鷲尾飛鳥

01月 « 2015年02月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28  » 03月

特別編『ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設の恐怖(?)』

2015年 02月10日 21:11 (火)

SP01-00.png

 まえがき 
 Pixivでも掲載しています。今回は『やる夫』をアレンジしたキャラクターを使って、ストーリーを作成しています。


この物語は、美少女戦隊エンジェルス本編の第6話と第7話の中間あたりにおける、絵理香、聖奈子、美由紀のエピソードである。季節は5月のゴールデンウイークが過ぎた頃。ネオ‐ブラックリリーはまだ大幹部の赴任前で、世界征服作戦も本格的に行われておらず、派遣された魔人が幹部を兼任して各部隊に指示を送り、魔人同士の共同戦線や、作戦の引継ぎなどが盛んに行われていたときである。美紀子は大学の研究室での研究と臨時講師をやっていて不在であり、実際に絵里香たちをサポートしていたのは、絵里香と聖奈子の担任で、バトン部顧問の藍原詩織であった(第2話~第6話参照)。そんな中での絵里香たちの活躍や如何に・・・・

    *      * *      *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、次の作戦が練られていて、司令室では大首領の声が流れていた。

SP01-01.png

「間もなく諸君の元に大幹部が派遣される。これまでの人間狩り作戦はまずまずの成功を収め、改造用・奴隷用は勿論、科学者たちの誘拐も順調である。いよいよ我がネオ‐ブラックリリーの本格的な世界征服作戦が始まるのだ」
 そこで言葉が終わり、居合わせた戦闘員たちが一斉にスピーカーに向かって敬礼した。


 ネオ‐ブラックリリーの作戦行動の経緯は現在次の通りであった。蜘蛛魔人(本編第1話)からハス魔人(第4話)に至るまでの人間誘拐作戦は、エンジェルスによって魔人が倒されたものの、作戦自体は一応の成功を収めており、改造用の人材や、奴隷用の人間たちが次々とネオ‐ブラックリリーのそれぞれの基地に送られていた。また、作戦に必要な資金の調達も進んでいて、科学者や研究員の誘拐も成功していた。
 また、赴任予定の大幹部に関しては、ナマズ魔人(第6話)のダム破壊作戦の時に、大幹部ドクターマンドラが一度出てきて指揮を執ったものの、別任務で再び前線から引いてしまっていた。ネオ‐ブラックリリーは秘密結社とはいえ、まだ足場が完全に固まっておらず、様々な作戦計画が試行錯誤されながら練られていたのである。そんな中で、秘密結社としては信じられないような、突飛な作戦がこれから実行されようとしていた。

    * * * *

「やめろ! 何するんだ放せ! 警察かと思ったら・・・ お前たち一体何者なんだ」
 アジトに一人の男が連行されてきた。男の名は『丸尾 卓(まるおすぐる)』といい、現在二浪中の予備校生である。身長は175cmとまずまずだが、体重が100kgと太り気味。趣味は隠しカメラ等を駆使して若い女の子のパンチラや、スカートの中を逆さ撮りするという、いわば盗撮魔で、名前から付けられたあだ名が『〇ヲタク』。そして撮った写真をネットの通販で売りさばいたり、ばら撒くといった、悪趣味極まりないやつだった。が、その写真をネタに相手に金品を要求するといった、いわゆる脅迫や恐喝のような事はしなかったので、現行犯にでもならない限り、捕まるリスクが低かった。そして今日も駅の構内で靴とバッグに隠したカメラを使い、性懲りも無く女性のスカートの中を盗撮していて、警戒中の駅の公安に怪しまれて捕まりかけたところを、私服警官に化けた戦闘員によって拉致され、アジトに連れてこられたのである。悪態をついている卓に、戦闘員が言った。
「我々はお前を助けたのだ。少しは感謝でもしてもらいたいものだな。あのままだったらお前は駅の公安に捕まっていたんだぞ」
「助けた・・ 感謝・・・ って、お前らそんな変な恰好して、一体何なんだよ。いきなり俺をこんな所に連れてきやがって」
 そこで大首領の声が流れてきた。
「丸尾卓! お前こそ今度の作戦にふさわしい男だ」
「作戦? 何だそりゃ?」
「邪険にしなくてもいいだろう。そこにいる戦闘員たちが言うように、我々がお前をここに連れてこなかったら、お前は警戒中の公安に捕まっていたのだぞ。我がネオ‐ブラックリリーに協力するならば、お前の身の安全を保障し、それなりの報酬も与えようではないか」
「ネオ‐ブラック・・・ 協力って・・・ 金くれるんなら、やばいことじゃなけりゃ何でもするぜ。一体何すればいいんだよ」
「お前を今度新設した、ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設の責任者に任命し、今度の作戦を任せる。お前の趣味である盗撮を、好き放題にやらせてやろう。ただし、その盗撮の目標についてはこちらから指示する。我がネオ‐ブラックリリーの配下にて実行するならば、お前が国家権力に捕まるリスクは殆ど無いだろう」
「盗撮? 面白そうじゃないか。いいぜ。協力しよう。で、俺はどうすればいいんだ?」
 卓の後ろにいた戦闘員が両脇に並び、さらにもう一人の戦闘員が卓に来るよう促した。
「丸尾卓。その者たちと一緒に行け」
 卓は自分の周りに立っている戦闘員を見た。
「その男を案内してやれ」
「イーッ!」
 戦闘員たちは敬礼すると卓を促し、卓を連れて司令室を出た。

    * * * *

 それから三日後・・・・
「はい! ワンツーワンツー。はいそこでターン! 次は右足でハイキック」
 明峰学園の校舎の屋上では、バトン部が練習していた。もうすぐ鷲尾平市主催の若葉祭が始まり、バトン部は街頭パレードに参加するため、練習に余念が無かった。体育館を使えるのが週三日なので、体育館を使えない時は屋上を使っていたのだ。バトン部の部員である絵理香、聖奈子、美由紀は、3人ともユニホーム姿でみんなと練習していた。その様子を近くのビルの屋上から密かに見られている事には、まだ誰も気付いていなかった。

