鷲尾飛鳥

10月 « 2017年11月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  » 12月

第33話『兇悪!! 魔人軍団』

2013年 05月06日 16:56 (月)

03-33-00.png


 ラフレシア魔人との戦いで相打ちになった絵里香は、爆発の衝撃でS県の和久井渓谷にテレポートで飛ばされ、そこへ偶然ハイキングに来ていた麻美と早苗に助けられて、早苗が勤める診療所に運び込まれた。また、崖から落ちた聖奈子は、ACAのメンバーによって助けられ、メンバーがアジトにしている家に運ばれた。
 そして一人残ったエンジェルイエロー、美由紀は、ネオ‐ブラックリリーの罠にはまり、絵里香に化けていたヘビ魔人に襲われるが、美由紀は必殺技を使ってヘビ魔人を倒す。しかし、水中という悪条件の中で無理をしたために美由紀自身も傷つく。エネルギーを完全に消耗し、ずぶ濡れになって体温を奪われ、体力を消耗した美由紀は、夜の帳が降りた道路を、気力を振り絞ってヨロヨロと彷徨っていた。そして美由紀のあとを追っていた美紀子は、駒川森林公園に向かっていた。
 エンジェルスの三人が全て傷つき、壊滅状態になった今、ネオ‐ブラックリリーは世界征服のための新たな作戦を開始しようとしていた。エンジェルスは間に合うのか・・ 

      *      *      *      *

03-33-01.png

 既に日が沈んで真っ暗になっていた。早苗は助手席に麻美、後部座席に紫央を乗せ、一路和久井村に向けて街道を疾走していた。麻美も紫央も自分達の関わった事柄が、並大抵のものではないということを悟っていた。現に紫央がネオ‐ブラックリリーに2度も襲撃されている。麻美と紫央は神社を出てから急ぎ足でそれぞれの家に帰り、着替えやら小道具やらをバッグに詰め込んで家から飛び出して、一番近い電車の駅で合流してそこから電車に乗り込んだ。そして麻美は早苗に電話して、自分たちを迎えに来てくれるよう頼んだのだ。そこで早苗は和久井村へ行くルートがある西部線の飯能生駅へ行くように麻美に伝え、麻美と紫央は飯能生駅で降りて早苗と合流。早苗の車に乗ったわけである。駒川森林公園の近くまで来た時、道路にフラフラと誰かが出てきたのを、助手席に座っていた麻美が気づいた。
「早苗姉さん、危ない! 前!!」
 麻美の声に、早苗は瞬間的に急ブレーキをかけて車を止めた。車は運良く手前で止まったが、歩いていた人はそのままその場に倒れこんだ。早苗は人を轢かずに済み、災難を免れてホッと胸をなで下ろした。麻美はドアを開けて車から降りると、倒れている人のそばに駆け寄り、後ろから早苗と紫央も駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか? しっかりして下さい! あっ!! ・・・・・」
 麻美は倒れている人が美由紀だと気付いて、倒れていた美由紀を抱きかかえた。
「美由紀ちゃんじゃないの。どうしたの、こんな所で。しっかりして!」
「あなたは・・ ま・・ 麻美・・ ちゃん・・」
「そうだよ。宮代だよ。麻美だよ。美由紀ちゃんしっかりして。こんなにずぶ濡れになって。一体何があったの!?」
 美由紀はポケットから携帯電話を取り出した。
「美紀子さんに・・ で・・ 電話・・ 」
 そう言って美由紀は気を失った。
「美由紀ちゃん。美由紀ちゃん!」
 麻美は気絶した美由紀の体を揺すったが、美由紀は目を覚ます気配がない。傍で紫央がボソボソと言った。
「麻美・・・  こりゃ完全にヤバイよ」
「麻美、紫央ちゃん。とにかく早く乗せて」
「うん。分かった」
 麻美は紫央と一緒に気絶している美由紀を担いで車に乗せ、早苗は再び車を発進させた。車は20分ほど走って和久井村の診療所に到達し、早苗は中に入ると診察室の明かりを点け、麻美と紫央は美由紀を診察室に運んできた。
「診察するから、あなたたちはリビングへ行ってて」
 麻美と紫央はそのまま応接室兼リビングに入り、ソファーに腰を下ろした。しばらくして診察と治療を終えた早苗がコーヒーのセットを持って入ってきた。
「命に別状はないわ。外傷も無し。ただの過労だから、一晩休めば元気になるわ。それより2人とも一体どうしたのよ。そんな真剣な顔して」
「早苗姉さん、昨日ここに運んだ絵里香さんは?」
「病室で寝ているわよ。麻美、とにかく事情を説明して。何があったのよ」
「早苗姉さん気をつけて。ネオ‐ブラックリリーが必ず姉さんを狙ってくるわ。紫央が二回も襲われてるのよ。だから私たちがここへ来たのよ」
 早苗は黙って聞いていた。そして立ち上がると自分の部屋へ来るよう促した。
「二人とも入って」
 早苗は麻美と紫央を部屋に入れると、机の引き出しを開けてクリアホルダーを取り出し、中に入っていたUSBスティックと書類を二人に見せた。書面にはACAの文字が・・・
「早苗姉さん。これは・・・ 」
「おそらく二人とも私と同じ事に関わっているようね」
03-33-02.png
 早苗は静かに落ち着いたような話し方で言った。
「早苗姉さんまで・・・  一体これってどういう・・」
 麻美がそこまで言いかけたところで、早苗が制止した。
「麻美! ちゃんと話を聞いて!」
03-33-03.png
 早苗の顔色を見て、麻美と紫央はゴクンと生唾を飲み込んだ。
「私は、表向きはこうして医師をやっているけど、実はインターポールの特務機関の連絡係をやっているのよ。どういう経緯でそうなっているのかは別にして、私はこれを明後日の正午に紅林さんに渡す事になっているの。だからこれを見せたのよ」
 麻美と紫央は、プリントアウトされた書類を見て、それがネオ‐ブラックリリーに関係した重要書類である事を知った。そしてそのデータを明後日の正午に、和久井村の公民館前で紅林美紀子に渡す役目を早苗が担っていることも知った。
「麻美、紫央ちゃん、さっき運んできた子を病室に運ぶから手伝って」
 麻美と紫央は早苗を手伝って、絵里香が寝ている病室の隣の部屋に美由紀を運んでベッドに寝かせた。リビングに戻ってきた麻美は、美由紀から預かっていた携帯電話の事を思い出した。
「そうだ。たしか美由紀ちゃんが、美紀子さんに電話って言ってた」
 麻美は美由紀の携帯を開くと、アドレスから美紀子の携帯番号を拾い、美紀子に電話した。
「紅林さんですか? 私、宮代麻美です。久しぶりです。訳あって美由紀ちゃんの携帯預かってるんですけど・・ え? はい・・ はい。そうなんです。だから心配いりません。美由紀ちゃんは絵里香さんが運ばれた診療所にいますから。それでは失礼します」
 麻美が電話を切ると、早苗が話しかけてきた。
「あなたたち。明日学校でしょ? どうするのよ」
「学校はサボりに決めた! 早苗姉さんが心配だもの」
「私なら大丈夫よ。ちゃんと学校へ行きなさい。送ってってあげるから」
「でも・・・」
 麻美が不安そうな顔をしているので、早苗は一つ溜息をついた。
「しょうがないな・・ それじゃ今晩ここに泊まっていきなさい」

