鷲尾飛鳥

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第4話『クイーンリリーの策略』

2011年 10月13日 17:15 (木)

 
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 ここは洞窟の奥深くに作られたクイーンリリーのアジトである。クイーンリリーは何としてもこの地球が欲しかった。そして世界征服のためには、邪魔になるスカーレットエンジェルをどうしても倒さねばならなかった。しかし、これまでの作戦の全てをスカーレットエンジェルに妨害されて失敗し、スカーレットエンジェルに対する激しい憎悪を抱く傍ら、今のままではどうにもならないと薄々感じていた。クイーンリリーはアジト内の私室で、どうすればスカーレットエンジェルの妨害を排除できるのか、頭を抱えて考えこんでいた。そしてある一つの策が浮かんだ。
「そうだ… 作戦のための根拠地を設けて組織力を強化すればよいのだ。そして地球上の科学者や学者を捕えて洗脳して使い、スカーレットエンジェルに勝つことが出来るエージェントを研究して作り出せば良い。よーし!」
クイーンリリーは私室から出ると、まっすぐ司令室へ向かった。司令室では新たなエージェントであるザリガニリーと、数人の戦闘員が待機していた。クイーンリリーが司令室に入ってくると、ザリガニリーと戦闘員は一斉に敬礼した。
「みんなそのまま私の話を聞くのだ。私は組織力を強化するために、このアジトを放棄し、新たに作戦のための根拠地を設ける。しかし、スカーレットエンジェルに感づかれてしまっては、また作戦が失敗してしまう。そこでだ。ザリガニリー! お前は私の作戦を隠蔽するための陽動作戦として、スカーレットエンジェルをこの地に足止めするのだ。どんな手段を使ってもいい。人間を何人殺してもいい。分かったか」
「ははーっ! 仰せの通りに従います。クイーンリリー様」
「期待しているぞ。それでは私はこのアジトを放棄する。後はお前が使え」
「ははーッ」
 クイーンリリーはアジトの司令室を出ると、洞窟内の広い所で奇声と共にその醜い姿を曝け出し、全身を黒っぽい煙で包んでその場から消えた。

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        *     *     *     *

「それじゃ美紀子ちゃん、後は頼んだわよ」
「はい。行ってらっしゃい誠司さん、和枝さん」
 誠司と和枝は美紀子に見送られてペンションを出ると、駐車場に停めてあった車に乗り、走り去っていった。誠司と和枝は毎年この地域の、宿泊施設の組合研修会に参加している。今年は軽井沢でそれが開かれることになり、二人は静養を兼ねて1泊2日で出かけた。誠一もクラブの合宿で出かけているため、今回はペンションの営業を1日だけ休むことになった。が、詩織、結花、誠人が泊まっているため、新規の客だけを断るという形にして、食事は美紀子が作って出すことになっていた。
 美紀子は誠司と和枝を送り出すと屋内に戻り、部屋の掃除を始めた。詩織と結花はペンションのテニスコートでテニスをし、誠人は食堂でテレビを見ながら漫画を読んでいた。だが、クイーンリリーの魔手がすぐ近くまで迫っていたことに、まだ美紀子は気付いていなかった。
 クイーンリリーのエージェント、ザリガニリーは、戦闘員を引き連れて、ペンション赤嶺のすぐ近くに現れた。スパイ戦闘員からの知らせで、美紀子がペンション赤嶺にいることが分かったからである。ザリガニリーはペンション赤嶺の建物を見ながら、傍らにいる戦闘員に聞いた。
「ここにスカーレットエンジェルがいるのか」
「間違いありません」
「よーし… クイーンリリー様のため、我々の力を持ってスカーレットエンジェルをこの地に足止めするのだ。よいか? 勝つ必要はないのだ。時間さえ稼げればそれで良い。行くぞ」
「ヒャイィーッ」
 その時、ザリガニリーは目の前で立ちすくんでいる中年の男の姿が目に入った。男は近くに住んでいる人で、川で渓流釣りをしていて、帰って来た時にたまたまザリガニリーと出会ったのである。
「見たな… ザリガニリーの姿を。愚かな人間め… 私の姿を見た者は死ぬのだ」
「ウワーッ! た・た… 助けてくれぇーッ。化け物だぁーッ!!」
 男は道具を投げ出して、一目散に逃げ出した。ペンションのすぐ近くだったため、テニスをしていた詩織と結花もその声が聞こえた。
「詩織姉さん、何かしら… 」
「行ってみようか」
 ザリガニリーは逃げる男を追いかけながら、頭の触角を空に向けて真っ直ぐに伸ばした。
「ザリガニリー稲妻攻撃!」
 突然雷鳴のような音が轟き、ザリガニリーの触角から高圧電流が放電されて、逃げる男の真上から降り注いだ。
「ギャアアァァァァーッ!!」
 男の姿は放電の光に包みこまれ、そのまま黒焦げになって消滅した。騒ぎを聞いてかけつけてきた詩織と結花は、その光景を目の当たりに見た。
「キャーッ!」
 結花は思わず叫んだ。と同時に、そのまま倒れこんで失神した。
「ゆ、結花! しっかりして」
「見たなぁ… お前たちも今の男のようにしてやる」
 ザリガニリーと戦闘員が迫ってきて、詩織は立ち上がって身構えた。それをペンションの食堂の窓から見た誠人が、慌てて美紀子に知らせた。誠人は雷鳴の音で外の騒ぎに気付いたのだ。
「どうしたの誠人君。今外ですごい音がしたけど」
「大変だ。姉ちゃんと詩織姉ちゃんが化け物に襲われてる」
「ええっ!?」
 美紀子は窓から外の様子を見た。すると、テニスコートの脇で、クイーンリリーのエージェントと戦闘員が、詩織と結花を取り囲んでいる光景が目に入った。
「美紀子姉さん。二人を助けて!」
「分かった。誠人君! 君はここにいて」
 美紀子は戸を開けてベランダに出ると、裸足のまま飛び出して向かって行った。
「化け物! 二人から離れなさい!」
「来たな… スカーレットエンジェル。そうか… この二人はお前の仲間か。ちょうどいい。この二人は我々が人質として頂いて行く」
「そうはいかないわ!」
「かかれッ!」
「ヒャイーッ!」
「スカーレットスパーク‐エンジェルチャージ」
 美紀子はかけ声と共にジャンプし、空中で一回転しながら変身して着地した。戦闘員が奇声を上げながら向かってくる。詩織も気絶している結花を庇いながら戦闘員と戦っていたが、ザリガニリーの左手の鋏で首をつかまれて引き寄せられ、みぞおちを殴られて気絶した。スカーレットエンジェルは詩織を助けようとしたが、戦闘員に阻まれた。
「それ! 者ども。この二人を連れていけ」
「ヒャィーッ!」
「待ちなさい!」
「邪魔はさせん!」
 詩織と結花を抱えて遠ざかる戦闘員を追うスカーレットエンジェルの前にザリガニリーが立ちはだかった。
「スカーレットエンジェル。ザリガニリーの稲妻攻撃を受けてみよ」

