鷲尾飛鳥

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第18話『登場 ! 第4の戦士』

2012年 07月14日 19:15 (土)

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 絵里香たちは美紀子の好意で、佳奈子と佐緒里を連れてK県の白鬼ヶ浜に海水浴に来ていた。しかし、ここにもネオ‐ブラックリリーの魔手が迫ってきていた。ネオ‐ブラックリリーは白鬼ヶ浜にある伝説の岩『白鬼岩』の伝説を利用して、岩に近付く人を殺して失踪者に仕立てあげ、誰も岩に近付けないようにして、岩の洞窟とアジトとを地下で結び、地下に特殊TNT爆弾を仕掛けて爆発させ、関東大震災級の人工地震を起こして大津波を起こし、太平洋岸の都市や工業地帯を壊滅させようとしていたのだ。
 地元の人たちから失踪事件の事を聞いた絵里香達は、事件の元凶がネオ‐ブラックリリーである事が分かり、その作戦意図を見抜こうとしたが、イカ魔人とシャーク魔人の逆襲を受け、絵里香がやられて佳奈子と佐緒里が人質として連れ去られてしまった。

      *       *       *       *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトは、白鬼ヶ浜から300mほど離れた高台の上にある『白鬼崎灯台』の地下にあった。ネオ‐ブラックリリーは作戦のためにこの灯台を占領し、地下にアジトを作っていたのだ。アジトの司令室では、ゼネラルダイアが二体の魔人に向かって、それぞれの指令を与えていた。
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「イカ魔人、シャーク魔人」
「ゲーゾーッ」
「シャシャシャシャーッ」
「いよいよ我がネオ‐ブラックリリーの力を、愚かな人間どもに見せつける時がやってきたのだ。特殊TNT爆弾の運搬も、もう少しで完了する。爆弾のセットが終わり次第、時限装置を作動させて我々はこのアジトを放棄する。シャーク魔人、お前は引き続き運搬作業を支援しろ」
「シャシャシャシャーッ。かしこまりました」
「イカ魔人。お前は小娘どもを始末しろ。人質がいるとはいえ、やつらの存在は目障りだ」
「ゲーゾーッ! かしこまりました」
 その時スピーカーから大首領クイーンリリーの声が響き渡った。
「ゼネラルダイア。小娘どもを甘く見てはいかんぞ! やつらにはまだ我々の知らない能力が隠されているかもしれないのだ。あの小娘どもは普段は生身の人間であっても、スカーレットエンジェルの分身である事を絶対に忘れるな」
「心得ております。大首領様」
「それからもう一つ! 捕らえてきた二人のガキのうちの一人は、スカーレットエンジェルの血が流れているぞ」
「な、何ですと!?」
「赤嶺佐緒里は、スカーレットエンジェルの姪だ。今はまだ普通の小娘だが、いずれはスカーレットエンジェルの能力が覚醒し、我々にとって危険な存在になる。早々に処刑して始末するのだ!」
「か、かしこまりました」
 ゼネラルダイアは大首領との話を終えると、司令室を出て、佳奈子と佐緒里を監禁している地下牢へ向かった。そして入り口に立っている見張りの戦闘員に向かって言った。
「捕らえたガキどもはどうしてる?」
「ヒャイィーッ! 中で大人しくしているようです」
「そうか! 中の様子を見るぞ」
 ゼネラルダイアは扉の格子から牢の中を見渡した。ゼネラルダイアと目が合って佳奈子は怯え、佐緒里はゼネラルダイアをキッと見据えた。
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「大人しくしているようだなガキども」
「一体いつまでここに閉じ込めておくつもりなのよ! 私達をどうするつもりなの!? 一体お前達は何を企んでいるの」
 佐緒里が突っ掛かるように言うと、ゼネラルダイアは平然と返事をした。
「どうやらお前が赤嶺佐緒里のようだな… 知りたいのか?」
「勿論!」
「ふん! 冥土の土産に教えてやろう。我々はこの海岸地帯の地下に特殊爆弾を仕掛けたのだ。その爆弾を爆発させて関東大震災級の人工地震を起こし、大津波を発生させて、太平洋岸の都市や工業地帯を壊滅させるのだ。東京はたちどころに津波で壊滅し、日本の首都機能は完全に麻痺する。その隙に我々は東京を占領し、世界征服のための橋頭堡を築くのだ」
 ゼネラルダイアそこまで言うと、戦闘員を呼びつけた。
「鍵を開けてガキどもを外へ出せ。このガキどもを、特殊爆弾をセットした場所まで案内するのだ。爆弾の爆発と同時にあの世へ送ってやる。連れていけ!」
 扉の鍵が開けられ、中に数人の戦闘員が入って、佳奈子と佐緒里を取り押さえた。
「嫌ーっ! 死にたくないよ。助けてぇーッ!」
 佳奈子が涙声で悲痛な叫び声をあげた。
「連れていけ!」
「ヒャイィーッ!」
 戦闘員たちは佳奈子と佐緒里を牢から出すと、二人の前後に付いた。佳奈子と佐緒里は後ろにいる戦闘員に突付かれながら、薄明かりが灯っている地下の回廊を無理矢理歩かされた。
「佐緒里ちゃん… 私達殺されるの?」
 佳奈子は涙声で佐緒里に聞いた。エンジェル戦士である聖奈子の妹であっても、佳奈子はまだ中学生である。怖いものはやっぱり怖いのだ。佐緒里が宥めるように佳奈子に言った。
「大丈夫よ。必ずお姉さんたちが助けに来てくれるわ」
「おい! 静かに歩け!」
 後ろにいた戦闘員が佐緒里の背中を棒で突付こうとしたが、佐緒里は瞬間的に体を捻って戦闘員が突き出した棒を手でつかんだ。
「き、貴様何をする!」
 佐緒里はそのまま戦闘員を引き寄せると、手刀で戦闘員の手首を思いっきり叩いた。
「グアッ!」
 同時に佐緒里はその戦闘員の腹を蹴った。戦闘員は反動で壁に激突し、そのまま倒れて絶命した。佐緒里は戦闘員から奪った棒を持つと、そばにいたもう一人の戦闘員に突きを入れた。
「グエェーッ!」
 突きを入れられた戦闘員は、その反動で同じく壁に激突し、そのまま前のめりに倒れた。
「おのれこのガキ!」
 他の戦闘員が佐緒里に向かってきた。佐緒里は小さい頃から美紀子に格闘技を教わっており、中学生ながら拳法の有段者級の腕を持っていたので、向かってきた戦闘員と格闘して、全て倒した。佐緒里は呆気に取られている佳奈子に向かって言った。
「佳奈子ちゃん! 逃げるよ」
「う… うん」

