンブー魔人は絶叫とともによろけた。美紀子は間髪をいれずにバンブー魔人との間合いを詰めると、スティックをバンブー魔人に向けた。スティックから衝撃波が放たれてバンブー魔人は反動で吹っ飛び、大きな松の木に激突した。

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「ビビビーッ!」
ドオォーン!!!
 バンブー魔人は絶叫とともに爆発して吹っ飛んだ。

 絵里香たちと魔人、戦闘員たちとの戦いはまだ続いていた。絵里香たちはラフレシア魔人のレーザー攻撃で吹っ飛ばされ、悲鳴とともに地面に叩きつけられた。そこへ立て続けにカトレア魔人から衝撃波が放たれて、絵里香たちの周辺で次々と炸裂した。その間隙をぬって絵里香が飛び出し、ブレードを手にカトレア魔人に斬りかかった。一撃目はかわされたが、絵理香は間髪をいれずに間合いを詰めると、そのまま体当たりしてブレードを突き刺した。
「ファイヤーストーム!」
「ヒヒヒヒヒーッ!」
 カトレア魔人の身体から火花が迸り、前のめりに倒れて爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。カトレア魔人を倒して一瞬の隙が生じた絵里香の真後ろから突然衝撃波がやってきて、絵里香は反動で吹っ飛ばされた。
「ウワアァーッ」
 絵理香は悲鳴とともに地面を一回転しながら木に激突した。
「小娘。私が相手をしてやる。地獄へ落ちろ!」
 そう言いながらゼネラルダイアが電光剣を絵里香に向けて威嚇してきた。

「絵里香がヤバイ!」
 絵里香のピンチに気付いた聖奈子と美由紀だったが、自分たちの前にはラフレシア魔人と沢山の戦闘員が立ちはだかっていた。
「ヒヒヒヒヒーッ!」
 ラフレシア魔人が奇声を上げながら、レーザーを発射した。聖奈子は縦を翳して光線を跳ね返し、跳ね返った光線は周りにウジャウジャいる戦闘員に命中して、数人がいっぺんに吹っ飛んだ。美由紀がジャンプしてラフレシア魔人を飛び越え、真後ろに着地するや、振り向きざまバトンをラフレシア魔人に向けた。衝撃波がラフレシア魔人の背中を直撃し、ラフレシア魔人は反動で吹っ飛び、地面を一回転した。背中からは白煙を噴出している。
「聖奈子! チャンスよ」
「オッケー美由紀!」
 聖奈子はソードを高く翳してから、ラフレシア魔人目掛けて振り下ろし、美由紀もバトンをクロスさせてラフレシア魔人に向けた。

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「アクアトルネード!」
「ライトニングトルネード!」
 二つのエネルギー波が渦を巻いてラフレシア魔人に吸い込まれた。
「ヒヒヒヒヒーッ!」
 ドオォーン!!
 ラフレシア魔人は巨大な渦の中でのた打ち回りながら大爆発して吹っ飛んだ。
「やった!」
 しかし聖奈子と美由紀には一息入れる時間は無かった。ゼネラルダイアと戦っている絵里香が気になったのだ。
絵里香はブレードでゼネラルダイアの電光剣と戦っていた。ブレードと電光剣が触れる度に火花が迸り、閃光が迸った。が、ゼネラルダイアの電光剣は強大なエネルギーがあり、絵里香は次第に押されていった。ついにゼネラルダイアの衝撃波が絵里香を襲い、絵理香は衝撃で吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた。
「ぐ・・・ 」
「エンジェルレッド! とどめを刺してやる」
 ゼネラルダイアは電光剣を振り上げると、絵里香に向かって振り下ろし、切っ先を向けた。今までに無い眩しい閃光が迸り、稲妻の電光が絵里香の周囲に落下した。
 バリバリバリバリッ!!
「キャアァーッ!」
 絵理香は悲鳴とともに吹っ飛ばされ、駆けつけてきた聖奈子と美由紀のすぐ前の地面に叩きつけられた。
「絵里香! しっかりして」
 聖奈子が駆け寄って絵里香を抱き上げ、美由紀はバトンをクロスさせて、ゼネラルダイアに向かって身構えた。
「うう・・ 」
「絵里香頑張って! あたしたちには絶望という文字は無いんだろ。しっかりしてぇ!」
 絵理香は聖奈子に支えられ、よろけながらも立ち上がった。ゼネラルダイアは電光剣の切っ先を絵里香たちに向けて威嚇している。
「小娘ども! いよいよお前達の最後だな」
「うるせえ! お前こそ最後だ!」
「ふん! 冥土の土産に私の正体を拝ませてやる。この姿を見たお前達は確実に死ぬのだ」
 ゼネラルダイアはマントを翻して自分の姿を隠した。そして再び姿を現したとき、そこには醜怪なダリア魔人の姿があった。
「ヒヒヒヒヒーッ! 私はダリア魔人だ」
「う・・ 」
 ダリア魔人の姿を見た絵里香たちは、その醜怪な姿に一瞬たじろいだ。
「覚悟しろ小娘ども!」
 ダリア魔人の目から強力なエネルギー光線が発射され、絵里香たちはその場から散開した。今まで三人がいた場所でエネルギー波が炸裂し、大音響とともに地面に大きな穴が開いた。
「どうだ見たか! 破壊光線の威力を。お前達ごときにやられる私ではないのだ。イーッヒッヒッヒッヒ」