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 ザリガニリーは頭の触角を真っ直ぐに伸ばして空へ向けた。たちまちまわり一帯が薄暗くなり、轟音と共に高圧電流が放電された。スカーレットエンジェルのまわりに次々と稲光が落ちてきて、その一つがスカーレットエンジェルの至近距離で炸裂した。
「キャーッ!!」
 スカーレットエンジェルは放電と落雷のショックで吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてそのまま気絶してしまった。そしてそこには既にザリガニリーの姿は無く、詩織と結花も戦闘員達に連れ去られてしまった。

「美紀子姉さん。美紀子姉さん!」
 戦いの様子をずっと見ていた誠人が、気絶して変身の解けた美紀子のそばに駆け寄ってきた。
「美紀子姉さん! しっかりして。起きてよ! 起きてったら」
 誠人は美紀子を何度も揺さぶったが、美紀子は気絶したまま動かない。
「どうしよう… 姉ちゃん達が連れていかれちゃった… そうだ!」
 誠人はペンションに戻ると、ベランダにあるバケツを見つけ、それに水を入れると気絶している美紀子の所へ駆け寄り、美紀子めがけて水をかけた。
「う… ん」
 美紀子は薄っすらと目を開けた。
「美紀子姉さん! 起きて。姉ちゃん達が」
美紀子は起き上がって、立ち上がろうとしたが、そのままよろけて誠人にもたれかかった。
「わっ! ととと… しっかりして」
 誠人は美紀子を抱えながらペンションまで歩き、ベランダに横にした。
「ふぅーっ。重かったぁ… もうくたくただよ…って、そんなこと言ってる場合じゃないんだ。美紀子姉さん。しっかりしてよ。姉ちゃん達が連れていかれちゃったんだよ」
「そうだわ。結花と詩織を… う… 」
 美紀子は立ち上がろうとしたが、バランスを崩して倒れこんだ。ザリガニリーの放電攻撃のダメージが意外と大きかったのだ。
「ああぁぁ… 姉ちゃん達が連れていかれちゃって、美紀子姉さんまでやられちゃった… 源太郎叔父さんはまだ帰ってこないし、俺どうしたらいいんだよぉ」
 誠人はそのまま四つん這いになって泣き出した。美紀子は横になったまま誠人に向かって言った。
「ごめんね誠人君… 許して。私がついていながら、二人を助けられなかった」
 最後は涙声で、美紀子の瞳からも涙がポロポロと落ちた。
「馬鹿っ! 泣くなよ美紀子姉さん。泣きたいのは俺の方だよ」
 美紀子は再び立ちあがろうとした。が、再びよろけそうになり、誠人が慌てて支えた。
「ダメだよ無理しちゃ! とにかく中へ入って」
 美紀子は誠人に支えられながら、ベランダから食堂に入り、そのまま床の上に寝かされた。
「そこで待ってて」
 誠人は二階へ行って自分の部屋から毛布を持って下りてくると、美紀子にかけてやり、それから厨房へ行き、冷凍庫から氷を取り出してビニール袋に詰めてから、美紀子のところへ戻ってきた。
「これを頭の上に乗せて。あと少し横になってて。今無理しちゃダメだ」
「ごめんなさい誠人君… ありがとう」
「もう何も言うなよ。早く良くなってもらわないと困るんだ」
 美紀子は宇宙人である。ひどいダメージを受けていながらも、30分くらいで起きられるようになった。誠人はずっと付きっきりで美紀子のそばにいた。
「美紀子姉さん。大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫。誠人君ありがとう。必ず二人は助けるからね」
 美紀子はアジトを捜しに行こうとしたが、どこにあるのか皆目見当がつかない。例の方法で残像記憶を辿ったが、それでも二人の行方を見出せなかった。
「ダメだわ… 記憶を辿れない。きっとあの怪人の高圧電流のせいだわ」
 美紀子の傍では誠人が心配そうな顔で美紀子を見ていた。その時突然事務室の電話が鳴った。