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 佳奈子と佐緒里は地下の回廊をひたすら走って逃げた。回廊は薄明かりが灯っていたが、何処まで走ってもなかなか出口にたどり着けない。ついに佳奈子が息を切らした。両足も恐怖と疲労でガクガクと震えていて、そのままその場にガクンと両膝をついた。
「佐緒里ちゃん… 私… もうダメ。歩けないよ」
「ダメだよこんな所で。捕まったら殺されちゃうよ。死にたくないんでしょ? 頑張って」
 そこへ向こうの方から足音が聞こえてきた。音からして複数のものだと分かった。
「やばい… 誰か来る」
 佐緒里は周囲を見まわした。すぐそこに部屋があったので、佐緒里は扉の取っ手に手をかけた。
「開いた。佳奈子ちゃん入って」
 佐緒里は戸を開けると佳奈子を中に入れ、自分も中に入った。
「佳奈子ちゃん、絶対に声を出さないで」
 暫くすると、足音が近付いてきて、部屋の前を通過していった。佳奈子は恐怖のあまり体が縮こまっていたが。佐緒里の言う通りに静かにしていた。足音が遠ざかったので、佐緒里は少し戸を開け、廊下の様子を見た。
「佳奈子ちゃん。もう大丈夫だよ」
 佐緒里は佳奈子を促して部屋の外へ出た。
「やつらが行った先には私がやっつけた戦闘員が倒れている。大騒ぎになって警戒される前にここから早く出るのよ」
 佐緒里は佳奈子の手を引いて、再び回廊を走った。暫く走っていると、大きな空間のある場所に出た。そこには誰もいなかったが、NEO-TNTと書かれた木箱が多数積まれていた。佐緒里は木箱に近付いて、箱の一つを持とうとした。
「お、重い… 」
「佐緒里ちゃん、こっちの箱は開いてるよ」
 佳奈子の声を聞いて、佐緒里は佳奈子の傍に駆け寄り、佳奈子が指差している箱の中を見た。中にはダイナマイトのような物体が所狭しと詰め込まれている。
「そうか・・ これがあのゼネラルダイアが言っていた特殊爆弾だわ」
 そこへまた足音が聞こえてきた。佐緒里は佳奈子を促すと、積まれている木箱の陰に隠れた。暫くすると、シャーク魔人が戦闘員を伴ってやってきた。戦闘員たちは抱えている木箱を次々と積み上げていき、全部の木箱が積み上げられた。シャーク魔人はそれを見て、近くにいた戦闘員に聞いた。
「爆弾はあとどれくらいあるのだ?」
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「ヒャイィーッ! あと一回の運搬で、全ての爆薬を運び終えます」
「そうか! それじゃ俺は司令室に行ってゼネラルダイア様に報告し、起爆装置を受け取ってくる。後は任せたぞ」
「ヒャイィーッ!」
 シャーク魔人は戦闘員とともにその場から去っていった。
「(ここで爆弾を爆発させるのか… 私達をここで拘束して処刑しようとしたのね) 佳奈子ちゃん。今のうちよ」
佐緒里は佳奈子を促すと、隠れていた場所から出た。その時警報がけたたましく鳴り響き、佳奈子はビクッとして体を強張らせた。
「多分私達が逃げた事が分かったんだわ。もたもたしてるとやつらに捕まっちゃうよ」
 佐緒里は佳奈子の手を引いて、再び地下の回廊を駆けた。警報は相変わらず聞こえている。暫く走っていると、回廊が無くなって洞窟のような地形になり、上り坂になった。
「佳奈子ちゃん頑張って!」
 佳奈子は疲れて呼吸が荒くなっていたが、佐緒里に励まされて堪えた。佐緒里は足場を確保しながら佳奈子の手を引いて上った。向こうの方が明るくなっているのを見て、佐緒里は佳奈子を励ました。
「佳奈子ちゃんもう少しだよ! 頑張って!」
 洞窟の勾配が緩くなって殆ど平らになったところで、外の明かりがはっきりと見えて洞窟内を明るく照らし、波の音も聞こえてきた。
「出口だよ。行こう!」
 佐緒里は佳奈子の手を引いて駆けだし、洞窟の外に出た。
「やった! 出られたわ」
 佐緒里は今出てきた洞窟の方を振り返った。
「これは白鬼岩だわ。真ん中の大きな岩の洞窟が、やつらのアジトとつながっていたのか」
 洞窟の奥の方から多数の足音が響いてきた。
「まずいよ! やつらが追ってきたわ。早く行こう。ここでもたもたしてると追いつかれて捕まっちゃうよ。頑張って!」
 佐緒里は佳奈子の手を引きながら砂浜を横切り、何とか海岸沿いの道路までたどり着いた。その時突然車のクラクションが鳴って、二人ともビックリして心臓が止まりそうになった。車は二人のすぐそばに停まった。佳奈子は恐怖で体を萎縮させ、佐緒里は佳奈子を庇うような態勢をとった。ドアが開いて美紀子が降りてきた。
「二人ともこんな所でどうしたの?」
「叔母様… 」
「美紀子さん… 私達助かったのね」
 佐緒里はホッとした表情を見せ、佳奈子は緊張の糸が切れたのか、そのままアスファルトの上にへたり込んだ。美紀子は二人の様子から、只事ではないと直感した。
「佐緒里、一体何があったの?」
「私達… ネオ‐ブラックリリーに捕まったのよ。でも、隙を見て逃げてきたの。それで地下の通路をずっと逃げていたら、あの岩の洞窟にたどり着いて出てこられたのよ」
佐緒里は三つある岩のうちの、真ん中にある大岩を指差して言った。美紀子は佐緒里が指差した岩をジッと見据えた。
「叔母様! あいつら、あの岩の地下で爆弾を爆発させて、大津波を起こそうとしてるんだよ」
「何ですって!?」
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「それで爆発の力で関東大震災級の人工地震を起こして、津波で東京を壊滅させるとか… 」
 そこまで言いかけたところで、美紀子は佐緒里の言葉を遮った。岩の周辺で、洞窟から出て来た戦闘員がたむろしているのが美紀子に見えたのだ。
「ちょっと待って佐緒里! とにかく早く乗りなさい。佳奈子ちゃんも早く」