SP01-02.png

 ビルの屋上には数人のネオ‐ブラックリリー戦闘員がたむろしていて、その中にひときわ大柄で太った戦闘員がいた。その戦闘員こそ、卓が改造された姿だった。
 卓はビルの屋上から見える、バトン部の練習風景を見て、逸る気持ちを抑えていた。そこへ戦闘員の一人がやってきて、絵里香たち3人の写真を卓に見せた。
「お前の盗撮目標はこの3人だ」
「この3人?」
「そうだ。この3人だけを集中的に盗撮するのだ」
「ふーん・・・ 何だか訳が分かんねえけど、いったいこいつらはお前たちの何なんだ?」
「今に分かる」
「まあ・・ 3人ともスタイルはまずまずだし、獲物としては悪くねえな・・・ 」
 卓は呟きながら、用意したカメラと望遠レンズを絵里香たちに向け、盗撮を開始した。絵里香たちがターンしたり、ハイキックするところだけを狙い撮りしていたのだ。スコートが捲れて、アンダースコートとはいえ、パンチラやパンモロのシーンが確実に撮れるからだ。

SP01-03.png

SP01-04.png

SP01-05.png

「ウッヒッヒッヒ・・ すげえ・・ なかなか良いパンチラだ。おっ! こっちは素晴らしいハイキック。スコートが捲れてアンスコの股間の部分がよく見えるぜ。よ-し。究極のパンモロをゲットォ。ヘッヘッヘッヘ・・・ 」
 のめり込みながら写真を撮っていた卓は、薄笑いを浮かべながら興奮のあまり涎をたらし始め、傍で見ていた戦闘員たちが半分呆れたような仕草を見せた。

    * * * *

「はい今日はこれまで。後片付けをして」
 暫くして片づけを終えた部員達が全員集合した。
「若葉祭までもう少しだから、みんなしっかりね。それじゃ今日は終わり」
「ありがとうございました」
 練習が終わって、部員たちが挨拶とともに解散し、絵里香たち三人は屋上の一角にいた。
「絵里香、聖奈子。もうすぐ若葉祭の街頭パレードだね」
「うん。今年も頑張るぞ」

SP01-06.png

 美由紀は絵里香の様子が少し違うのに気付いた。
「絵里香。どうかしたの?」
 美由紀に言われて聖奈子も気付いた。
「そういえば・・・ 絵里香いつもと何となく違うような・・・ 」
 絵里香は自分が思っていた事を二人に話した。
「練習中に誰かにずっと覗かれているような気がしたのよ」
「えーっ? まさかぁ」
「ここ屋上だよ。何処から見られるっていうのよ」
 絵里香は200メートルほど離れた場所にあるビルを指差した。ビルの高さは学校の屋上より少し高い程度だ。
「あそこからここを覗くって? 望遠鏡でもなければ覗くなんて無理無理」
 美由紀が望遠鏡と言ったので、聖奈子も気になってビルの方を見据えた。
「望遠鏡・・・ か。でも一体何のために・・・・ 」
「絵里香も聖奈子も考え過ぎだってば。大体何のために望遠鏡でこんな所を覗くのよ・・ って・・ もしかして?」
 暢気な性格の美由紀も、ハッとした。ネオ‐ブラックリリーの事が一瞬頭を過ぎったのだ。が、そんな事は無いと、自分の思いを払拭した。その時屋上の入り口で芳江が絵里香たちを呼んだ。
「ちょっと君たち。引き揚げないと鍵閉められないんだけど」
「あ・・ キャプテン。ごめんなさい」
 絵里香たちはあたふたと駆け出すと、出入り口まで来た。芳江は鍵を閉めて美由紀に渡すと階段を降りていった。
「とにかく着替えて帰ろうよ」
「それじゃ私は職員室へ鍵返しに行くから」
 美由紀は小走りに階段を降りていき、絵理香と聖奈子も教室へ向かった。
「美由紀の着替えは長いからな・・ 少し待たされそうだね」

 それから約30分が経過した・・・  学校から帰宅途中の絵里香たちは、コンビニから出てきたところだった。
「絵里香。取り越し苦労なんじゃないの?」
「うん・・ でも、何だか引っかかるんだよね」
「絵里香まだ言ってる」
「でも絵理香の感は鋭いからね。もしかしてネオ‐ブラックリリーが何か企んでるとか、そんな事でも考えてたんじゃないの?」
「聖奈子。やつらだったら、覗くよりも先に私たちに襲いかかってくるよ。おおかたその辺の覗きマニアじゃないの?」

SP01-07.png

 そうこうしているうちに、絵里香たちは美紀子の事務所の前まで来ていた。が、事務所は閉まっていた。
「美紀子さん留守みたいね」
「今、大学で研究と臨時講師やってるって言ってたわ」
 絵里香たちはお互いの顔を見合った。
「それじゃあたしは・・・ 」
 聖奈子が言いかけた所で、絵里香たちの後ろから誰かが話しかけてきた。
「みんなここにいたの?」
 絵里香たちが振り向くと、そこには絵理香と聖奈子の担任で、バトン部の顧問の詩織と、養護教諭の園子が立っていた。

SP01-08.png

「藍原先生と柏木先生・・・ 」
「美紀子は今、大学で臨時講師やってるのよ。だからここには来ないわ」
「藍原先生。私はこれで。それじゃみんな、また明日ね」
 園子は詩織と絵里香たちに挨拶すると、駅のほうへ向かって歩いていった。詩織はそれを見届けると、絵里香たちの方を向いた。詩織は絵里香たちが何かを気にしているのを察知した。
「みんな。あたしと一緒に来て」