        *    *    *    *


 その頃、捕まった詩織と結花は、アジトで酷い目にあっていた。結花は詩織の目の前で両手を万歳した格好で鎖に繋がれ、体に電流を流されて、苦痛に体を捩らせて悶絶していた。電流は命に関わらない程度の弱いものだったが、女の子を痛めつけるには充分だった。

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「嫌ぁぁーっ! やめてぇーっ 助けて… 助けてぇーッ! あ… あーっ! 体が痺れるぅー」
「やめろ! やめろーッ。結花には手を出すな。あたしが身代わりになるから、結花を助けて」
 それを聞いたザリガニリーは詩織の前に来ると、詩織の顎をこづきながら言った。
「小娘。これ以上お前の仲間が苦しむのを見たくなかったら、我々の言う通りにしろ」
「何をすればいいのよ」
 ザリガニリーは電話を持ってきた。
「スカーレットエンジェルを電話で呼び出してもらおう」
「スカーレットエンジェルを?」
「そうだ。お前達がスカーレットエンジェルの仲間だってことは分かってるんだ。さあ、電話番号を教えるのだ。グズグズしていると、今悶え苦しんでいる小娘の体に、高圧電流を流して黒焦げの死体にしてやるぞ」
「分かったわ。分かったから! 電話に出るから早く結花を助けて」
「おい! 電気を止めてやれ」
 戦闘員が電気のスイッチを切ったが、結花は失神してしまった。ザリガニリーは詩織から聞いた電話番号のダイヤルを回し、受話器を詩織に突き付けた。
「さあ! 電話に出てもらおう」

        *     *     *     *

 突然事務室の電話が鳴って、美紀子は事務室に入ると電話を取った。
「ハイもしもし。ペンション赤嶺でございます… えっ? 詩織? 詩織今どこにいるの?」
 アジトではザリガニリーが詩織に向かって会話をするように煽った。
「さあ言え。スカーレットエンジェルに、天間高原別荘跡地に来るように言うのだ」
 ペンションでは美紀子が詩織の話を聞いていた。
「うん… 天間高原別荘の跡地… 分かったわ。必ず助けに行くから頑張るのよ!」
 アジトではザリガニリーが受話器を取ると、美紀子に話しかけた。
「そういうことだ。午後二時までに来い。あと約1時間だ。さもないと二人はあの世行きだぞ」
 そこで電話が切れた。美紀子は食堂に戻ると、待っていた誠人のそばに行った。
「誠人君、二人の居場所が分かったわ」
「えっ、本当?」
「君は絶対来ちゃダメ。必ず二人は助けてあげるからここで待ってて」
 美紀子はそう言って外へ出ると、玄関前に置いてあった原付バイクが目に入った。
「確か誠司さんのだわ。キーは事務室の机の中だったはず」
 美紀子は事務室に戻ると、机の引出しを開けてキーを取り出し、再び外へ出てバイクのエンジンをかけた。
「この程度のメカなら私にも扱える」

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 美紀子はアクセルをふかすと、バイクを発進させて天間高原へ向かった。
「美紀子姉さーん! 頼んだよー 絶対姉ちゃん達をたすけてよーっ」
 誠人は走り去っていく美紀子に向かって大声で叫んだ。美紀子が出て行ってから10分位して、一台の乗用車がペンションの駐車場に入ってきて、源太郎と誠一が降りてきた。誠一は合宿の帰りにたまたま源太郎と会い、車に乗せてもらったのである。
「あっ! 源太郎叔父さん」
 誠人は源太郎の姿を見て、ベランダへ出た。
「よう! 誠人。元気にしてたか?」
「それどころじゃないんだ! 姉ちゃんと詩織姉ちゃんが化け物に捕まっちゃったんだ」
「何だって!? それで美紀子は? 美紀子はどうした」
「美紀子姉さん、バイクに乗って二人を助けに行ったんだ」
「どこだ!? 誠人。どこへ行ったか分かるか?」
 誠人は美紀子が電話で話していた内容を思い出した。
「そうだ… たしか天間高原の… 天間高原の別荘跡地って言ってたよ」
 源太郎は荷物を持って後ろに立っていた誠一の方を向いた。
「誠一君。天間高原の別荘跡地って分かるか?」
「分かるけど、一体何の話をしてるんだい? 化け物がどうだとか、二人を助けるとか」
「説明してる暇は無いんだ。とにかくそこへ案内してくれないか?」
「わ… 分かったよ」
 源太郎は再び車のエンジンをかけると、誠一と誠人に乗るように促し、二人が乗るとアクセルをふかして勢いよく発進した。