      *       *       *       *

 その頃、絵里香たちは宿の中で悶々としていた。天候は既に回復していて、夏の日差しが部屋に射しこんでいた。が、佳奈子と佐緒里が拉致され、その手掛かりすら掴めなかったので、とても海水浴を楽しむどころではなかった。
 絵里香は自分がついていながら、二人を簡単に拉致されてしまった事に、大きな罪悪感を抱いていた。それを聖奈子が宥めるように、何度も絵里香を説得した。だが、アジトの場所が分からず、二人が何処へ連れていかれたのか、全く分からない事に変わりは無かった。

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「どうしよう。何も掴めないわ。このままここで燻っていても何の解決にもならないわ」
 美由紀の言葉に聖奈子が怒ったように言った。
「美由紀、ちょっと黙ってて! 私だってどうしたらいいか考えているんだから」
「聖奈子! そんな突っ掛かるような言い方しなくたっていいじゃない」
 一触即発の嫌悪感が漂う中で、ずっと黙っていた絵里香が二人を制止した。
「聖奈子、美由紀、待って! 誰か来る」
 従業員がやってきて、部屋の戸を開けた。
「すみません失礼します。あの… 御連れ様が見えました」
「美紀子さんが来たんだわ」
 従業員の案内で佳奈子と佐緒里が続けて入ってきたので、絵里香達は驚いた。
「さ、佐緒里ちゃんに佳奈子ちゃん… 」
「ぶ・・ 無事だったの?」
 続いて美紀子が部屋に入ってきて、従業員は一礼して去っていった。
「あの… もしかして美紀子さんが?」
 美紀子は首を横に振ってから絵里香たちに言った。
「この子達、自力でアジトから脱出してきたのよ」
「ええっ? まさか… 」
 呆気に取られている絵里香たちのそばに佳奈子と佐緒里が座り、美紀子も座った。
「佐緒里。あなたが見てきた事と聞いた事を絵里香たちに話して」
「はい叔母様」
 美紀子は佐緒里に地図を渡した。
「みんな! 佐緒里の話を聞いて」
 佐緒里は美紀子から地図を受け取ると、絵里香たちの前に広げ、白鬼岩を指差しながら絵里香たちに言った。
「三つある岩のうち、真ん中の大きな岩には洞窟があります。その洞窟がやつらのアジトとつながってるんです」
「やっぱりそうか… あの岩の洞窟がアジトの入り口だったのね」
「やっぱりって、どういう事? 聖奈子」
「絵里香も美由紀も失踪事件のことを思い出して。みんな岩の周辺でいなくなったんでしょ?」
「確かに… 聖奈子の言う通りだわ。佐緒里ちゃん続けて」
 佐緒里は紙に白鬼岩の略図を書き、真ん中の岩に洞窟の図解を書き込んで、絵里香たちにさらに説明した。
「洞窟の奥行きは大体100mぐらいで、50mほど行くと急な下りになります。洞窟が終わった先はやつらが作った地下通路になっていて、そこから50mってとこかな… このあたりに広い… そうね… 大体30m四方くらいの地下広場があります」
 絵里香たちは話を聞きながら頷いた。佐緒里はさらに続けた。
「地下広場からアジトまでは大体200mあって、所々に部屋がありました。ただ、それが何の部屋かまでは解りません」
「それで… アジトの場所は分かるの?」
「私たちが捕まった時に麻酔薬を嗅がされたんで、よく解らないんだけど… この地図の地形、洞窟と地下通路の長さからすると、灯台の付近だと思います」
「うーん… 佐緒里ちゃんの言ってる事は大体当たっているわね。おそらく灯台の地下にアジトがあるんだわ」
 佐緒里は自分が書いた図解の、地下通路の広い部分を指差して言った。
「やつらは今、この空間の場所に大量の爆薬を運び込んでます。その爆薬を爆発させ、関東大震災級の人工地震を起こして、大津波を起こすつもりなんです。太平洋沿岸の都市の機能を津波で壊滅させ、東京の首都機能を麻痺させる事によって、首都占領を企んでいるんです」
「何てやつらだ! そんな大きな地震が起きたら、それだけで都市が壊滅してしまうわ」
「絶対にそんな事させるわけにはいかない」
「ところで佐緒里ちゃんたちはどうして逃げる事が出来たの?」
 今度は佳奈子が話した。