      *      *      *      *

 時間は少し遡る。早苗の車が美由紀を乗せて発進してから10分位して、美紀子の車がそこへたどり着き、駒川森林公園へ行く道に入った。そして公園の駐車場に着いて車を降り、湖畔公園まで行ったところで、美紀子の携帯に着信が入った。
「(美由紀からだ) はい紅林です。え? ああ・・ あなた宮代さんね。それで美由紀は? 分かったわ。あなた達が見つけたのね。ありがとう。それじゃ」
 美紀子は美由紀を探しに行こうとしていたのだが、麻美からの連絡で無事だと分かり、ホッと一息つくと、再び車に戻り、発進させて鷲尾平へと帰途についた。

      *      *      *      *
  
 麻美と紫央は、大事をとって診療所に泊り込んだのだが、幸いなことに、その日はネオ‐ブラックリリーが襲ってくる気配は無く、何事も無いまま一夜が明けた。そして朝・・・
「ん… うーん… 」
 朝の明るい日差しが窓越しに室内へと注ぎ込み、美由紀はその眩しい光を浴びて目を覚ました。
「あれ・・ ここどこ?」
 美由紀は昨日の夕方、ネオ-ブラックリリーのヘビ魔人と戦って、ヘビ魔人を倒したものの、自分も傷ついてしまい、極度の疲労から気を失ってしまったのである。それなのに、目が覚めたときに自分はベッドに寝ていたのだ。しかも今の自分は服を脱がされて下着姿だった。
「何だか、部屋の感じからすると病室みたいだけど、私何でここにいるんだろう・・ たしか麻美ちゃんに会ったような記憶があるんだけど・・」

03-33-04.png

 そう言いながら美由紀はベッドから起き上がった。エンジェル戦士であったため、昨日の戦いで傷ついた体と、極度の疲労感はすっかり回復していた。美由紀は一体何がどうしたのかと考えていたとき、自分の隣のベッドで寝ている麻美の姿が目に入ったが、美由紀は近眼だったので、顔がよく分からなかった。眼鏡を捜したが見当たらない。それで顔を近づけて確認しようとしたら、寝ていた麻美が目を覚まし、美由紀と目が合った。
「ワッ・・・ !!!?」
「キャッ・・・ !!!」
 いきなり自分の目の前に誰かの顔が見えた麻美は、素っ頓狂な声を上げて、ベッドから跳ね起きた。美由紀も突然の声に驚いて、後へ飛び上がるようにベッドにぶつかって、そのままベッドの上に仰向けに倒れた。
「だ・・ 誰かと思ったら、美由紀ちゃんだったのか。あーあビックリしたぁ」
「驚かせてごめん。わたし・・ 目が悪くて」
 麻美は立ち上がると、窓際のテーブルの上に置いてあった美由紀の眼鏡を取ってきて、美由紀に渡した。
「はいこれ」
「ありがとう」
 美由紀はそう言いながら眼鏡をかけた。
「ねえ、ここは何処なの?」
「ここは私の従姉が勤めている診療所よ。美由紀ちゃんは昨日の夜、道路に出てきたところで気を失ったのよ。それでたまたま通りかかった私たちがここへ運んだの。だから安心して良いわよ。それから、紅林さんと君の弟には私が連絡を入れておいたわ」
「そうだったの・・ ありがとう麻美ちゃん」
「いいのいいの。困った時はお互い様だから。私も以前、美由紀ちゃんたちに助けてもらったしね」
 その時部屋の戸が開けられて、早苗が服を持って入ってきた。
「おはよう二人とも。今、すごい声がしたけど、何があったの?」
「あ・・ 何でもないよ早苗姉さん」
「美由紀ちゃん、体の調子はどう?」
「何とも無い・・ と、思うけど。キャッ・・・ !!!!」
 美由紀は自分が下着姿なのに気付き、傍にあった布団で自分の体を隠して顔を真っ赤にした。
「ごめんね。ずぶ濡れだったから服を脱がせたのよ。乾くまでこれを着てて」
 そう言って早苗は衣服一式をベッドの上に置くと、部屋から出て行った。麻美が美由紀に話しかけてきて、美由紀は服を着ながら、麻美の話を聞いていた。
「美由紀ちゃんに会わせたい人がいるの。服を着たら私についてきて」

 美由紀が早苗から借りた服は、Tシャツとジャージの上下だった。服を着た美由紀は、麻美に連れられて病室を出ると、隣の病室へ向かった。扉を開けて中に入った美由紀が見たのは、ベッドに寝ている絵里香だった。
「絵里香・・ 絵里香じゃないの」
 美由紀は麻美の方を振り返った。
「美由紀ちゃん、大丈夫だよ。ここにいる絵里香さんは本物だからね。私と早苗姉さんが見つけて、ここへ連れてきたの」
 美由紀は絵里香の傍に駆け寄ると、寝ている絵里香の両肩に手を置きながら絵里香を呼んだ。
「絵里香。絵里香」
「ん・・ 」
 体を揺すられた絵里香は、目を薄っすらと開けた。
「誰・・・ 」
「美由紀だよ。絵里香、しっかりして」
 絵里香は目を開け、目の前にいる美由紀を見据えた。
「美由紀なの?」
「絵里香… 絵里香なんだね? 本当の本当に、絵里香なのね!?」
 言葉の終わりの方はもう涙声だった。美由紀は両手を伸ばして、そのまま絵里香に抱きつき、泣き出した。絵里香も美由紀を抱きしめた。
「美由紀、心配かけてごめんね… ごめんね」
「何言ってるのよぉ… 私達友達なんだよ。親友なんだよ。無事で良かった… 」
 扉の所では、麻美が両目に涙を浮かべながら二人を見ていた。その時病室に早苗がワゴンを押して入ってきた。
「麻美、そこにいちゃ通れないわよ」
「あ・・ ごめん」
 麻美は体を少し移動し、早苗は食事を持って入ってきて、室内にあるテーブルの上に置いた。
「2人ともおはよう」
「おはようございます」
「食事を持ってきたから、冷めないうちに食べなさい」
 早苗は麻美を促しながら外へ出た。
「食べ終わったら呼んでね。じゃ、ごゆっくり」
 絵里香はベッドから降りると、そばにあった椅子に座った。
「美由紀、まず食べようよ」
「あ… うん。いただきまーす」