 絵里香たちは詩織と一緒に、駅前にあるハンバーガーショップの中にいた。
「なるほど・・・ 君たち・・ いや、バトン部の練習が覗かれていたかもしれないって事ね」
「絵里香がすごく気にしてるのよ。別にたいした事じゃないって、あたし達が言ってるのに」
「絵里香は神経質すぎるのよ。エンジェルスになってネオ‐ブラックリリーの動きが気になる気持ちは分かるんだけどさ、ネオ‐ブラックリリーなら覗きなんてせこい事はしないわよ」
「確かにそうね・・ 覗いている暇があったら、襲ってくるだろうし・・・ 」
「おおかたそのへんのマニアが覗いていたんじゃないの? もし写真やビデオを撮っていたんなら、ネットの動画サイトか、画像サイトあたりに投稿でもするんじゃないの?」
 聖奈子がそんな事を言ったので、美由紀が素っ頓狂な声を出した。
「えーっ ?!!! そ、そんなのヤダ! ヤダヤダヤダ。お嫁に行けなくなるぅ」
「城野さん。大きな声出さないで」
「美由紀落ち着いて。落ち着けったら」
「そうよ。取り乱さないで」
「美由紀。変な事言ってゴメン。ごめんね」
 絵理香と聖奈子の2人がかりで美由紀を宥めた。

      * * * *

 こちらはネオ‐ブラックリリーのアジト。その中の一角に『ネオ‐ブラックリリー福利厚生施設』というプレートが付けられた部屋があった。これはネオ‐ブラックリリーが新たな設備を整える目的で作った施設である。その責任者に任命されたのが卓なのだ。そしてその部屋の中では・・・ 
 卓が部屋の中でパソコンと向かい合い、目をおおきく見開いて涎をたらしながらさっき撮ってきた写真のデータに見入っていた。

SP01-09.png

「お・・ これはいい。ハイキックした瞬間にしっかりとアンスコの股間の部分が映し出されている。それと、こっちの際どい見え方も捨て難いぜ・・ それからこれは、ターンした時にスコートが舞い上がって、おお・・ これは素晴らしいパンモロだ。ヒッヒッヒッヒ・・ 」
 卓は薄気味悪い笑い声を出しながら、データの加工を始めた。ネオ‐ブラックリリー大首領の指令で、絵里香たちの写真のデータを、本人たちの顔入りで加工するよう命令されていたからだ。
「ウッヒッヒッヒ。我ながら上々の出来だ。この写真のデータを使って、ツイッターや画像チャンネルを通じてばら撒けという指令だが、こんな素晴らしい出来の写真を、そう簡単に他人の目に触れさせるのは惜しいぜ・・ こっちのやつは俺様がコレクションとして頂いておこう。それでこっちの方の顔がしっかり写っているやつと、このパンチラとパンモロ写真を指令通りに・・ 」
 卓はパソコンを操作して、ツイッターと画像チャンネルを開き、加工したデータを次々と流し始めた。そして残ったデータはCDの中に収めて、傍らに置いてある自分のバッグの中に入れた。
「ウッシッシッシ・・  これでよし。しかし、大首領とかいうやつは、一体何の目的で俺にこんな事させるんだ。スピーカーから声を出しているだけのくせに。全く失礼なやつだぜ。まあ・・ それなりの金を貰ってるから、文句を言う筋合いは無いが・・・ 」

SP01-10.png

「あの例の〇ヲタク野郎はどうしているんだ」
「部屋の中で黙々と作業をしている。絶対に他の者を部屋に入れるなと言っていた。俺たちも一応は大首領様の指令で福利厚生班に入れられたんだが・・・」
「ありゃ完全にココにきてやがるぜ」
「ああ・・ 触らぬ神に祟り無しってやつだな」
 戦闘員同士で会話をしていたところへ、別の戦闘員がやってきた。
「ここにいたのか。科学班が魔人改造用の人間を運び込んだ。早速改造手術をするそうだ」
「するといよいよ次の作戦の開始か」
「どうやらそうらしい」
「お前たちも手伝え。手が足りないのだ」
「イーッ」
 戦闘員たちが慌しく動き始めた。

 翌日・・・ 学校にて・・・
 バトン部は近づく若葉祭に備えて、部員たちが朝早く登校し、既に数人が集まって体育館で朝練の準備をしていた。そこへ一年の香苗が息を切らしながら飛び込んできて、みんなの所に駆けて来た。
「大変! 大変よ」
「どうしたの柿崎」