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「あいつら… 私たちを、爆薬が仕掛けられた所に拘束して、処刑しようとしたのよ。それで地下の通路を歩かされている時に、佐緒里ちゃんが戦闘員をみんなやっつけて、二人で逃げたの」
「やっつけた… 佐緒里ちゃんが??? 」
 そこへ美紀子が話の中に入った。
「この子には小さい時から私が拳法や格闘技を教えていたの。今はもう空手と合気道の有段者級の腕があるわ」
「ふーん… どおりで強かったわけだ」
 佳奈子が感心したような顔で言った。
「そんな事より、やつらの作戦を阻止しなきゃ! もたもたしてると爆弾を爆発させるわよ」
「そうだった。感心してる場合じゃないんだわ」
 絵里香たちは地図と、佐緒里が書いた略図を囲んで、作戦を練り始めた。
「洞窟から入りこんでアジトへ行く方法はどうかな?」
「やつらは既に私たちがいる事を知ってるから、待ち伏せしてると思うよ。ましてや動きのとりにくい地下通路だし、罠が仕掛けられてるんじゃないかな」
「この広い空間に仕掛けられた爆薬の山がネックだね。私たちが洞窟から入りこんで、この場所に来た時、両側の 通路が塞がれたら、脱出出来なくなるかもしれない… 」
「灯台の地下にアジトがあるとしたら、灯台の方から入りこんだらどうだろう?」
「気付かれずに行くのは絶対無理だよ。たとえアジトに侵入出来ても、起爆装置のスイッチを入れられたら、私たちみんなやられちゃうよ」
「そうね… まず起爆装置を何とかしなきゃダメか。でも、大地震を起こせるくらいの大量の爆薬だったら、とても私たちだけじゃ処理出来ないよ」
「それにあっちには、化け物が二匹いるから、そいつらも何とかしなきゃ」
 絵里香たちはついに案に詰まってしまった。どの方法を考えても安全とは言えないからだ。絵里香が何かを悟ったかのように、聖奈子と美由紀に向かって言った。
「私たちの身の安全を考えた作戦なんて絶対に通用しないわ。聖奈子、美由紀、私たち何のためにエンジェルになったの? 私たちの命と引き替えてでもネオ‐ブラックリリーの野望を阻止する気持ちでかからないと、絶対にやつらを倒す事なんて出来ないよ」
「絵里香! 気持ちは分かるけど、簡単に『命と引き替える』なんて言っちゃダメよ」
「でも美紀子さん… 」
「あなたたちエンジェルだけで、ネオ‐ブラックリリーと戦ってるんじゃないのよ。私だっているのよ!」
「私だって一緒だよ」
「そうだよお姉ちゃん! 私だって戦うよ」
「佳奈子… 」
「絶対にあなたたち三人を孤独や絶望に追いこんだりはしないわ。戦うならみんな一緒よ」
 美紀子は地図の中の数カ所を指摘しながら、絵里香達に向かって説明を始めた。
「佐緒里の話からすると、アジトは間違いなく灯台の地下にあるわ。おそらく爆破の準備が整った段階で、やつらはアジトを放棄する手筈になってるはずよ」
「そうだね… 大地震を起こすくらいの爆薬の量だったら、あの灯台どころか、付近一帯が全部吹っ飛んでしまうわ」
「アジトへの侵入ルートは二つ… 灯台の方からと、この洞窟から。そして、爆薬がセットされている場所は洞窟から入った方が近い… 佐緒里と佳奈子ちゃんが逃げた時に、すぐ警戒警報が出なかったということは、地下通路にはテレビカメラは無いと考えていい」
「二手に分かれて動けば、やつらの注意を分断する事が出来るかも… 」
 聖奈子がさり気なく呟いた。
「確かにそうね。聖奈子の言うように、二手に分かれるのもいい方法だわ。でも、絵里香たちエンジェルの戦力も分散されてしまうというリスクがある。絵里香、あなたたちは3人で動きなさい。あなたたちは灯台の方からアジトに侵入し、すぐに通信設備と発電設備を破壊して」
「それで美紀子さんは?」
「私は佐緒里と一緒に洞窟の方から入りこんで、仕掛けてある爆弾を何とかするわ。これは時間との戦いよ。何かあったらすぐにお互いに連絡を取り合うようにして。あなたたちがエンジェルになった時、胸のブローチに指で触れれば、私とテレパスで通信が出来るから」
「佳奈子はどうするの? あたし達と一緒に行くわけに行かないし」
「私も美紀子さんと一緒に行くわ。洞窟からアジトへのルートも分かってるから」
「ダメだよ無茶だよ!」
 聖奈子と美由紀が同時に言った。そこへ佐緒里が口を挟むように、絵里香達に向かって言った。
「佳奈子ちゃんは私が必ず守るわ」
「佐緒里ちゃんが?」
「うん! 絶対に守ってあげる。約束するよ。私だって、絵里香さんたちと同じ戦士なのよ」
「えっ?」
 隣にいた佳奈子がビックリしたような顔をした。絵里香たちも同様だった。佐緒里は立ちあがると、部屋の外に人気がないのを確かめてからポーズをとった。
「叔母様。私、変身するね」
 美紀子は黙って頷いた。
「スカーレットスパーク‐エンジェルチャージ!」
 佐緒里の身体が眩しい光に包まれて、みんなは眩しさに思わず目を覆った。そして光が消えたとき、絵里香達と違って、カラフルな配色のコスチュームを身に纏った佐緒里が立っていた。

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 佐緒里は地球人と宇宙人とのハーフであり、しかもエンジェル戦士の血が流れていて、美紀子同様、スカーレットエンジェルのパワーを持っていたのである。だが美紀子は、佐緒里の心の奥深くにそれを封印し(第1話参照)、今日に至ったのであるが、美紀子が絵里香たちに与えたエンジェルパワー同様、佐緒里が持っているエンジェルパワーも、一定の年齢に達すると覚醒するようになっていた。その一定の年齢は個人差があるのだが、概ね14歳前後であり、佐緒里は既に14歳になっていたため、封印されていたパワーが覚醒して、地球人にはない特殊能力が目覚めたのである。
「聖奈子さん、信じてくれますか? 妹の佳奈子ちゃんは絶対私が守ってみせます」
 聖奈子は呆気に取られたような顔をしながら、佐緒里に向かって頷いた。
「でも佐緒里、無理にパワーを使っちゃダメよ。あなたはまだ体が幼いし、スカーレットエンジェルとしての力を完全に使いこなせないんだから」
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「分かってます叔母様」
 そう言いながら佐緒里は変身を解いて、再び座ってみんなの中に入った。
「しかし… 佐緒里ちゃんが私たちと同じ戦士だったなんて、ビックリだな」
「佐緒里には、私と同じようにスカーレットエンジェルの血が流れているのよ。もう14歳になってるし、エンジェルパワーが覚醒していたのよ。それより、みんな! それぞれの役割は分かったわね?」
「はい!」