      *      *      *      *

 リビングに戻ってきた早苗は、昨日の夜から泊まっている麻美、紫央と一緒に朝食をとり、朝食後、麻美を連れて病室へ行った。麻美は二人の食器を片付けて部屋から出て行き、早苗は絵里香と美由紀の診察を始めた。
「驚いた・・・ あなたたち回復が早いわね。もう起き上がっても良いわよ。でも、二人とも回復はあくまでも身体の場合だけであって、精神的なダメージがあるの。原因は分からないけど、何か強いショックによるものだと推定できる。例えば、とてつもない強さのエネルギーを無理に使ったとか・・・  とにかくあと2~3日は、二人とも絶対エンジェル戦士に変身してはダメよ」
 早苗の話を聞き、絵里香と美由紀は恐らくチャージアップによる衝撃が、自分たちの精神的な負担になっているのだと悟った。
「絵里香ちゃん、あなたの服はボロボロだったから、私の服を着るといいわ。今持ってきてあげる。それから美由紀ちゃんの制服はまだ乾いてないから、しばらくその恰好で我慢してて」
「あのぉ・・ 色々とありがとうございます」
「いいのいいの。困ったときはお互い様だから。ね」
 早苗は絵里香と美由紀に向かって微笑むと、病室から出ていき、10分くらい経ってから服を持って再び入ってきた。
「サイズが合うかどうか心配だけど、ちょっと着てみて」
 早苗が持ってきたのはポロシャツとスラックスだった。絵里香は寝間着を脱ぎ、早苗が用意してくれた服を着た。
03-33-05.png
 その時部屋の扉が開き、麻美が早苗に話しかけてきた。
「早苗姉さん。片付け終了」
 そう言いながら麻美は早苗を手招きした。早苗は黙って廊下に出てきた。
「何?」
「あの二人にも、例のデータを見せた方が良いわ。何といってもネオ‐ブラックリリーと直接戦っている人たちなんだから」
「うん。それは私も考えていたのよ。とにかく二人を私の部屋へ連れて行く」
 早苗は再び部屋に入ってくると、絵里香と美由紀を呼んだ、
「絵里香ちゃん着替えたの? それじゃ二人とも私の部屋に来て」
「はい」

 絵里香と美由紀は早苗の部屋に入り、早苗から例のデータを見せられた。
「早苗さん、これって・・・」
 傍にいた美由紀が絵里香に言った。
「絵里香はまだ聞いてないと思うけど、ACAという組織があって、その組織はネオ‐ブラックリリーと戦っているんだって。その人たちが作ったデータなのよ」
「ACA? ネオ‐ブラックリリーと戦っている人たちが、私たちの他にもいるの?」
「そう。私も・・  組織の全貌はよく知らないんだけど、私はその組織の連絡係をやってるのよ。それでこれはそこから送られてきたものなの。あなたたちと一緒にいる紅林さんなら詳しく知ってると思うわよ」
「美紀子さんが? 早苗さん、美紀子さんの事知ってるんですか?」
「うん。城北大学の先輩なの。私が学生だった時、紅林さんは大学で講師をやっていたのよ。確か、生体医学だか、人間工学を教えていたのかな・・・ それで研究室に入った時、紅林さんから色々な話を聞いたのよ。最初は信じられなかったけど、紅林さんの上司だった名取先生や秋元先生が証人だったし、亡くなられた鹿又先生からも同じ事を聞かされて(名取・鹿又両氏についてはスカーレットエンジェルを参照。秋元氏についても同じ)、それで紅林さんの言ってることを信じたのよ。それがきっかけで、インターポールの特殊組織のことも知ったってわけ」
「そうだったんですか・・ 」
「それから、君たちの事は従妹の麻美からも聞いているし、私に出来ることなら協力するわ」
「ありがとうございます」

      *      *      *      *

「あん・ あぁ・・ ちょ・・ ちょっとそこヤダ。ワーッ!! や、やめてぇーッ!」
「静かにして。変な声出さないで!」
「そんな事言ったって・・ あーん! 感じちゃうのよおーッ! ああぁぁ・・」
「何でも良いから暴れないでよ。薬が塗れないでしょ」
03-33-06.png
 ACAの秘密アジトの一室では、千晶が聖奈子の素肌に薬を塗っていた。聖奈子は薬を塗られている場所によって、体中がビクビクと感じたので、喘ぎ声のようなものが出てしまい、体をクネクネとさせたので、そのたびに千晶が聖奈子の体を押さえつけた。助けられてから丸二日が経っていて、エンジェル戦士の聖奈子はすっかり回復していた。しかし、聖奈子を助けたACAのメンバーたちは、聖奈子がエンジェル戦士であることを知らないのだ。聖奈子は体中に痛み止めの軟膏を塗られ、相変わらず下着だけの恰好だった。
「ハイこれで終わり。しかし・・・ あなた回復が早いわね。もう起きても大丈夫よ」
聖奈子は恥ずかしさに顔を赤らめながら、千晶を睨み付けるような表情で聞いた。
03-33-07.png
「ねえ、あたしの下着を用意してくれているけど、どうしてあたしのサイズを知ってるのよ」
「あなたが寝ている間に、計っておいたのよ。そうしなければサイズの合うものを用意できないじゃないの。あなたは私のサイズと殆ど同じだったから良かったわ。あまり気を悪くしないでね」
 聖奈子はそう言われて、膨れっ面をしながら千晶の顔を見た。
「ところで・・ そろそろこの前の話の続きをしたいわ。私の質問に答えてほしいの」
「何を?」
「あなたがネオ‐ブラックリーに追われていた理由。おおかた奴等の秘密を知ってしまったって所かしら」
「あなた・・ 千晶さんっていったわね・・ あたしが答える前に、何故あなた達がネオ‐ブラックリリーを知ってるのか知りたいわ」
「知ってしまったら、生きて家へ帰れなくなるかもしれないわよ」
「別にかまわないよ。あたしはもう奴等の事を知ってるのよ。それにあたしたちはネオ‐ブラックリーと戦っているの」
「戦っている!? あなたたち? 一体どういう事?」
「あたしはエンジェルスという戦士の一人で、エンジェルブルーとして、ネオ‐ブラックリリーと戦っているんです」
「エンジェルス?  戦士?」
「証拠を見せるわ」
 そう言って聖奈子はベッドから起き上がると、下着姿のままポーズをとった。
「エンジェルチャージ!」
 聖奈子の身体がまぶしい光に包まれ、千晶は眩しさに顔をそらした。光が消えるとともに、聖奈子の姿が戦士の姿になり、千晶はそれを見て驚いて立ち尽くした。
03-33-08.png
「これがあたしのエンジェル戦士としての姿です。これで千晶さんの質問の答えになっていると思いますけど」
「エンジェル・・・  噂に聞いていたけど、本当だったとはね・・ 」
 千晶は一つため息をついてから、さらに聖奈子に言った。
「それであなた・・ 紅林源太郎という人を知ってる?」
「紅林源太郎? 紅林美紀子なら知ってますけど、その人は一体誰なんですか?」
「紅林美紀子を知ってるなら話は早いわ。源太郎という人は、紅林美紀子の養父だった人よ。まあ・・ 話せば長くなるんだけど、手っ取り早く言っちゃえば、私たちはACAという組織で、インターポールの特務機関に属しているの。紅林源太郎が悪の秘密結社や国際陰謀団対策用に組織した特殊部隊なのよ」
「特殊部隊?? 驚いた・・・ あたし達と同じようにネオ‐ブラックリリーと戦っている人たちが、他にもいたなんて・・・ 」
「ところで紅林美紀子を知っているようだけど、あなたとの関係は?」
「あたし達は美紀子さんの下でネオ‐ブラックリリーと戦っているんです」
「そうだったの・・ それじゃ私が明日、ここからあなたを連れて行ってあげる」
「連れて行くって何処へ?」
「今は言えないわ。私たちは常に奴等から見張られている恐れがある。電話だって盗聴されているかもしれない。携帯電話だって、電波を傍受されるかもしれないわ。だから・・ 」
「分かった。だったらそれ以上は言わなくてもいいわ。色々とありがとう」
 そう言って聖奈子は変身を解いた。
「別にお礼は良いわよ。それよりいつまでもその恰好じゃ恥ずかしいだろうから」
 そう言って千晶は壁を指差した。そこには聖奈子の制服がかけてあった。
「それじゃ私は別の部屋にいるから、何かあったら呼んで。それからもう一つ。絶対に無断で外へ出ないようにしてね」
「分かった」
 千晶は踵を返すと、部屋から出て行った。聖奈子は壁にかけてあった制服を見つめてから、窓際へ行ってカーテンを少し開けて窓の外を見た。外の景色は聖奈子の知らない場所だった。
「何処だろう・・・ 天間村の景色に似てるけど」
 聖奈子は何かを思い出し、カーテンを閉めると、壁にかけてあった制服を手にとって、ベッドに座って制服を着始めた。
03-33-09.png
 聖奈子が察したとおり、聖奈子が助けられて連れてこられた場所は、天間村の一角だった。美紀子のペンションがある場所から、大体10kmほど離れた所にある別荘のような建物で、周囲は針葉樹と雑木に囲まれ、外からは見つけにくいようになっていた。