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 ダリア魔人は今度は楯を向け、楯から凄まじい威力の高エネルギー破壊光線が発射された。エネルギーが途中で拡散し、絵里香たちの周囲にある木々に次々と命中して、木々が裂けて絵里香たちの周辺に倒れてきた。その中の一本がバランスを崩してよろけている絵里香の上に・・・
 ドンッ! 
 絵理香は突然何者かに突き飛ばされた。
「キャッ!」
 絵理香は突き飛ばされて地面に転倒した。振り返ると、倒れた木の傍で倒れている孝一の姿があった。
「孝一・・・ 嫌・・ 嫌だ・・ 孝一 !」
 絵理香は形振り構わず孝一の元に駆け寄った。聖奈子と美由紀も傍に来た。孝一は絵里香を突き飛ばした瞬間、自分も地面に向かってスライディングしながら体を回転させたので、倒れてくる木を上手くかわす事が出来たのだが、無理な運動をしたために、片方の足首を捻ってしまっていた。
「痛てててて・・・ 。足首を捻っただけで済んだぜ。絵里香無事か?」
「バカ! 何でこんな事・・ 木の下敷きになったらどうするつもりだったのよ」
「何が馬鹿だよ。お前が死んじまったら、やつらに世界が征服されて、世界の破滅だろうが。俺はお前のためなら、いくらでも犠牲になってやるぜ」
 そう言いながら孝一は倒れた木にもたれるように座った。
「何言ってるのよ。そんなの嫌だ。嫌だあーっ!」
 絵理香は孝一に抱きつくと、声を押し殺して泣いた。
「馬鹿! 泣くな。おい絵里香。化け物がこっちへ来るぞ」
 そこへ美紀子も駆けつけてきた。
「みんな! 化け物がこっちへ来るわよ」
 美紀子の声に、絵里香たちはダリア魔人の方を向いた。絵里香は孝一から離れると、落ちていたブレードを拾い、迫ってくるダリア魔人目掛けて大声を張り上げながら突進した。
「ウワアアアーッ!!」
 聖奈子と美由紀が慌てて絵里香の後を追いかけた。
「絵里香待ってよ! 一人で突進したら危ないよ」
「馬鹿め! 引導を渡してやる。イーツヒッヒッヒ」
 ダリア魔人は目からエネルギー光線を発射したが、絵里香は構わず突っ込んでいった。光線が絵里香の至近距離を通過していく。絵理香はそのままダリア魔人に体当たりし、反動でよろけたダリア魔人目掛けてブレードを滅茶苦茶に振り回した。さすがのダリア魔人も、絵里香の形相にたじろいだが、持っていた楯を前に出した。絵里香のブレードが楯にあたり、鈍い金属音とともに火花と閃光が迸った。さらに楯から電光が迸って、絵里香のブレードがあたると同時に、電撃の衝撃が絵里香を襲った。
「ぐ・・ 」
 絵理香は構わずブレードを振り下ろし、ダリア魔人の盾が受け止めた。同時に絵理香はダリア魔人の腹目掛けて蹴りをお見舞いした。
「グアーッ! ヒヒヒーッ!」
 ダリア魔人は予期せぬ攻撃にバランスを崩した。間髪をいれずに絵里香は楯目掛けて蹴りをぶち込んだ。衝撃で楯がダリア魔人の手から離れて吹っ飛び、地上に落ちると同時に爆発して吹っ飛んだ。
「おのれ小娘!」
 今度はダリア魔人が絵里香に組み付いて殴りかかってきた。2~3発殴られてよろけた絵里香に、ダリア魔人の蹴りが炸裂し、絵理香の体が反動でボールのように飛んで、後ろから追ってきた聖奈子と美由紀にぶつかった。
「キャッ!」
 聖奈子と美由紀は絵里香がぶつかってきた反動で、その場に尻餅をついた。立ち上がろうとしている3人に向かって、ダリア魔人は電光剣を眼のところに持ってきてポーズをとった。
「イーッヒヒヒヒーッ」
 ダリア魔人の目から高エネルギー光線が発射され、絵里香たちの周辺に次々と着弾して、地面が吹き飛んだ。
「これでも喰らえ!」
 ダリア魔人の蔓が次々と伸びてきて、3人の首に巻きつき、締め上げてきた。
「ぐ・・ 」
「く・・ 苦しい・・・ 」
「絞め殺して血を全部吸い取ってやる。イーッヒッヒッヒッヒ」
「そ・・ そうはいくか! アイギスカッター!」
「バトンカッター!」
 聖奈子が楯を投げ、美由紀はバトンを投げた。聖奈子の楯が光を帯びて蔓を次々と切り裂き、美由紀のバトンが光の輪になって回転しながら蔓を切り裂いた。拘束していたものが無くなった絵里香たちはダリア魔人に向かって身構えた。
「来い! 化け物」