SP01-11.png

SP01-12.png

「これ・・・ これを見て」
 香苗は持ってきた紙切れを見せた。それはバトン部員たちの練習風景が写し出された画像をプリントアウトしたものだった。それもハイキックやターンの部分が殆どで、いわゆるマニアックなものだった。
「わ・・ やだぁ・・ これ私たちのじゃないの」
「一体何処のどいつよ。こんなもの撮ったのは」
「でも殆どが赤城先輩たちの写真だわ」
「これも・・ 」
「これもだわ」
そこへキャプテンの芳江と副キャプテンの雅子がやってきた。
「一体何の騒ぎなの?」
「あ。キャプテン。これです」
 香苗が差し出すと、芳江は数枚を香苗から引っ手繰るように取って眺めた。
「柿崎さん。どうしたのこれは」
「昨日パソコンでネットを見たとき、偶然入った画像のページで見つけてびっくりしたんです。それでプリントアウトして持ってきたです」
 画像の9割くらいは絵里香・聖奈子・美由紀を写したものだった。
「確かに私たちバトン部の練習風景ね。でも、殆どが赤城さんと清水さん。それに城野さんを写したものだわ」
 雅子も傍によってきた。
「一体何処から撮ったんだろう・・ それにしても結構鮮明に写っているね」
「あ・・ 赤城先輩たちが来たわ」
 絵理香と聖奈子、美由紀が体育館に入ってきた。
「みんなもう来てるよ」
「早く行こう」
 そのとき絵里香は部員たちの異様な雰囲気をすぐに察した。
「何だか様子が変だわ。何かあったのかな?」
「絵里香。とにかくみんなの所へ行ってみようよ」
 絵里香たちはみんなが集まっている所へ駆けていった。
「キャプテン。何かあったんですか?」
「原因はこれよ」
 そう言いながら芳江は持っていた画像のプリントを絵里香たちに見せた。
「何これ・・・・ 」
 絵里香たちは自分たちが映されている画像を見て固まった。美由紀が大声を出した。
「ヤダ!! こんな写真が出回ったらお嫁に行けなくなる」
 美由紀の声で、体育館で朝錬をやっていた他の部の部員たちがバトン部の方を見た。
「美由紀静かに。落ち着いて」
 そこへ顧問の詩織もやってきた。部員たちが朝錬をやるということで、自分自身も早く学校へ来たのだ。
「みんなおはよう・・・ って・・ あれ? 朝錬やるって言ってたのに、一箇所に集まっててどうしたのよ。時間無くなっちゃうわよ」
「先生・・ 実はこんなものが」
 詩織は芳江から渡された画像を見た。
「ふーん・・・ 」
 詩織は一つため息をついてから、絵里香たち3人を自分の元へ呼び寄せた。
「あなたたち三人は直ぐに着替えて職員室に来て。それから、その画像のプリントは没収よ。全部あたしに頂戴」
 詩織は部員たちが持っていた画像を全て回収した。
「他のみんなは練習して。せっかく体育館を借りられたのに、時間がもったいないわよ」
 詩織に言われて、芳江は部員達を促し、詩織は絵里香たち3人を連れて体育館を出た。

     * * * *

 詩織は職員室に入ると、ノートパソコンを出してスイッチを入れ、ネットを開いた。そこへ制服に着替えた絵里香たちがやってきた。
「来たわね君たち。これを見て」
 詩織はパソコンの画面を絵里香たちの方へ向けた。そこには先ほどプリントアウトされた画像と同じものが出ていた。詩織は絵里香たちが何かを言おうとしたのを遮るように話した。
「この画像が投稿されたのは昨日の夜。実はあたしも昨日見ているのよ。それでID番号を調べてみたんだけど、出所が不明なのよ。まあ・・ 目の部分は隠してあるけど、わざわざあなたたちだけを顔写真入りにしているあたり、何か匂うわね」
「何かって? つまり私たちが狙われてるって事? まさかネオ‐ブラックリリーが?」
「考えすぎだよ絵里香。ネオ‐ブラックリリーのはずがないじゃん」
「美由紀。有り得るわ」
「どういう事よ聖奈子」
「つまりあたしたちの写真をばらまいて、心理的な効果を狙ってるって事よ。こんな写真が出回ったら、あたしたちが動揺して戦意を喪失するかもしれない・・・ もしネオ‐ブラックリリーの仕業だとしたら、そこが狙いなんじゃないかな? 」
「聖奈子の言い分は鋭いところを突いているわ。でも、もう少し踏み込んで考える必要があるわね。たとえばネオ‐ブラックリリーが何かの作戦を実行してくる。そこへあなたたちがエンジェルスになって阻止行動に出る。そこを狙って、写真をネタにあなたたちを脅迫し、戦意を喪失させる・・・ そうなると、あなたたちがエンジェルスになったときも、同じように被写体にされる可能性が大だわ」
「言われてみればそうかもね。確かに昨日といい、さっきといい、美由紀の取り乱しようはすごかったし、心理的効果を狙っているというのは納得がいくわ」
 そのとき周りがざわつき始めた。他の教師達が出勤してきて、職員室に入ってきたのだ。
「みんな。話の続きは後にしよう。ホームルームが始まるから、教室へ行って」
「はい。それじゃ失礼します」
 絵里香たちは詩織に促され、職員室を出てそれぞれの教室へ向かった。

      * * * *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトの手術室では、拉致してきた人間を使って、怪人への改造手術が行われていた。ベッドは二つあり、両方のベッドに拉致した人間が寝かされていて、科学班の戦闘員が白衣姿で改造手術に携わっていた。
「一通り完了です」
「よし! 最後の仕上げだ。電流を流せ」
 スイッチが入れられ、高圧電流が放電されて、ベッドに寝ている人間の身体を電流が貫く。数分後には醜怪な魔人の姿になり、改造手術が終わって魔人が起き上がった。出来上がった改造魔人は、一度エンジェルスに倒された蜘蛛魔人とバンブー魔人だった。

SP01-13.png

 数分後、アジトの司令室では蜘蛛魔人とバンブー魔人が戦闘員を伴い、大首領の指令を待っていた。暫くして大首領の声が流れてきた。
「蜘蛛魔人、バンブー魔人。お前たち2人は我がネオ‐ブラックリリーの優秀なる科学陣によって、再生を施されたのだ。エンジェルスの小娘どもは、未だその実力が充分ではない。ネオ‐ブラックリリーの邪魔になる小娘どもを今のうちに消すのだ」
「ゲシシーッ。かしこまりました」
「ケタケタケタ-ッ。お任せください」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人は戦闘員を伴って司令室から出て行った。大首領は再び声を出した。
「福利厚生施設の責任者になった、例の〇ヲタクを此処へ呼べ」
「イーッ」
 暫くして卓が戦闘員に連れられて司令室に入ってきた。
「俺を呼んだのはスピーカー野郎か。一体何の用なんだ」
「丸尾卓。お前を呼んだのは他でもない。お前が盗撮した小娘どもが、間もなく我がネオ‐ブラックリリーの邪魔をしに現れる。そこを狙って小娘どもの動きを、それも出来るだけ派手な動きを狙ってデータを編集するのだ。写真及びビデオの撮影は戦闘員が行う。お前はこのアジトで送られてくるデータを編集すればそれで良い」
「なんだよ一体・・  スピーカーから声出してるだけのくせに。随分えらそうな事ばっかり言ってるじゃねえか。金貰ってるからこれ以上の贅沢や文句は言わねえけどよ。声だけじゃなくて、姿を見せたらどうなんだよ」
「おい! 大首領様に向かってその言い方は何だ!!」
 傍にいた戦闘員が卓に食って掛かったが、大首領は平然と話を続けた。
「まあいいではないか。丸尾卓。お前が作戦を成功させたら、姿を見せると約束しよう。それならばいいだろう」
「ああ・・  いいぜ」