      *      *      *      *

 その頃、ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、ゼネラルダイアが大首領クイーンリリーと会話していた。
「ゼネラルダイア! 我々を嗅ぎ回っているACAの組織は解明出来たのか?」
「まだですが、その全貌が分かるのは時間の問題です。クラゲ魔人が秘密データを奪う手はずになっており、阿修羅魔人が二世部隊を率いて、怪しいと思われている地域をしらみつぶしに探索しています」
「よろしい。我がネオ‐ブラックリリーに盾突く輩は、手段を選ばず皆殺しにするのだ。何が何でもACAなる組織を根絶やしにせよ! そのためには、秘密データを必ず奪い取るのだ。データを奪って内容を調べれば、奴等が我々の事をどれだけ知っているのかが分かるし、奴等の力量も分かるというものだ」
「わかりました。大首領様」
「だが絶対に油断はするな。エンジェルスが壊滅状態だとは言っても、スカーレットエンジェルとジュニアのガキがいるのだ。それに以前我々の作戦の邪魔をした、ミルキーピンクなる者まで出てきている。そして、お前が死んだと思っている、エンジェルスの小娘どもは皆生きているぞ」
「な、何ですと」
「エンジェルスの小娘どもは、全て助けられている。どうやらACAの連中が絡んでいるようだ。いいか!? 絶対にやつらを甘く見るな」
「か・・ かしこまりました。大首領様」

03-33-10.png

 ゼネラルダイアは、会話を終えると、近くにいた戦闘員の方に向き直った。
「クラゲ魔人や阿修羅魔人からの連絡はまだか」
「イーッ。まだ何も連絡はありません」
「うー・・・・ 」
 ゼネラルダイアは焦れてきていた。エンジェルスが壊滅しているとはいえ、生きている限り絶対に安心は出来ないのだ。
「くそーっ・・ ACAの連中は一体何処に潜んでいやがるんだ。今に見ていろ。見つけたら必ず・・  必ず皆殺しにしてやる」

      *      *      *      *

 その日の昼過ぎ、一台のオートバイが診療所の前で停まった。オートバイに乗っていたのは孝一と篤志だった。二人とも学校が終わって直接来たので、制服姿のままだった。前日篤志の携帯に美由紀の事で麻美からの連絡が入り、篤志はいてもたってもいられなくなって、孝一に頼んでここまで連れてきてもらったのだ。
「孝一さん。ここだよ」
「ああ・・ 」
 二人はオートバイから降りると、診療所の玄関の前に立った。同時に玄関の扉が開いて麻美が出てきて、二人と鉢合わせした。ちなみに早苗は買い物に行っていて留守だった。麻美の後ろから紫央も出てきた。麻美と紫央にとっては孝一と篤志は初対面だった。
「麻美、どうしたの? 誰か来たのか? (お・・・ 意外とイケメンじゃん・・) 君達は?」

03-33-11.png

「ぼ・・ ぼ、僕は、城野篤志。宮代って人から姉貴がここにいるって昨日聞いて・・・」
「ああ・・ 君が、昨日電話に出た美由紀ちゃんの弟くんね。私が宮代麻美よ。よろしくね」
「私は相守紫央。よろしく。君カワイイね。何年生?」
「ちゅ、中学一年です。よ・・ よろしく」
 篤志は顔を赤くして、麻美と紫央に照れくさそうな仕草を見せ、麻美は孝一の方を見た。
「俺は黒川孝一。高2。あの・・ 絵里香、いや赤城もここに入院してるって聞いて」
「絵里香さんの・・ どうぞ。入って」
 麻美と紫央は篤志と孝一に中へ入るよう促し、二人が中に入ってから、麻美は周囲をキョロキョロと見回し、扉を閉めた。二人は中に入るとリビングに案内された。暫くして、麻美に連れられて絵里香と美由紀がリビングに入ってきた。篤志は立ち上がると、美由紀に向かって怒鳴った。
「姉貴!!」
「篤志・・・ ?? どうしてここへ・・・」
「そこにいる宮代って人が知らせてくれたんだよ。このバカ姉貴! 散々心配させやがって」
 篤志が美由紀に飛びかかろうとしたのを、孝一と絵里香が止めた。
「篤志ごめん。連絡しなくてごめん。許して」
「篤志。落ち着けったら」
「篤志君やめて。落ち着いて。私も一緒に謝るから。ね・・・」
 孝一と絵里香に宥められた篤志は、おとなしく椅子に座った。
「二人ともごめんね。心配させて。でも、明日には美紀子さんがこっちへくるから。そうすれば帰れるから」
「そうか・・・・」
「それに今、私と美由紀は、ある事情で明日までここから外へ出られないのよ」
 それを聞いた孝一は、何かを思いついたように言った。
「分かったよ。じゃ、これ以上は何も聞かないよ」
 そう言って立ち上がると篤志を促した。
「篤志。帰るぞ」
「エ?? でも・・」
 孝一は篤志に耳打ちした。
「(このあたりは奴等に見張られているかもしんねえんだ。だから明日まで待てよ)」
「わ・・ 分かった」
 篤志は渋々立ち上がり、孝一について玄関へ向かった。二人は玄関までついてきた麻美に一礼すると、外へ出てオートバイに乗り、鷲尾平へ帰っていった。そしてその途中の街道でネオ‐ブラックリリーの戦闘員に見つかった。

 一方、こちらはネオ‐ブラックリリーのアジト。
「ゼネラルダイア様。見張り部隊からの報告です」
「何だ!?」
「イーッ。和久井村から鷲尾平へ向かって走るオートバイに、エンジェルスの小娘どもと関係のある者が乗っていたとの事です」
 ゼネラルダイアは黙って聞いていた。
「どうしましょうか?」
「放っておけ。この作戦のヤマ場は明日の正午だ。クラゲ魔人を呼べ」
 戦闘員の一人が無線装置を作動させ、暫くして連絡がついた。
「クラゲ魔人様が出ました」
 ゼネラルダイアはモニターの前に立った。
「クラゲ魔人。お前は鷲尾平へ行き、そこで潜伏しろ。スカーレットエンジェルが明日の正午までに和久井村へ行くことになっている。その隙を突いて奴等の仲間を襲撃して拉致するのだ。お前には蜘蛛魔人とカエル魔人を付ける」
「かしこまりました」