「小癪な小娘どもめ! イーッヒッヒッヒ」
 ダリア魔人が電光剣を眼のそばに持ってきて、高エネルギー光線が発射された。まぶしい閃光とともにエネルギー光線が絵里香たちを襲う。聖奈子が楯を、美由紀がバトンをクロスさせてシールドを作り、光線が跳ね返された。
「今度はこっちの番だ! ファイヤートルネード!」
 シールドを張っていた聖奈子と美由紀の間から、絵里香がブレードを振り下ろし、炎の渦がダリア魔人目掛けて襲いかかっていった。炎の渦はダリア魔人の周辺にある木々を薙ぎ倒して、ダリア魔人の周辺に次々と倒れてきた。倒れてくる木々にダリア魔人は電光剣を振り回して、次々と木々を爆砕したため、絵里香たちから注意がそれた。
「今だ! 聖奈子。美由紀」
「オッケー絵里香!」
「こっちもいつでもいいよ」
 絵里香たちはそれぞれの武器を翳すと、ダリア魔人に一斉にその切っ先を向けた。
「トリプルエンジェルトルネード‐アタック!!!」

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 炎、水、光の渦が束になってダリア魔人に吸い込まれ、ダリア魔人を包み込んだ。
「イーッ! ヒーッ! ヒヒヒヒヒーッ!!!」
 ドオォォーン!!!
 大音響とともにダリア魔人は大爆発を起こし、爆発が止むとそこには満身創痍のゼネラルダイアがいた。ゼネラルダイアはよろけながら、絵里香たちに向かって捲くし立てた。
「小娘ども・・・ こ、これで勝ったと思うなよ。い・・ 今頃は・・・ 大首領様が世界征服のために動き出しているのだ。私の役目はお前たちを引き付け、大首領様が世界征服作戦を遂行できるよう計らったのだ」
「何ですって!?」
「大首領が動いている・・」
「い・・・ 偉大なる・・ ね・・ ネオ‐ブラックリリー大首領クイーンリリー様万歳・・・バンザーイ!!!」
ゼネラルダイアは前のめりに倒れると、大爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。爆発が止んだあとも、絵里香たちはゼネラルダイアが吹っ飛んだ場所を見つめていた。

    * * * *

「みんな! すぐに天間村へ行くわよ」
 美紀子が絵里香たちに向かって駆けながら叫び、聖奈子と美由紀は我に返って美紀子の方へ駆け寄った。絵理香は二人を追い越すと、孝一がいる所まで駆けていき、木にもたれて座っている孝一に抱きつくと、声を押し殺して泣いた。
「孝一。お願いだから無茶しないでよ」
「大丈夫大丈夫。俺はそう簡単に死ぬほどヤワじゃないぜ」
「そんな事言わないで! 孝一のいない世界なんて考えられない!」
 絵理香は孝一から少し離れると、エンジェルレッドのまま孝一に再び抱きつき、唇を重ねようとした。
「絵里香ちょっと待て! みんな見てる・・ 」
「えっ?」
 我に帰った絵里香は後ろを振り向くと、絵里香を追ってきた聖奈子と美由紀が立っていた。
「キャッ!」
 絵里香は顔を真っ赤にして俯いた。
「孝一君のいない世界なんて考えられない・・・ か」
 聖奈子が呟き、絵理香はさらに顔を真っ赤にした。美紀子もやってきて、孝一の傍へ来ると、怪我の様子を見た。
「大丈夫。捻っただけみたいだわ。骨に異常は無いから、湿布だけで直るわよ」
 美紀子は立ち上がると、孝一の手を引いて支えながら立たせた。
「絵里香も手伝って」
 絵里香は変身を解くと、孝一のもう片方の手を取り、自分の肩に抱えて支えた。
「孝一。歩くの大変だろうけど、少し我慢して」
 孝一は無言で頷いた。

 その頃・・
 天間村の某所では、大首領クイーンリリーが、隠れていたアジトから姿を現していた。
「不甲斐ない者どもめ・・・ 私が直々に出ないと何も出来んのか! 今に見ていろ・・・ エンジェルの小娘・・ そしてスカーレットエンジェル。私が動く以上、もはや世界征服は目の前にあるのだ」


   * * * *

 大幹部ゼネラルダイアは倒れた。そしてついに大首領クイーンリリーが、その姿を現した。エンジェルスの目の前に現れる日も近い・・  負けるなエンジェルス!


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 次回予告
 第47話『最後の戦い』

 大幹部ゼネラルダイアは倒れた。追い詰められた大首領クイーンリリーは、世界征服のための総攻撃の陣頭指揮を執る。その本拠地が天間村にある事を知った美紀子は、絵里香たちと佐緒里を連れて天間村に向かう。
皆に襲い掛かってくる再生怪人たちと戦闘員。そして大首領クイーンリリーがついにその醜怪な正体を現し、エンジェルスに襲い掛かる。

 次回はかつてエンジェルスが大ピンチになった時、助けに来た正義のヒロインミルキーピンクが、従妹の早苗とともに再度登場します。再び夢の共演です。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第47話『最後の戦い』にご期待ください。

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