        *     *     *     *

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「えっ? 美紀子が宇宙人?」
「ああ… 俺も最初は信じられなかったんだが、美紀子は地球征服を企むクイーンリリーとかいうやつと戦う宇宙戦士なんだそうだ」
「そんなウルトラマンシリーズみたいな事、急に言われても信じろって言う方がおかしいよ。誠人… 本当に美紀子が宇宙人で、戦士だっていうのか?」
「そうなんだよ。誠一兄さん、俺だって見たんだよ。美紀子姉さんが変身して化け物と戦ったんだ。源太郎叔父さんや詩織姉ちゃんだって見たんだから」
 誠一はまだ半信半疑だった。現実離れしていたし、突飛な話なので、とても信じられなかったのである。車は誠一の案内で、一路天間村別荘地跡へと疾走していた。
 その頃美紀子は既に目的地の近くの、別荘地の入り口まで来ていた。美紀子は道路脇に倒れていた看板を見つけ、『天間高原○○別荘地1km』と書いてあるのを見て、そのままアクセルをふかして別荘地へ向う道路へ入ると、全速力で突っ込んでいった。それから暫くして、源太郎が車でやってきた。
「源太郎さん。ここだよ」
「よし。二人とも行くぞ!」
 源太郎はハンドルをきって別荘地へ向う道路に入った。

       *     *     *     *

 美紀子は目的地を見渡せる場所まで到達していた。そこにはとても人が住んでいるとは思えないような、数件の廃屋が並んでいた。
「ここが指定された場所か… 二人は一体どこにいるんだろう」
 戦闘員が美紀子を発見し、ザリガニリーに報告した。
「ザリガニリー様。スカーレットエンジェルが来ました」
「ふふふ… そうか」
 ザリガニリーは傍らで背中あわせに縛られている詩織と結花に向かって言った。
「良かったな。これでお前らは命拾いしたわけだ」
 美紀子は用心しながら廃屋に近付き、スティックを出して辺りを探った。するとスティックの先が点滅した。その方向には自分がいる場所と別の建物があった。

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「あの建物だわ」
 美紀子はスティックが点滅した建物に向かって歩き出した。
「待っていたぞスカーレットエンジェル! 今度こそお前の最後の時だ」
 突然建物からザリガニリーが出てきた。
「二人はどこなの?」
「あわてるな。今対面させてやる」
 ザリガニリーが合図すると同時に、縛られた詩織と結花が戦闘員に連れられて出てきた。
「詩織! 結花ちゃん!」
「助けて。助けてぇーっ」
 結花は恐怖のあまり、大声で叫んだ。

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「この二人を助けたかったら、おとなしく俺の言う通りにしろ。少しでも抵抗すれば、この二人はあの世行きだぞ」
「分かったわ。言う通りにするから、二人を放して」
「それでは変身を解け」
 スカーレットエンジェルは言うとおりに変身を解いた。
「え・・ 美紀子さん」
「者ども、取り押さえろ!」
 ザリガニリーの命令で数人の戦闘員が美紀子に近付いて組みつくと、美紀子が身動きできないように押さえ付けた。
「二人を放す約束よ。早く放しなさい」
「そうはいくか。お前をなぶり殺しにしたあと、この二人もお前の後を追わせてやる」
「卑怯者!」
「何とでもほざけ。お前はこれからこいつのようになるのだ」
 ザリガニリーはそばにいた戦闘員に向けて、口から泡を吐いた。泡は戦闘員にまともにかかり、戦闘員は絶叫と共にドロドロに溶けた。
「嫌ぁーっ!」
 あまりの怖さに結花が失神した。ザリガニリーは左手の鋏を突き出すと、美紀子の首を挟んだ。
「スカーレットエンジェル! お前の最後だ」
 美紀子は動じることもなく、ザリガニリーを見据えた。その視線の先には源太郎と誠一の姿があった。源太郎たちは既に近くで様子を覗っていたのだ。そして、怪人が二人の人質と共に姿を現したのを見て、詩織と結花を助ける機会を待っていたのである。
「死ね!」
 ザリガニリーが鋏に力を入れるより先に、源太郎と誠一が飛び込んできて、詩織と結花を捕まえていた戦闘員を突き飛ばすと、二人の縄をナイフで切った。同時に美紀子はザリガニリーの腕を足で蹴り上げ、鋏を払い除けた。そして自分を押さえつけていた戦闘員を殴り倒した。
「美紀子! 二人は助けた。もう大丈夫だぞ!」
「ありがとう源太郎さん。誠一君」
 美紀子はポーズをとった。
「スカーレットスパーク‐エンジェルチャージ!」
「おのれスカーレットエンジェル! 者どもかかれっ」
「ヒャイィーッ!」
 戦闘員の一隊がスカーレットエンジェルに襲いかかり、もう一隊は逃げる源太郎たちを追った。源太郎たちは車があるところまで戻ってきたが、数人の戦闘員が追ってきた。
「源太郎さん。やつらが追ってきたよ」
「誠一。結花を早く車に乗せるんだ」
 誠一は気絶している結花を車に乗せると、誠人と二人で車の陰に隠れ、源太郎と詩織は襲ってくる戦闘員と格闘した。
 一方スカーレットエンジェルは、次々と向かってくる戦闘員を殴り倒したり、ハイキックで倒していった。ザリガニリーがスカーレットエンジェルに向かって泡を吐いた。スカーレットエンジェルは戦闘員の一人を楯代わりにした。泡が戦闘員にかかり、戦闘員は悶絶しながらドロドロに溶けた。さらに泡が吐かれ、スカーレットエンジェルが避けると、その後ろにあった建物の壁が溶けて燃え始めた。
「エンジェルスマッシュ!」
 スカーレットエンジェルはザリガニリーめがけてエネルギー波を放ったが、ザリガニリーの身体は鎧のような甲羅で覆われているため、エネルギー波が跳ね返った。
「スマッシュが効かない… 」
「馬鹿め! 俺の体は砲弾でも跳ね返すほど頑丈なのだ。稲妻攻撃を受けてみよ」
 あたり一面が暗くなり、五万ボルトの高圧電流が放電された。