      *      *      *      *

 そして・・・ 運命の日の朝を迎えた。美紀子が和久井村へ出発するまであと2時間くらい。鷲尾平のANGELでは、佐緒里が学校へ行くところで、いつものように佳奈子が迎えに来た。
「行ってらっしゃい」
「叔母様も気をつけて」
 佐緒里は外へ出ると、佳奈子の方へ駆け寄っていった。
「行こうか」
 佐緒里は佳奈子と一緒に大通りを歩き出した。その様子はずっと見張られていたが、誰も気付いていなかった。
「イーッ。クラゲ魔人様。小娘どもが出てきました」
「ここではまずい。通行人が多すぎる。先回りして待ち伏せするのだ。行くぞ」
 隠れて様子を見ていたクラゲ魔人は、蜘蛛魔人とカエル魔人、そして戦闘員たちを従え、その場から速攻で移動した。

「聖奈子さんまだ見つからないのよ」
 佐緒里の言葉に、佳奈子は顔を下に向け、泣きそうになった。
「あ… ごめんなさい。佳奈子ちゃん、ごめん」
「いいのよ佐緒里ちゃん。早く学校へ行こう」
 佳奈子は悲しさを払拭するように走り出し、そのあとを佐緒里が追った。
「ちょっと、佳奈子ちゃん待ってよぉ」
 学校まであと少しの所まで来て、2人は大通りから路地に入った。この路地は学校への近道で、毎朝2人が通っている道である。しかし、路地に入って間もなく急に周りが薄暗くなり、2人は何事かと、辺りを見回した。人通りは全く無い・・・
「何? 一体」
「佐緒里ちゃん。何だか気味が悪い」

03-33-12.png

 佳奈子は恐怖に身を竦め、佐緒里の脳裏には言いしれない不気味さと、恐怖感が交錯した。
「佳奈子ちゃん! 走るよ」
 佐緒里は戸惑っている佳奈子の手を取ると、佳奈子を引っ張るように走り出した。が、いきなり何かにぶつかったかと思うと、身動きが取れなくなった。
「何これ・・ 」
「佐緒里ちゃん、動けないよ」
 二人がぶつかったのは巨大な蜘蛛の巣だった。糸についた粘液のため、逃れる事が出来ない。そして上から糸を伝わって蜘蛛魔人が降りてきた。
「ゲシシシーッ。罠にかかったなぁ小娘ども」
 さらにカエル魔人とクラゲ魔人が戦闘員とともに出てきた。
「鬼ごっこはここで終わりだ」
「お前達を人質として連れて行く」
「ね、ネオ-ブラックリリー」
「キャーッ。嫌あーっ。助けて・・ 誰か助けてぇーッ」
「うるさい小娘どもだ。おとなしくさせてやる」
 クラゲ魔人の頭から幻覚ガスが吹き付けられ、佐緒里と佳奈子は一瞬にして気を失った。
「よし! 連れて行け!」
 戦闘員たちは気絶した2人を担ぎ上げると、止めてあった車に押し込み、車を発進させた。
「これでよし。全員引き揚げろ。直ちに和久井村へ向かう」
「イーッ」

      *      *      *      *

 こちらはネオ‐ブラックリリーのアジト。
「ゼネラルダイア。秘密データを奪い取る段取りは出来ているのか?」
「大首領様。ご安心を。既に手は打ってあります」
 そこで会話が終わり、ゼネラルダイアの元に戦闘員がやってきて報告した。
「イーッ! ゼネラルダイア様。つい今しがた連絡が入り、エンジェルスの仲間を拉致したと言ってきました」
「そうか… よし! クラゲ魔人を呼び出せ」
 戦闘員が無線で呼び出しを開始し、しばらくするとクラゲ魔人が応答した。
「お呼びですか? ゼネラルダイア様」
「小娘どもの仲間を捕らえたそうだな。そいつらを人質にして、データを奪うのだ」
「グゥーラーッ。かしこまりました。必ずやデータを奪い取って見せます」
「よし。お前は拉致してきた人質を使い、直ちに次の作戦の準備にかかれ。追って指示を伝える」
「かしこまりました」

      *      *      *      *

 時間は午前11時30分を少し回っていた。
「行くわよ」
「はい」
 診療所の前では、早苗が車のエンジンをかけ、その周りに麻美と紫央、そして絵里香と美由紀が立っていた。
「みんな乗って」
 みんなが乗ったのを確認した早苗は、車を発進させた。その頃美紀子の車も和久井村に入り、美紀子は取引場所に指定された公民館を確認すると、駐車場に乗り入れて停止した。約束の時間まであと20分くらいあったので、時間まで車の中で待っていることにした。殆ど同時に早苗の車が、美紀子が乗り入れた場所と反対側の出入り口から駐車場に入ってきた。
 同じ頃、和久井村に向けて街道を疾走する一台のオートバイの姿があった。乗っているのは孝一と篤志。二人とも学校をサボり、孝一は城間を経由して篤志を拾った。ふたりともそれぞれ絵里香と美由紀が心配で、いてもたってもいられなかったのだ。

 さらに別の場所・・
 時間は2時間ほど逆戻りして、ここは天間村の某所。
「早く支度して。すぐにここから出発するわよ」
 千晶は聖奈子を促すと、アジトの外へ出た。そして外に置いてあった車に聖奈子を乗せると、車を発進させた。暫く走ったところで、千晶が聖奈子に話しかけた。
「行き先はS県の和久井村よ。あなたの仲間たちがこれからそこに集まってくるのよ」
「どうして?」
「私たちが作ったデータを、紅林さんが受け取ることになっているの」
「 … 」
 聖奈子は、千晶が言っていたACAという組織のことが気になっていた。ネオ‐ブラックリリーに関するデータが手に入ったとなれば、その情報内容によっては、ネオ‐ブラックリリーの作戦を事前に察知し、被害や犠牲が出る前にネオ‐ブラックリリーの作戦遂行を挫折させる事が出来るかも知れないからである。
千晶の運転する車は国道を走り続け、やがて県境を越えてS県に入った。車はさらに走り続け、やがて和久井村に入って、公民館まであと2kmくらいの所で千晶は車を止めた。
「悪いけど、ここから先は一人で行って。この道路を30分くらい歩けば目的地に着けるわ。公民館はこの道路沿いよ」
 聖奈子は千晶の顔を見たが、何かを感じたのかすぐに目を逸らして、自分の荷物を持つと、車から降りた。
「ありがとう。千晶さん気をつけて」
「お互いにね」
 聖奈子が車から離れたのを確認すると、千晶はアクセルをふかして、今来た道を引き返していった。一人になった聖奈子は歩き始めると、目的地へ向かって道路を歩いていった。

 正午を告げるチャイムが鳴り響き、早苗の車に乗っていた5人は車を降りた。向こう側に止めてあった車からも美紀子が降りてきて、お互いに視線が合った。
「美紀子さん!」
「絵里香、美由紀!」
 絵里香と美由紀は美紀子の方へ向かって勢いよく走り出し、その後ろから早苗が麻美と紫央を連れて小走りについていった。美紀子も走ってくる2人に向かって走り出し、駐車場の真ん中で対面した。
「美紀子さん。心配かけてごめんなさい」
「いいのよ絵里香、美由紀。無事で良かったわ」