       * * * *

 放課後になって学校を出た絵里香たちは、学校から一番近い聖奈子の家に集まっていた。本来ならば部活なのだが、今朝の事でとても練習にならないだろうと、詩織の計らいで今日の放課後のバトンの練習は休みにしてもらい、キャプテンの芳江もそれを承諾した。

SP01-14.png

「ねえ絵里香。ネオ‐ブラックリリーの仕業だとしたら、写真を使った心理作戦だけじゃ終わらないと思うよ。絶対に何か企んでると思うわ」
「私いやだよ。こんな写真が出回ったら、もうお嫁に行けないよ」
 美由紀は涙声だった。
「美由紀大丈夫だってば。藍原先生が今、美紀子さんと連絡を取っていて、画像を削除するための作戦を考えているから」
「とにかくやつらのアジトを捜し出して、元になっているメインコンピューターをぶっ壊すしかないわ」
 絵理香の携帯が鳴り、絵里香は携帯を取り出した。
「先生からだ・・・ はい赤城です」
「・・・ ・・・ 」
「ええっ!? ネオ‐ブラックリリーの化け物が、学校の屋上で練習していたバトン部の部員たちを襲って、部員たちをさらった? それで・・・ はい・・ はい・・ 」
 聖奈子と美由紀は同時に絵里香を見た。
「分かりました。すぐ向かいます」
 絵里香は携帯をポケットに入れると立ち上がり、聖奈子と美由紀も立った。
「やっぱり狙われていたんだわ。これで今までの事が奴等の仕業だってはっきりしたわ」
「私たちだけでなく、何の関係も無いバトン部の部員たちまで・・・ 絶対許せない!」
 絵里香たちは聖奈子の家から飛び出すと、学校へ向かった。

      * * * *

 絵里香たちは学校の前まで駆け足でやってきた。校門の傍では詩織が車を停めて待っていた。
「みんな早く車に乗って」
 詩織は踵を返して車に乗り込み、絵里香たちも詩織の車に乗り込んだ。
「先生。部員たちは?」
「みんな大丈夫なんですか!?」
「まずこれを見て」
 詩織は助手席にいた絵里香に紙切れを渡した。聖奈子と美由紀も絵理香の傍に寄ってきた。
『親愛なるエンジェルスの諸君へ。お前たちの仲間を預かった。返してほしければ緑ヶ丘公園の河川広場まで来い』
「なにこれ・・・ 」
「奴等の化け物が現れたかと思ったら、あっという間に部員が2人捕まってさらわれたのよ。前に見かけた蜘蛛の化け物だったわ。残りの部員たちは、あたしが誘導して校舎内に避難させたから無事よ。とにかく捕まった子たちを助ける事が先決よ」
「はい」
 詩織は車を発進させた。

      * * * *

「嫌あーっ!! 誰かぁ・・ 誰か助けてぇーッ!」
「お願いはなしてぇーッ。おろしてよーっ。やだあーっ」
「やだあーっ! やめて! 写真なんか撮らないで! 恥ずかしいよぉ。やめてぇーっ!」

SP01-15.png

SP01-16.png

 緑ヶ丘公園の広場では、捕まった香苗と元子が、蜘蛛魔人の糸で体を縛られて晒されていた。それもただ縛られているだけではない。香苗は片足をいっぱいに上げた状態、いわゆるハイキックのポーズで縛られ、元子は四肢を引き伸ばされて開脚させられ、狸吊りのような状態で縛られていた。恥ずかしい恰好で縛られている香苗と元子は、逃れようとして必死にもがいたが、蜘蛛糸の拘束は頑丈で身体を揺するのがやっとだった。その様子を付近にいた戦闘員がローアングルからビデオカメラやデジカメで撮影し、アジトにあるメインコンピューターを通して、福利厚生施設にいる卓の所に次々とデーターがリンクされていた。パソコンの画面に見入っていた卓は、いつものように薄笑いを浮かべながら涎をたらし、画面に映る映像を眺めていた。
「おお・・ このポーズはそそられるぜ・・ こっちの方も股間の部分がバッチリ見えていて捨てがたい。おっと・・ こっちの動画も最高だ。羞恥に悶え苦しんでいる仕草に興奮するぜ。ヘッヘッヘ・・・ 早くお目当ての三人が現れないかなぁ・・・ イッヒッヒッヒ」
 しかし・・・  膨大な容量のデータが送信されているため、詩織が美紀子から借りていた逆探知システムにより、アジトの場所が探られている事には、さすがの卓も気付いていなかった。車を運転していた詩織は、助手席にいる絵里香にそのシステムの端末を見させていた。
「先生。段々感度が強くなっています」
「そうか・・ するとアジトの場所も目的地の近くね」
 詩織の車は緑ヶ丘公園の駐車場に入り、車が止まると同時に絵里香たちは車から降りた。
「アジトの場所はあたしが探るから、あなたたちは捕まっている子たちを助けるのよ」
「分かりました」
 絵里香たちはポーズをとって変身すると、河川広場へと駆けていった。