      *       *       *       *

 ネオ‐ブラックリリーのアジトでは、警報が鳴って、戦闘員がせわしく動き回り、ゼネラルダイアは自分の元にやってきた戦闘員の報告を聞いて驚いた。
「何? ガキどもが逃げただと!?」
「ヒャイィーッ! 仲間は地下通路で誰かにやられたと思われます」
「どういう事だ… あのガキどもが戦闘員を倒して逃げたというのか!?」
 ゼネラルダイアは、まさか捕らえたあの二人が戦闘員たちを倒して逃げたとは思えず、エンジェルスの小娘どもが侵入してきたのだと思ったのだが、ふと大首領クイーンリリーに言われた事を思い出し、『しまった』と舌打ちした。
「そういえばあの赤嶺佐緒里というガキには、スカーレットエンジェルの血が流れていたのだ… 逃してしまったのは残念だが、そんな事はもうどうでもいい。我々の作戦はもう終了し、このアジトも放棄するのだ」
 そこへ戦闘員がやってきて、ゼネラルダイアに報告した。
「ゼネラルダイア様。シャーク魔人様から通信が入っています」
 ゼネラルダイアは通信機の前へ行った。
「私だ。どうしたのだ?」
「爆薬の運搬を全て終了しました。あと一時間ほどで爆薬への配線と接続及び、時限装置の取りつけが終わります」
「ご苦労だった、シャーク魔人! 起爆装置のスイッチは私が押す。準備が整い次第報告しろ。お前はイカ魔人と協力してエンジェルの小娘どもを片付けるのだ」
「かしこまりました」
 イカ魔人は既に戦闘員を引き連れ、絵里香たちを待ち伏せして襲撃するために海岸の近くまで来て潜伏していた。
 しかし絵里香たちはそんな事は既に承知の上だった。自分たちの存在を知られている以上、必ずネオ‐ブラックリリーが待ち伏せしていると思っていたので、その裏をかく作戦を既に準備していたのだ。

      *       *       *       *

「行くわよみんな」
 美紀子を先頭に、絵里香たちは佳奈子と佐緒里をともなって宿を出た。美紀子は最近ワゴン車タイプの車に乗り換えていたので、全員が車に乗る事が出来た。美紀子は車を発進させると、海岸沿いの道路を通らず、国道の方から灯台へ向かっていったので、海岸沿いで待ち伏せをしていたイカ魔人は肩透かしを食う事になった。灯台の入り口まで来て美紀子は車を止め、絵里香たちはそこで降りた。美紀子は車から降りると、絵里香たちのそばに来た。
「みんな、頼んだわよ。頑張ってね」
「はい!」
 美紀子は再び車に乗って発進させ、絵里香たちの元を去っていった。そして白鬼岩の近くまで行くと、道路脇の空き地に車を乗り入れて停めた。
「佐緒里、佳奈子ちゃん、行くわよ」
「はい!」
 美紀子は持ってきたリュックに必要な物を詰め込んで背負うと、佐緒里と佳奈子を連れて白鬼岩に向かって歩き出した。
 一方の絵里香たちは灯台の高台の麓まで来ていた。
「灯台へ行く道はここだけだわ。聖奈子、美由紀、行くよ」
「オッケー!」
 絵里香たちは頷き合うと、灯台へ行く道を駈け登っていった。その途中で絵里香たちは監視網に引っかかり、アジトの司令室にある監視用モニターに、その様子が映し出された。
「ゼネラルダイア様。エンジェルスの小娘どもが来ました」
「何!? イカ魔人とシャーク魔人はどうしたのだ!?」
「海岸の方で待ち伏せしていると思われます。シャーク魔人様も海岸の方へ向かいました」
「すぐに連絡を入れろ。シャーク魔人にも大至急だ」
 戦闘員は慌ててイカ魔人とシャーク魔人に連絡を入れた。続いてゼネラルダイアは放送用のマイクを手にして警報機のスイッチを押し、アジト全体に伝えた。
「直ちにアジトを放棄する。全員アジトから脱出しろ!」
 アジト内に警報が鳴り響き、各所にいた戦闘員たちが慌しく動き出した。ゼネラルダイアは机の上に置いてある起爆装置のリモコンをつかむと、アジトの自爆装置のスイッチを押してから司令室を出た。それから間もなく司令室のコンピューターが大音響とともに爆発し、司令室全体が火に包まれた。さらに他の部屋も次々と爆発して炎に包まれ、アジト内におけるネオ‐ブラックリリーの証拠や痕跡は、全て焼き尽くされた。そして最後に地下回廊へ通じる通路の出入り口が閉ざされてロックされた。

      *       *       *       *

 絵里香たちは灯台がある高台まで登りきり、呼吸を整えた。灯台の敷地周辺には塀があり、出入り口の門は開けられていた。
「行くよ!」
 絵里香はそう言うと門から敷地内に入った。聖奈子と美由紀も絵里香のそばに寄って来た。敷地の中は静寂が漂い、海の方からは波の音が聞こえてくる。絵里香たちは一言も喋らず、用心深く辺り一面を見回しながら耳をすました。戦士の感が、降りかかる危険を予測していたのだ。その時絵里香は自分の後ろの方から、強い殺気が近付いてくるのを察知した。
「聖奈子! 美由紀! 何か来るわ。散って!」
 そう言いながら絵里香は自分の体を翻し、聖奈子と美由紀も反射的に絵里香から離れた。
 ドーン! ドーン! ドーン!
 大音響とともに、今まで絵里香たちがいた場所で爆発が続けて起こり、地面が揺れて砂塵が吹き上がった。絵里香たちはそれぞれポーズを取ってエンジェルに変身し、再び一箇所に集まった。

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「何処から来たのよ今のは!」
「ネオ‐ブラックリリー何処だ! 出て来い!」
「ワーッハッハッハッハ!!」
 絵里香たちは声がした方を向いた。大きな笑い声とともにゼネラルダイアが灯台施設の屋根の上に姿をあらわした。
「お前はゼネラルダイア!」
「小娘どもよく来たな。でも、もう遅いのだ!」
「何ですって!?」
 ゼネラルダイアの左手には、時限装置を作動させるためのリモコンが握られていて、それを絵里香達に突き付けるように見せつけた。
「小娘ども! これが何だか分かるか?」
「絵里香、あいつが持ってるの… もしかして」
 絵里香は美紀子が言っていた事を思い出し、自分の胸のブローチに指を触れながら、ゼネラルダイアに向かって怒鳴った。
「ゼネラルダイア! 馬鹿な真似は止めるのよ。それを私たちに渡しなさい」
「何を言うか! 我がネオ‐ブラックリリーは必ずこの世界を征服する。このアジトは既に放棄した。あとは地下に仕掛けた爆薬を爆発させて地震を起こし、大津波が太平洋沿岸を襲うのを待つだけなのだ。ワーッハッハッハッハ!」
「ゲーゾーッ!」
「シャシャシャシャーッ!」
 ゼネラルダイアの両側にイカ魔人とシャーク魔人が姿をあらわした。さらに多数の戦闘員が出てきて、絵里香たちの周りを取り囲んだ。