03-33-13.png

03-33-14.png

 美紀子は早苗の方を見た。早苗はサングラスを取ると、美紀子と向かい合った。
「紅林先生。お久しぶりです」
「宮代さんも元気そうね」
 そう言って早苗は、持っていたケースを美紀子に差し出した。
「ACA・・ 正式名称はアンチ・カバル・アソシエーション。その日本支部の方々が、あなた達へのパイプ役として私を選んだんです」
「分かりました。確かに受け取りました」
 美紀子は早苗からケースを受け取った。同時に正体不明の物体が飛んできて、みんなが立っている場所の真ん中に落ちてきた。
「キャッ! 何一体?」
 その物体は短剣だった。よく見ると手紙が付いている。絵里香は地面に落ちている短剣を拾い、手紙を開いて美紀子に見せた。途端に美紀子の顔色が変わった。
「しまった・・ 迂闊だったわ。佐緒里が捕まってしまった。それに佳奈子まで」
「ええっ?」
 文面は次の通りだった。
『お前たちの仲間を預かった。助けたかったら、ACAより受け取った秘密データを我々に渡せ。取引場所と時間は武州峠で、午後3時。データと交換で人質は解放する。時間に遅れた場合は、直ちに人質を殺す。ネオ-ブラックリリー大幹部ゼネラルダイア』
「ネオ‐ブラックリリーめ、卑怯な手を… !」
 絵里香と美由紀が周囲を見回した。麻美が二人に向かって言った。
「落ち着いて! 焦ったらやつらの思うつぼよ」
 紫央が付け加えるように言った。
「そうよ。あなた達エンジェル戦士の戦力が充分でない今、焦って飛び込むのは危険だわ」
「その通り。データの内容をすぐに確認するか、もしくはやつらにデータを渡しても良いだけの条件が必要よ。3時ならまだ時間があるわ」
 突然別の所から聞こえてきた声に、みんなは声のした方を見た。すると聖奈子が歩きながら近付いてきた。
「聖奈子! 聖奈子じゃないの」
絵里香と美由紀は聖奈子に向かって駆け寄った。
「絵里香、美由紀。心配かけてごめんね」
 今度は美紀子が話しかけた。
「一体今まで何処へ行ってたの?」
「崖から落ちたあと、ACAの人たちに助けられたんです。それでついさっき、ここの少し前の所まで送ってきてもらったんです」
 早苗が美紀子たちに向かって言った。
「紅林さん、人質がいる以上、今下手に動けば危険です。武州峠だったら、ここから車で約1時間。まず作戦を練りましょう。私達と一緒に来て下さい」
 早苗は美紀子たちに車に乗ってついてくるように言うと、診療所に向かった。診療所に着いた美紀子たちは、促されるように中へ入り、早苗の私室に案内された。机の上には高性能のパソコンが置かれている。早苗はパソコンを起動すると、美紀子に向かって言った。
「紅林さん、ケースを開けて下さい」
 美紀子はケースを開けた。中には書類とUSBスティックが入ってる。パソコンが立ち上がり、早苗は画面上のアイコンを指差し、それを開いた。
「これはそのUSBの中身と同じものです。もしもの時のために、こうして出しておいたんだけど」
そう言いながら早苗は自分のUSBをパソコンに差し込み、データをドラッグした。数秒後にはデータが収まったので、早苗はUSBを抜いて美紀子に渡した。
「はい」
「ありがとう。宮代さん」
「お礼はいいわ。それよりリビングで作戦会議よ。時間がないから早くやりましょう」
 そう言って早苗はみんなをリビングに案内し、テーブルを囲んで作戦会議が始められた

      *      *      *      *

 武州峠ではクラゲ魔人、カエル魔人、そして蜘蛛魔人と戦闘員たちが、峠の頂上にあるレストハウスを占領して、駐車場と広場に陣取っていた。人質にされた佐緒里と佳奈子は、両手足を縛られて護送車仕様の車両に監禁され、その周囲には戦闘員が配置されていた。クラゲ魔人は車両の方に歩み寄り、中に閉じこめられている2人に向かって言った。
「おい! お前たちの仲間はまだ来ないぞ。もし、時間に遅れれば、この車もろとも谷底へ突き落としてやる。わっはっはっはっは」
「必ず来るわよ! お前たちなんかみんなやられればいいのよ」
 佐緒里は毅然と言い返したが、佳奈子は恐怖心から体を震わせ、泣きそうになっていた。
「佐緒里ちゃん、きっとみんな来るよね。来るでしょ?」
「うん! 勿論だよ佳奈子ちゃん。だから諦めちゃダメだよ」

 戦闘員の一人が何かを見つけたらしく、クラゲ魔人を呼んだ。クラゲ魔人はその方向へと走っていき、戦闘員が持っていた双眼鏡をひったくって覗いた。
「来た来た… 罠とも知らず、ノコノコとやって来おったわい」
 美紀子たちは美紀子と早苗の運転で、2台の車に分乗して峠を登ってきた。そして頂上の広場に入ったとき、クラゲ魔人が出てきてその前に立ちはだかり、車を止めさせた。
「そこで全員車を降りろ。代表者はケースを持って前に出てこい」
 クラゲ魔人の言う通りに全員車を降りて、美紀子がケースを持って前に出てきた。
「そのケースをそこへ置いて、そのまま下がれ」
「その前に人質の安全確認が先よ。人質はどこにいるの?」
「あそこだ。あの護送車を見ろ」
 美紀子がクラゲ魔人の指さした方向を見ると、止められている護送車の中から鉄格子越しに2人の姿が認められた。
「あの車をここまで動かして持ってきなさい。ケースはそれと引き替えよ」
「いいだろう。車を動かして移動させろ」
 戦闘員の一人が運転席に入り、車を動かして美紀子たちがいる方へ移動してきた。車は美紀子のすぐ前に止まり、鉄格子の扉が開いて、中から佐緒里と佳奈子が出てきた。絵里香と美由紀が出てきて二人の縄を解いて、自分たちの後ろに下げると、美紀子はクラゲ魔人のいる方へ向かって歩き出した。
「よーし! そこで止まれ。そこからこっちへ投げろ!」
 美紀子は言うとおりにケースをクラゲ魔人目がけて投げた。飛んできたケースを戦闘員が受け取ってクラゲ魔人に渡した。クラゲ魔人はケースの中身を確認すると、手を上げて合図をした。すると周囲に潜伏していたカエル魔人と蜘蛛魔人、戦闘員が一斉に出てきて周りを取り囲み、さらに大幹部のゼネラルダイアまでがあらわれて、みんなに向かって大声で叫んだ。
「データは頂いた。そしてここがお前たちの墓場だ。我がネオ‐ブラックリリーの手にかかって皆死んで行け」
 ゼネラルダイアは吐き捨てるように言うと、その場から姿を消した。クラゲ魔人を中心にして、2体の魔人と戦闘員が一斉にジリジリと近付いてきた。
「こんな事だろうと思ったわ! みんな、覚悟はいいわね」
 美紀子は絵里香達がいる方へ走って戻ると、絵里香たちを促した。しかし絵里香と美由紀は早苗からドクターストップがかけられていた。
「美紀子さん。私たちまだエンジェルになってはダメだって、早苗さんに・・」
「そう・・ 分かった。それじゃ聖奈子、頼んだわよ」
「オッケー!」
 麻美は絵里香に向かって言った。
「絵里香ちゃん、ここは私達に任せて! 紫央、行くよ」
 絵里香と美由紀を自分の後ろに下げさせた麻美は紫央に向かって合図し、それぞれ聖奈子の左右に立って身構えた。
「聖奈子ちゃん! 今日は君と私と紫央の3人で『エンジェルス』だよ!」
 聖奈子は麻美の言葉に頷くと、ポーズをとってキーワードを叫び、続いて麻美と紫央もポーズをとって叫んだ。
「エンジェルチャージ!」
「クロスチェンジ!」
「クロスチェンジ!」
変身した3人は、迫ってくる魔人たちと戦闘員たちの前で身構えた。