 広場では蜘蛛魔人とバンブー魔人が、絵里香たちの来るのを今か今かと待っていた。蜘蛛魔人は縛られている香苗と元子の前まで来て、二人の様子を舐るようにジロジロと見据えた。
「嫌あーっ! 見ないで。見ちゃ嫌だぁ。恥ずかしいよぉ」
「お願い助けて。はなしてよぉ」
「嫌あーっ!」
「ふん! うるさいガキどもだ。暫く眠っていろ!」
 2人があまりに騒ぐので、蜘蛛魔人は口から麻酔針を発射し、それが2人に突き刺さって、2人とも気絶した。そこへ公園内を見張っていた戦闘員が駆け寄ってきた。
「イーッ。小娘どもを発見しました。公園内にいます」
「ゲシシーッ。やっと来おったか。者ども持ち場につけ」
「ケタケターッ。待ちかねたぞ」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人は戦闘員たちを煽り立てると、近くの繁みに隠れた。しかし絵里香たちも馬鹿ではなかったので、真正面から突入する事は考えていなかった。
「奴等の事だ。罠が仕掛けてあるかもしれないわ」
「そうだね。広場だからまともに行けば私たちの姿が丸見えよ」
 絵里香たちは河川広場の手前の林にある散策コースの前まで来て、そこで止まって話し合っていた。3人の目の前には散策コースの地図が描いてある看板があった。
「ここが現在地。そしてここが河川広場・・・ 」
「こっちから回り込んでいけば、奴等の目をくらます事が可能かも・・ 」
「よし。私が正面から突入して、囮になって奴等を引き付けるから、聖奈子と美由紀とで2人を助けて」
「うん。分かった。絵里香気をつけてね」
 聖奈子と美由紀は迂回するので、先に散策路に入った。
「さてと・・ 私も行くか・・ 」
 絵里香は河川広場へ行く最短のルートに入った。

      * * * *

 聖奈子と美由紀がとったコースは、林の中を大きく迂回するルートだったため、ネオ‐ブラックリリーとしては全く無警戒だったので、誰からも気付かれずに河川広場の末端部にある出口にたどり着いていた。

SP01-17.png

「助かった。誰もいない。全く無警戒のようだわ」
「聖奈子、何か見える?」
「見えるけどちょっと遠いわ」
 聖奈子の目には、広場の中にある木に括り付けられるように縛られている、香苗と元子の姿が見えた。その周囲には見張りらしい戦闘員の姿も見えた。美由紀も聖奈子に促されて、広場の様子を眺めた。
「ひどい・・  あんな恰好にして縛るなんて」
「美由紀行くよ。ここから先は何があるか分からないから、ゆっくり近づくよ」
「うん・・ 」
 聖奈子と美由紀は広場と林の境目に沿って、ゆっくりと歩を進めていった。その時急に広場の様子が慌しくなって、聖奈子と美由紀もそれに気付いた。
「美由紀、奴等が急に動き出したわ」
「見つかったのかな・・ ?」
「違うみたいよ。あたし達じゃなくて、絵里香だと思う」

      * * * *

 聖奈子の思っていた通り、自分たちが見つかったのではなく、正面からやってきた絵里香を見た戦闘員たちが、一斉に絵里香に向かっていったのであった。
 絵里香はたちどころに戦闘員に周りを囲まれ、戦闘員がジリジリと絵里香に迫ってきた。一部の戦闘員はカメラやビデオカメラを構えて、レンズを絵里香に向けている。絵理香の動きを撮影しようとしているのだ。蜘蛛魔人とバンブー魔人も姿を現して、絵里香を威嚇してきた。
「お前一人か! ほかの二人はどうした」
「さあね・・・ 」
 絵里香はそう答えながら、冷静に周囲の様子を窺った。
「(広場に出たら、私一人では不利だし、人質を巻き添えにしてしまうかもしれない。奴等を引き付けるなら、林の中で戦った方がいいかも・・・ )」
 絵里香は今来た林の方へ踵を返すと、ジャンプして戦闘員の囲みの外へ着地し、林の中に駆け込んだ。
「逃がすな!」
 2人の魔人が戦闘員たちを煽り立て、戦闘員は絵里香を追って林の中へ入った。林の中で追いつかれた絵里香は、再び周りを囲まれた。しかし、周囲は木があるため、襲ってくる戦闘員の数が限られる。絵里香は周りの木々を利用し、向かってくる戦闘員と格闘して、一人ずつ倒していった。蜘蛛魔人は木に登ると、絵理香の真上から大量の蜘蛛糸を吐き出した。気付いた絵里香は自分に組み付いてきた戦闘員を突き飛ばし、糸はその戦闘員に降りかかって、戦闘員はグルグル巻きにされて窒息死した。続いてバンブー魔人の手裏剣が飛んできたが、絵理香を外れてそばにあった木に突き刺さった。

      * * * *

 一方、聖奈子と美由紀は、がら空きになった広場の中央にたどり着き、気絶していた香苗と元子を拘束していた蜘蛛糸を切って、二人を助け出すと、草むらの中に横たえて隠した。
「こうしておけば大丈夫だわ」
 林の中から戦闘員や魔人の奇声が聞こえてきた。
「絵里香は林の中よ」
「早く助けに行こう」
 聖奈子と美由紀は林の中へ飛び込んでいった。暫く走ると戦闘員相手に戦っている絵里香の姿が見えた。
「あそこよ!」
「美由紀。あれを見て!」
 聖奈子の目には、戦闘員のうちの何人かがカメラやビデオカメラを持ち、絵理香の動きを撮影している姿が見えた。
「絵里香が戦っている姿を映している」
 実は、絵里香たちを撮影していたのは、単なるマニアックな目的で行われていた事ではなかった。表向きでは、ハイキックした時や派手な動きによるパンチラを撮っているように見えるものの、絵里香たちの弱点を探る事が本当の目的だった。そのために通信が卓のパソコンに直通ではなく、ネオ‐ブラックリリーのメインコンピューター経由で送られていたのだ。