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「エンジェルシールド!」
 スカーレットエンジェルを包むようにバリヤーが張られ、放電エネルギーは全て跳ね返されたが、閃光のためにスカーレットエンジェルは目が眩んで、その場に膝をついた。そこへザリガニリーが猛然と襲いかかった。閃光で目が眩んだスカーレットエンジェルは、ザリガニリーの攻撃を防ぐことが出来ず、ハイキックをまともに受け、反動で後ろの建物の壁に激突した。
「ぐ… 」
「とどめだ」
 ザリガニリーはスカーレットエンジェルめがけて口から溶解泡を吐いた。スカーレットエンジェルが紙一重で避けると、後ろの壁に大きな穴があいた。
「しぶとい小娘め! これで成仏させてやる」
 ザリガニリーは左手の鋏でスカーレットエンジェルの首を挟んだ。
「お前の首を切ってやる」
 スカーレットエンジェルは両手で鋏をつかみ、何とかして振りほどこうとしたが、鋏の力が強く、次第に締め付けられてきた。
「うぅぅ… 」
 スカーレットエンジェルは足でザリガニリーを何度も蹴った。しかしザリガニリーの鋼鉄の鎧みたいな甲羅がそれを弾き返した。
「無駄なあがきだ! 死ね」
「エ… エンジェルスマッシュ!」
 エンジェルスマッシュが放たれ、ザリガニリーの体が反動で後ろへ吹っ飛んで、ザリガニリーは地面に尻餅を付いた。頑丈な甲羅のためにダメージはなかったものの、至近距離から食ったので、その反動で吹っ飛ばされたのだ。スカーレットエンジェルも同じように反動で後ろの建物の壁にぶつかった。
「ゲホゲホッ… 」
 スカーレットエンジェルは首を押さえて苦しい仕草を見せた。
「おのれ小癪な! 今度こそあの世行きにしてやる」
 ザリガニリーは触角を真っ直ぐに伸ばし、稲妻攻撃の態勢をとった。辺り一面が暗くなる。
「エンジェルブレード!」
 スカーレットエンジェルはブレードを出すと、エネルギーをためて攻撃態勢をとった。
「エンジェルストーム!」
 スカーレットエンジェルはブレードをザリガニリーめがけて投げた。が、ブレードはザリガニリーの甲羅で弾き返され、手前の地面に突き刺さった。
「稲妻攻撃!」
 五万ボルトの高圧電流が放電され、雷鳴と共に次々と稲妻が降り注いできたが、電光はみなザリガニリーの手前に突き刺さったスカーレットエンジェルのブレードに向けて落下し、全て吸収されてしまった。ブレードが避雷針とアースの役割を果たしたのだ。
「な、何いっ!? そんな馬鹿な」
 スカーレットエンジェルは、ザリガニリーの稲妻を避けるために身を竦めていたが、ブレードがアースの代わりになったのを見て、立ちあがって身構えた。
「今度はこっちの番よ!」
 スカーレットエンジェルは突き刺さったブレードを抜き、ブローチにあててエネルギーをためた。
「おのれ小娘!」
 ザリガニリーはすごい形相でスカーレットエンジェルに向かってきた。スカーレットエンジェルはエネルギーのたまったブレードを、ザリガニリーに向けて振り下ろした。
「エンジェルトルネード!」
 炎、水、光の束が渦を巻いてザリガニリーに降り注ぎ、ザリガニリーはその中に包み込まれた。しかし、エネルギー波が消滅しても、ザリガニリーはまだ何ともないように立っていた。
「ああ… トルネードも効かない???」
 と思ったが、ザリガニリーの甲羅にひび割れが出来て広がっていき、身体の至るところから白煙を上げた。既にザリガニリーは大きなダメージのため、戦闘力を喪失していた。
「スカーレットエンジェル… 勝ったと思うなよ。俺は負けたが、クイーンリリー様の作戦は成功したのだ」
「どういうこと?」
「俺がここでお前を足止めしている間に、クイーンリリー様はこの地を離れて、作戦根拠地を作り、世界征服のための足場を固めつつあるのだ。お前がいくら捜しても見つけられるものか。世界はいずれクイーンリリー様の物になるのだ。ワーッハッハッハッハ」
 ザリガニリーはそのまま前のめりに倒れ、爆発して木っ端微塵に吹っ飛んだ。戦いは終わり、スカーレットエンジェルが勝ったのだが、スカーレットエンジェルはザリガニリーの言った事が気になっていた。
「クイーンリリーはもうこの地にはいない… そうか。エージェントを囮にして、私をここで足止めさせたのね。一体どこへ行ったの… 」
「おーい!」
 その時源太郎と詩織が心配してやって来た。
「スカーレットエンジェル。怪人は?」
「倒したわ。でも気になることが」
「どうした?」
「クイーンリリーはもうこの地を離れて、私達の知らない所に作戦根拠地を作り、世界征服の足場を固めているってエージェントが言ったのよ」
「何だって?」
「…」
「スカーレットエンジェル。とにかく行こう。みんな待ってるから」
「はい」
 車のあるところまで戻ると、誠一と誠人が車のそばで待っていた。誠一はスカーレットエンジェルの姿を見ると、真っ先に駆け寄った。
「美紀子。お前、美紀子なんだろ?」
 スカーレットエンジェルは無言で頷いた。
「本当に宇宙人だったんだ… 」
「ごめんなさい。今まで黙っていて」
「謝ることないじゃん。宇宙から来た正義のヒロイン、スカーレットエンジェルか… 今のお前、すごくかっこいいぜ」
「ありがとう。それより源太郎さん。結花ちゃんは?」
「車の中。まだ気絶したままよ」
 源太郎の代わりに詩織が答えた。スカーレットエンジェルは車のドアを開け、気絶している結花の額に手を置いた。詩織が不思議そうにスカーレットエンジェルに聞いた。
「何をするの?」
「結花ちゃんから今の記憶を消すの。あんな怖い思いをして、かわいそうだから。目が覚めた時には、今までのことはみんな忘れているわ」
 スカーレットエンジェルの手が光り、二秒くらいでその光は消えた。
「もう大丈夫」
 そう言ってスカーレットエンジェルは変身を解き、美紀子に戻った。
「よし! みんな帰ろう」
 源太郎の一声で、居合せたみんなは車に乗り、美紀子もバイクに乗った。源太郎はアクセルをふかすと、車を発進させ、美紀子もそのあとをバイクでついていった。