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「これまでだな小娘ども! 私がこのスイッチを押せば、一時間後にはこの辺り一帯は大爆発とともに吹っ飛んでしまうのだ。そして大地震と大津波が太平洋沿岸を襲う。お前たちはここで爆発に巻きこまれてくたばってしまえ! さらばだ!」
 ゼネラルダイアがリモコンのスイッチを押した。
「あーっ!」
 美由紀が思わず叫んだ。ゼネラルダイアは白煙とともにその場から姿を消し、イカ魔人とシャーク魔人が屋根の上から飛び降りてきて包囲の輪に加わり、絵里香たちを威嚇した。

      *       *       *       *

 同じ頃、美紀子は佐緒里と佳奈子を連れて洞窟から内部に侵入し、爆薬が仕掛けられている地下広場の手前まで来ていた。既に起爆装置の取りつけと配線が終わって準備が整っていたため、作業していた戦闘員が全て引き揚げたあとだったので、難なくここまで来る事が出来たのだが、その時に爆発音を聞き、まもなく振動が伝わってきて、地下全体が揺れた。
「キャーッ!」
 佳奈子が叫びながら佐緒里にすがりついた。
「佳奈子ちゃん落ちついて。声を出しちゃダメよ」
 揺れはすぐにおさまった。が、同時に地下広場からアジトへ通じる側の通路の出入り口がガシャンという音とともに閉じて、今まで点灯していた薄明かりが消えて真っ暗になった。佳奈子は恐怖のあまり叫びそうになったが、それをグッとこらえた。美紀子は懐中電灯を照らし、佐緒里と佳奈子にも小型のライトを渡した。
「私が先に行くから、あなたたちはここで待ってて」
 美紀子はそう言って通路の出入り口の所まで行って、地下広場の中を照らした。
「向こう側の通路の出入り口が閉じている… 」
 美紀子は今度は自分の周り、特に壁と天井の部分を念入りに眺めて調べた。
「こっちの出入り口には、何も無いようね… 」
 美紀子は通路から地下広場に入り、積まれている爆薬の脇に置かれた起爆装置のそばへ行った。その時美紀子の頭の中に、絵里香からのテレパス通信が伝わってきて、絵里香達の周辺の状況がわかった。
「しまった… 一足遅かった」
「叔母様」
 待ちきれなかった佐緒里と佳奈子が、地下広場に入ってきて美紀子のそばにやってきた。
「さっきの爆発と振動は、やつらがアジトを放棄したんだわ。地下広場のアジト側の出入り口が閉ざされている」
 そう言いながら美紀子は閉ざされた出入り口を照らした。
「えっ? それじゃ絵里香さんたちは… 」
「大丈夫。アジトの中には入っていない」
 その時絵里香からテレパスの通信が再び入ってきて、美紀子はその場にジッとしてテレパスを受けた。
「叔母様、どうしたの?」
「起爆装置のスイッチはゼネラルダイアが持っているんだわ。やつがスイッチを押せば、時限装置が作動する」
「えっ? それじゃ… 」
 美紀子は体中から血の気が引く思いがした。その様子を察した佐緒里が、美紀子のそばにあった起爆装置を見た。時限装置の針が無気味な音をたてて動いている。
「叔母様! 時限装置が動いている。爆発まであと約一時間だわ」
「嫌あーっ!」
 佳奈子が叫びながらその場にへたり込んで泣きそうな顔になった。佐緒里が佳奈子の両肩に手を置いて、宥めるように説いた。
「佳奈子ちゃん大丈夫だよ! 起爆装置さえ何とかすれば爆発しないから」
「そうよ! これで終わりじゃないのよ。ふたりとも、気をしっかり持って」
 気をとり直した美紀子は自分が持ってきた道具をリュックから出すと、起爆装置の分解を始め、まず時計の部分を取り外して、配線状況を見渡した。
「随分複雑な配線構造だわ… 」
 美紀子の後ろでは佐緒里と佳奈子が心配そうな顔でジッと見ている。

      *       *       *       *

 美紀子が起爆装置を相手に四苦八苦していた頃、絵里香たちはイカ魔人、シャーク魔人を相手に戦っていた。
「小娘ども。ここがお前たちの墓場だ」
「何を! 爆薬が爆発すれば、お前らだってみんな死ぬんだぞ!」
「そんなもの構うものか。作戦さえ成功すればいいのだ。お前たちは俺たちの地獄行きの道連れなのだ。それっ! かかれ」
 絵里香たちを囲んでいた戦闘員が、一斉に襲いかかってきた。絵里香たち3人と戦闘員多数の間で格闘戦になった。戦闘員は次々と絵里香たちに倒され、10分ほどで戦闘員の数は半分になっていた。
「ええいどけどけ!」
 イカ魔人が戦闘員を押し退けて出てきて両腕を伸ばし、絵里香たち目掛けて飛ばしてきた。
「危ない!」
 絵里香と美由紀は反射的に身をかわした。絵里香と美由紀はイカ魔人と戦っていて戦闘力を既に知っていたので、どう戦えば良いか分かっていた。
「溶解墨で溶かしてやる」
 イカ魔人が溶解墨を吐き出し、絵里香と美由紀に向かって降りかかってきた。絵里香と美由紀はジャンプして墨攻撃を避け、美由紀はイカ魔人を飛び越えて反対側に着地して身構えた。絵里香と美由紀はイカ魔人の前後に立つ格好になった。
「ええい小癪な!」
 イカ魔人が美由紀の方を向いた。
「今だ! ファイヤースマッシュ!」
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 絵里香がエネルギー波を放った。イカ魔人は絵里香に背を向けていたので、避ける事が出来ず、スマッシュがまともに命中した。
「グアーッ!」
 イカ魔人は叫び声とともに転倒した。美由紀はバトンを出して、バトンにエネルギーをためると、クロスさせてイカ魔人に向けて投げつけた。
「ライトニングストーム!」
 クロスしたバトンが十字手裏剣のように回転しながら、イカ魔人に向かって飛んでいき、そのままイカ魔人に命中して、バチバチと電気がショートしたような衝撃がイカ魔人を襲った。
「グア! グアッ!」
 イカ魔人の身体のあちこちで、バチバチと火花が迸り、小刻みに爆発した。イカ魔人は仰向けに倒れると、体全体をピクピクと痙攣させながら、口から溶解墨を噴水のように吐き出し、それがイカ魔人の体中に降り注いだ。イカ魔人の体がドロドロに解け始め、やがてボッと発火して勢いよく燃え出し、爆発してそのまま消滅した。
「やった!」
 絵里香と美由紀はお互いに駆けより、向かい合ってハイタッチをした。
「…と、美由紀、浮かれてる場合じゃないよ。化け物はもう一匹いるのよ」
「そうだ! 聖奈子は?」
 絵里香と美由紀は周囲を見回した。イカ魔人は倒したが、シャーク魔人がまだいるのだ。そして戦闘員も… その戦闘員が絵里香と美由紀に向かって襲いかかってきた。絵里香と美由紀はそれぞれブレードとバトンを使って戦闘員を倒しながら、戦闘員の壁を突き破った。するとシャーク魔人相手に戦っている聖奈子の姿が映った。
 