03-33-15.png

「水の戦士、エンジェルブルー!」
「正義の戦士ミルキーピンク!」
「正義の戦士セイントパープル!」
「私たちは正義の戦士! 美少女戦隊エンジェルス!」

03-33-16.png

「ふん! 何を小癪な。者どもかかれっ! 殺せ! 片付けろ!」
 戦闘員が奇声を上げながら一斉に襲いかかってきた。後ろからはクラゲ魔人やカエル魔人、蜘蛛魔人も向かってくる。聖奈子、麻美、紫央の3人は、襲ってくる戦闘員と格闘しながら次々と倒していったが、戦闘員の数が多すぎて3人だけでは防ぎきれず、そのうち逃げて離れた場所にいた美紀子たちの方にも戦闘員が襲いかかっていって大乱戦になった。
「美紀子さんダメだよ。これじゃキリが無いよ」
「絵里香、美由紀、変身しないで我慢して」
「でも・・ と・・ エイッ!! ヤァッ!!」
 絵里香のハイキックの一撃で戦闘員が吹っ飛んだ。
「叔母様。私が戦うわ」
 そう言って佐緒里はジャンプすると、空中で一回転しながら変身して着地した。
03-33-17.png
「私はスカーレットエンジェルJr! お前達に勝手な真似はさせない」
「ええい小癪なガキめ。かかれえっ」
 戦闘員が次々と佐緒里に組み付いてきて、佐緒里と格闘になった。

 乱戦の中で3人の戦士たちは分散させられ、それぞれ個々で戦うことを強いられた。乱戦の中からクラゲ魔人が出てきて、一番近くにいた麻美に向かってきた。
「ミルキーピンク。この前の神社での礼をたっぷりとさせてもらうぞ!」
 クラゲ魔人は左手の鞭を飛ばしてきて、麻美の体にガッチリと巻きつけ、激しく締め上げてきた。
「ぐ… 」
 麻美は苦しそうな表情をしながら鞭から逃れようとしたが、もがけばもがくほど鞭が締め上げてくる。紫央も聖奈子も自分たちの周りにウジャウジャいる戦闘員との格闘が精一杯で、とても麻美を援護できる状態ではなかった。
「畜生! 放せ! 化け物!」
 クラゲ魔人の鞭から電流が流された。
「ああっ・・ うわあぁーっ!!!」
 強烈な電気ショックに、麻美は絶叫とともに体全体をビクンビクンと悶絶させ、やがてその場に膝をついた。
「グウーラーッ。なぶり殺しにしてやる。それっ者ども、やってしまえ!」
 電気ショックでグッタリした麻美に、戦闘員達は奇声を上げながら飛びかかってきて、代わる代わる麻美に殴る蹴るを繰り返した。麻美は顔、腹、胸と、至る所を殴られ、蹴られて、ついにその場に倒れ込んだ。クラゲ魔人は倒れた麻美の体を踏みつけ、髪を掴んでグイッと引っ張り上げた。
「う・・ ぐ・・ くそっ・・・ 」
 もはや絶体絶命。ミルキーピンク危うし・・

      *      *      *      *

 一方、佐緒里はカエル魔人や戦闘員と戦っていたが、そこへ蜘蛛魔人がやってきた。
「何をそんなガキに手間取っている! 俺様が加勢するぞ。ゲシシーッ」
 蜘蛛魔人は口から糸を吐き出してきた。糸は佳奈子に向かっていって佳奈子に巻きつき、蜘蛛魔人はそのまま糸を手繰り寄せて佳奈子を捕えて羽交い絞めにした。
「嫌あーっ! 嫌・・ 助けてぇーッ」
 佳奈子を捕まえた蜘蛛魔人は佐緒里に向かって捲くし立てた。
「少しでも動いてみろ。このガキの血を一滴残らず吸い取ってしまうぞ!」
「嫌ーっ! 助けてぇーッ」
「卑怯者! 佳奈子ちゃんを放せ!」
 たじろいでいる佐緒里にカエル魔人と戦闘員が近付いてきた。そこへオートバイが突っ走ってきて、蜘蛛魔人に体当たりした。
「ゲシシシーッ!!」
 蜘蛛魔人は吹っ飛ばされて、一回転して地面に叩きつけられた。オートバイが停まって、乗っていた孝一と篤志が飛び降りてきて佳奈子を助けて逃がすと、篤志が逃げながら佐緒里に向かって叫んだ。
「佐緒里さん。もう大丈夫だぞ!」
「ありがとう」
「ゲシシーッ・・ おのれぇ・・ 皆殺しだ」
 蜘蛛魔人は凄い形相で美紀子たちに向かっていった。
「セイントシャドー!!」
 蜘蛛魔人の後ろから強烈なエネルギー波が飛んできて、蜘蛛魔人の至近距離で爆発し、蜘蛛魔人は戦闘員とともに吹っ飛ばされた。同時に紫央が走ってきて蜘蛛魔人の前に立ちふさがった。
「ここから先はこのセイントパープルが通さないわよ!」
 佐緒里も紫央の傍に駆け寄ってきた。紫央は始めて見るスカーレットエンジェルJrに戸惑いを見せた。
「君は? エンジェルスの三人とは違うようだけど・・」
「私はスカーレットエンジェルJr。あなたと会うのは初めてだけど、気持ちは同じだよ」
「クソーッ・・ かかれえっ」
 カエル魔人と蜘蛛魔人は戦闘員達を煽りたて、戦闘員が奇声を上げながら、佐緒里と紫央に向かってきた。

      *     *     *     *

「これでジ・エンドだ。一万ボルトの電流で黒焦げの死体にしてやる」
 麻美の命はクラゲ魔人の前に風前の灯だった。一万ボルトの電流を喰らったら、いくらミルキーピンクといえどひとたまりも無い。そこへ戦闘員の壁を破った聖奈子が駆けつけてきて、クラゲ魔人目がけて飛び蹴りをお見舞いした。
「グウーラーッ」
 クラゲ魔人は蹴りの反動で絶叫とともに地面に叩きつけられた。グッタリしている麻美の元に聖奈子が駆け寄って抱き起こした。
「麻美ちゃん、大丈夫? しっかりして!」
 聖奈子の後ろから、激しい形相をしたクラゲ魔人が迫ってくるのを見た麻美が叫んだ。
「危ない聖奈子ちゃん! 後ろ!!」
 麻美が叫ぶと同時に聖奈子は反射的に身を翻し、そこへクラゲ魔人が麻美の体の上に覆い被さるように飛び込んできた。麻美はクラゲ魔人の腹めがけて両足で蹴りをぶち込み、そのまま両脚を踏ん張って、巴投げのような要領で体を反転させた。クラゲ魔人はその反動で麻美の上を飛ぶように通過し、一回転して地面に落ちた。
「よくもやったわね、覚悟しろ。電気クラゲの化け物! 今度は私の番よ!」
 麻美はクラゲ魔人に向かって身構え、そのまま突進していった。聖奈子も加勢しようとしたが、戦闘員が行く手を阻んで組み付いてきたので、麻美を援護できない。突進していった麻美はそのままクラゲ魔人に組み付き、取っ組み合いの格闘になった。何度かパンチとキックの応酬が繰り返され、ついに麻美のハイキックが炸裂して、クラゲ魔人は地面に叩きつけられた。
「クロス・パワー!」
 ミルキーピンクのグローブに埋め込まれた宝石が光をはなつ。クロス・パワーによって麻美の力は普段の何倍にもアップするのだ。
「必殺ミルキーフラッシュ!」
 麻美の両手から強烈なエネルギー波が放たれ、クラゲ魔人に命中した。クラゲ魔人の体中から、水蒸気のような煙が噴出し、バチバチと火花が散っている。
「今だ!」
 麻美は空高くジャンプすると、空中で一回転してクラゲ魔人めがけて急降下した。