「美由紀、絵里香を助けに行くよ」
「待って聖奈子」
 美由紀はある1点を指差した。そこには絵里香の背後から手裏剣を投げようとしているバンブー魔人の姿があった。聖奈子は絵里香に向かって叫んだ。
「絵里香! 危ない。後ろ!」
 同時にバンブー魔人が手裏剣を3本一度に投げつけ、聖奈子の声で絵里香は身をかわした。一撃目は絵里香を外れ、残りの二本の手裏剣はブレードで弾き返した。

SP01-18.png

「聖奈子ありがとう」
「絵里香。人質は助け出したわ。まだ気絶したままだけど、安全な場所に移したわよ」
 聖奈子と美由紀は絵理香の元に駆け寄り、絵里香たちは三人固まって身構えた。
「来い! ネオ‐ブラックリリー。お前たちの勝手にはさせないわ!」
「何を小癪な! 者どもかかれ。3人とも片付けろ!」
 戦闘員が奇声とともに向かってきて、絵里香たちは広場の方へと走り、林の中から広場へ出た。そこには詩織が立っていて、詩織は林から出てきた絵里香たちに向かって叫んだ。
「みんな。2人は目を覚ましたから、もう大丈夫よ。あたしが学校へ逃げるように言ったから。それからアジトの場所も探り当てたわ」
 話が聞こえた絵里香は、詩織に向かってサムズアップして応えた。

      * * * *

 その頃、アジトの一室の福利厚生施設では、卓がパソコンの画面を眺めていた。そこには戦闘員の撮影した絵里香たちの動画が映っていたのだが、突然動画が乱れて完全に消え、従来の画面になってしまった。詩織がアジトの場所と電波の波長を探り当て、送信データの通信電波と同波長の妨害電波を流したからだ。
「ど、どうしたのだ。画面が・・  画面が消えた。これではデータが受信出来ない」
 卓はパニック状態になったが、どうする事も出来なかった。


 広場に出てきた絵里香たちに、戦闘員が襲いかかった。絵里香たちの声と、戦闘員の奇声が広場に響き渡る。戦闘員は詩織にも襲いかかってきたが、仮にも詩織はかつて美紀子と一緒に戦った盟友である。戦闘員の攻撃を軽くかわし、次々と倒していった。
「みんな! 雑魚はあたしが引き受けるから、化け物を倒すのよ」
「おのれ小娘ども。ゲシシーッ」
「ケタケタケターッ」
 蜘蛛魔人とバンブー魔人が絵里香たちに襲いかかってきた。
「絵里香。化け物が来る」
「奴等、一度やられたやつを再生したのね」
 蜘蛛魔人が糸を吐き、絵里香たちに向かって飛んできた。
「ファイヤースマッシュ!」
 絵理香のエネルギー波がボール状になって飛んでいき、蜘蛛魔人を糸を焼き払った。
「今度こそ成仏させてやる。覚悟しろ!」
 聖奈子がソードとシールドを出して、攻撃態勢をとった。
「アクアトルネード!」
 エネルギー波が渦を巻いて蜘蛛魔人に吸い込まれ、蜘蛛魔人を包み込んだ。
「グギャアーッ!! ゲシシシシーッ!」
 蜘蛛魔人は氷漬けになって、そのまま氷が砕けるとともに爆発して吹っ飛んだ。続いてバンブー魔人も・・・
「ライトニングトルネード!」
 光の渦がバンブー魔人に命中し、バンブー魔人は光の中でのた打ち回りながら消滅した。戦闘員も全て倒され、周囲は静寂が戻って、絵里香たちは一箇所に集まり、そこへ詩織も駆け寄ってきた。
「先生。アジトの場所が分かったんですか?」
「ええ。しっかりとね。それからデータの通信が送れないように、妨害電波を出してやったわ。ついでに強力なウイルスも送り込んでやった」