 聖奈子はソードと楯でシャーク魔人に立ち向かっていたが、シャーク魔人は強く、聖奈子は完全に押されていた。シャーク魔人は腕についているヒレカッターを振り回しながら、聖奈子に向かって切りつけ、聖奈子はソードと楯で応戦した。が、シャーク魔人は力任せに突進して聖奈子に体当たりし、聖奈子の体がその反動で吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「く… 」
 シャーク魔人はポーズを取ると、口から鋭い歯を次々と飛ばしてきた。聖奈子は倒れた姿勢にもかかわらず、楯をかざして、飛んで来る歯を跳ね返した。
「小癪な! 焼き殺してやる」
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 シャーク魔人は火炎を吐き出し、炎が糸を引くように聖奈子に向かっていった。聖奈子は間一髪で身を捩って避けたが、炎は地面に降り注ぐと、聖奈子の周りを囲むように勢いよく燃え出した。
「聖奈子がやられる!」
 絵里香と美由紀は駈け出してジャンプし、空中で一回転してシャーク魔人目掛けて急降下した。
「ダブルエンジェルキック!」
 しかし絵里香と美由紀に気付いたシャーク魔人は、ジャンプしてキックを避けた。着地した絵里香と美由紀は、倒れている聖奈子のそばに駆けより、聖奈子を抱えあげた。
「聖奈子しっかりして!」
 聖奈子は絵里香と美由紀に抱えられながら立ち上がった。そこへシャーク魔人が突進してきて、絵里香たちはシャーク魔人の当て身を食らって、その場に叩きつけられた。シャーク魔人はここぞとばかりに口から火炎を吐き出した。火炎が地面に降り注いで爆発し、絵里香たちは爆風で吹っ飛ばされ、悲鳴とともにそれぞれ地面に叩きつけられた。
「シャシャシャシャーッ! もうすぐこの辺りは木っ端微塵に吹っ飛ぶのだ。いよいよお前たちエンジェルスの最後だな」
「じょ… 冗談じゃないわ。私たちは絶対に負けない!」
「そうよ! 私たちはどんな事があったって絶対に挫けないわ!」
「負け惜しみを言うな! もはやお前らに助かる道など無いのだ。とどめを刺してやる」
 シャーク魔人は再び火炎を放射し、その火炎が絵里香たちの周囲に降りかかって爆発した。その爆煙の中から絵里香と美由紀が飛び出して、シャーク魔人に向けてエネルギー波を放った。
「ライトニングスマッシュ!」
「ファイヤースマッシュ!」
 しかしシャーク魔人は両手をクロスさせてエネルギー波を跳ね返した。
「小癪な! そんな物が俺様に効くか!」
 そう言いながらシャーク魔人は火炎を放射した。
「アクアトルネード!」

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 聖奈子がエネルギー波を放ち、シャーク魔人の炎と激しくぶつかり合った。聖奈子は思いっきり踏ん張ってエネルギーを全開にし、トルネードのエネルギーが少しずつ炎を押し返した。ついに聖奈子のエネルギーが勝ってシャーク魔人の口の中にトルネードのエネルギーが吸い込まれ、爆発した。
「グァーッ!! シャシャシャーッ!」
 シャーク魔人は爆発の反動で後ろに飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられた。
「お・・ おのれ小娘ども」
 シャーク魔人は口から煙を吐きながら、ヨロヨロと立ち上がった。
「か… 勝ったと思うなよ! 俺様が倒れても、爆薬は爆発して作戦は成功するのだ。シャシャシャシャーッ!」
 シャーク魔人はそのまま前のめりに倒れ、大爆発して吹っ飛んだ。
「やった!」
「喜ぶのはまだ早いよ! 美紀子さんが心配だわ」
「そうよ。爆薬の起爆装置が止まらなければ、やつらの作戦を阻止した事にはならないのよ」
「行こう!」
 絵里香たちは戦いが終わって静寂が戻った灯台の敷地内を出ると、変身を解いて岬を降り、白鬼岩に向かった。