        *     *     *     *

 その頃、スカーレットエンジェルの隙をついて姿をくらましたクイーンリリーは、富士山麓の某所に立っていた。その後ろには薄汚れた看板があって、『青○○原樹海』と書かれていた。ここは富士山の溶岩で出来た地形である。道路や遊歩道のある場所以外は、一旦足を踏み入れて迷ったら遭難してしまう恐れのある深い森林地帯で、所々にある迷路のような洞窟や風穴は、天然の要害にもなるし、誰にも知られずに世界征服のための前身基地を設ける場所としては最適であった。
 クイーンリリーは樹海の奥へ奥へと進み、大きな洞穴を見つけた。
「よし… ここにしよう」
 クイーンリリーは自分のいる周辺に結界バーリアを張り、持っていた種をばらまいた。すると種が成長し、多数の戦闘員が自分の周りに立った。
「ここを我々の橋頭堡とする。私は必ず世界をこの手で支配する。者ども、ありとあらゆる手段を使い、世界征服のための作戦を実行するのだ」
「ヒャイィーッ!」
 クイーンリリーはついに組織強化に乗り出した。結界バーリアはこの位置を誰にも悟られないように張り巡らしたのだ。こうしておけば、スカーレットエンジェルといえども、そう簡単に見つけることは出来ない。