SP01-19.png

 それから約30分が経過し、絵里香たちは緑ヶ丘公園の近くにある、一軒の建物の近くに立っていた。詩織の持っている逆探知機の端末が、メーターが振り切れるくらい反応している。
「あの建物が奴等のアジト・・・ 」
「よし! 突入だ!」
 聖奈子が真っ先に駆け出した。絵里香たちの接近に気付いたのか、建物から戦闘員が出てきて襲いかかってきた。
「退け! この野郎。邪魔だ!!」
 聖奈子がいつもの男言葉で戦闘員に飛びつき、あっという間に二人倒して、そのまま建物の中に飛び込んだ。絵理香と美由紀は唖然とした顔をしながら、聖奈子を追って建物に入った。すると地下へ続いている階段が見えた。
「あれが出入り口ね」
 絵里香たちは散発的に襲ってくる戦闘員を跳ね除けながら地下に降りると、回廊を駆けた。絵里香は詩織から受け取った端末をたよりに、電波の発信源を探り、ついに『福利厚生施設』のプレートがつけられた部屋の前にたどり着いた。
「ここが反応が一番強い」
「福利厚生施設・・・  なにこれ・・・ 」
 絵里香がドアのノブに手をかけた。が、鍵がかかっていて開けられない。
「開かない」
「絵里香どいて」
 絵里香が声のした方を向くと、美由紀が攻撃態勢のポーズをとっていて、絵里香はあわててドアの前からよけた。
「ライトニングスマッシュ!」
 一撃でドアが吹っ飛んだ。
「美由紀無茶しないでよ」
 そう言いながら絵里香たちは室内に飛び込んだ。そこには机の上のパソコンの前にいる卓の姿があり、卓は絵里香たちの方を向いた。
「な・・ 君たち失礼じゃないか。部屋に入る時はノックぐらいするもんだ」
「うるせえ! お前だな。あたしたちのエッチな写真を流したのは」
「お、俺はそんな事知らないよ。人違い。人違いだよ」
「とぼけないでよ。それじゃ画面に出ているそれは何!? そ・れ・は!!」
 美由紀がパソコンの画面を指差した。そこには絵里香たちがハイキックしている場面の写真が壁紙として映し出されていた。
「わ、分かった。もうとぼけないから・・・ ね・・ 冷静になろうよ。この通り、この画面は削除するからさ。ね」
 そう言って卓は画面を操作して壁紙を削除した。と同時に卓は持っていたコードレスマウスを絵里香たちに向けて投げつけた。絵里香たちがひるんだ一瞬の隙を突き、卓は机の横にあったバッグをつかむと、その場から駆け出して絵里香を突き飛ばし、部屋から飛び出した。
「待てこの野郎!」
 聖奈子が逃げる卓を追って部屋から飛び出し、絵理香と美由紀も後を追った。卓はバッグを抱えながら回廊を駆け抜け、階段を上ってアジトの外へ出た。
「そう簡単に捕まってたまるか。せっかくのコレクションなんだ」
「そうはいかないわよ。もう逃げられないぞ。観念しろ!」
 アジトの外では詩織が腕組みした恰好で立っていて、卓の行く手を阻んだ。そこへ絵里香たちも追いついてきて、卓の周りを取り巻いた。
「バッグの中にあるものを全部出せ!」
「ダメだ! これは俺のコレクションなんだ。絶対渡すもんか」
「ふざけるなコノヤロー。あたし達のエッチな写真を撒き散らしやがって。あたしたちの戦意を喪失させようったって、そうはいくか!」
「お嫁に行けなくなったらどうすんのよ!」
 そこへ再び戦闘員が出てきた。それを見た卓は戦闘員を呼んだ。
「おい。お前たち。俺を助けてくれ」
「バカメ。この作戦は失敗だ。お前はもう用済みだ。小娘どもにやられてくたばってしまえ」
 そう言って戦闘員は駆け出すとそのまま消えた。卓の目の前には怒りに燃える絵里香たちの姿があった。
 絵里香たちはほぼ同時に卓に組み付き、美由紀がバッグを奪って口を開け、バッグを逆さまにして中身を全て地面にぶちまけた。出てきたのは数枚のCDと沢山のUSB、それに大量にプリントアウトされた絵里香たちのスケベ写真(ハイキックやターンした時のパンチラやパンモロの写真)、それに筆記用具やノートなどだった。それを見た美由紀は怒りで顔を真っ赤にし、ぶちまけられたものに向けて両手を伸ばした。
「ライトニングスマッシュ!」
 エネルギー波が全てを焼き尽くした。
「あーっ・・・ 俺の・・・ 俺のコレクションがぁ」
「何がコレクションだ! お前のようなやつはこうしてやる!」
 絵里香は卓の腕をつかむと、合気道の技をかけた。
「えいっ!!」
「ワアァァァァーッ」
 卓の巨体が宙を舞い、そのまま一回転して地面に叩きつけられた。美由紀がジャンプして空中で一回転し、卓目掛けて急降下した。
「エンジェルキック!」
 キックが炸裂し、再び宙を舞った卓の体が地面に叩きつけられて斜面を転がり落ち、一番下で止まって、卓は蛙の死体のような恰好で大きな口を開けたまま気絶した。暫くすると卓の体が水蒸気のような煙を上げ、戦闘員の姿から元の丸尾卓の姿に戻った。
「誰この人・・・ 」
 絵里香が呟いていると、美由紀が素っ頓狂な声で言った。
「あーっ! この男・・」
「美由紀知ってんの?」
「知ってるも何も・・・ こいつ、私の家の近くのアパートに住んでる浪人生よ。丸尾卓っていって、引きこもりのヲタクで有名なやつよ。〇ヲタクってあだ名があるくらいよ」
「で・・ こいつどうする?」
「このまま放っておけば? もう私たちに悪さする事も出来ないだろうし・・・ 」
 絵里香たちは気絶している卓を眺めながら、口々に言い合っていた。
「とりあえず救急車だけは呼んでおきましょ」
 詩織がそう言って携帯を取り出すと119番して、絵里香たちは変身を解いた。暫くすると救急車がやってきて、気絶している卓を運んでいった。

      * * * *

 翌日の放課後・・・
 絵里香たちの姿は学校の体育館にあった。今日は体育館が借りられる日で、バトン部は体育館で練習していた。練習が終わり、制服に着替えた絵里香たちは、学校を出て街を歩いていた。

SP01-20.png

「あれから全然何の音沙汰も無いね」
「何が?」
「例のヲタクよ。新聞にも載ってないし、ニュースにも出てこないわ」
「べつにいいじゃん。警察の御用になろうが、何になろうが、もうあたしたちの知ったこっちゃ無いよ」
「でもよかったじゃん。藍原先生が美紀子さんから方法を聞いて、画像を全て削除できて、シャットアウトも出来たし、もう変な写真に悩まされる事も無いね」
 街を歩く絵里香たちの後ろ姿を夕日が照らし出した。

      * * * *

 さて、ネオ‐ブラックリリーはどうなったのか・・・  というと、福利厚生施設が廃止されたのは言うまでも無い。卓の編集したデータは大半がウイルスと妨害電波によって壊滅状態になったものの、一部のデータはメインコンピューターに残り、今後のネオ‐ブラックリリーの作戦計画の資料として使われる事となった。が、エンジェルスがいつまでも同じ力であるわけが無く、パワーアップしたエンジェルスには、今回のデータは全て通用しなかったのである。

 THE END
  -------------------------------

 あとがき

 今回はまいがー様の戦闘員のデフォルメ(やる夫)イラストを元にストーリーを作ってみました。自分で言うのもなんですが、結構コミカルな内容になったと確信しています。

スポンサーサイト