 地下広場の中では、美紀子が起爆装置の取り外し作業を続けていた。時限装置は相変わらず動いていて、既に爆発まで30分をきっていた。後ろで見ていた佳奈子と佐緒里は心臓が爆発しそうなくらいドキドキし、冷や汗で血の気が引く思いでいた。
「あと… 15分」
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 佳奈子が震えながら呟いた。美紀子の方も、複雑になっている配線を一本ずつ調べながらニッパーで切っていく作業のため、極度の緊張感と危機感で、体中汗だくだった。息をつく暇すらなく、ようやく配線を半分ほど切った。
「叔母様… あと10分よ」
 佳奈子が佐緒里にすがり付き、泣きそうになった。時限装置の針が無気味な音をたてながら時を刻む… 
「あと7分… 」
 佳奈子がついに泣き出した。
「(私がスカーレットエンジェルになれば何とかなるかもしれない… )」
「ダメよ佐緒里」
 佐緒里は突然美紀子に言われてビックリした。美紀子は佐緒里が心で思っていることを読んだのだ。接続している配線の数が少なくなってきて、美紀子は残った線に触れながら、もう片方の手を額にあて、何の線かを読み取りながら一本ずつ切っていった。
「あと5分… 」
 ついに線が3本になった。
「残り3本… そのうち2本は間違って切れば起爆装置が働き、爆発してしまう… 」
 美紀子はそう呟きながら、残った3本の線に触れた。
「あと3分… 嫌だ… 嫌あーっ!」
 佳奈子がついにパニック状態になった。
「佳奈子ちゃん落ちついて!」
 佐緒里が佳奈子を宥めながら抱き締めた。
「佳奈子ちゃん! 叔母様を信じて」
 美紀子は残った3本の線のうち、どれを切ったら良いのか迷っていた。間違って切れば爆発してしまうのだ。
「あと1分… 」
「よし! これだわ!」
 美紀子は3本のうちの1本をつかみ、線を切った。同時に無気味な音を立てて時を刻んでいた時限装置が停止した。爆発まであと28秒だった。
「ふうー … 」
 美紀子は一つ溜息をつき、佳奈子は全身の力が抜けたようにその場にへたり込んだ。
「佐緒里、スカーレットエンジェルに変身して、スティックを出して」
「はい… 」
 佐緒里はポーズを取るとスカーレットエンジェルJrに変身し、スティックを出した。美紀子もスティックを出した。
「佐緒里。私と二人でここにある爆薬を全部処分するわよ」
 美紀子はスティックを構えながらそう言った。
「佳奈子ちゃん避けて」
 佐緒里はへたり込んでいる佳奈子にそこから退けるように言い、佳奈子はゆっくりと立ち上がって美紀子と佐緒里の後ろへ下がった。
「行くわよ佐緒里」
 美紀子と佐緒里は積んである爆薬に向けてスティックを差し出した。
「フリーザートルネード!」
 美紀子は変身出来ないので、佐緒里のエネルギーをセーブし、サポートする役割だった。エネルギー波が爆薬を包みこみ、数分後には全ての爆薬が絶対零度の冷凍状態になって、粉々に砕け散り、地下広場には氷の山だけが残った。
「あとはこの広場と、地下通路を埋めるだけだわ。佐緒里、佳奈子ちゃん、ここから出るわよ」
 美紀子は佳奈子と佐緒里を連れて広場から出た。そして洞窟の所まで来ると、佐緒里に向かって言った。
「佐緒里!」
「はい叔母様」
 佐緒里はスティックを地下通路に向けて振り下ろした。大きな振動と鳴動とともに地下通路の天井が崩れ、地下広場と地下通路が完全に埋まった。そして自分たちが巻き込まれないように、佐緒里は周辺にシールドを張った。
「これでもう大丈夫だわ。さあ二人とも行くわよ」
 
 美紀子は佐緒里と佳奈子を連れて洞窟から出た。その姿が、ちょうど白鬼岩へ向かっていた絵里香達の目に映り、絵里香たちは大きな声で美紀子たちを呼んだ。
「おーい!!」
「美紀子さーン」
 美紀子も佐緒里も佳奈子も、自分たちを呼ぶ声が聞こえてきたので、声がする方を向いた。向こうの方から絵里香たちが走って近付いてくるのが見えた。
「絵里香さんたちだ。佳奈子ちゃん、行こう」
 佐緒里は変身を解くと、佳奈子の手を引いて駆け出した。美紀子は一つ溜息をつくと、佐緒里と佳奈子の後を追った。お互いの距離が縮まり、佳奈子は目から段々涙が出てきて、泣きながら聖奈子に飛びついて抱き付き、そのまま泣きじゃくった。その傍らで佐緒里が絵里香と握手し、続いて美由紀と握手して、お互いを労い合った。美紀子も追いついてきた。

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「みんなご苦労様。爆薬の方も起爆装置を破壊して、地下通路も埋めたから、もう大丈夫よ」
「私達も怪人を倒しました。でも、ゼネラルダイアは逃げました」
「そう… でもやつらの作戦を阻止したんだから、それで上々だわ」
「しかし… あいつらも、何処へ行っても現れるんだね」
「ほんと… やんなっちゃうよ。せっかく海水浴に来て楽しめると思ったのに」
「聖奈子、美由紀、愚痴を言いたい気持ちは分かるよ」
「絵里香… 」
「でも、私たちが頑張ってるから、ネオ‐ブラックリリーの野望を砕く事が出来るんだよ。苦しいかもしれないけど、辛いかもしれないけど、これからも頑張ろうよ」
「そうだね… 」
 絵里香たちはそんな会話をしながら夕焼けに彩られた海岸に立っていた。そこへ美紀子が声をかけてきた。隣には佐緒里と佳奈子がいる。
「私はこれで帰るけど、あなたたちはまだ一日あるんだから、ゆっくり楽しんできなさい」
「美紀子さん。本当にありがとうございます」
「いいのよ別に。佐緒里の事お願いね。それじゃ気をつけて帰ってきなさい」
 そう言って美紀子は一人で砂浜を歩いていき、絵里香たちの視界から消えた。
「私達も行こうか」
「うん」
 絵里香たちはお互いに頷き合うと、佳奈子と佐緒里を連れて、自分たちが泊まっている宿へ向かって歩き出した。


      *       *       *       *

 ネオ‐ブラックリリーの野望は、またしてもエンジェルスによって打ち砕かれ、束の間の平和が訪れた。しかし、ネオ‐ブラックリリーはまた新たな野望を抱き、牙を剥いてくるのだ。
頑張れエンジェルス!

 (つづく)


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 次回予告
 ◎第19話『迫り来る悪夢』

 ネオ‐ブックリリーは、中断していた基地建設を再開。天間村の般若峠に大規模な前身拠点の建設を始め、付近の人々が労働力として捕らわれて、次々と般若峠に送り込まれる。
 美紀子の招待で天間村に来ていた絵理香たちは、佐緒里からネオ‐ブックリリーの不穏な動きを知らされ、美紀子、佐緒里と共に阻止行動に出て建設中の基地に潜入する。

 次回 美少女戦隊エンジェルス第19話『迫り来る悪夢』にご期待ください。


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テーマ : ライトノベル
ジャンル : 小説・文学

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