        *     *     *     *

「そうか… それじゃ君の言うクイーンリリーは、完全に姿をくらましたという事か」
「はい。私の力を持ってしても、探し出すのは難しいでしょう」
「なるほど… これからの戦いはかなり厳しくなりそうだな。敵がどこからやってくるのか、まるで分からないんだからな」
 ペンションの食堂では、美紀子を中心にして、源太郎、詩織、誠一、そして誠人も混じって対策を練っていた。が、クイーンリリーが行方をくらまし、さらに作戦根拠地を作って足場を固めている以上、必ず近いうちに何かしらの事件が起こる恐れがあった。
「すみません。私にもっと力があれば… 」
「何言ってるの。美紀子が悪いわけじゃないよ」
「美紀子姉さん、悲観的になっちゃダメだよ。だって正義は必ず勝つんだから」
「そうそう。正義のヒロインだったら、もっと前向きにならなきゃ」
「ありがとう詩織、誠一さん、誠人君」
「それよりも、君がここにいたままでは、何かと不便なんだよな… 」
「どういう事ですか源太郎さん」
 源太郎はさらに付け加えるように言った。
「私の事務所に来れば、君も動きがとり易くなるんじゃないかな。私の事務所はS県の鷲尾平というところにあるんだが、その事務所は私の自宅でもあるんだ。君は私の養女になったんだし、君の籍は私の所にあるんだ。詩織も誠人も近くに住んでいるし、もし良かったら私のところへ来ないか?」
「確か源太郎さんは探偵でしたね」
「そう。それで、私のところへ来ないかというのは、私の助手になってほしいという事なんだよ。この事には詩織も賛成してるし、それからもう一つ」
 源太郎は大きめの封筒を取り出し、美紀子の前に置いた。
「源太郎さん、これは?」
「聖陵学園高校の資料だよ。君は宇宙人で戦士なんだろうけど、普通の人から見れば君は誠一君と同じで、高校生くらいに見えるんだ。ここの理事長は俺の知り合いで、君の事を話したら編入させても良いと言ってるんだ。もちろん君が宇宙人だとは言ってないし、スカーレットエンジェルだとも言ってない。君はアメリカ帰りの帰国子女という扱いにしてあるんだ」
「美紀子。あたしも聖陵学園なんだよ。ねえ、どうする?」
「学校… ですか」
「ああ。ところで失礼だが、君の本当の年はいくつなんだ?」
「私の星は地球と大体似ているんですけど、私の場合は戦士として育てられたんで、生まれたのも母親からではないんです。私はコンピューターが選び出した卵子と精子で出来た子供で… 地球で言う『試験管ベビー』に相当するんです。それに地球と私の星では自転周期も公転周期も違うので、地球の1年が私の星の1年とは限らないんです。だから年はなんて言ったらいいか… 」
 その話を聞き、詩織も誠一も誠人も生唾を飲みこんだ。
「そうか… それじゃこうしよう。地球では君は17歳という事にしよう。実は私との養子縁組を決めた時に、君の年齢を17歳にしてあったんだ。それでいいかな?」
「は… はい。地球のそういうことはまるで分からないんで、源太郎さんにお任せします。私もこれから地球のことを色々と知っていかなければならないんで。詩織や誠人君がそばにいてくれると助かります」
「決まりだな。美紀子。それじゃこのペンションのオーナーには俺が話をするから。美紀子が九月から聖陵学園に通えるよう、手続きもしておくぞ」
「はい。ありがとう。お願いします」
 詩織と誠人は喜んだが、誠一だけは何か物足りない表情だった。誠一は美紀子に一目ボレしていたので、美紀子に傍にいてほしかったのだ。誠一はそれを払拭するかのように、口を切った。
「腹減ったな… そういえばもう6時過ぎてるぜ」
 美紀子がそれを聞いて立ちあがった。
「私、これから作りますから。皆さん待っててください」
 そう言って美紀子は厨房へ向かった。
「俺も手伝うから」
 誠一も後をついていった。詩織は結花が心配なので、二階へ様子を見にいった。結花はアジトで拷問され、酷い目に遭っている。その記憶はスカーレットエンジェルによって消されたのであるが、失神したまま部屋のベッドで寝ていたのである。
 詩織がドアを開けると、結花はベッドの中で起き上がっていて、キョトンとした表情で詩織を見た。
「結花… 起きたの?」
「うん… 詩織姉さん、私どうしてテニスウェアで寝てるの?」
「あんたテニスコートでぶっ倒れたんだよ。今日暑かったし、日射病じゃないの? あたしと美紀子でここまで運んで、そのまま寝かせたのよ」
「何だか私… 変なやつに絡まれたような… 」
「夢よ夢! あんた怖い夢を見たのよ。もうすぐ晩御飯だけど、起きられる?」
「うん。もう大丈夫」
「それじゃ着替えて下に下りてきて。今日は美紀子が料理を作ってくれてるから」
 詩織はそう言うと、部屋を出ていった。結花は何かを忘れているような気がしていたが、ベッドから起き上がるとテニスウェアを脱いで別の服に着替えた。
 その日の夕食は美紀子の手料理で、食事の時間が大いに盛り上がった。源太郎はビールと缶チューハイを買ってきて、自分が飲むだけでなく、事もあろうに誠一に勧めた。誠一は未成年だったが、時々父の誠司に勧められて酒を飲んでいたので、勧められるままに飲んだ。それにつられて美紀子と詩織まで缶チューハイを飲んでしまった。食事が終わり、後片付けが終わってから、美紀子と詩織は調子に乗って再び缶チューハイを飲み、酔いつぶれてしまった。
「あ~ぁ。この二人… こんなに飲んじゃって。まだ未成年なのに」
 酔いつぶれてグッタリしている美紀子と詩織を見て、結花が呆れたように言った。二人のそばには缶チューハイの空き缶が6個も転がっていた。誠人がグッタリしている美紀子に向かって、冷やかすように言った。
「正義のヒロインも酒には弱いんだなぁ」
「そんな事よりどうするの? 部屋まで運ぶの大変だよ」
「俺布団持ってくるよ。ここで寝かしちゃおう」
 という事で、誠人は結花、誠一と三人で部屋から布団を持ってきて食堂の床に敷き、二人を寝かせた。
翌日の朝になり、美紀子はいつものように一番に起きて朝食の準備を始めたが、頭がフラフラしていた。隣り合わせで寝ていた詩織も美紀子が起きたので一緒に起きた。
「美紀子、つらそうだね」
「うん。何だか頭がフラフラするのよ」
「それ二日酔いだよ。美紀子ゴメンね。調子に乗って飲ませちゃって」
「いいよ… 私もこれから気をつけるようにするから」
 