03-33-18-1.png

「ミルキーキック!!」
 クラゲ魔人はキックの直撃を喰らい、反動で空中を飛んでそのまま地面に叩きつけられた。そしてヨロヨロと立ち上がったが、そのまま前のめりに倒れた。
 ドオオォォォーン!!!
 轟音とともにクラゲ魔人は大爆発して、木っ端微塵に吹っ飛んだ。が、麻美のほうも体力を消耗しすぎて、よろけて倒れそうになった。そこへ聖奈子が駆けつけてきて、麻美の体を支えた。
「やったね麻美ちゃん! しっかり」
「ありがとう」

 佐緒里と紫央はそれぞれカエル魔人、蜘蛛魔人相手に戦っていた。既に戦闘員は全滅し、二体の魔人だけになっていた。カエル魔人が佐緒里に向かって、長い舌を伸ばしてきた。佐緒里はそれをジャンプしてかわすと、そのままカエル魔人に飛び蹴りをお見舞いした。
「ゲロゲローッ」
 カエル魔人は反動で地面を転がった。佐緒里は間髪をいれずにブレードを出し、カエル魔人に向かって突進すると、そのままカエル魔人にブレードを突き刺した。
「くたばれ化け物! エンジェルストーム!」
 カエル魔人の身体からバチバチと火花が散り、佐緒里はブレードを抜き取って安全な場所まで下がってポーズをとった。カエル魔人は前のめりに倒れて爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。

 蜘蛛魔人が吐き出した糸が紫央に向かって飛んできた。紫央がステッキを出すと糸がステッキに次々と絡みついてきた。
「今だ!」
 紫央は持っていたステッキを蜘蛛魔人めがけて投げつけると、両手を蜘蛛魔人に向けて必殺のエネルギー波を放った。
「セイントシャドー!」
 蜘蛛魔人にステッキが命中すると同時に、エネルギー波も命中し、エネルギーがステッキで増幅されて蜘蛛魔人の全身をエネルギーが包み込んだ。
「ゲシシシーッ!」
 蜘蛛魔人は絶叫とともに大爆発して、木っ端微塵に吹っ飛んだ。静けさが戻り、周辺にはネオ‐ブラックリリーの影も形も無くなった。
「紫央さんお見事」
「そっちこそ」
 紫央と佐緒里はお互いに右手を差し出して握手した。

 そこへ聖奈子に支えられた麻美がやってきて、美紀子と早苗、絵里香と美由紀も佳奈子を連れて駆け寄ってきた。そして孝一と篤志も来た。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
 佳奈子が聖奈子に向かって走ってきて、そのまま聖奈子に抱きついて泣きじゃくった。
「佳奈子、心配かけてごめん」
 佐緒里が何かを思い出したように美紀子に言った。
「叔母様、私達が捕まっていたとき、やつら新しい作戦がどうかとか言ってたけど… 一体今度は何をするつもりなんだろう」
「あのデータの中身を全部見れば何かがつかめると思うわ。データが奴等に渡った以上、ACAの組織が奴等に解明されるのも時間の問題よ。やつらのことだから、自分達に対抗している組織をそのままにしておくはずがない。とにかく、今はその組織と出来るだけ早く接触することと、データの内容を全て解析して、ネオ‐ブラックリリーの秘密を出来るだけ多くつかむことが大事だわ」
 絵里香は孝一の所へ歩み寄った。
「孝一。何でここが分かったの?」
「こいつだよ」
 そう言って孝一は携帯電話を取り出した。画面を見ると地図が映し出されていて、そこに赤い点が点滅している。
「美紀子さんが改造してくれたんだよ。緊急信号をキャッチできるようにネ」
「孝一・・・ あまり無茶しないでよ」
「分かってるって」
 その時突然あたりが薄暗くなり、みんなの間にざわめきが起こった。
「何?」
「何なの一体・・・ 」
「シュララララーッ!!」
 突然大きな奇声が聞こえてきて、みんなは声のした方を見た。
「あ! あれは!! ・・・ 」
「ネオ‐ブラックリリーの新魔人!!」
 みんながいる場所から100m程離れた場所にある、少し高くなっているところに阿修羅魔人が立っていた。その周囲には再生された魔人がズラリと並んでいる。

03-33-19.png

「シュララララーッ! 俺様は阿修羅魔人だ。我がネオ‐ブラックリリーは、お前達から奪ったデータを使い、新たな作戦の準備中だ。お前たちがこの世から全て消え失せる日は近いのだ。シュラララーッ」
 聖奈子がみんなの中から飛び出して叫んだ。
「勝手な事言うな! あたしたちエンジェルスがいる限り、絶対お前達なんかに勝手な真似はさせない。美紀子さんだって、佐緒里ちゃんだって、それに麻美ちゃんや紫央ちゃんもいるんだから」
「ワーッハッハッハッハ」
 阿修羅魔人が高笑いをし、その笑い声とともに、阿修羅魔人と魔人二世部隊がその場から姿を消した。みんなの間で再び大きなざわめきが起こった。
「新しい作戦って何だろう」
 みんなは動揺していた。そこへ美紀子と早苗が一喝した。
「みんな落ち着いて! 例のデータを分析すれば、きっと何かが分かるわ」
「そうよ。ここで動揺したら負けよ。とにかくすぐにここから離れましょう」
 みんなはそれぞれ車に分乗し、武州峠をあとにした。

      *     *     *     *

 ACAの秘密データは無事美紀子たちに渡ったが、ネオ‐ブラックリリーにも渡ってしまったのである。美紀子たちはネオ‐ブラックリリーの秘密を暴くことが出来るのか・・・ また、阿修羅魔人が率いる魔人二世部隊が企むネオ‐ブラックリリーの新しい作戦とは一体何か。みんなはそれぞれに一抹の不安を抱えながら帰途についていた。

(つづく)



      -------------------------------------------------------

 次回予告
 第34話『6人の戦士たち』

 ACAの秘密データは、美紀子の手によって解読され、その内容からネオ‐ブラックリリー大首領クイーンリリーが、天間村にあるアジトにいる事が分かる。
 一方でネオ‐ブラックリリーは、奪ったデータからACA組織の全貌を解明。阿修羅魔人を中心とした魔人二世部隊による掃討作戦が始まる。そんな中で早苗と麻美が襲われて早苗が捕えられ、人質としてアジトに連行されて地下牢に幽閉されてしまう。
 危機を知った絵里香たちは美紀子とともに作戦行動に出て、ACAのメンバー達と接触するが、ACAがやろうとしている事は意外な事だった・・・ それは一体何か・・・


 次回 美少女戦隊エンジェルス第34話『6人の戦士たち』にご期待ください。





スポンサーサイト

テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

コメントの投稿

非公開コメント