        *     *     *     *

 昼過ぎになって、出かけていた誠司と和枝が帰って来た。美紀子を気に入っていて、自分の娘のように思っていた和枝は、源太郎が自分の傍に置くと言った時に、少しガッカリしたような顔をした。
「そうなの… そうよね。美紀子ちゃんは源太郎さんの養女になったんだし。仕方がないわね。それで、いつこっちを発つの?」
「源太郎さんが詩織と結花ちゃんと誠人君を連れて、明日帰るって言うんで、一緒に帰りたいんですけど。それに私9月から学校へ行くことになって、その準備や手続きがあるんです。我侭言ってごめんなさい」
「謝らなくて良いのよ。美紀子ちゃんのおかげで、今年の夏はペンションの仕事が随分はかどったんだから。それに美紀子ちゃん宛てにこういうものも来てるのよ」
 そう言って和枝は一枚の葉書を渡した。差出人は聖陵学園高校テニス部の部員達で、合宿に来た部員達の寄せ書きが書かれていた。美紀子はそれを両手で持って自分の胸にあてた。
「いつでもいいからまた遊びに来なさい。私も主人も誠一も歓迎するから」
「どうもありがとう」
 美紀子は涙目になり、テーブルの上に涙が落ちた。
「あらあら… ねえ美紀子ちゃん、私からあなたにあげたい物があるんだけど、ちょっと私の部屋に来てくれる?」
 和枝は美紀子を自分の部屋に連れていき、一着の浴衣を差し出した。
「これ… あなたにあげる。今日と明日の夜に、稲荷明神の縁日があるの。明日帰るんだったら、今夜行って楽しんできなさいよ。これを着ていくといいわ」
「和枝さん。色々とどうもありがとうございました」
 夕方になり、美紀子は和枝に貰った浴衣を着て、ペンションの玄関前に立っていた。結花も和枝に浴衣を貰い、美紀子と二人で玄関前に並んで、誠一と詩織が写したカメラのフイルムに収まった。
「美紀子、結花。二人とも似合ってる。とっても可愛いよ」

4-08

「詩織も浴衣着たらいいのに」
「いいのいいの。あたしはこういうスタイルの方がいいの」
 詩織は相変わらずいつものオーバーオールのスタイルだった。
「それじゃみんな気をつけてね」
「はい。じゃ行ってきます」
 美紀子と結花、詩織と誠一、誠人は源太郎と誠司の車に分乗して出かけていった。

        *     *     *     *


 次の日の朝、美紀子が天間村を離れる時が着た。
「それじゃ和枝さん。誠司さん。誠一君。お世話になりました」
「美紀子ちゃん。いつでも遊びにいらっしゃい」
 和枝はさらに付け加えるように、美紀子に封筒を渡して言った。
「それから、これは少ないけど美紀子ちゃんが手伝ってくれた分の報酬よ」
 封筒の中を見ると、現金が入っている。
「そんな… 困ります。私… 大した事もしてないのに」
「いいのよ! 美紀子ちゃん一生懸命やってくれたじゃないの。だから貰ってくれないと私も困るのよ。黙って受け取ってちょうだい」
「… 分かりました。どうもありがとう」
「どういたしまして」
「それじゃ私行きます。今まで本当にありがとう」
 美紀子は車に乗ると、見送ってくれている三人に手を振った。源太郎は車を発進させ、一路源太郎達が住むS県鷲尾平へと向かった。



 スカーレットエンジェルはクイーンリリーのエージェントを倒した。しかし、クイーンリリーは行方をくらまし、作戦根拠地を設けて新たにスカーレットエンジェルに挑戦してくるのだ。これからどんな試練が待ち構えているのか… 負けるな! スカーレットエンジェル。
 
 (つづく)


 次週予告・・・ って次回予告の間違いですよ

 第5話 怪奇! 少女を襲う蝶の群れ☆

 源太郎の養女となった美紀子は、S県の鷲尾平にある源太郎の事務所兼自宅に住むことになり、聖陵学園高校への編入手続きも無事終了し、9月の二学期から聖陵学園高校の生徒となることが決まる。
そんなある日、クイーンリリーの魔手がまたも迫ってくる。クイーンリリーは、エネルギーを量産するために必要な少女の生き血を集めるため、怪人バタフライリーを使って作戦を開始。バタフライリーは大量の毒蝶を使い、毒鱗粉で少女を仮死状態にして次々と誘拐する。
 図書館の帰りに偶然誘拐現場を見てしまった誠人のガールフレンドの久美子が狙われた。久美子が危ない !  誠人からの電話で美紀子と詩織は、源太郎とともに行動を起こす。

 次週(次回だってば)・・・  怪奇 ! 少女を襲う蝶の群れにご期待ください
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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

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